2019年10月31日(木)、新宿FACEにてLIVEミュージカル演劇『チャージマン研!』が上演される。
すでに、4人の研・ニコニコ生放送での投票システムなどで話題となっているこの舞台。
2.5ジゲン!! では、キャストインタビューとともに演出のキムラ 真・脚本の伊勢直弘にインタビューをおこなった。インタビューにも新しいアイデアがどんどん湧き出てくる、楽しい現場の風景が伝わってくる様子をお届けする。
驚きの脚本、驚きの展開。少なくとも4回は確実に見たくなる!
――まず、この舞台のお話を受けたときのことをお聞かせください。原作に対してや、お互いの印象などはいかがでしたか?
伊勢直弘(脚本):「ずいぶんな角度から攻めてくるな!」という印象でした(笑)。
キムラさんとは初めましてなのですが、お名前は以前からよく伺っていたんですね。
プロデューサーさんが、キムラさんと僕の組み合わせでやりたい、と思われたのには何か意図があるのだろうな、と感じました。初めてでしたが何の不安もなく、楽しみでしかなかったです。
キムラ 真(演出):「チャージマン研!」は、お話を頂いてから知りました。調べて、とんでもないものだな、と(笑)。
普段、美しさや耽美をテーマにした演出を頼まれることが多いので「僕じゃないな」と初めは思いました。でも、プロデューサーさんが「キムラさんと伊勢さん、絶対合うから」と言ってくれたんです。伊勢さんがいつも言っていることが、僕が言っていることと同じだと。
それで、不安よりも「伊勢さんとやれるんだ、チャージマン研! の世界をやれるんだ」というワクワクになりました。
――稽古場は、笑いにあふれた楽しい現場だと伺っています。
伊勢:そうなんです。僕はまだ顔合わせにしか立ち会えていないのですが、すごく良かったなと。脚本家として、まずはとても安心しました。
キムラさんの座組み作りがしっかりしているから、その上でちゃんと機能しているんですね。その楽しい空気を味わいに、早く稽古場に行きたいです。
今はまだ他の舞台に携わっているので、終盤にたこ焼きをもっていこうかなと(笑)。
――たこ焼きですか!(笑)
伊勢:そうなんです、たこ焼きさし入れると誰も嫌がらないんで(笑)。それが僕の最後の仕事です。
キムラ:最初の打ち合わせの時に伊勢さんといろいろお話をさせていただいたのですが「ト書きも内容も、実現可能な感じで書かなくても大丈夫ですよ」と伝えました。自由に書いてほしい、と。
そうしたらまぁ何と「800人のジュラル星人」とか書いてあって「どうするんだ?」となりました(笑)。
でも、演出を考えるのも面白いですね。チャージマン研だからこそ、チャージマン研のせいにしてしまう。普段の作り方と全然違っていて、楽しいですよ。
――舞台の作り方、見せ方も全然違いますね。ぐるりと360度観客席で立ち見あり、と。
キムラ:新宿FACEがプロレスも開催する会場ですから、それを活かしたほうが面白いなと。立ち見に関しては、ぷらっと観に来られるような価格の席があってもいいなと思って。2800円で立ち見席で見て、面白いなと思ってくれたら買い足してもいい。
ライブミュージカル演劇ですから、演劇をしっかりと観に来る感覚じゃなくていいんです。楽しみに来る、という感じの企画になったらいいなぁと思います。
――注意やチラシなどにもあるのですが、席を立って移動するシーンもあるんですよね。
キムラ:伊勢さんにも直接言いましたけど、脚本が本当に面白いんです。
途中で話の内容が4つに分かれます。ロビーとか舞台裏とか、4つの場所で同時にお話が進むんですね。お客さんはその4カ所に分かれて移動して、それぞれの箇所の演技を見る。でもその4つのお話は、ちゃんと全部繋がってるんです。
伊勢:これはね、構成会議をしている時にキムラさんが「4方向で同時にやったら面白いんじゃない?」っていう案を出してきて。「……この人は何を言っているんだ?」と(笑)。
無茶振りも大概にせえと思ったんですけれど、同時に面白そうだと思いました。新しい挑戦ですよね。それで何とかひねり出しました。
違う4つのストーリーだけど、例えばこっちで逃げたあいつがあっちで巻き込まれる、みたいな。やる前はどうなるかと思ったんですけど、ABCD全部関係づいてます。
