『銀河鉄道999 THE MUSICAL』が4月8日(金)、日本青年館ホールで開幕した。
本作は、1977年から1981年にかけて少年画報社「少年キング」にて連載、テレビアニメ化・劇場アニメ化もされた松本零士原作『銀河鉄道 999』のミュージカル化作品だ。
今回のストーリーは、1979年に上映され邦画収入第一位(当時)の記録を持つ劇場版『銀河鉄道999』がモチーフになっている。漫画やアニメ・映画で語られていないキャラクターの過去をオリジナルストーリーでつづると同時に、作品のテーマである「限りある命(人間)・永遠の命(機械の体)」について描く。
メガロポリスの片隅にあるスラム街。駅では、一人の少年・星野鉄郎が仲間と共に裕福の象徴である機械化人からスリを働いていた。ある日鉄郎は、銀河鉄道の999(スリーナイン)の乗車パスを盗み、警察官に捕まってしまう。しかしそこに、黒ずくめの謎の美女が現れ、鉄郎を助ける。
気を失った鉄郎は、街が一望できるホテルの一室で目を覚ます。そこに先ほど自分を助けた美女が現れ、鉄郎はメーテルと名乗った彼女に自分の身の上を話す。父親はすでにいないこと、母親は機械伯爵に殺害されたこと…。鉄郎の話を聞き終わると、メーテルは持っていたトランクから1枚のパスを取り出す。それは、鉄郎が欲しがっていた999の乗車パスだった。
メーテルは、自分と一緒にアンドロメダに行ってくれるのであれば999のパスを無料で渡すと言う。願ってもない申し出に、鉄郎はパスを受け取り自分の名前を書き込んだ。そして、二人の銀河鉄道の旅が始まった。鉄郎は無事に機械の身体を手に入れられるのか? そして、メーテルの真の目的とは…?
星野鉄郎役の中川晃教。初演から鉄郎を演じ続けている。今作では16歳と、少し大人になった鉄郎だ。はつらつとしながらも、憎しみや葛藤を胸に少年から大人になっていく鉄郎の心理を表現。強い意志と行動力を持った彼は、なぜメーテルに銀河鉄道の旅へといざなわれたのだろうか。
メーテルを演じる花總まり。メーテルは、陰のある謎に包まれた美女だ。穏やかな微笑みを絶やさず、母や姉のように、そして相棒のように鉄郎に寄り添う。ビジュアルから佇まいまで、現れるだけでまさに美しきメーテル。本作では、原作やアニメよりも幾分か感情の起伏が大きいので、より人間らしさを感じるメーテルになっている。
機械伯爵役の佐藤流司。本作では機械伯爵の過去がオリジナルストーリーでつづられる。彼が機械伯爵となった理由とは…。人間だった時代と機械伯爵になってからの声色や動きの違いなどにも注目してほしい。
北翔海莉演じるクイーン・エメラルダス。その姿を見た者は死ぬと噂されている恐ろしい宇宙海賊だが、本作においてはトチロー(演:藤岡正明)への思いを強く表現している。
キャプテン・ハーロック役の三浦涼介。クイーンエメラルダスと同じく松本零士作品には欠かせない存在であり、男が惚れる男の代名詞と言っても過言ではない。今作においても、鉄郎の憧れの男であり導く存在として登場する。
序盤のストーリーは、タイタンに停車し山賊のアンタレスと対決するなど原作を丁寧に追って行く。ここに機械伯爵の過去などのオリジナルストーリーを絡めて展開されていくので、一度原作や映画を観た人でも、初めての作品に触れた気持ちになるのではないかと感じる。
歌唱力に定評のあるキャスト揃いゆえに、ずらりと並ぶナンバーは聴きごたえがある。花總まりは、あたたかく包み込むような豊かな声でしっとりと歌い上げ、中川晃教は16歳の少年らしくポップでハキハキした歌声を聞かせてくれる。
舞台照明や美術の面では、銀河の星々のような色とりどりのLEDライトが美しい。セット転換はアナログでの人力が多いが、世界観にマッチしている。また、各キャラクターの衣装も豪華だ。ガラスの身体を持つクレア(演:梅田彩佳)の全身の輝きが特に目を引く。
上演時間は、ゲネプロは休憩20分を挟みおよそ3時間(1部70分、休憩20分、2部90分ほど)であった。夜空にきらめく星々を眺めるように、銀河鉄道の世界にたっぷり浸ってほしい。
取材・文:広瀬有希/撮影:ケイヒカル
また、初日に向けてキャストからコメントが寄せられている。
星野鉄郎役:中川晃教 コメント
「銀河鉄道999」は、全世界にたくさんのファンがいる偉大で、とても愛されている作品です。今回は、音楽劇ではなくミュージカル化ということで、身の引き締まる思いと、いい作品にしたいという情熱とどちらも入り混じって挑戦させていただいています。日本青年館にお越こしくださるお客さまに、鉄郎やメーテルをはじめ、宇宙の大冒険に登場するキャラクターに注目していただきながら、登場人物たちに共通する命尽きるまで終わらない人生とお客さまご自身の人生を重ねながら観ていただきたらと思います。
メーテル役:花總まり コメント
足りない時間の中で、一生懸命この作品と向き合い、キャスト一同、力を合わせて『銀河鉄道999 THE MUSICAL』を創ってまいりました。神田さんの想いを乗せて、自分なりのメーテルを届けられればと思います。
機械伯爵役:佐藤流司 コメント
ついに幕が上がりますね。今これ場当たり中に書いてるんですけど、照明の感じとかめっちゃ綺麗です。ここまできても更に変更を重ねよりブラッシュアップしております。最後まで手を抜かずに気を抜かず、素晴らしいものをお見せするためカンパニー一同頑張っております。もう少しで完成です、期待してお待ちください。
クイーン・エメラルダス役:北翔海莉 コメント
1年前にこの作品のお話を伺ってから、エメラルダスに挑戦できることをすごく楽しみに準備しておりました。今回は強いエメラルダスというよりは、トチローへの想いを表現するシーンが多いので、甲冑の中の女性の繊細な部分を頑張って表現したいと思います。
キャプテン・ハーロック役:三浦涼介 コメント
お稽古場を経てついに日本青年館に辿り着きました。お稽古期間は約1カ月。演出、小山さんを筆頭に、中川さんをはじめ個性豊かで素晴らしい俳優の皆さま、スタッフの皆さまと時間を過ごす中、日々最高のエンターテイメントをお届けすべく素敵な時間を過ごすことができました。劇場に入りステージで空間を感じ場当たりを充実させてまいりました。初日から千秋楽まで、精一杯に心を込めて演じ、この999の世界と共に、演劇の旅へ出ます。どうぞよろしくお願いいたします
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