舞台「ROOKIES」が11月18日(木)、東京・シアター1010で幕を開ける。
原作は、「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載された森田まさのりの漫画『ROOKIES』。かつては強豪だったものの不祥事により不良のたまり場となっていた二子玉川学園高校(ニコガク)野球部を舞台に、新任教師・川藤幸一と野球部員たちの青春を描いた本作は、コミックス累計発行部数2100万部を突破し、ドラマ化や映画化もされた。
2.5ジゲン!!では、今作でニコガク野球部員・安仁屋恵壹役の宇野結也と御子柴徹役の小西成弥に対談取材を実施。稽古や野球練習のエピソード、それぞれのキャラクターの魅力、自身にとって転機となった出会いや大事にしている言葉などを聞いた。
まさに“ニコガク”だった野球練習
−−出演が決まった時のお気持ちを教えてください
宇野結也(安仁屋恵壹 役):「ROOKIES」は、僕の世代では知らない人がいないくらいです。オーディションがあると聞いて、二つ返事で「受けさせてください」とお願いしました。安仁屋をイメージしていただきやすいように髪が長い状態の写真を送って「運動は好きです! 動けます!」とすごくアピールをして(笑)。なので受かった時は本当に嬉しかったです。
小西成弥(御子柴徹 役):青春時代に読んでいた作品の御子柴という素敵なキャラクターを、役者になって演じられるのがとても嬉しいです。僕自身野球がとても好きなので、野球の作品に携われることも嬉しくてわくわくしています。
−−それぞれが演じるキャラクターの好きなところはどこですか?
宇野:安仁屋は、仲間思いなところが素敵だなと思っています。川藤(演:根本正勝)先生と出会って変わっていくけれど、どうして最後まで素直になれなかったのかなと考えると、仲間といる自分やその時間を大事にしていたからなのかなと。それから、いろいろな所にアンテナを張って仲間たちの気持ちを繊細に汲み取っている人だと感じています。
原作の漫画を読んでいた当時は「熱くてクールでカッコいいな!」と思っていたんですけど、年を重ねて、改めて役者として作品に触れて、安仁屋の新しい魅力を発見できたように思います。
小西:御子柴の好きなところは本当にたくさんあります。他の野球部員たちが本心では野球をやりたいのに素直になれない中、御子柴は川藤先生に心打たれて自分の気持ちにすぐに素直になって、諦めかけた野球をまたやり始める。周りに対して強く出られないこともあるけれど、野球や夢のことになると、思っていることをはっきり言う強さと熱い気持ちを持っています。
素直なところが魅力的な裏表のない人物なので、まっすぐそのまま演じようと思っています。
宇野:キャスト発表でみんなの名前を聞いたとき、御子柴役が成弥だと知って「もう成功!」って思いました。僕、御子柴をもともと好きなのに加えて稽古で成弥が本当にいい芝居をするので、「いいなぁ…」って稽古中に何度も泣いているんです(笑)。これから本番まで稽古を重ねて、成弥がさらに素敵に御子柴を演じてくれると感じています。ハードル上げちゃった!
小西:(笑)。
−−御子柴が野球部のキャプテンですが、小西さんのカンパニーでの立ち位置はいかがでしょうか
宇野:成弥は、「みんな来いよ!」と強く引っ張って行く感じではなく、俯瞰で全体を見てくれています。さまざまな物事に対して背中で見せてくれるタイプですね。お芝居が安定していて、野球経験者でもある。安心感もあるし、御子柴が成弥で本当によかったです。
小西:僕はキャプテン役ではありますけれど、「安仁屋についていく」という気持ちでいます。実は、稽古前は「大丈夫かな、みんなでやっていけるかな…」と不安な気持ちを少し持っていたんです。でもいざ稽古が始まってみると、初日から結也くんが“安仁屋”として存在してくれていたんです。それを見て、安心して信頼できると思いました。
宇野:成弥でも不安に思ったり迷うことってあるの?