キムラ:本当によくできてます。……大してすごいことは起きないんですけど!(笑)
難しいことは一つも無いんですよ。誰が見ても面白い。演劇人が見ても多分羨ましがるんじゃないかな。くそっ、やりやがって……って。
伊勢:難しい所が一つもない、というのは、原作のチャージマン研の持つ娯楽性ですよね。そこはキムラさんも僕も共通認識は持っていて、同じ方向を向いているんじゃないかな、と思います。
舞台の「鮮度」を大切に。こうでなければいけない、を捨てた自由な舞台
――60数話の中でどの話が舞台化されるのかはSNSでお知らせされているのですが、どのように決められたのでしょう。
伊勢:名作回を丁寧に。それから拡大版アレンジ、最後に完全オリジナルですね。それらを緩急つけながら構成して、ひとつの物語に……物語?(笑)
――脚本を見て、キャストさんは稽古場でどのような反応をされているのでしょうか。
キムラ:本読みの段階では「すごいね」「今までにないね」という反応だったんですが、じゃあ実際に立ってやってみようか、となった時、良い意味で「ほんとにやばいね!!」と(笑)。
このチャージマン研をどう届けようか、と4人の研で本当に考えてくれています。
――キャストインタビューで、キャラ作りや世界観作りにバックボーン一切無しでとお聞きして驚きました。でも、原作も実際そうですし、それでいいんだな、と感じました。
伊勢:そうなんです。まだブラッシュアップしてないので、会話が会話として機能していないところもあるんですが、その「届いてない」感がすごくチャージマン研ぽい。会話が成立してない方が、らしくていい。だから、あんまり厳しく稽古しない方がいいのかもしれない(笑)。
キムラ:とにかく毎回毎日言ってるのが「鮮度」。舞台はなまもの、ってよく言うじゃないですか。僕の中のその意味は、「ライブだから何が起こるか分からない」というよりは、最初の感覚を大事に。
やりすぎると腐ってしまうから、鮮度を保ちながらやるんです。ちょっとしたセリフのニュアンスひとつで「チャージマン研」じゃなくなっちゃうんですよ。
だから、いつもの演出をつけるやり方とは言葉の使い方が違います。下手にやれ、とも違うし「やりすぎだぞ、考えるな!」。もう普段は絶対言えないようなことですね(笑)。
――稽古や演出方法、客席の作り方や4方向同時進行ストーリーなど、今までに無かった舞台だと感じます。
伊勢:あえて新しいことをしているのではなくて「自由」を求めているんですよね。新しいことをやってやるぜ!というよりは。楽しいことやっているのでふらっと見に来てください、という感じです。
キムラ:そう、新しいことをやろうとはしていないんです。
逆にね、今「ちゃんとしすぎてしまっている」ものを一回全部忘れて作ってみる。演劇ってこういうものだ、原作つきの2.5次元舞台ってこういうものだ、っていうのを全部ね。
今は映像でできること、大道具小道具にしても、もともと、昔はどうしていたんだろう? と。スカイロッド(研の乗り物)とかね。
何もマニュアルや教科書が無かったころに戻って作ったらこうなりました、というのが、今回の僕の演出の構成です。
伊勢:「現場を考えずに脚本を書いてくれていい」と言われているので、キムラさんごめん……とつぶやきながら書きました。(「お許しください!」と突っ込みが入る)
キムラ:脚本が本当に面白くて、チャー研の名セリフとかが太字で書いてあったりするんです。キャスト紹介や出だしのト書きの辺りも、もう絶対楽しんで書いてくださったんだなぁと。
伊勢:チャー研らしさって何だろうと思ったら、やっぱりワードチョイスや、行間を飛ばして会話しちゃう空気ですよね。普通に書いたらさらっと流してしまいそうなので、名セリフは太字で書いたりしました。
予算の無いアニメだったので、誤字脱字チェックしないでそのまま作業が流れたんだろうなぁ、という感じを出したかったんですけど、脚本の本編部分でそれを出してしまうと役者が混乱するので、表紙だけ遊びました(笑)。
4人の研、のアイデアの元は? シュールかつ効率的、そして納得の理由
――研を4人にしようというのはどのように決まったのでしょうか。
