2020年11月18日(水)、舞台『ハイスクール!奇面組3 危機一髪!~修学旅行編~』が開幕する。
原作は1980年代に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載、アニメ化もされた、新沢基栄の人気ギャグ漫画。誌面やアニメ画面から抜け出てきたような役者たちのビジュアル、初めて「奇面組」に触れる人でも分かりやすいストーリー構成、体当たりの抱腹絶倒な芝居で話題になった舞台化シリーズの第3弾だ。
2.5ジゲン!!は、初演から3作連続で出演する寺山武志(冷越豪役)と、本作から初参加の井深克彦(物星大役)、演出・なるせゆうせいの3人による鼎談取材を行った。
奇面組メンバーの平野良(一堂零役)、もう中学生(出瀬潔役)、ジョイマン・高木晋哉(大間仁役)の印象や、稽古現場の雰囲気、キャスティングの秘密などが語られた様子を座談会形式でお届けする。
明快なストーリーに「とにかく笑ってほしい」
なるせ:2人は共演、久しぶり?
寺山:そうですね。5、6年ぶりくらいかな。その舞台も(平野)良さんが主演の作品でした。でも、そこではかっち(井深)とは、がっつり絡んでセリフが交わるような感じではなかったんですよ。
井深:そうそう、たくさん絡む役ではなかったけれど、同い年ということで、現場で喋ったりはしていましたね。
思うのは、やっぱり寺やん(寺山)がいるとすごく安心。1、2と公演を続けて、関係が出来上がっている現場に入るのは少し不安もあったけれど、寺やんがいるし、初めての本読みだけでもう楽しい現場だと分かりました。
なるせ:かっちは今回から合流だけど、全然違和感が無いよね。
井深:鳥ちゃん(鳥越裕貴:第1〜2弾の物星大役)が作ってきた、舞台での大ちゃんというキャラクターがありますし、それをどれだけ自分の中に落とし込めるか……。鳥ちゃんの大ちゃんを大事にしながら、自分の大ちゃんを出していけたらいいなと思っています。
寺山:鳥ちゃんの大ちゃん、レオタードとかすごい格好で舞台に立っていたよ?(笑)
井深:大ちゃんに限らずもう何か全体が、舞台作品というか、パーティーとか宴会みたい(笑) 。
なるせ:そう宴会(笑)。しかも集団芸なの。
井深:個人だけじゃなくてみんなで動くことも多いから、気を抜ける瞬間も無いし体力的にすごく大変そうですよね。普段使わない筋肉を使いそう。
寺山:めちゃくちゃ大変。すっごい汗出るよ。例えば団体で「ズコー」ってするのも「あと何回やるの?」っていうくらいやるし。
なるせ:実はセリフを喋っていない時もすごく大事。体力を使うし芝居も気を遣うし……だから過去の公演では、初日から日が経つにつれて、奇面組の5人の中で差や違いのようなものが出てきちゃっていたんです(笑)。
寺山:公演が進むと、もう中(学生)さんと(ジョイマン)高木さんが疲れてきちゃって! ひとつのシーンの芝居が終わって袖にハケるときがもう、完全に疲れているんです(笑)。
でも今回の舞台は、前回の公演から2年と少し経っているから、僕たちの体力にも正直不安が少しあります。年も取っているし、コロナ禍で活動できない期間が長かったから確実に体力が落ちている。体力面で頑張らないといけないし、もちろん芝居の面でも手は抜けないです。
そうそう。芝居と言えば、もう中さんと高木さんのケアは俺達が担当だからね?
井深:えっ、それも?
寺山:業務内容に入ったの。あの2人、袖にハケてから「次、どっちに行くの?」ってなっているから「あっちですよ」って一緒に連れて行くの。もう中さんと高木さんにはね、舞台上で笑いを取っていただくことに専念してほしいからね(笑)。
なるせ:こんな時期だから、大爆笑っていうのもなかなか難しいけれどね。でも、感染症対策をできる限りやりながら、我慢していても思わず笑ってしまうような舞台にしたいよね。
寺山:気持ちが暗くなってしまっている今、思い切り笑ってほしいんです。僕たちの舞台を観て、色々なことを忘れて気楽にただ笑ってほしい。そんなに中身が詰まっているストーリーじゃないし。
一同:(笑)
井深:すごくシンプルで分かりやすいストーリーです。たくさん笑って明るい気持ちになってもらえたら、僕たちも嬉しいです。
なるせ「僕たちが一番楽しんでしまっているかも」
なるせ:今回もすごく楽しい現場だね。周りからも「奇面組の現場は本当に楽しそう」って言われています。お客様たちよりも前に、僕たちが一番楽しんでしまっているかもしれない(笑)。本読みの初日から勝負してくる人もいるしね。特に、春曲鈍役の宮下雄也!