小西:あるよ!(笑) 舞台って1人じゃなくてみんなでやるものだから、チームワークが大事だし稽古前は「やれるかな…」と少し不安になることはやっぱりあります。でも今回は結也くんと新庄役の友常勇気くんが一緒になって引っ張ってくれているので、みんなお芝居がやりやすいのではないかな、と思っています。僕も、安仁屋が結也くんで良かったです。
−−安仁屋と御子柴は、ニコガクで野球を始める経緯などさまざまな面で対比的な存在ですよね。
宇野:だからこそ、安仁屋は御子柴を信頼しているんだろうなと思います。2人がお互いに信頼し合っているからこそ出せるシーンがあって、僕はそこがすごく好きです。
小西:舞台後半のとあるシーンで、みんながわちゃわちゃしている中で安仁屋と目が合うんですけれど、そこはすごく心に残っています。でもそこだけではなくて、例えば一つのプレイが出来上がる前と後で変わった空気も感じ取ってもらえたら嬉しいですし、関係や感情の変化など細かなところにまで注目してほしいと思っています。
−−脚本を初めて読んだときの感想を教えてください。
宇野:脚本・演出の伊勢直弘さんが、舞台化するにはここだというシーンを原作からピックアップして脚本を書いてくださっています。初めて読んだときは、原作を思い出しながら「ここはこういう風になるんだ!」と思いました。
小西:物語を舞台の尺に収めるためには、原作にある全てのシーンは再現できません。だから脚本にある一つ一つの物事を丁寧に表現していかないと、あっさりとしたものになってしまう可能性があります。
テンポよく進めていても、その中でもドラマチックなシーンや心が動くドラマのあるシーンはちゃんと出していかないと、この作品の根幹である部分が表現できないと思うんです。シーンと言葉の積み重ねをしながら丁寧に作っているところです。
宇野:稽古に入ってからは、チームワークがすごく大事なんだなと感じています。それから、試合がどう展開していくのかは脚本を読んだだけでは分からなかったんですが、伊勢さんが面白い演出を考えてくださっているんですよ。台本が付箋だらけになっています(笑)。
どこから球が飛んできて、打った球がどこに飛んでいくのか、どのくらいの距離なのか…そういうものも、一球ずつ、野球経験者である成弥や元甲子園球児(本川翔太)に意見を聞きながら、みんなで共有して作り上げている最中です。ポジションも、例えば「ピッチャーはこの位置」とは決まっていませんし、みんなの立ち位置がが目まぐるしく変わります。これが仕上がればものすごく臨場感のあるものをお届けできると思います。
−−先日、皆さんで実際に野球の練習をされていましたね。
小西:盛り上がりましたね! 野球が初めての人も多いのでどうなるのかと思ったんですけれど、ヒットじゃなくてボテボテのゴロでもみんな「うわーっ!」ってなって(笑)。その雰囲気がニコガクに通じるものがあって、舞台で出したいものはまさにこれだと思いました。
宇野:めちゃくちゃ楽しかったです。今岡役の佐川大樹くんが原作通りにアンダースローでマジで投げてきて、しかもストライク入ったんですよ!(笑)
小西・宇野:「アンダースローッ! 入ったー!」って(笑)。
宇野:セリフそのまんまでした(笑)。それで聞いてみたら、バッティングセンターで投球練習してから来たんですって。真面目ですね。
小西:結也くんも、ピッチャー役だからマウンドから投げたんですよ。そうしたら、野球の経験はないって言っていたのにストライクはバンバン入るし、球も速いし、「すげえな」って(笑)。普通は投げられないし、ストライクなんて入らないのに。
宇野:ピッチャーって本当にメンタル勝負なポジションだなと思いました。入らない時は本当に入らない…。でもそんな時、バックから「うおおい!」って声をかけてもらうと、よっしゃ頑張ろう! という気持ちになるんですよね。それが実際に学べたし、楽しくて本当にいい練習でした。
小西:稽古場だけでは掴めない空気感や声の出し方が分かったんじゃないかなと思います。
宇野:本当に楽しかったです。もう一回やりたいね、ってみんなで言っています。
大事にしている言葉は?
