舞台「HELI-X III〜レディ・スピランセス〜」が6月3日(金)に東京・サンシャイン劇場で開幕する。毛利亘宏脚本×西森英行脚色・演出によるオリジナルシリーズ作品の第3弾で、2020年12月に第1弾が、2021年10月に第二弾が上演された。
物語の舞台は、全世界を巻き込んだ第三次世界大戦後の極東の島国「大和」。性別選択技術「TRANS(トランス)」を受けた者の中から生まれた「HELI-X」と呼ばれる特殊能力者たちの苦悩や葛藤を描く。
2.5ジゲン!!では、第1弾からダブル主演を務める玉城裕規と菊池修司、今作から参加する彩凪翔に鼎談取材を実施。今作の見どころ、お互いの印象などの他、コロナ禍で舞台に立つ思いについても話を聞いた。
――まずは皆さんそれぞれの印象から伺っていきます。玉城さんと菊池さんは、初演からお互いの印象は変わってきましたか?
玉城裕規(ゼロ役):修ちゃんは子どもっぽくなりましたね(笑)。初めて会った時は寡黙で淡々とした印象だったのに、だんだん柔らかくなってきています。
菊池修司(アガタ タカヨシ役):素が出てきたんです(笑)。第1弾では、「抜てきをしていただいた!」とものすごく気合が入ってしまっていたんですよね。第2弾では、玉ちゃんに支えられながらも、お互いの役作りのためにたくさんディスカッションできるようになりました。
僕からの玉ちゃんの印象は、もうずっと“不動の玉ちゃん”です。優しさとお芝居で引っ張っていってくれる強さを持っている人です。でも、玉ちゃんと一緒にこの作品を背負っている身としては、いつまでも引っ張っていってもらうだけじゃダメだと思っています。玉ちゃんの背中を見ながら、一緒に舞台「HELI-X」を育てていきたいです。
――お2人から見た、彩凪さんの印象はいかがですか?
玉城:彩凪さんとは、3月5日にあったトークミーティングで初めてお会いしました。イベントであまりお話できなかったこともあって「ビジュアルがものすごくおきれいだし、近寄りがたいのかな…」と思っていたんです。でも、さっき僕がメイクしている時に修ちゃんとお話されているのを聞いていたら、想像していたよりも柔らかい方で、ギャップがあって素敵だなと感じました。
菊池:第3弾からのご参加なので、イベントでもし居心地の悪い思いをさせてしまったら…と心配していたのですが、とても気さくに輪に入ってきてくださいました。今日も、僕がするべきなのに彩凪さんからお話をたくさん振ってくださったりして。あと、すごく顔が小さい! と、撮影している時に思いました(笑)。
彩凪翔(セーレ役):お2人を初めて拝見したのは舞台でお芝居をされているお姿だったので、今こうして一緒にいさせていただいているのは、不思議な感覚ですね。イベント前に、梅ちゃん(天真みちる/フルカス役)と「あの仲のいいカンパニーに入っていけるかな?」なんて話をしていたのですが、皆さん温かく迎え入れてくださって本当に安心しました。
――彩凪さんは、天真みちるさんとご一緒に今作からのご参加になりますね。初めて触れる「HELI-X」の世界観についての印象も教えてください。
彩凪:梅ちゃんとは宝塚音楽学校の同期ではありますが、音楽学校を卒業してからは別々の組にいたので久しぶりの共演になります。
第1弾は映像で拝見し、第2弾は千秋楽を客席で観させていただいて、第3弾をとても楽しみにしているファンの皆さまのお気持ちを肌で感じることができました。作品に触れてすぐの時は、頭の中で内容を整理するのがとても大変でした(笑)。でも、それぞれの人物が色々な過去を抱えているのが分かってくると、能力の秘密や台詞の裏側も考えながら観られるようになりました。
多くのファンの皆さまからとても期待されている作品なのだ、とプレッシャーもありますが、梅ちゃんと一緒にこの「HELI-X」の世界観に飛び込んでいけるのをドキドキしながら楽しみにしています。
玉城:前作ではDr.皇(演:田辺幸太郎)とオシリス(演:平野良)が加わったことによって作品の色が変わりましたから、お2人の参加で今作も色がまた変わると思います。トークイベントで発表されたように、衣装も今までよりも華やかな見た目になっていますしね。どうなっていくのか楽しみです。
――螺旋機関のカンザキ大佐を演じられる久世星佳さんは、彩凪さんにとっては宝塚歌劇団の大先輩でいらっしゃいますね。
彩凪:本当に緊張します、大先輩なので!