寺山:もう、ひとこと目から気概を感じましたよね。かっちみたいに今回の舞台から座組に入る人は、「ここまでやっていいんだ?」っていうのが肌で分かったと思います(笑)。
それから、なだぎ武(事代作吾役)さん。なだぎさんは稽古から面白いんですけれども、劇場に入ってお客様を前にすると、さらにギアが上がるんですよ。少しでもウケたらひたすら畳み掛けるの。
井深:そんなに?(笑)
寺山:もうね、劇場内が爆笑でどっかんどっかんなっちゃう。あれはすごいよ。でもね、しつこいくらいに畳み掛けるから、10分くらいのシーンが20分くらいに延びちゃうの(笑)。役者たちも個性の強い面々が集まっているから、なだぎさんも大喜びでいじり倒すんですよね。
若手の子がなだぎさんにいじられてテンパっちゃってるのを見ると「ああ~調理されているな」って思っちゃう(笑)。それも込みで面白いですよ。
なるせ:かっちはいじられるとより生きるから、なだぎさんと相性いいと思うよ。何をやっても拾ってくれる安心感があるし。
井深:なだぎさんとは2015年の年末に共演させていただいているんですけれど、その時は深く絡む役ではなかったので、今回すごく楽しみです!
キャスティングの秘訣は「人間力」
なるせ:かっちはコメディは得意? 今回、話がきたとき驚かなかった?
井深:コメディは今まで豊富には出させていただいていないジャンルですね。だからかな、ビジュアルの撮影のときにスタッフさんが「よく受けてくれましたね、この舞台」って(笑)。
経験が少ないことに不安はあったんですけれど、現場が楽しいと聞いていたし、経験豊富な先輩方、芸人の皆さんもいらっしゃる。たくさんのことが吸収できそうですし、不安よりも「楽しみだなぁ」という気持ちの方が大きかったです。全裸以外はNG無いんで!(笑)
なるせ:「ハンサム落語」に出てもらった時のこと覚えている? あれは二人一組で助け舟の無い芝居だから、けっこう大変だったと思うけど……。
井深:2015年の第六幕ですよね。正座が大変だった思い出もあるんですけど……実は僕、初日の前にプライベートで大変なことがあって! 一睡もせずに劇場に向かったので、舞台のキツさを覚えていないという(笑)。
なるせさんとは何度もご一緒させていただいていますし、そういう面でも今回の舞台はすごく楽しみなことが多いです。
なるせ:かっちならではの個性と良さを活かしたいよね。かっちと同じく新しいキャストも多いし、すごく楽しみ。新しいキャストさんで気になる人、いる?
