舞台「HELI-X II ~アンモナイトシンドローム~」が 10月7日(木)、東京・新宿の紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAで開幕した。
本作は、2020年12月に上演された舞台「HELI-X」の第2弾公演。毛利亘宏脚本、西森英行脚色演出によるプロジェクトで、第三次世界大戦後の極東の島国「大和」を舞台に、性別変更のための遺伝子操作「TRANS」の影響で特殊能力に目覚めた“HELI-X”たちの物語を描いている。
2.5ジゲン!!では、初日公演に先駆けて行われたゲネプロの様子をレポート。ストーリーに深く踏み込んだネタバレはしないが、劇中写真を多く含む記事のため、まっさらな状態で観劇したいファンは観劇後に記事を読むなどしてほしい。
謎の組織「アンモナイト・シンドローム」の登場
前作、舞台「HELI-X」第1弾は、恋人の仇を打つために生きてきた暗殺者・ゼロ(演:玉城裕規)が、HELI-Xの能力を使った犯罪者を取り締まる“螺旋機関”に身を置き、アガタ・タカヨシ(演:菊池修司)とバディを組むことになったところで幕を閉じた。
第2弾である本作は、体にアンモナイトのタトゥーを持つHELI-Xで構成された謎の組織「アンモナイト・シンドローム」を中心に話が進められていく。
ある日、螺旋機関にユナイトから1人の人物が派遣されてくる。彼の名はオシリス(演:平野良)。螺旋機関と協力関係にある、対HELI-Xのユニット“UTC”の捜査官であり、彼もまた能力者・HELI-Xであった。
オシリスがカンザキ司令官(演:久世星佳)に申し出たのは、アンモナイト・シンドロームのリーダーであるイモータル(演:杉江大志)の抹殺。イモータルはHELI-Xが支配する社会を目指し、アンモナイト・シンドロームのメンバーを率いて、HELI-Xを脅威の存在として見ている政治家たちを襲撃するなどの犯罪を行っているという。
オシリスの“テレパス”の能力により居場所が明らかになったイモータルを始末すべく、ゼロ、アガタ、シュンスイ(演:松田昇大)、シデン(演:後藤大)、ワカクサ(演:立道梨緒奈)ら螺旋機関のメンバーたちは出動する。
「真実の扉」という言葉の意味とは…
「謎が謎を呼ぶ」とはよくある言葉だが、本作において、それはいい意味で当てはまる。明かされていない大きな謎はいくつもあるものの、ストーリーは実に明瞭。螺旋機関とアンモナイト・シンドローム、サッドネス(演:星元裕月)とアンガー(演:塩田康平)、そしてクライ(演:宇野結也)、主にこの3組の話が並行して進むのだが、それでも頭の中がごちゃごちゃに散らかることはないだろう。
第1弾でメインキャラクターたちの設定と世界観がある程度頭に入ったからかもしれないが、3つのストーリーが時に交わり、また離れていくことで世界観が厚みを持って殴りかかってくるように感じる。
もちろんメインはゼロとアガタなのだが、登場するどのキャラクターにも重いバックボーンがあり、その時に注目する人物によって印象が変わるかもしれない作品だ。サッドネスとアンガーのどこか歪んだ関係性、神出鬼没なクライの正体、彼が何度も口にする「真実の扉」という言葉…観劇後にさまざまなことを考察したくなる。
第1弾で提示された大きな疑問に突然近づき「そういうことだったのか」と納得できたかと思えば、その真相によってHELI-Xの世界がさらに広がったと改めて感じる。まるで、どのくらいの広さがあるか分からない暗い舞台に少しずつピンスポットが当てられていくようだ。
第1弾はエピソードゼロ。今作が舞台「HELI-X」の世界の始まりと言っても過言ではないだろう。事前に行ったインタビューで玉城と菊池が「第1弾よりも、さらに次が楽しみになります」と語っていたように、「この先どうなるの?」とすぐにでも第3弾を観たくなってしまう人は多いに違いない。
パワーアップするアクションシーン
前作では怒りと絶望を常にあらわにしていたようなゼロも、本作では時にふと表情をゆるめたり、バディとは認めないと言いつつもアガタを心配するような瞬間を見せる。不器用なまでに実直で、能力者ではないためか螺旋機関の中でも少し特殊な空気をまとっていたアガタは今回、苦悩や戸惑いなどを多く見せるようになった。
この2人のバディがようやく少し歩み寄りを見せたにもかかわらず…あとは観劇してのお楽しみだ。
アクションの面では、第1弾よりもさらに殺陣の量が増えて派手になった。武器があってもなくても戦い、また、1人が同じ武器を使い続けるとも限らない。アクションシーンでは前作同様、ひらひらとひるがえる長い裾の衣装の効果で、動きがさらに美しく大きく見える。
第2弾の発表が行われたイベントでキャスト陣が「HELI-Xの世界そのもの」とお気に入りシーンの一つに挙げたオープニングシーンも、今作ではさらにパワーアップ。テーマソングのイントロがかかるだけでわくわくし、目まぐるしいまでのアクションの連続に目が足りなくなること間違いなしだ。
積み重なる地獄が心地いい、舞台「HELI-X」の世界。ぜひ劇場や配信で今作の結末を見届けてほしい。
取材・文:広瀬有希/撮影:ケイヒカル
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