2020年2月21日(金)開幕の「舞台『弱虫ペダル』新インターハイ篇FINAL~POWER OF BIKE~」。『ペダステ』2度目のインターハイもついに最終日のゴールを迎えようとしている。
『ペダステ』といえば演出家・西田シャトナー氏によるユニークなステージングが魅力のひとつだが、中でも独特なのが稼働式のセット(スロープ)と役者の動きを組み合わせた「パズルライドシステム」と呼ばれる演出手法だ。
今回2.5ジゲン!!では、演出の鍵を握るパズルライダーの皆さんと演出家の西田シャトナー氏に独占インタビューを実施。アンサンブルと異なる点や、『ペダステ』ならではの魅力、そして開幕が迫る最新作への思いを語っていただいた。
●お話を伺ったのは……
西田シャトナー(演出・脚本)/【パズルライダーチーム】一瀬悠(監督)、河野智平、伊藤玄紀、村上渉
もくじ
パズルライダーは役者や物語、観客、演出家の「化身」でもある
――ずばりお伺いします。パズルライダーの役割とは何ですか?
西田シャトナー(以下、西田):パズルライダーは、舞台上でスロープを動かし「そこに無い風景」を出現させると同時に、観客と物語とをつなぐ「語り部」の役割を担っている俳優たちです。
気づいてくださるお客様もいるかと思いますが、よく見ると彼らはストーリーに沿ってさまざまな表情を見せています。たとえば主人公がつらいシーンでは「頑張れよ!」と拳を握って応援していたり、誰かが立ち直るシーンでは大きくうなずいていたりと。
――確かに、いつも細やかにリアクションしていらっしゃいますね。
西田:登場人物たちとそれを演じている役者たち、そして物語を見る側の気持ちを、「代弁」というか「象徴」しているのがパズルライダーというチームです。だから彼らは役者でもあるけれど、同時に物語の化身でもあるし、観客の化身でもある。そして演出家の化身でもあります。
▲『ペダステ』シリーズの演出・脚本をつとめる、西田シャトナー氏
パズルライダーとアンサンブルの違いは?
――稽古場を拝見して感じたのですが、パズルライダーの皆さんは、ほとんどずっとステージ上にいらっしゃいますよね。
一瀬悠(以下、一瀬):そうですね、袖に入る時間はとても短いです。
――その点も含め、『ペダステ』のパズルライダーと他の作品におけるアンサンブルとの「共通点/相違点」を教えていただけますか?
一瀬:作品の世界観を作るという点では共通しています。たとえば喫茶店のシーンでメインキャストの隣にいるお客さんを演じたり、レース中に抜かれていく名もなきランナーを演じたり。
ただパズルライダーの場合は「道を作っている」という感覚が強くあり、そこが違うかなと思います。スロープを動かして文字通り道を形成してもいますし、照明さん・音響さん・そして走っているメインキャストたちと一緒に「道」を作らせていただいているのは独特の感覚です。
西田:言われてみると、今までなかったジャンルかもしれないね。黒子でもコロスでもないという。
河野智平(以下、河野):確立していますよね。こういう形は、僕は『ペダステ』で初めて経験しました。
一瀬:パズルライダーを経験した後に原作の『弱虫ペダル』を読んでいると、キャラクターに「こういうことが起こるんだ」という感想を持つだけじゃなくて、「あ、こういう道が出てくるんだ」って、道に注目しちゃうんですよね。
伊藤玄紀(以下、伊藤):ああ、わかる!
河野:パズルあるあるですね。
一瀬:「前に “つづら折のカーブ” をこうやって表現したから、今度はこうかな」とか。読みながら自然と考えています。
伊藤:シャトナーさんの演出には「スロープワーク」という、スロープを動かす際の型がいくつかあるんですが、回数を重ねていくと原作を読んでいてもなんとなく「ここはもしかしたら、あの動きかな」って頭の中に浮かんできますね。
西田:水たまりとか「どうするんだろう」と思ったんじゃない?
一同:思いました!