寺山:雲童塊役の梶原颯くんと、切出翔役の荒一陽くん。「もう出来上がっているな」って感じました。本読みの段階で「役を掴んでいる」って。
なるせ:今回から合流ってことで「少しでも早く仕上げて追いつかなければ」っていう意識があるのかもしれないね。パフォーマンスに対してのモチベーションがすごく高い。特にあの2人は、もともと持っているキャラクターが役に合っているし、信頼できるよね。
井深:他のキャストもみんな、的確だしすごくいいキャスティングだと思います。僕は役作りが大変だけど……。
なるせ:かっちが一番ハマっているよ(笑)。まだみんな遠慮しているけれど、これからもっとチームワークを作り上げて稽古していきたいね。
井深:団体でやることが多い舞台だから、特にチームワークが大事だと思うんですよ。でも、こんな時だから、キャストみんなでご飯を食べに行ったり、稽古場でぎゅうぎゅうになって話をすることもできない……。そんな中でも、稽古でいい人間関係と信頼関係を築いていきたいと思っています。
なるせ:そう、キャスティングといえば今回もすごくバランスがいい。奇面組を例に挙げてみても芸人と役者、ちょうどいい塩梅でしょう。役者の中に芸人が一人放り込まれても居心地悪いだろうし、芸人ばかりでも良くない。いいバランスですよ。
寺山:芸人チーム、もう中さんと高木さんね。もう中さんがネタに対しての意識がすごく高いなって感じたエピソードがあって、「高ちゃんさぁ、もうちょっとネタ変えていこうよ!」とか言い合っていたんですよ。ストイックだなぁ。
もう中さんと言えば、この奇面組の舞台を経てミュージカルにも出るようになったんですよね。演技がすごくうまくなっている。
なるせ:うん、それに加えて雰囲気を持っている。……って、もう中さんばっかり褒めていると高木さんが「……俺は?」って空気を出すんだよね(笑)。
井深:言いたいことを言い合えるし、高め合える本当にいい座組だなって思います。あと、皆さんの人柄もいい。
寺山:なるせさん、「人柄キャスティング」しますよね(笑)。
なるせ:人柄は大事だよ。僕、キャスティングする時には人柄をすごく気にするの。
例えば座長の平野良くん。面白いし、やっぱりうまい。酒飲むと面倒くさいけどね(笑)。でも、それを凌駕するだけの良さがある。「芝居」というものを知っているし、周りがすごく見えている、まさにリーダー的な存在。主軸となって舞台を回せる力があるんですよね。
寺山くんには、座組のバランサーとしての役割を任せています。豪くんも奇面組の中で唯一、零くんに対して激しいツッコミを入れてバランスを取っているしね。演出家として、安心していろいろなことを任せられる。
寺山:僕は、バランサーであると同時に「きっかけになる役」でもあります。例えばストーリーが切り替わった時の最初の一言が豪くんだったりね。それから、もう中さんと高木さんがセリフを忘れてしまった時に、セリフを思い出させる助け舟を出したりする役目もあります(笑)。
なるせ:それで言うと、かっちは「かわいいマドンナ」かな(笑)。かっちのかわいい魅力を舞台でより良く見せるように伸ばしたいですね。見せ場もあるしね。
井深:すごく見せ場になるいいセリフがあるんですよね! ぜひ楽しみにしていてもらいたいです(笑)
第4弾、第5弾も…? ファンへのメッセージ
寺山:舞台「ハイスクール!奇面組」。まさかまさかの第3弾となりました。お客様が「観たい!」と思ってくださらないと舞台は続かないものなので、本当に嬉しいです。
コロナ禍で「舞台……どうしようかなぁ」「そんな気分じゃないなぁ」と思ってしまう人が多くなってしまったと思うんです。
でもこの作品は、そんな気持ちを吹き飛ばすような、とにかく笑って明るい気持ちになれる舞台です。皆さんの日常に少しでも明るい気持ちになる風を入れられたら、と思いながら稽古しています。とにかく楽しみに待っていてください!
井深:小学生の頃、夏休みに再放送されていた奇面組のアニメを観ていました。大ちゃんは僕に重なる部分があるので「自分は周りからこう見られているのかな?」と思っていたのですが、まさか20数年の時を超えて、こうして演じさせていただくとは思わなくて、喜びと驚きでいっぱいです。
その大好きな作品と大ちゃんを改めて愛して、稽古に励んでいきたいと思っています。少しでも皆さんが明るい気持ちになれるような作品を届けたいです。
なるせ:「演劇ってこうだな!」と僕が思う舞台です。
派手で豪華な歌や最先端のプロジェクションマッピング、そういうものはありません。その代わり、生身の人間たちが肉体を使って、真剣に馬鹿げたことをやっています。演劇の原点に近いものなんじゃないかな、と感じます。
昭和の雰囲気。懐かしくて、そして心から楽しい舞台です。それをこのメンバーでやれることに、喜びでいっぱいです。ぜひ、第4弾、第5弾と!
寺山:そんなに予定があるんですか?(笑)
なるせ:いつまでも卒業できないよ!(笑)。キャストたちは年齢を重ねていくけれど、このシリーズを続けていけたらいいなと思っています。
撮影:ケイヒカル
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