2019年10月31日(木)、新宿FACEにてLIVEミュージカル演劇『チャージマン研!』が開幕した。
4人の「研」、ニコ生での投票システム、360度囲み舞台、撮影OKなど、これまでの常識にとらわれず「楽しい・自由」を追求したこの舞台。
事前に脚本を読んでも、キャスト・制作にインタビューをしても何も分からない。つかみかけたと思った全貌はことごとく、発表される公式からの情報に覆されていく。
そして開幕を迎え、初日に先立ちゲネプロと囲み会見がおこなわれた。
レポートをお届けするが、ジャンルは? と聞かれればギャグでもコメディでも無い。ただひたすらに本気の「チャージマン研!」だ。ニコ生でも千秋楽まで毎公演放送がされるが、できることならばぜひ生で観てほしい。
(記事に入りきらなかった画像は、下の「画像一覧」に)
……何を見せられているんだ? 理解しなくていい、「気にするな!」
原作となったアニメの放映は1974年。超低予算と実質5分程度という厳しい制約のある中で生まれた原作は、説明も無く突然始まり無理やり終わる・画面にゴミが堂々と映る・効果音が滅多に出ない・尺に合っていない・作画崩壊など、ツッコミ所をあげ始めればキリがない。
しかしそれが逆に、2010年に入った頃に「何だこれは」とインターネットで注目されるようになった。ニコニコ動画でコメント機能によるツッコミを入れながら観るなどの、新しい楽しみ方にマッチしたのだ。
原作はギャグをやろうとはしていない。笑いを取ろうともしていない。舞台もまた同じである。今作は、原作の空気感をそのまま真剣に舞台化している。
話題となった4人の研のシーンの一部。上下同じシチュエーションだ。何が何だか分からないと思うが、考えることは放棄するのをおすすめする。
古谷大和の研はセリフも動きもすべてが魚雷のように勢いがあり、強い。安達勇人の研は、正統派と聞いていたが最もキャラクターが濃い。ニコ生の固定カメラの遠目でも、一発で安達研だと分かるだろう。
髙﨑俊吾の研は狂気の沙汰だ。ビジュアルで勝負すると聞いていたが、研だけではない原作の空気が具現化している。セルロイド人形のような表情にも注目してほしい。
中村誠治郎の研は「中村誠治郎の無駄遣い(褒めている)」がすごい。歌う、踊る、斬る。どうしてこうなった感が一番強いだろう。実に楽しそうだ。
研の妹なのになぜか一家で一人だけ金髪なキャロンを演じるのは、星元裕月。指先の動き、流れる視線、ミニスカートから覗く細い脚。自分が女であることを反省する可愛さだ。
バリカンの阿部快征はこの綺麗な顔で、正体不明のロボットを声まできっちりと再現している。初回公演のチャージマンドリームで見事に票を集め、研の座を射止めていた。諸々の意味で優勝だ。
浜ロンのジュラル星人。ジュラル星人は数多くおり、浜ロンはリーダー的な役目だ。さすがに喋りがうまく、場を盛り立てる。チャージタイム前のアピールでは持ちネタの「安室奈美恵を早口で言う」を披露していたが、これが日替わりかどうかは分からない。
村上幸平の魔王。タイツにパンツ、仕組みが分からない特殊メイク。実に楽しそうだ。カイザもバドも演じたので、今度は研をやりたいという願いはかなうのだろうか。(追記:11月4日昼回にて実現)
名作回、名セリフを再現。舞台でのチャー研とはこういうものだ。細かいことは「気にするな!」
360度、四方を観客席で囲まれた舞台(しかしもはや「舞台」はない)では、大道具も大がかりなセットも出しようがない。スカイロッドや車などをどうするのかにも注目してほしい。
再現度の高いボルガ博士だが、例のシーンはどうなるのだろうか……? 「お許しください!」
舞台上での着替えも、ついたてのこちら側の席からは完全に見えている。
暗転も暗転ですらない。
情報だけ見れば「どれだけ好き勝手にふざけているのだ」と思われるかもしれないが、そうではない。すべては「チャージマン研!」の原作の空気を忠実に再現するためだ。
唐突な超展開、理不尽、追いつかない突っ込みどころ、そして研とジュラル星人・魔王との関係性。
ジュラル星人は、観客を入り口からエスコートしてくれたり、段差に気を付けろと心配してくれる。しかし研は無抵抗のジュラル星人を次々と虐殺していく。
ジュラル星人たちはひとりひとり別々ではあっても、ひとつになるとまとめて称される「しらす」に似ている悲哀がある。