村上渉(以下、村上):ほんと、どうやってやるんだろう?って考えました。御堂筋くんの描かれ方とかも特殊だから、色々想像してしまいます。巨人に見えるときの表現とか。
河野:「毛穴から手」とかね。「えっ、どうするあの手、誰がやる!?」って(笑)。
伊藤:選手や人じゃない「もの」の部分は、舞台では自分たちが表現するので、一応全部できるようにという心持ちで常にいます。
――原作の読み方まで独特の視点になるんですね。
河野:あんまり無い視点かもしれないですね、そう考えると面白いです。
▲村上渉。
2015年「IRREGULAR 〜2つの頂上〜」より参加
東堂のライドにも近い、パズルライダーの苦労とは
――『ペダステ』において「苦労すること」「大変なこと」は何ですか?
村上:僕は前回までちょっとお休みして、帰ってきたばかりなんですが……そうですね、久しぶりに戻ってみて一番苦労しているのは、人の呼吸や動きを読むことです。
――呼吸を読む。
村上:はい。スロープは常に動き続けるし、役者のセリフの言い回しやスピードはその日によって変わるので、芝居の呼吸にスロープの動きを合わせる必要があるんです。
――本番に入るまで変わり続けるのでしょうか?
村上:というか、本番中も変わります。役者自身にそのときの気持ちがありますから。大きくズレることはなくても細やかな部分はやはり毎日変化し続けるので、その繊細な部分のタイミングをあわせるのに、今はすごく苦労しています。
西田:演出から「こうしてほしい」というオーダーは出しますが、それを実現させるためのマネジメントはもうライダーズ(パズルライダーチーム)にお任せしているんです。どう動かせば望む速度で望む位置にぴたりとスロープが来るのか……という采配は、この4人が担ってくれています。
今渉くんが言ったように、俳優の調子によってタイミングは微妙に変わります。「今このセリフのときにスロープが正面を横切ってないとストーリーどおりにならない」というときに、絶対そこに持っていくために4人が無言で解決していきながら回しているんです。
だから僕は、パズルライダーの仕事というのは東堂尽八のライドに似ているところがあるなと思っています。
――東堂尽八のライド。動きにロスがないため無音で加速できる「スリーピングクライム」ですね。
西田:それに似ているところがあると思います。東堂は、音をたてずに自転車に乗るため見えない部分で色々なことをやっているんだろうと思います。それをライダーズもやっている。
スロープが気持ちいいタイミングでぐっと回るとき、自然に回っているように見えて、じつはライダーズの4人が刻一刻と力加減を変えながら、いろんなところに力を入れて回しているんです。そこは東堂のライドに通じるものがあると思います。
▲伊藤玄紀。
2015年「IRREGULAR 〜2つの頂上〜」より参加
――伊藤さんの感じる「大変なこと」は何ですか?
伊藤:僕が一番大変だなあと感じるのは、1つのスロープを4つの脳みそで動かすところ。道を作るにしても景色を作るにしても、スロープを1つの登場人物としてお芝居させなきゃいけないんですが、動かしている人間は4人いるわけです。シャトナーさんの要望に応えるための、微妙なタイミングや考えがやっぱり4人それぞれちょっとずつ違うから、4つの脳みそを1つにしなきゃいけない部分が苦労しますね。
河野:4人とも、それぞれ個性的だもんね。
伊藤:本当にそう。毎回「こうしよう」っていうのをすり合わせしなくてはならない、その作業が絶対必要になるから、そこが大変。
――すり合わせの作業は、稽古や本番が終わった後に一気に行うんですか?
伊藤:そうです。
西田:結構遅くまで残って打ち合わせしているよね。
伊藤:稽古中はもちろん本番中も、ちょっと失敗したところがあると「あそこはこういう動きで、ここきっかけで、これに合わせてやるべきだったよね」というのを、毎公演ごとに4人で絶対すり合わせる必要があります。それがね。(一同を見渡し)今は慣れたメンバー同士だからまだしも、最初は本当に大変だったよね。
河野:初めましてのときは、そうだねえ。
伊藤:僕ら3人(一瀬以外の、河野・伊藤・村上)は2015年10月上演の「IRREGULAR 〜2つの頂上〜」が初参加だったんです。ちょうどそのとき一瀬が初めてリーダーになったんですけど、なにしろ彼以外は全員パズルとして素人。現場の仕組みや雰囲気さえ全然分からなくて、すごく怒られたこともあったよね。
一瀬:ははは(笑)。
伊藤:今では僕らもだいぶ息が長くなったので、お互いの意見をぶつけ合うこともできるんですけど。あのときは本当にリーダーがいっちー(一瀬)で良かった。
河野:リーダーとしてきちんとまとめてくれるからね。
伊藤:僕らは「一瀬チルドレン」なんです。
河野:自分たちで勝手にそう呼んでいるくらい、いっちーに感謝しています。
▲河野智平。
2015年「IRREGULAR 〜2つの頂上〜」より参加
――河野さんの「大変なこと」は、何ですか?
