丸美屋食品ミュージカル『アニー』の2023年制作発表会見が、2月1日(水)に都内でおこなわれた。
本作は、1924年からアメリカで新聞連載がスタートした漫画「ザ・リトル・オーファン・アニー(小さい孤児アニー)」をもとに、1977年にブロードウェイで誕生したミュージカル。日本では、1986年に日本テレビが主催で上演をスタートし、今日まで全国で心温まる深い感動を与え続けている。
会見には、2023年版アニー役の深町ようこと西光里咲をはじめ、大人キャストの藤本隆宏(ウォーバックス役)、マルシア(ハニガン役)、笠松はる(グレース役)、財木琢磨(ルースター役)、島ゆいか(リリー役)が出席した。
藤本隆宏は2年ぶりのウォーバックス役。マルシアは4度目の出演。笠松はるは3度目、財木琢磨、島ゆいかは2022年版からの続投。2023年版『アニー』は、4年ぶりのフルバージョンでの上演であることも発表されている。
まず、2023年版の本作への意気込みを聞かれると、藤本は「(2年ぶりの出演で)1年空きましたので、改めてこの作品を見つめ直す機会と時間ができました。それを生かして、新しいウォーバックスを演じていければ」。
続けて「昨年、山田和也さん演出の『アニー』を初めて客席から拝見し、この作品がいかに素晴らしいものであるかを改めて教えてもらいました。その感謝の気持ちを大事に演じていきたいです」と、自身の観劇体験を振り返った。
藤本はさらに「この世界に入ったのは、あるミュージカルを観たことがきっかけです。客席では、笑ったり泣いたり拍手をしているお客さまがたくさんいらして…その姿に僕は感動したんです。昨年、本作を客席で観たとき、初めて見た時の感動と同じものを感じました。周りのお客さまの拍手、笑顔、カーテンコールでの涙を見て、“初心にかえらなければ”と感じました。その気持ちを大事に、2023年度版の『アニー』を大事に作っていきたいです」と感慨深げに語った。
2023年度版で4度目のハニガンを演じるマルシアは「新しいメンバーとして、藤本さんも“新人”として戻りましたね」と場内を笑わせ、「新たなカンパニーを改めて作り上げていきます。(今年は)フルバージョンになりますので、意気込みは去年の倍でございます」と力を込めた。
今年のハニガン役に対しては「精神的に、人間らしさを作り上げていこうかなと。暴れまくるハニガンさんでございます(笑)。健康を大事に、27回の公演を走って参ります」とした。
グレース役の笠松はるは、「3回目で、初めてのフルバージョンです。初めてのシーンやセリフがたくさんあるので、グレースがどんな風に変化していくのか楽しみです。割愛されていたウォーバックスさんとの恋模様も復活しますし、ハニガンさんと2人のシーンも長いバージョンに戻ります。昨年も毎日のやり取りが楽しくて」と笑顔を見せる。
するとすかさずマルシアが「けっこう厳しい女優さんですよ(笑)。怖いでございます」とジョークを飛ばし、場内には笑いがあふれた。
財木琢磨は「昨年に続きルースターを演じますが、それにとらわれず自由に劇場を駆けまわって悪役を演じていきたいです」と期待を込める。
続けて「(ウォーバックス役の)藤本さんの『アニー』愛がすごい、とスタッフさんからたくさん聞いています。僕も負けずにこの作品を愛して、みなさんと一緒に作っていけたら」と、今年もさらに『アニー』を愛していくと宣言。これを聞いた藤本も「負けません」と笑顔で受けて立つ様子が見られた。
島ゆいかは「熱くあたたかい、大好きなスタッフ・キャストの皆さまとまたご一緒できる喜びが大きいです。また、今回は念願のフルバージョンでの上演になります。ずっと客席でフルバージョンを観ていましたので、それが帰って来るのを楽しみにしていました。今年も大事に、そして子どもたちが輝くように、悪役として暴れて参ります」と茶目っ気たっぷりに語った。
ここで、マイクは新しいアニー役の2人へ。深町ようこと西光(さいこう)里咲がハキハキと元気に挨拶をすると、きりっとした表情を見せていた壇上の大人キャストたちも思わず破顔。
アニー役に決まった時の気持ちを聞かれると、深町は「最初はすごくびっくりして、『やるぞ!』と気合が入ったんですけれど、だんだん嬉しくて楽しい気持ちがこみ上げてきて、たまりませんでした!」と幸せそうな笑顔を見せた。
