インタビュー

橋本祥平&梅津瑞樹「一緒に熱く青春しましょう!」 ミュージカル「伝説のリトルバスケットボール団」本公演に向けて

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2023年7月27日(木)東京・タワーホール船堀にて、ミュージカル「伝説のリトルバスケットボール団」のプレビュー公演が上演された。

学校でいじめられ、友だちがいなくて居場所がない⾼校⽣のスヒョン。ある日絶望して自殺を図るが、一命をとりとめたことで、ある事情で学校に居ついている幽霊たちの姿が見えるようになる。本作は、幽霊たちに背中を押されてバスケットボールを始めたスヒョンが、自信と勇気を取り戻していく物語だ。

生バンドの演奏で音楽とともに紡いでいく物語は、涙なしでは観られない感動的な舞台作品となり、SNSでは「1日限りのプレビュー公演ではもったいない」との声が数多く上がった。

2.5ジゲン!!では、スヒョン役の橋本祥平とダイン役の梅津瑞樹にインタビューを実施。プレビュー公演を終えた感想と来年に控えている本公演に向けての意気込みを聞いた。

達成感を感じて終えられたプレビュー公演

――1日限りのプレビュー公演を終えた感想からお聞かせください。

橋本:今回の公演では、濃い稽古時間を過ごさせていただきました。少人数だからこそやるべきことがいっぱいあるし、出演者はみんな舞台袖にいるよりも舞台上にいる時間のほうが遥かに多い作品でした。今思えば大変だったのですが、それ以上に達成感がある公演でした。

1日だけの公演ではもったいないなと思いつつも、舞台の初日ってほどよい緊張感の中で「やってやるぞ」という熱量やいろいろな想いが重なったゆえの達成感があるんです。その状態で、いいイメージのまま終われたなって感じています。

梅津:ただただ気持ちよく終えられたというか…(笑)。普段の公演は2週間近くあるものもあり、世間の反応はどうなのかとか、自分自身もっとこうしたいなとか、良くも悪くも変化していくものです。でも今回は1回限りだったので、潔さの中で演じられた感覚があります。「ああー気持ち良かった!」と感じましたね。

―ゲネプロを取材させていただいたのですが、皆さんの熱量がものすごく伝わってきて、涙がこぼれました。橋本さんは主人公のスヒョン、梅津さんはダインとその他いろいろな役を演じましたが、改めて役への想いをお聞かせください。

橋本:僕はありがたいことに毎日楽しく過ごさせていただいて、今のところ「死」とは無縁な人生を送っています。だからこそ苦しい思いをしている方たちの気持ちにどこまで近づけるんだろう…と思い、それが課題だと思っていました。

正直、スヒョンを演じていてつらかったです。芝居とはいえ「いじめられるってこんなに孤独なんだ」とか、「頼れる人がいなくてつらい」と思っていました。でも幽霊の3人(ダイン:梅津瑞樹、スンウ:糸川耀士郎、ジフン:吉高志音)が心の支えになりましたね。

そしてスヒョンを演じていて、彼の魅力はたくさんあることが分かったんです。だからこそ、いい子なのに何がいじめの原因になってしまうんだろう、と。向き合いにくい問題ではあるのですが、そこを一歩踏み込んで役に対して真摯に向き合っていました。

――梅津さんは、幽霊のダインと、現実に生きている生徒の役を演じられました。違うタイプの2人でしたが、演じていていかがでしたか?

梅津:(橋本)祥平と共演することが最近多いんですけど、まさに祥平が弱ってるときにちょっと助ける…みたいな役が結構多いんです。ダインもそういう人物でした。

ダインという役を構築するにあたって、作品全体のバランスを見て決めようと思っていました。韓国で上演されたバージョンを見ましたが、言葉がわからないので、ダインがどういうふうに表現されているのか、細かいところまでは分からなかったんです。

最初はみんなどういう役作りをするのかなと見ていたのですが、意外に遊びの幅が増やせるのではないかと感じました。幽霊を演じる3人に関していえば、他の生徒などを演じてもいたので、バランスがうまく作れそうだなと。

ただ当初、稽古場の雰囲気がかためだったんです(笑)。僕も含め、1人ひとりが自分から(キャラクターを演じる上で)遊びにいったり、空気感を壊して何かを仕掛けていったりするようなタイプじゃなかったんですね。だから、キャストの中で年齢が上だったということもあって、実験的に遊んでみようと思い、役作りをしていったのがダインです。

――今「遊び」という言葉がありましたけれど、ダインは数学が得意なキャラクターで、数学の授業の時間、橋本さんが演じるスヒョンを手助けするシーンがとても面白くて印象的でした。あれも遊びといいますか、アドリブの部分があったのですか?