河野:そうですね、もう何から何まで大変です(笑)。
一同:笑
河野:楽しいことももちろんたくさんあるんですけども! シャトナーさんは本当に愛に溢れている方で、僕の役者人生における憧れの方だったんです。
舞台『弱虫ペダル』を拝見して「絶対パズルライダーをやりたい」って思って飛び込んで、その作品作りをこうして一緒にさせていただいて。一瀬チーフのもと、げんちゃん(伊藤)、渉と一緒にこの4人でまた集まって、それも新インターハイ篇のFINALという節目にパズルができるというのは、すごく光栄に思います。
僕は、パズルライダーを続けられる原動力というのは、やはり作品に対する愛や思いの強さあってこそなんだと思っています。
――相当な愛情ですよね。
河野:じゃないと多分できないですね!(笑)
▲一瀬悠。パズルライダーチームの監督。
2014年「インターハイ篇 The Second Order」より参加
――では一瀬さん、監督としてライダーとして、改めて「大変なこと」は何ですか?
一瀬:そうですね。大変なこと……。今はないかな。
――「ない」ですか!
一瀬:うん、ないです。
村上:うわあ、これかぁ、俺らと違うのは……。
伊藤:僕もない、大変なことなんてない! 全部楽しいです!
一同:(笑)
一瀬:僕がパズルライドを初めてやらせていただいた頃や、リーダーにならせていただいたばっかりの頃とかは、大変というか、いろいろと自分に至らない点があって。「リーダーとして、こういうふうに言わないと仲間たちに伝わらないんだ」とか、「安全が守れないんだ」と感じる部分がたくさんありました。
みんなでお芝居を作るにあたり難しい部分は今もありますが、パズルのチームワークもあるので。一緒にやってくれているこの仲間たちは、それぞれがもう熟練した技を持ったメンバーばかりです。その上チームワークがある。だから「つらい」と感じることはもう、今はないです。
特等席の目線は、パズルライダーならではの喜び
――では『ペダステ』で「嬉しいこと」や「好きなところ」は?
村上:本気の汗を見られるところが一番好きです。レースシーンではスロープの上のキャストから本気の汗がぼたぼた垂れてきて、ときには自分に当たったりもするんですが、全然不快じゃない。それどころか逆に「嬉しいな」と思えるぐらい、本気の汗が素敵な舞台だと思うし、『ペダステ』をやれて良かったなって思います。
河野:熱量がすごいよね。
伊藤:僕は、パズルライダーという特等席でこの作品を見られることが幸せです。僕たちの見ている景色は本当に特等席だと思うんです。
お芝居の中に入って見ているわけだし、位置的にもなかなかお客さんからは見えない表情が僕らには見えていたりする。その景色が本当にすごくて、もう「パズルライダー目線カメラ」をつけてみんなに見せたいくらい。
河野:「見てほしい」って思うよね。
伊藤:「わ、この! 今この後ろ向いてるときの表情をみんなに見てほしい!」って思う瞬間がよくあるんですよ。
一瀬:スロープの下から見上げているから、角度的にもかっこいいんだよね。
伊藤:1視聴者の目線になってしまって、「ああ今すごく幸せ……でも芝居しなきゃ!」とジレンマを感じる瞬間があります。それがすごく好きなところです。
河野:僕は、嬉しいことや好きなところ、いっぱいあって何を言おうか迷います……。でも一番は、やっぱりこの4人でまたパズルライダーをできることかな。個人的に最高に嬉しいです。
僕が最初に参加させていただいたときには、スロープが2つあってライダーが6人いて、3・3に分かれてスロープを動かしていたんですけど。そのときの仲間でまた1つのスロープを扱うというのが、感慨深く思います。