玉城:久世さんは、言葉は少なくとも大事なことを的確に伝えてくださるので、とても頼りになる方です。しかも、“はっきり”と“オブラートに包んで”のちょうどいいバランスを判断して伝えてくださるんですよね。
菊池:久世さんは、いつも僕たちを温かく見守ってくださっています。僕たちにとっても大先輩であり、お母さんのような感覚です。第2弾の千秋楽の後に「毎回、袖から修司くんの顔を見ていたよ」とメッセージを送ってくださって、久世さんのお気持ちの温かさに涙が出そうになりました。本当に嬉しくて、第3弾でも成長した姿を見せられるように頑張ります、とお返事しました。
***
――第1弾の公演は、コロナ禍まっただ中の2020年でした。まだ情勢は落ち着きませんが、第3弾を迎える今、ファンの前に立つお気持ちをお聞かせください
菊池:止めちゃいけないな、と思っています。エンターテインメントに関わる全ての方たちと共に、負けずに盛り上げていきたいです。
この情勢の中で舞台「HELI-X」が、第1弾、第2弾と中止になることなく駆け抜けられたことは、本当にありがたく、奇跡だなと思っています。僕自身も新型コロナウイルスの怖さは身に染みて感じていますし、周りで、公演が中止や延期になったという話を聞くたびに、この作品を届けたい気持ちが強くなっていくのを感じました。
特に第3弾である今回は、アガタとゼロの関係性に一つの答えが出る集大成としての意味もあるので、今まで以上に“届けたい!”という思いが強いです。
玉城:修ちゃんの言うとおり、第1弾、第2弾ともに何事もなく千秋楽を迎えられたからこそ今があります。もしも途中で何かあって延期または中止になっていたとしたら、第2弾は今になっていたかもしれません。これまで作品を無事に皆さまにお届けできたのは、本当に幸せなことです。
第1弾の公演の時、さまざまなことを考えました。コロナ禍におけるエンターテインメントの意味とは? この情勢の中、劇場に足を運んでいただくリスクをお客さまに負わせていいのか…? そんなことを考えて、舞台に立つのが恐ろしくなったこともありました。でも、エンタメがなくなると、人の心は活性化されずに暗くなっていってしまうと思うんです。
この舞台「HELI-X」は、重めの作品ではありますが、その中にある希望を大事にしていきたいと思っていますし、皆さまにもそれを感じ取っていただけたら嬉しいです。
彩凪:コロナ禍になって、様々なことを自分に問いただしました。エンターテインメントは生きていく上で絶対に必要なのか? とよく言われていましたし、こんな時に自分は何ができるのだろうと…。そして、私は舞台を通してお客さまにメッセージを伝えることができる、と考えました。
私も、舞台を観るのがとても好きなんです。舞台を見ると、たくさんのものがもらえて、元気が出て前向きな気持ちになれます。舞台を観てくださるお客さまも、私と同じ気持ちでいらっしゃると信じています。この舞台が、何かのきっかけになれたらとても嬉しいです。
――今作の見どころについて教えてください。(※第2弾までのネタバレ有り)
菊池:第2弾は、アガタがカイだったことが判明したりと衝撃の展開がたくさんありましたよね。今回も、めまぐるしく話が展開していく中で、今まで謎だった部分がどんどん明かされていきます。頂いたプロットを読んでいて、一ファンとしてすごくワクワクしました。
僕はいつも、自分の中で目標やテーマを決めて作品に臨んでいます。今回は、アガタとゼロの関係性においても様々な面でも、“集大成”と呼べるものをお見せしたいです。女性から男性になったゼロの気持ちを、アガタでありカイである僕がどう受け止めるのか、2人がどう気持ちに折り合いをつけるのか…僕はそこが大きな見どころだと思っています。
ゼロとアガタ、僕たちバディ2人の関係性はもちろん、彩凪さんのセーレやみちるさんのフルカスが背負っているものや葛藤など、楽しみにしていてほしいところが盛りだくさんです。
玉城:新たな勢力が出てくるので、今回も楽しいことになります。第2弾で僕が演じるゼロが螺旋機関をすぐに抜けてしまったように、あちこちで人が抜けたり加入したりします。
話が進むにつれて隠れていた設定が見えてきたので、今回はさらに様々なことを知った上でゼロという人物として生きることになり、心の持ち方がこれまでとは変わってきます。第1弾では、僕が演じるゼロが精神的にとてもつらい役目を背負っていました。第2弾ではそれが修ちゃん演じるアガタに変わったので、今回はお互いにつらくなる展開かもしれませんね(笑)。
彩凪:私は今作から参加なのでまだ役作りには入れていませんが、梅ちゃん演じるフルカスとはニコイチになっていくと思うので、音楽学校時代からの関係性も生かしていきたいですね。セーレがどういう能力を持っているのか、どんなものを背負った人物なのか、ぜひ楽しみにしていてください。
――最後に、ファンの皆さんにメッセージをお願いします。
彩凪:菊池さんと玉城さん、お2人が中心となって積み上げてこられた舞台「HELI-X」という作品の中に梅ちゃんと2人で新たに入っていくので、頑張らなければいけないと改めて感じています。真摯にセーレという役と向き合い、生き抜いていきます。
菊池:この作品が誰かにとって大事な作品となるよう、僕らも全力で演じます。第3弾を楽しみにしてくださっている方はもちろん、これまで本作を見たことがない人にも、できるだけ多くの方にお届けできたら嬉しいです。
玉城:第3弾を迎えられたのは、応援してくださる皆さまのおかげです。そのお気持ちに応えるために、精いっぱいこの作品で生きていきます。
この作品は、全員が一つの大きなメッセージを伝えると言うよりは、観た人がそれぞれのキャラクターの中に共感する点や刺さるものを見出す作品だと思うんです。観た人が何かしら明日への希望を見出してくれるように、キャストとスタッフ一同全力で努めます。楽しみにしていただけたらと思います。
取材・文:広瀬有希/撮影:梁瀬玉実
広告
広告