梅津:作品を通して、ところどころアドリブっぽく見えた箇所があったと思いますが、実はアドリブは一切やっていないんですよ。

ただ稽古場で「こういうのはどうだろう」と出した案を、演出のTETSUHARUさんが「それ面白いね」「それいいね」と拾っていってくれた感じです。「遊び」というと自由に演じていると解釈されるかもしれないですけれど、そんなことはあまりなくて…。稽古場でアイデアを出していくという意味の「遊び」ということですね。

でもキャストはみんな「こういうのはどうだろう」とTETSUHARUさんに対してそれぞれ案を出し合いました。TETSUHARUさんもすごく自由というか、遊びの部分を大事にしている方なので「提案したものがやり過ぎだったら減らせばいい。減らすことはできるから、足りないよりはやりすぎのほうがやりやすい」とおっしゃってくださって。そういうこともあって、最初からエンジン全開で作っていこう、現場にいよう、と思いました。

韓国から来訪したプロデューサーがプレビュー公演を観劇 どんな言葉を交わした?

――先ほど役作りをする上で、韓国で上演された公演映像をご覧になったというお話がありました。今回のプレビュー公演を韓国キャストが観劇されたそうですが、何かお話はされましたか?

橋本:通訳の方を通して、少しお話しをさせていただきました。韓国ってエンタメがすごいじゃないですか。実際に公演映像を拝見して歌も踊りもピカイチだと思ったし、もちろん芝居もすごいので、今回の公演をどう思うんだろう…とすごく不安な部分がありました。

でも、「歌も踊りも素晴らしくて、とにかく芝居がすごく良かった」とおっしゃってくださいました。

――言葉は分からなくても、皆さんの熱い演技が通じたんですね。

梅津:僕は高校のときに韓国でお芝居をしたことがあったんです。韓国の方が日本に来て演劇をして、逆に僕たちが韓国へ行って演劇をする日韓交流だったのですが、言葉がまったく分からないはずなのに、笑ってほしいところで韓国の方が笑ってくれるんですよ。

「どうして笑ってくれるんだろう」と当時すごく不思議でしたが、きっと言葉が分からなくても何か伝わるものがあったのでしょうね。

橋本:僕らが韓国で上演した「伝説のリトルバスケットボール団」を観たとき、言葉は分からなくても、何が起きてるのかちゃんと分かりましたからね。だから今回のプレビュー公演も僕たちが伝えたいと思っていたことが、しっかり届いたのかな…って思います。でも僕は結構疑り深いんで「本当にそう思ってるのな?」と思っちゃいましたけど(笑)。

梅津:そうだよね(笑)。「すごい良かったです~!」って言っておきながら、劇場を出たら「最悪だった~!」って言ってるんじゃないのって(笑)。

橋本:ほめてくださったことは、ストレートに受け入れればいいんですけどね(笑)。

――そこが橋本さんの真面目なところでもありますよね。

橋本:いやあ、こういうところは直したいですよね(笑)。

――韓国から来訪したプロデューサー陣は本心から「素晴らしかった」とおっしゃっていたと思いますが、とりあえず、私がすごく感動したという意見は信じてください!

橋本:そうですね! ありがとうございます。

本公演では、120%のものをお見せしたい

――2024年の2月~3月、東京と大阪で本公演が決定しています。今の段階で課題にしてることはありますか?

梅津:(間髪いれずに)歌ですね。ミュージカルですから、歌のクオリティーを高めたいです。芝居を歌にどうやって乗せていくのかというのは、自分でもまだ理解しきれていない部分が多々あります。もっとうまく表現できるようになれればいいなと思います。果たしてどうなるやら…。

――とても素敵な曲ばかりでしたが、難しい曲が多かったですよね。

梅津:すごくおしゃれなメロディーばかりでしたからね。今回観劇された韓国チームの中に作曲された方もいらっしゃっていて、「曲が難しかったんじゃないですか」と心配してくださいました。韓国の方でも難しいと感じる曲なんだ…だと実感しました。

何より、踊りながら歌うのが大変ですよね。踊らずに歌えば上手く歌うことはできるんです。ちゃんとダンスと歌が両立できるクオリティーを作っていかなければと思いました。

――橋本さんは本公演に向けて目指すものは何でしょうか?

橋本:もちろん僕も歌をもっと頑張りたいなと思いますし、バスケ未経験者なので、プレビュー公演よりはバスケが上手くなっていないと、観に来たお客さんが納得してくれないだろうと思います。

何よりも本公演は、劇場の大きさが変わるので、見せ方が変わっていくような気がします。本公演ではアプローチが変わるかもしれませんし、その調節をしなきゃいけないと思います。

そして、あとは体力作りですね。2.5次元舞台って、激しく動きながら歌う作品が多いじゃないですか。それをやっているのは僕らの強みだし、演じている意味だと思っています。だからこそ、もっといける! いかないと! という思いがあります。

――バスケの話が出ましたけど、「本当に未経験ですか?」というぐらい、皆さんお上手でした。ここまでしっかりとバスケットをするシーンを見せてくださるんだ…とも思いました。

橋本:そう見えていらっしゃったなら良かったです。バスケの事前稽古もありましたし…。(梅津のほうを見て)本当は経験者でしょ?