慣れ親しんだメンバーとやれることは、本当に楽しい。慣れていることでスロープワークやパズルとしての所作みたいなものも変わってくるし、想いが強くなった分ぶつかり合うこともあるんですけど、本当に最高の景色を堪能させていただいています。
一瀬:僕はこの作品にずっと出させていただいていますが、毎回感銘を受けるのがカンパニーの愛の強さです。キャストの先輩たちをはじめ、各セクションの皆さんや、もちろん僕らパズルも含め、この作品を作ることに対して全員の愛がすごいなって思います。ちょっと他では経験できないくらいの強烈な愛があるというか。
たとえば本番で走り終えたキャストが袖の中に入ってきたときに、みんなが自然とフォローに行ったり。僕らパズルライダーがちょっと大変だなというときに、本来なら手を出さなくてもいいような大先輩の方々が、もうすぐさま助けに来てくれたりする。そんなふうに助け合える環境があるから、体力的につらい中でもみんな頑張れるのかなと思います。
西田:稽古場でも、よくメインキャストのみんながライダーの仕事をちょこちょこ手伝っているよね。
一同:そうですね。
伊藤:スロープを一緒に押してくれたりとか。
西田:安全確認してくれたりとかね。
▲和気あいあいとした空気から、深い信頼関係が伝わる
最も意識することは、満場一致で「安全第一」
――パズルライダーになったばかりの頃と今とで、「変わったこと/変わらないこと」はありますか?
河野:……年をとったよね。
伊藤:そりゃあとったよ。
一瀬:みんなとった!(笑)
河野:渉なんて、当時ハタチだったんですよ。
村上:そうですね、入ったときはハタチでした。
伊藤:初めて会ったときはみんな20代だったもの。
河野:もう、いつのまにか……。
一瀬:アラサーに……。
一同:笑
西田:でも、上手にもなったでしょ。
河野:はい、なりました!
西田:めちゃくちゃ上手になったよ、本当に。演出サイドから「こうしてほしい」という要望を出したときに、みんなの中で「このタイミングで押そう」「この順番で力を入れよう」というオーダーを決めるまでの時間が、ものすごく速くなったんですよ。最初の頃と全然違うよ。
河野:(少しはにかみながら)あの、僕らはやっぱり、成長しましたかね?
伊藤:褒められたい!
一同:(笑)
西田:本当にそう思いますよ。僕自身も成長しなくてはいけない立場なので、あんまり偉そうに「成長したよ」なんて言えないですけども。でも、パズルライダーとしても俳優としても、すっごく良くなったなあと僕は感じています。
ライダーズ:ありがとうございます。
西田:単純に本人たちが上手になったというのもあるけど、他の俳優たちや我々スタッフとの意志疎通の仕方、空気の作り方というのもうまくなっているんじゃないかな。芝居のシーンを掴んでくれる、すごく助かる存在になってくれています。
――心強く感じられますか?
西田:心強いですね。芝居もそうだし、安全面でも。本番中はやはり何が起きるか分からないですから、僕も当然すぐ走り込める場所に待機してはいるんですけれど、任せられる人たちが舞台上にもいるというのは非常にありがたいです。なかなか無いことですから。
最初はそのために考えたポジションではなかったんですが、今やものすごく安全を守ってくれています。
――逆に「変わらないこと」はありますか?
一瀬:僕は2014年3月の「インターハイ篇 The Second Order」から参加させていただいているんですが、そのときから変わらないのは、当時いた初代リーダーのまっちゃん(松井貴典)から教わった思いです。「パズルライダーはみんなでこうやっていくんだ」という作品への思いというのは、教わってからずっと変わらず持ち続けています。
▲稽古中のショット。パズルライダーは安全の守り神でもある
――中でも一番大切にされていること、意識していることは?