キムラ:これはプロデューサーさんが原案です。幼稚園のお遊戯会を見て、思いついたそうです。主役を複数人で担当する。でも話はひとつで、演劇として成り立っている。
でもね、その後の演出プランは任されて、もう本当に悩みました。WEBでも注目されて「研が4人? どうやるんだ?」って。僕も「どうやるんだ?」って。打ち合わせの前の日まで「……どうやるんだ」って悩んでました(笑)。
伊勢:そう、前の日に「……伊勢さん、最後まで悩んだんですけど4人の使い方どうすればいいですかね……」「明日からですよ!?」って(笑)。
キムラ:稽古場に入る前に必ず喫茶店で考えてから行くんですけど、そこで「あっ」って思いついたんです。それで今、4人だからできることをやっています。面白いですよ。
この4人、全員個性が違うんです。1人の研としてだから、それぞれの個性を強く出さないようにはしてるんですけど。
伊勢:脚本にもすでにキムラさんの色が加わっているんですけれど、それを見た時に、ああ俺には思いつかない、と思いました。僕たち二人のアイデアが絡まってお客さんにどう届くのだろう、と楽しみにしています。
キムラ:最近「演出家ってどういうものなのかな」と考えるようになりました。
以前は「斬新な方法論」「素敵なミザンス(役者の立ち位置・動きなどの全体配置)」とか。だけど、役者の本質的なものを見抜いて「この子はここが良いからのばしてあげよう」と。
ごくシンプルなことなんじゃないかなって思うようになりました。役者をすごく見て……いや、こんないい話をしたいんじゃなくて(笑)。
「この人がここをやったら面白いんだろうな」っていうのはすごくやっています。例えば、大和くんだったらここを任せよう、とか。髙﨑くんにはこれ、とか。
――キャスト皆さんの個性がそれぞれ本当にいろいろですね。アクションでは、中村誠治郎さんのイメージがあります。
キムラ:アクションもね「殺陣」にはしたくないんですよ。戦うシーンはあるんですけど。綺麗でかっこいいアクションではなく、本当に拳をあててしまってボコボコにやっつけるような(笑)。
昔の特撮って、予算も無いし本当に怪獣をボコボコにやっつけて引きずり回してガケから落としたりしていて。そっちの方が本当にやっつけてる感あるじゃないですか。でも、舞台でそんなアクション見たこと無い。殺陣じゃなくて、本当に「やっつけてる」やつ。
チャー研もそうですよね。45年前のアニメだし、もう無差別にジュラル星人がことごとく死んでいく。
伊勢:そう、ジュラル星人は基本的に無抵抗だから。彼らは自分たちの正義のために地球を支配しようとしているけど、研の目的はただ単に「ジュラル星人を殺す」。
すごくシンプルですよね、子どもの時は何も感じなかったそのデコボコが、大人になって感じる違和感とひっかかりで、それが、チャージマン研が今の時代で面白がられた要因のひとつかなと思っています。
突っ込みどころとしてしっかりまっとうしていきたいなと思います(笑)。
――例えば、舞台を見ながら発声で突っ込んでもいいのでしょうか。
伊勢:大丈夫ですよ。声出して突っ込んでいただいても。
キムラ:スマホもOKです。映像があるんですよね、スマホで弾幕とかWEB参加できます。舞台の前にニコ生で説明があります。ネタバレもどんどんOKです。
伊勢:そう、僕ネタバレ大賛成。なんなら脚本アップしてもいい。
キムラ:いいですよね、「これをどうやるの?」ってなるでしょう。
――発声、スマホOK、本当に自由ですね。ワンドリンクということで、飲みながら見てもいいということでしょうか。
キムラ:そう、かまえて見てほしくないんです。あとスマホと言えば「チャージマンドリーム」。
途中で「チャージタイム」という投票制度があって、1位になった人がチャージマン研になれるんです。しかも名作回のね。
もちろん4人の研の中の誰かかもしれないし、魔王の村上さんかもしれない、キャロンのゆづ(星元裕月)かもしれない。ジュラル星人の中の誰かかもしれない。それをみんなの投票で決めるんです。
アンサンブルって言われている人たちが、その時の自分のアピールで主役になれる、ヒーローになれるのって、舞台のドリームですよね。
――キムラさんや伊勢さんが1位になる可能性もありますよね。
キムラ:やりますよ!