梅津:僕なんて小学生の時にミニバスケットをやって、中学生でもバスケットボール部にちょっといたけど、演劇部が忙しくなっちゃったので辞めてしまったし…。ほぼやっていないようなもんですよ。

橋本:でも大きいよ。その差は。

梅津:舞台の稽古が終わって早く帰ればいいのに、みんなで残ってシュート練習とかやってたよね。

――まじめですね!

橋本:実は楽しいんですよね、それが。

梅津:でもふたを開けたら、そんなシーンはどこにもなかったんですけどね(笑)。

――そこまでバスケットの練習をしたのなら、本公演ではもっとバスケのシーンが増えるかもしれないですね。

梅津:確かに! でも実際にそうなるとやっぱり怖いですね(笑)。

橋本:今回のプレビュー公演で、改めて良さん(ジョンウ役:平野良)はすごいなあと思いましたよ。歌を歌っている中でダンクシュートを決めるシーンがあるんですけど、みんなが注目していて恐らく生唾ごっくんとなっている中、シュートを決めるって相当なプレッシャーだったと思います。

今回は1日だけでしたけど、公演期間が長ければ、どこか1公演はアクシデントが起きると思いますし。稽古でもボールを使うシーンは、何回かボールが客席へ飛んでいってしまいましたから(笑)。

――最後に、プレビュー公演を観た方はもちろんのこと、観ることができなかった方へ向けて、本公演に向けて、意気込みをお聞かせください。

橋本:プレビュー公演をやったことで、この作品の魅力が来てくださった方にきっと伝わったと思います。実際にSNSで感想を書いてくださっている方も多くいて、拝見させていただきました。そうした感想が拡散して「やっぱり見ればよかったな」という声もちらほらと見ました。

感想の中で「プレビュー公演じゃないクオリティーだった」というのがありました。その時に改めて「プレビュー公演って何なんだろう?」と考えましたが、僕らは本公演と同じように演じていましたし、プレビュー公演を終えてハードルが上がった分、本公演ではそれを下回らないようにしっかりと稽古を頑張って、より良い作品にしたいと思います。ぜひ劇場に観に来てほしいです。

梅津:確かにプレビュー公演って何なんでしょうね。 実際に今回の公演は、稽古期間が1カ月ちょっとあって、通常の舞台と同じくらいの稽古日数だったんです。プレビュー公演と言いつつも、あれは本公演だったのではないかと思うんですよね(笑)。先んじてお見せしたという意味で「プレビュー」だったのかなって。

だからすでに本公演と同じクオリティーを見せたのなら、来年はどうなるんだってことになります。1日限りとはいえ、すでに100%のものを見せているわけですから。先ほどから「進化する」と言っていますが、そうなると100%を超えた120%のものを見せなければいけないので、どうしようかなと現在模索中です。

そして僕はすごくひねくれた性格なのですが…

橋本:僕も!(笑)

梅津:(笑)。この歳になると、ストレートな友情物語が妙に胸に刺さるんですよ。この作品は、ものすごいストレートな球を放ってくる舞台で、それを素直に楽しめます。まっすぐに球を投げることって実は勇気がいることだと思いますから、だからこそシンプルに伝わってくるものがあるんだなって改めて認識しました。

皆さんには、そこを素直に楽しんでいただきたいです。来年の本公演は寒い冬の時期となりますが、一緒に熱く青春をしましょう!

取材・文:咲田真菜/撮影:MANAMI/スタイリスト:小林洋治郎(Yolken)/ヘアメイク・佐々木渚香

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公演情報

タイトル

ミュージカル「伝説のリトルバスケットボール団」

公演期間・劇場

プレビュー公演
2023年7月27日(木)
東京・タワーホール船堀

本公演
2024年2月15日(木)~25日(日)
東京・草月ホール

2024年3月2日(土)、3日(日)
大阪・松下IMPホール

パク・ヘリム

作曲

ファン・イェスル

オリジナル・プロダクション

アンサン文化財団、IM Culture

演出・振付

TETSUHARU

⽇本語上演台本・訳詞

私オム

出演

スヒョン役:橋本祥平、ダイン役:梅津瑞樹、スンウ役:糸川耀士郎、ジフン役:吉⾼志⾳
サンテ役:太⽥将熙、ジョンウ役:平野良

<バンドメンバー>
キーボードコンダクター:⽥中葵、ギター:朝⽥英之、ベース:澤⽥将弘、ドラム:足立浩

主催

株式会社FAB、サンライズプロモーション大阪

公式HP

http://littlebasketball.jp/

公式X(旧Twitter)

@_littlebasket

(C)リトルバスケットボール団 製作委員会

WRITER