一同:“安全第一”。
一瀬:そうですね、安全は常に第一です。
伊藤:絶対に事故を起こしてはいけないという思いを常に意識しています。スロープが動いているときに他のキャストがぶつかりそうになること、スロープ上を走っているキャストがたまに落ちそうになることもある。
それをちゃんと見て、スロープの端に手をあてて「ここはもう危ないよ」と示したり、危ないときは体を押し上げたりもします。
河野:スロープには4人ついていても、やっぱり「足りないんだ」という意識を持っておかないといけないよね。段取りが立て込んでくるとつい気持ちが逸れちゃいそうになるけど、そんなときこそより一層「自分の任されたポジションは絶対だぞ」という意識を持つようにしています。
一瀬:だいたい四つ角にひとりずつついているので、そのポジションの責任者は一人ひとり、という意識で。
河野:危なかったらちゃんと助けを呼ぶし、お互いに目でサインを送り合うこともちゃんとする。
伊藤:アイコンタクトは絶対大事、常に意思疎通し合っています。
▲稽古中は、絶え間なくアイコンタクトを取り合っている
演出家・西田シャトナーから伝えたい思い
――シャトナーさんから、パズルライダーの皆さんに伝えたい思いはありますか?
西田:そうですね。僕はパズルライダーというものを作品にとって非常に価値があるものだと感じていますが、役者としては、その意味を単純には理解しにくい、飲み込みにくいだろうとも思っているんです。俳優としてはやっぱり「もっとセリフが欲しい」と思うこともあるだろうし。
でも彼らはその役割や存在する意味をしっかりと理解して、パズルライダーに誇りを持ってやってくれている。そのことに、とても感謝しています。
もちろん役を渡すと喜んでやってくれるし、今回もいろいろな役を引き受けてくれているんです。でも先日、カーテンコールの挨拶に「ときどき出てくる名前のある役」の衣装で出るか、パズルライダーの衣装で出るか……という話題で、「今やパズルライダーの衣装の方が誇り高い部分あるよね」ということを話していて。
そういうふうに感じられるところまで彼らは来ているんだなと思って、それは本当にありがたいし、報いたいなとも思います。
――その誇りは、客席にいても伝わってきます。
西田:ときどき、彼らのしたことが僕の手柄みたいになることもあるのでね、それも申し訳ないなと思いますし。
だからなるべくSNSなどで「これは僕じゃなくて役者が考えたんですよ」ということは発信するようにしているんですけれども、やっぱり端々で演出家の手柄になりそうになる。だからこうしてライダーや役者たちについて取り上げていただく機会はすごく嬉しいです。
パズルライダーの働きについては、僕も分かっているし、俳優たちもみんな分かっているし、観客の皆さんもきっと分かってくれていると思える。なんだか、そういうことがとても「幸せだなあ」と感じます。
チームとして、リーダーとして。お互いに伝えたい思い
――チームリーダーの一瀬さんから、チームの皆さんに伝えたいメッセージはありますか?
一瀬:ポジションとしてはリーダーをやらせてもらっている僕に「ついてきてくれて」という言い方は、なんだか違う気もするのですが……でも、うん。一緒にやってくれて、ありがとう。
河野:僕らは逆に、いっちーがリーダーで良かったです。本当に。
伊藤:「(ここまで)つれてきてくれてありがとう」だよね。
村上:初参加だった「IRREGULAR」のときのことを改めて思い出すと、もうね……。リーダーのいっちーだけがちゃんと出来ていて他の5人が何にも知らない状態なんて、もし自分が逆の立場なら「うわー!」ってパニックになったと思う。
河野:しかもスロープが2つもある状態で。
西田:怖いよね。
河野・伊藤・村上:怖いです。
――皆さんから、一瀬さんに伝えたい思いは?