伊勢:頑張ります、実家の母に連絡します。
キムラ:なれるかどうかは置いておいて楽しいですよね。そういうのが詰まった舞台です。
伊勢:自分の持っている既成概念や「枠」をどう外すか、ということに全集中をしています。現場もわいわいと話し合って、これ楽しいね、それやろう! というような雰囲気がそのまま。
キムラ:最初、演出プランを皆に説明する時、すごく緊張しました。
わけの分からない内容を淡々と説明されても「?」となってしまうと思うので、このガタイのでかい人間が目をぎらぎらさせながら「ここはね、こうでね!」と言ってることで雰囲気が伝わるという(笑)。
スタッフさんとも「ここでこうしたいので、こういうのを下さい」といつもの感じではなく「こういうことをしたいんですけれど、何ができます?」と。
音響・照明・衣装・道具……全部にそういうアプローチをしています。そうすると皆さん「キムラさん、こういうのをやってみたい」「こういうのもできる」「じゃあそれにしましょうか」っていうように意見を出し合える。すごく楽しいですね。
何回も言うけど台本がすごく面白いです。今までやってきた演出の方法を全部忘れて、今回用でやってます。お客さんがどう受け止めるか分からないけれど、僕はすごく楽しいし、キャストのみんなも楽しんでくれています。
伊勢:それはお客さんにも届きますよね。公式SNSもすごく楽しそうでしょう。みんなが「この作品が楽しいんだよ」って本気で楽しんでいるのは伝わると思います。
原作つきの舞台は「大丈夫なの?」と心配される方もいらっしゃいますが、こちらが全面的に楽しんでいればそれだけで安心してくれたりします。今回は、みんなが前のめりにやっているのが伝わっているんじゃないかなと思います。
鮮度を味わいに初日から楽しんで欲しい。目指すのは、気軽に立ち寄れる娯楽
キムラ:公演期間も少し長めなんですけれど、これは最初から広めたいですね。しかもね、何回見ても疲れないんですよ。初日から「やべえ行こうぜ!」ってなって欲しい。
ちょうどハロウィンの時期ですしね。へたしたらジュラル星人が新宿FACEを出て建物の下にいるかもしれない。
――時期も時期ですし、魔王が外に出ていてもいいですね。
伊勢:全然いいですよね。職務質問で開演に間に合わないとかでなければ!「あいついねえな」ってなっちゃう。
キムラ:SNSアップされたと思ったら「職質なう」とかね(笑)。
――お話をしながらもいろいろとアイデアが出てきますし、演出プランもこれからどんどん変わっていきそうですね。
伊勢:そうですね、現場の鮮度でどんどん変わっていくし、台本どおりにやらない方が面白い場合もあるし、困ったときは随時相談してください、と。
……そうだ、たこ焼きを持って行く以外にもまだ仕事あった(笑)。
現場は、もう完全にキムラさんを信頼して預けています。あとは援護射撃としてテキストを送ったりして、最後まで立ち会おうかなと思っています。
キムラ:音楽もすごいんですよね、手島いさむさん。大人がちゃんとふざけていい曲を作って下さっている。歌唱指導はエツ子ちゃん(新良エツ子)、振付は梅棒の遠山晶司。すごい制作陣でしょう。ほんとに毎日稽古が楽しい。ノーストレスです。
――最後に、ファンへメッセージをお願いします。
伊勢:何も構えることなく、空っぽの状態で来てください。するする入っていくと思います。あと、できれば10月中に来てください。(「1日しか無いですよ!」と突っ込みが入る)
キムラ:そう、鮮度が一番いいのが初日の31日。ハロウィンですしね。
伊勢:ハロウィンぽいのがいっぱいいます。
キムラ:キャストそれぞれのファンの皆さんも、最初の目的は一人かもしれないけれど、一気にチャージマン研が好きになる、気になる、劇場を出た瞬間にね。もちろん原作を好きな人も見て欲しいです。
かまえないで来てほしいです。気張らず、家に帰って缶ビールをプシュッと開けてYouTubeを見るような気軽さで「あはは、なんだこりゃあ」って。
伊勢:そう、軽く娯楽を見る感じで気軽に。
LIVEミュージカル演劇『チャージマン研!』は、2019年10月31日(木)、新宿FACEにて上演される。個性的な実力派たちが真剣に、全力で作りあげるこの舞台。だからこそ気軽にふらりと立ち寄り、楽しんでほしい。
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