毛利亘宏脚本×西森英行脚色・演出の新プロジェクト舞台「HELI-X」。第三次世界大戦後の極東の島国「大和」を舞台に、特殊能力に目覚めた“HELI-X”たちを描く同作は、2020年12月に第1弾が上演。続編となる舞台「HELI-X II 〜アンモナイトシンドローム〜」が10月7日(木)に開幕する。
第1弾では、HELI-Xたちを取り締まる「螺旋機関」に暗殺者・ゼロが所属することになったところで幕を閉じた。
2.5ジゲン!!では、ゼロ役・玉城裕規とゼロのバディであるアガタ・タカヨシ役の菊池修司の2人にインタビューを実施。前作の振り返りや「もし自分が特殊能力を得たとしたら?」などについて話を聞いた。
それぞれの葛藤が明らかに
――第2弾の台本を読まれて、印象はいかがでしたか?
菊池修司(アガタ・タカヨシ役):すべてがぎゅっと詰まっているなと感じました。前作は第1弾ということで、登場人物や世界観などの説明をしながら話が進んでいく部分もあったのですが、今作ではそれらがバランスよく削ぎ落とされています。
衝撃的な事実が明かされたり色々な出来事があって、台本を読んでいてワクワクしました。この作品を楽しみにしている皆さんに早くお届けしたいなという気持ちでいっぱいです。
玉城裕規(ゼロ役):キャラクターそれぞれの背景や葛藤が見えてくることで、ストーリーがよりボリューミーになっています。新たに加わった登場人物がキーマンとなって話が展開していくので、とてもワクワクしますよ。
今回で明らかになった真相がある一方、また新たな謎が生まれてもいるのですが、ストーリーとしては分かりやすくシンプルです。問題や抱えているものが増えていくと普通はごちゃごちゃになっていきがちですけれど、どんどんスッキリしていくので不思議な感覚ですね。
菊池:今作ではゼロとアガタはもちろん、螺旋機関のメンバーたちやアンガー(演:塩田康平)とサッドネス(演:星元裕月)などそれぞれのキャラクターが持っている目的が明確になってきています。彼らの思いが交差することで生まれる感情やすれ違いなどにも注目してほしいです。
――お2人は第1弾で初共演でしたね。
菊池:玉ちゃんは経歴も実力も、全てにおいて僕が追いかけていくべき方です。僕はちょっと天然なところがあって距離の縮め方を間違えるところがあるんですけれど、玉ちゃん自身もゼロもすごく大事な相手なので、丁寧に距離を縮めていきたいです。玉ちゃんとは役と同じくバディとして、お互いに何でも言い合える仲になれたらいいなと思っています。
玉城:前作を経てお互いの距離が確実に縮まっているなと感じます。それからマスクをして稽古している最中にふとマスクを外した笑顔を見ると、それだけで何だか距離が縮まったような気になったりしますね(笑)。
――前作を振り返って、お気に入りのシーンはどこでしょうか
玉城:本当にたくさんあるんですけれど、アガタがワカクサ(演:立道梨緒奈)の能力「ナイトメア」にやられるシーンは面白かったです(笑)。
菊池:あれは理不尽なシーンです(笑)。ワカクサは「ナイトメア」をかける範囲は、多分自分でコントロールできるはずなんですよ。でも「私の能力を見なさい!」的に、かける必要はないのにあえてアガタにまでかけるという…あれは絶対いじわるでやっていますね(笑)。
玉城:面白くて、「かわいそう」って稽古から笑って見ていました(笑)。
菊池:僕が好きだったのは、シーンではないんですがアンガーとサッドネスの関係性です。あの2人のいびつな世界観や歪んだ愛が、観てくださった方にも刺さるものが多いんじゃないかと思っています。あと、衣装がものすごくかわいいですよね。
――前作に出演された西岡德馬さん、今作にも出演される久世星佳さんなど、大ベテランの大きな存在感も印象的でした。
菊池:お2人からは多くのものを学ばせていただきました。德馬さんは舞台の上に立たれているだけで存在感がありますし、久世さんは僕ら目線で親身になって話を聞いてくださって、螺旋機関の若手を引っ張って行ってくださっているな、と感じていました。
今作でも、(久世が演じる)カンザキ大佐がいて僕らがいる、というのを強く感じさせてくださっています。佇まいが本当に素敵なんです。
玉城:德馬さんがおっしゃっていたことで、とても印象的な言葉があります。読み合わせで世界観などの細かい説明を受けられている時に「何が主軸で、何を伝えたいのか?」と。とてもシンプルな問いだったんですけれど、ハッとしました。確かにそのとおりで、作品の“核“となるものをしっかりつかんでいないとブレちゃうんですよね。
菊池:逆に、その“核”さえつかんでおけば、たくさんある細かい情報を全部拾わなくても作品にのめりこめます。本当にたくさんの経験を積み重ねていらっしゃる德馬さんには、僕たちにはまだまだ見えないところまで見えているんだと感じました。
もし特殊能力が使えるなら
――「HELI-X」ではさまざまな特殊能力が登場しますが、もし使えるとしたら作中のどの能力を選びたいですか?