−−安仁屋と御子柴にとって、川藤先生との出会いが転機になりました。お二人が大事にしている言葉や人生の転機を教えてください。
宇野:祖母に言われた「吐いた言葉は元には戻せない」という言葉を大事にしています。一度発した言葉は戻ってこないから、責任の持てる言葉を使うようにしなさいと。
出会いの面では、つい最近舞台をご一緒した平野良くんとの出会いですね。良くんのおかげで、僕の中にある芝居観のステージが上がったと感じています。作品に対しての考え方やさまざまな部分ですごく通じるものがあるんです。一緒に帰りながら話をしたり、電話で話す中で、自分が引っかかっていることやこれからぶつかるかもしれない壁に対して立ち向かっていけるヒントをたくさんもらいました。
最近改めて、たくさんの人や作品との出会いが人生を豊かにしてくれると感じているんです。例えば舞台「ROOKIES」でも、実際に役者として演じてみて、読者として読んでいた時には分からなかった発見ができたり新しい魅力に気付けたりしています。こういう素敵な出会いがあるからこの仕事は楽しいし、やめられないですね。
小西:僕は、母の存在と母にもらった言葉が転機になりました。大阪で高校に通っているときにある作品のオーディションに受かったのですが、それに出るとなると上京しなければいけなくなって…。でもそうすると通っている高校を辞めることになるので、すごく迷ったんです。
当時高校1年生でしたし、自分一人では決められませんでした。進学校だったこともあって、親からしてみればこのまま大学に進んで安定感のある仕事に就いてほしいと考えているかもしれないとも考えました。でも母は「好きなことをやりなさい」と背中を押してくれたんです。
それから実は僕、一つのことを長く続けられなかったことにコンプレックスがあったんです。だから、小・中・高とずっと野球を続けている人たちを羨ましいと思う気持ちもありました。でも今、役者の仕事に打ち込んで11年続けていられています。
あの時にもし「不安定な仕事なんでしょう?」とか「大丈夫なの? うまくいかないかもしれないよ」と言われていたら、上京はせずにこの仕事もしていなかったと思います。役者の仕事に出会えて長く続けられているのは、背中を押してくれた親のおかげだなと思っています。
−−最後に、舞台「ROOKIES」の見どころとメッセージをお願いします。
小西:大人になってから、夢に向かって突き進んでいる人を見るとその姿に胸を打たれると思うんです。夢を持っている人ってすごいなと。「ROOKIES」は、大人になると忘れそうになる夢を思い起こさせてくれる作品です。
不良だった人や野球を諦めてしまった人が野球を始めたり、川藤先生に影響を受けてさまざまな決断をしたりします。人が変化をする、そのはざまの部分がこの舞台の見どころであり、心が動くところじゃないかと思います。
川藤先生の明るさと元気な姿は、見ているだけでもパワーがみなぎってくるはずです。舞台を観た方がちょっと元気になったり、自分の中で何かが変わって少し明るい気持ちになってくれれば、この作品をお届けする意味があるんじゃないかなと思います。ぜひ劇場に観に来てください。
宇野:人間が大人になるというのは、知恵や知識を得て生きる術を知っていくことだと思うんです。お花屋さんや野球選手、そういう夢を持っていた小さい頃と底の部分は変わっていないんじゃないかなと。
「ROOKIES」が幅広い世代の人の心に響くのは、夢を題材にしているからじゃないかと思います。今、夢を持てなかったり、夢を持つこと自体を諦めてしまっている人もいるかもしれません。でも、“明日にきらめく”ことはできると思うんです。コロナも落ち着いてきたように見えて少しずつですが歩みを進められるようになってきた今、観た人にとって明日を照らす作品となれるように、全力でタッグを組んでポジティブなメッセージをお届けします。劇場でお待ちしております。
取材・文:広瀬有希/撮影:ケイヒカル
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