西田:僕が思い出すのは「Second Order」のこと。新開隼人がハンドルを落とすシーンで、それをいっちーが取りに来るという芝居があったんです。そのときに「彼の先を読む力は、ちょっと尋常じゃない、すごい」と感じて。そこでプロデューサーと話して、彼にリーダーになってもらおうと決めたんですよね。
河野:絶対的な信頼感があります。たとえ他の3人で「このスロープワークはこうしよう」って満場一致で決めたとしても、絶対にいっちーには話を通しますね。
伊藤:本当に駄目なときは駄目だってしっかり言ってくれるのがありがたいですし、良いときはちゃんと褒めてくれるのもすごくありがたい。締めるとこは締めた上で、「今のオッケーだったよ」っていうのもちゃんと言ってくれる。
河野:僕は過去に疲労から体の違和感というか、故障につながってしまったことがあるんです。そのとき自分では「まあすぐ治るだろう」と軽く考えていたんですけど、いっちーに相談したらすごく真剣な表情で、「それはみんなにも言ったの? 自分だけの問題にしてない?」って注意されたことがあって。そういう意識の高さとかが、やっぱり自分にないものを持っているなって思います。
伊藤:性格的に、いっちー以外の3人はわりとゆるいというか「いいんじゃないの」というノリでいろんなことをやってしまうところがあるけど、いっちーはそこがピシッとしてる。だからいいんだよね、多分。
村上:「IRREGULAR」のときも、パズルライダーとして本当に右も左も分からない5人に、いっちーは一度も嫌な感じの対応をしなかったんです。一人ひとり出来ないところが違う僕らに、それぞれに合わせてしっかり伝えて、話をしてくれて。
西田:あの頃は残業が一番多かったよね。稽古が終わってから会議室に入って、ずーっと打ち合わせしないといけなかった。
伊藤:ミーティング2時間とかは当たり前だった。でも、それを「やろう」っていっちーが言ってくれた。
村上:本人はちゃんと出来てるのにね。作品のために「このメンバーで絶対やり抜くんだ」って全員をまとめてくれて。
西田:ほんまに頭が下がります。パズルの技術はよそで蓄積ができない、このチームでしか受け継ぐことができない部分があるから、誰にも分かってもらえないしんどさもあるでしょうしね。僕にももちろん分からない部分がある。それをずっと、いっちーが続けてやってくれているから、ここまで来られたという思いはありますね。
村上:支えられてるんです。
河野:本当に守られています。
新インターハイ篇FINALに向けての意気込みは?
――最後に、最新作「『弱虫ペダル』新インターハイ篇FINAL~POWER OF BIKE~」に向けての意気込みを、お一人ずつお聞かせください。
村上:稽古に入る前、「この稽古期間は人生の全てをこの『弱虫ペダル』にかける」と決めてやってきました。新インターハイ篇のFINALをこのメンバーでやれることがすごく嬉しいです。一瞬一瞬をしっかりと噛み締めていきます。
伊藤:レースシーンの連続で日常シーンが少ない今回、体力的には正直とてもしんどいです。でもやり遂げてやる、やってやるぞ!という思いの方が強くて。1公演1公演レースとスロープに全ての力を使い果たして、1公演終わるごとに倒れるくらいの気持ちで臨みます。
稽古をしている今、作品ができていく過程がすごく楽しいです。全ての瞬間を覚えていたい。なので稽古から本番の大千秋楽まで、一瞬一瞬力を出し切った上で記憶にもとどめていきたいです。
河野:新インターハイ篇の全公演を走らせてもらっている身として、このシリーズは絶対に走りきってやろう!と思っていました。今回でいよいよゴールということで、ボリューム満点のパズルワークを最高の仲間で走れることが、もうこれからの人生にないんじゃないかと思うほど幸せです。
毎公演毎公演、パズルとして誇りを持ってレースに臨み、前作よりもさらに今作を忘れられない作品として皆さんにお届けできるよう、走り抜いていきたいです。頑張ります。
一瀬:新インターハイ篇FINAL、3日目を走るのをすごく楽しみにしていました。今回はやっぱりレースシーンがとても多いので、これまで培ってきたメンバーみんなの力を合わせて、寸分たがわぬ安全な道をしっかり作るぞ!という思いで、やらせていただきます。
「舞台『弱虫ペダル』新インターハイ篇FINAL~POWER OF BIKE~」の東京公演は2020年2月21日(金)~23日(日)天王洲 銀河劇場にて、大阪公演は2020年2月27日(木)~29日(土)メルパルクホール大阪にて上演。
多彩なプロフェッショナルたちが全力で織りなす物語の行く先を、ぜひあなたにも見届けてほしい。
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