菊池:僕は、レスター(演:服部武雄)の「カラー」がいいです。色で相手の喜怒哀楽を知るだけでなく、色を操ることでその人の感情をコントロールするんです。例えば、好きな人ができたとしてその人が僕のことを好きじゃなくても好きにさせたり(笑)。
役者をやっていて人の感情を動かす大変さを味わっているので、感情を能力でコントロールできたらすごくいいなぁ…と。でも、芝居中に舞台の上から能力でそんなことをしたらダメですけどね!(笑)
――一見、戦闘向けではないように感じますが、精神をあやつるような能力は使い方次第で恐ろしくもありますね。
菊池:そうなんです。炎を出したりする、分かりやすい戦闘向けの能力よりも使い方によっては強いという、そこがHELI-Xでの特殊能力の面白いところなんですよね。第2弾では、能力戦がさらに強く描かれているので面白いと思いますよ。
玉城:僕はワカクサの「ナイトメア」でイタズラしたいです(笑)。うたい文句っていうのかな、能力を使う前に言う言葉もかっこいいじゃないですか。「悪夢にいざなってあげる…ナイトメア」って。ちょっと男心がくすぐられちゃいます。
菊池:イタズラっていうレベルじゃないですよ! 悪夢を見せるんだからひどすぎる(笑)。
――では、作中に登場しないものでも、もし自分に出現するとしたらどんな能力で、それを使って何をしてみたいですか?
菊池:僕はゲームが好きなので、機械と話したり機械を自由に操れる能力が欲しいです。具体的には…行く先の信号をうまい具合に全部青にして、スムーズに目的地に着けるようにしたいですね。でも、その影響で周りで交通事故は起こらないように、ちゃんと工夫しながら。
――平和な使い方ですね(笑)
菊池:僕は能力を平和に使います!(笑)
玉城:僕は、ゼロの能力とは少し違う使い方かもしれないんですけれど、自分に都合のいいように時間をあやつりたいですね。例えば、1分を自分だけ10時間くらいにしてちょっと遠くに行ってみたりね。旅行したいなぁ…。普段は気合で台本を覚えていますが、この能力が使えたら便利ですね(笑)。
作品を活性化する新キャスト
――今作では、平野良さん、杉江大志さん、田辺幸太郎さんが新たに加わります。
玉城:台本を読んで、その中で自分はどうあるべきなのか、どう立ち振る舞うべきなのか、ということを分かっている役者さんたちです。自分という役者を分かっているというのかな。毛利さんの脚本は、その役者自身の魅力を最大限に引き出してくれます。作品が生き生きと波打つように活性化すると思いますよ。
菊池:僕たちにとってもキーパーソンとなるキャラクターたちです。とても存在感のある方々なので、ゼロとアガタのバディ組としては“負けられない”という気持ちでいます。
毛利さんが書かれる今作の脚本は役者にあてがっている部分もあるので、アガタにも僕に似ている所がたくさんあります。だから、「演じよう」とはせずに自分と重なる部分をそのまま出せるんです。似ているからこそ考え方や感情の筋道がきれいに通るし、演じていてとても楽しいです。
そんな自分と似ているアガタを演じている中で、これまで見たことも会ったこともないゼロという人間と関わることによって生まれる感情は新鮮なものでした。自分自身と重なる部分と重ならない部分、両方あるというのが楽しかったです。
玉城:前作でのゼロは、重いものを抱えながらも何の目的も果たせずに、不完全燃焼のままでした。今作では謎だった部分の真相が明らかになってきて、ゼロの足かせになっていたものが徐々に外れてきています。今、ゼロは自分自身が何も無いがらんどうな状態です。“陰”ではないものを見つけながら、第1弾よりも気持ちを楽にして楽しくやりたいですね。
――最後に、本作の見どころとメッセージをお願いします。
菊池:僕は、今回の第2弾を本当に楽しみにしていました。第2弾を観終ったらきっと、第3弾が楽しみで仕方なくなるんじゃないかなと思います。
玉城:うん、「次が気になる!」という気持ちは第1弾よりも強くなるかもね。どんどん続きが楽しみになる作品です。
菊池:個々のキャラクター性が強くなっているし、真実が明らかになったりと色んな展開があります。ある意味、今回がこの「HELI-X」の始まりとも言えるので、「あの第1弾は序章だったんじゃないか?」と思うかもしれません。「第1弾を観ていないから…」と思っている方でも大丈夫です。今作から見ても楽しめるようになっています。
この「HELI-X」という作品がこの先もっと大きくなっていくには、応援してくださるたくさんの方のお力が必要です。観ようかなと迷っている方は、この話をぜひ目撃して僕たちとともに体感してほしいです。
玉城:第1弾はシンプルなようで難しかったけれど、今回は難しそうだけれどシンプルです。各々が抱えている葛藤や抱えているものが見え始めて、世界観が広がりながらも物事が繋がっていくので観ていてワクワクすると思います。演じている僕たち自身も、皆さんと同じワクワクする感覚になると思います。
まだシリーズ2作目です。これからどんどん「HELI-X」の世界は広がっていきますので、ともに歩んでいきましょう。
取材・文:広瀬有希/撮影:ケイヒカル
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