個性のアピールタイムでは、ゲネプロでは「アクロバット」「We Will Rock You」「前まわり受け身」「全盛期の山本(昌)」を披露していた。ぜひ、お気に入りのジュラル星人を作って票を入れ、ドリーム実現の手助けをしてほしい。
ゲネプロでは星元裕月が研を射止めた。男らしく力強くジュラル星人たちを倒していたが、何の格好をしていても可愛い。
忘れてはならないのが音楽だ。手島いさむによる主題歌のアレンジや舞台用の新曲が最高にクールで格好いい。特に主題歌は、1970年代らしさを残しながらもイントロと間奏部分で存分に暴れるエレキギターの音色にわくわくする。
ナレーションは藤原祐規、振付は梅棒の遠山晶司、歌唱指導は新良エツ子。一流たちの本気が贅沢に楽しめる。
事前に行ったインタビューで、演出のキムラ真と脚本の伊勢直弘は「新しいことをやろうとしているのではなく、自由な演劇がしたい」「かまえて観るのではなく、軽く娯楽を見るように」と語っていた。
そのとおり楽しい。中毒性のある娯楽だ。立見席でふらりと気軽に入り、飲み物を片手にげらげらと笑いながらペンライトを振り、毎日でもこの舞台をキメたくなる。
時間に余裕があれば、エリア別同時進行シーンを制覇してほしい。(※どの研がどのエリアのエスコート役になるのかは、公式サイトで要確認)
「360度円形の舞台で、一体感のある作品に!」囲み会見レポート
ゲネプロに先立ち、全体フォトセッションと囲み会見がおこなわれた。会見での登壇者は古谷大和、安達勇人、髙﨑俊吾、中村誠治郎、星元裕月、阿部快征、浜ロン、村上幸平。
浜ロン(ジュラル星人役):この舞台にはチャージタイムというものがあり、誰でも主役になれるというポイントがあります。私はジュラル星人のチーフですが、私のことよりも手下たちが主役になり、輝いてくれたらと祈っております。(「いい上司だ!」の掛け声)
村上幸平(魔王役):この舞台は、僕も経験したことのないクレイジーなものです。この舞台が受け入れられるのか? というドキドキ感と、これが成功したらすごいことになるんじゃないか? というワクワク感があります。楽しみたいと思っています。
阿部快征(バリカン役):ご来場されるお客様、味わったことの無い経験をされると思います。僕たちも、色々な意味で長く愛され続けている原作を忠実に再現して、本気でやっていきます。応援よろしくお願い致します。
星元裕月(泉キャロン役):デビューして3年が経ちましたが、初の女性役ということで、この役が決まってから今日という日を楽しみにしていました。
みんなで稽古してきたこともそうですし、プロレスが好きな自分にとって、新宿FACEで役者として立てていることがとても嬉しいです。精いっぱい全力で頑張っていきたいと思っております。
中村誠治郎(泉 研役):新しいジャンルの舞台なので、お客さんが入って完成する作品だと思います。お客さんと一体化した素晴らしい作品になるように、いい初日を迎えて、千秋楽までどんどん上がっていければと思います。
安達勇人(泉 研役):この円形の会場が、LIVEミュージカル演劇の名にふさわしく、お客様と一体感が生まれるような場所になっていると思います。老若男女問わず、皆さんで一緒に盛り上がれる演出もあります。楽しみにして来てください。
古谷大和(泉 研役):ようやく本番を迎えられることが、とても楽しみです。演劇は劇場で見てなんぼだと思いますので、配信もありますが、ぜひ足を運んでほしいです。
たくさんの方々に愛された作品を、素晴らしい演者と素晴らしいスタッフさんと作り上げられて、僕自身もとても興奮して稽古してきました。ぜひ、最後まで応援してください。
髙﨑俊吾(泉 研役):今回はLIVEミュージカル演劇ということで、皆さまと一緒に楽しめるようなものになっています。僕たちは原作をとてもリスペクトして、演出や演技を煮詰めて来ました。たくさんの方に楽しんで頂きたいと思います。
原作を愛した大人たちが本気で楽しみ、本気で作り上げた真剣な舞台。圧倒的なパワーを浴び、どうやって家に帰ったのかも覚えていない。
LIVEミュージカル演劇『チャージマン研!』は、新宿FACEにて11月6日(水)まで上演中。画面の中だけでは足りない。チャー研の世界を浴びに、ぜひ劇場まで足を運んでほしい。
©2019 鈴川鉄久/ICHI/チャージマン研!CLIE
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