「昨年も深町さんと同じミュージカルで同じ役を演じていましたね」と司会から紹介された西光(さいこう)は、「ようこちゃんが(アニー役に)呼ばれたときは、自分はもうダメだな…と思っていたので、その後に(自分の名前が)言われたときには信じられなくて。アニーの衣装を着て、今ここにいられることに感謝の気持ちでいっぱいです」と喜びを噛みしめた。
どんなアニーを演じたいか、との質問に深町は「初めて観に来てくださったお客さまも、今まで観に来てくださったことがあるお客さまにも、最後は笑顔で帰っていただけるようなすてきなアニーになりたいです」。
西光は「そこにいるだけで空気がぱっと明るくなるような、ひまわりのようなアニーになりたいです」と続ける。2人の言葉に、大人キャストたちはさらに笑顔に。
次に藤本へ、コロナ禍以前から現在までの変化について質問が。藤本は「2020年は、稽古をしていましたが公演は行えず中止に。2021年は初日のみ。2022年は感染対策をしながら短いバージョンで。その期間は決して無駄なものではなく、プラスにとらえていく試練だったのではないかと思っております」。「初日・千秋楽おめでとうの言葉のありがたさ、舞台に立たせていただけること、お客さまが入って演じられるありがたみを教えていただきました」と苦しかった時期を振り返った。
さらに藤本は「こういった活動ができることを幸せに、そして一瞬たりとも気を抜かずにやっていきます」と力強く言葉を結んだ。
続けて、本作のストーリーにちなみ、キャストたちへクリスマスのエピソードについて質問が寄せられた。
財木は「去年は(本作『アニー』の)クリスマスコンサートに出演させていただきました。クリスマス本番よりは早めの日程だったのですが、僕はもうそれで満足してしまって(笑)。帰りに蕎麦も食べて、年まで越してしまった気分になりました」とコンサートの楽しかった思い出を語った。
「子ども時代はどうだったの?」と藤本に振られると財木は、「サンタさんが家に来るので、せいいっぱいお小遣いを集めて110円を机にテープで貼ったんですが…。朝起きたら110円はそのままで悲しかったです。せっかくの110円なのに持って帰ってくれなくて…」とピュアな小学生時代を振り返った。
マルシアは「私はブラジル生まれブラジル育ちで、ブラジルのクリスマスというのは夏なのでございます。子どものころはみんなでワイワイと海でバーベキューをしながらパーティをしておりました。クリスマスカードのサンタクロースはサーフィンをしておりましたし、ツリーの雪はコットンです。雪が降らない国ですのでね」。
笠松は「子どものころ、おもちゃのカトラリー(ナイフ、フォーク、スプーンなど)が欲しくて。それをサンタさんにお願いしていたのですが、本当に立派な本物のカトラリーセットが来てしまったんです(笑)。当時は、おままごとには使えないし…と困ってしまったのですが、結局気に入って今も使っています」と、大事にしている物のエピソードを明かした。
島は「去年のクリスマスのことで言えば、やっぱり(『アニー』の)クリスマスコンサートですね。子どもたちと過ごす日々は本当に幸せでした。初めて子どもたちのパフォーマンスを見たときは、財木さんと一緒に大号泣してしまって」と、子どもたちから受けた感動を振り返った。
深町は「(『アニー』の)クリスマスコンサートの余韻に浸りながらサンタさんへカードを書いたのですが、忘れん坊なのでどこに置いたのか分からなくなっちゃって。24日の午後2時くらいになってから『ない!』ってもう1度カードを書きました」。続けて「外国製のアニーのぬいぐるみが、小さな頃から欲しかったんです。衣装もそっくりですごくかわいくて。それをもらえたのが思い出です」とアニーへの強い愛をにじませた。
西光は「クリスマスコンサートが楽しい思い出です。みんなが歌ったり踊ったりしているのを見て、すごくて…。私も来年はあれをやるんだ! と思ったのが思い出です」と、すでに2023年アニーへの思いで胸がいっぱいだったことを語った。
2023年度版『アニー』の制作発表会見は、笑顔のままに終了。公演は4月22日(土)から5月8日(月)まで、東京・新国立劇場 中劇場にて行われる。
取材・文:広瀬有希/撮影:ケイヒカル
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