レポート

鈴木勝吾と平野良の怪演が奏でる“正義”の物語、ミュージカル『憂国のモリアーティ』ゲネプロ&囲み会見レポート

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かの有名なジェームズ・モリアーティとシャーロック・ホームズを題材とした人気漫画『憂国のモリアーティ』を舞台化したミュージカル『憂国のモリアーティ』が2019年5月10日(金)に幕を開けた。

天王洲銀河劇場を19世紀末のロンドンに塗り替えたゲネプロと囲み会見の様子をお届けする。

緊迫感が支配する、命の価値を問う旋律

完全階級制度によって生まれながらに階級に縛られて生きるということ。現代に生きる観客には想像力だけでは追いつかないほどの闇が、この世界には蔓延していた。

悲惨な差別社会のなかで、それぞれの正義を胸に生き抜く男たちの生き様を、物語で、音楽で、そして芝居で観せてくれる上質な2時間30分である。

▲モリアーティ陣営 VS シャーロック・ホームズ陣営

ストーリーは公式サイトで公開されているように、第三楽章までの音楽に見立てて構成されている。

前半はウィリアム・ジェームズ・モリアーティ(鈴木勝吾)がモリアーティとして生きるまでの半生、そして後半は宿敵であるシャーロック・ホームズ(平野良)との運命の出会い。

それぞれがドラマチックに描かれている。

▲モリアーティ兄弟の見つめる先には……

ドラマを盛り上げているのが、ミュージカルには欠かせない音楽だ。今回、この作品ではピアノ(境田桃子)とバイオリン(林周雅)の生演奏に乗せて物語が進んでいく。

生演奏ならではの緊張感とライブ感が張り詰めた空気を醸成し、そこにキャスト陣の歌唱力抜群な歌声が乗ってくるのである。

正確に自身の正義を実行していくモリアーティのように、一寸の狂いもないメッセージが歌声となって耳に、胸に染み込んできた。

この劇場全体が震えるような緊張感は、生演奏を味わってこそといえる。劇場に足を運ぶ予定のファンは楽しみにしていてほしい。

鈴木勝吾と平野良の怪演が生み出す不協和音

己が信じる道を進んでいく登場人物たち。誰かにとっては正義の行為が、別の人にとっては悪にみえる。

それは善なのか、それとも悪なのか。

どちらに転ぶか分からない細い糸の上を綱渡りをしているような、絶妙な不安感を煽ってくるのは鈴木勝吾と平野良の怪演だ。

鈴木演じるモリアーティを影とするなら、平野演じるホームズは光である。

2人の一筋縄ではいかない食わせ者な雰囲気が、この作品を一層面白くしているのだろう。


▲対称的なウィリアム・ジェームズ・モリアーティ(鈴木勝吾)とシャーロック・ホームズ(平野良)

モリアーティ陣営には、アルバート・ジェームズ・モリアーティ(久保田秀敏)とルイス・ジェームズ・モリアーティ(山本一慶)、さらにセバスチャン・モラン(井澤勇貴)とフレッド・ポーロック(赤澤遼太郎)がいる。

彼らの暗躍と、ウィリアムとの結びつきにぜひ注目してほしい。

一方、シャーロック・ホームズ陣営は、おなじみのジョン・H・ワトソン(鎌苅健太)やミス・ハドソン(七木奏音)、ジョージ・レストレード(髙木俊)といった顔ぶれだ。

ホームズたちは今作での数少ないコミカルなシーンを一身に背負っている。緊張感を保ったまま、クスリと笑えるシーンがどう入ってくるのか。ここも注目ポイントだ。

▲2人の軽快なやり取りはきっと笑わせてくれるだろう

それぞれの正義が絡み合うミュージカル『憂国のモリアーティ』。ぜひ劇場で19世紀末のロンドンにタイムトリップして、この壮大なモリアーティの奏でる“劇”の目撃者の1人になってみてはどうだろうか。

ミュージカル『憂国のモリアーティ』は2019年5月10日(金)から19日(日)まで天王洲銀河劇場、2019年5月25日(土)・26日(日)に柏原市民文化会館リビエールホール大ホールにて上演。

囲み会見レポート

シックなスーツに身を包んだキャスト陣による囲み会見がおこなわれた。

登壇したのはウィリアム・ジェームズ・モリアーティ役の鈴木勝吾、シャーロック・ホームズ役の平野良、アルバート・ジェームズ・モリアーティ役の久保田秀敏、ルイス・ジェームズ・モリアーティ役の山本一慶、ジョン・H・ワトソン役の鎌苅健太の5名。

――本作への意気込みをお願いします。

鈴木勝吾(ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ役):ピアノとバイオリンとの生演奏でお届けするということで、お芝居や音楽面でのタスクがたくさんあって、今日まで作り上げてきたので、本番で余すところなく届けられたらいいな、と思います。

続く平野は、冒頭から「タスクが多いので……」と鈴木のコメントを「気に入っちゃった」と横取りして笑いを誘っていた。

平野良(シャーロック・ホームズ 役):ミュージカルということでその分熱量が届きやすいので、素晴らしい物語や音楽と共にそこをどう届けられるのかと。個人的にシャーロックホームズは昔から憧れていた存在なので、それを演じることに緊張とワクワクとへっちゃら感を感じています。

「へっちゃら感?」と鎌苅の関西人の血が騒いだのか間髪入れずツッコミが入ったが、平野は「以上意気込みでした!」と強引に締めていた。

久保田秀敏(アルバート・ジェームズ・モリアーティ役):今回の作品は世界的に有名なシャーロック・ホームズを題材にした作品を敵役の目線から描いた新しい作り方をしていて。これは原案のシャーロック・ホームズを知っている方にも新しい感覚で楽しんでいただけるのではないかと思います。

それを生演奏でミュージカルとして上演しますので皆さんお楽しみに。

最後の締めくくりで少し噛んでしまうと、「タスクが多いから」「タスクトラップだ」と、この会見のホットワードである“タスク”が方々から聞こえてきて、なんとも賑やかな雰囲気となった。

山本一慶(ルイス・ジェームズ・モリアーティ役):『憂国のモリアーティ』はすごく空気感があって僕も雰囲気が好きなんですけど、謎解きなどもあるので、舞台化したときに緊迫感や緊張の糸を途切れさせちゃいけないな、と思っています。なので、そこを気合い入れて一本通して、お届けできたらなと思います。

鎌苅健太(ジョン・H・ワトソン役):原作の世界観とこの時代の美しさとか辛さ、醜さ、脆さ……色んなものがミュージカルになるということで、挑戦として皆さんにお届けできるようにキャスト一同ここまでやってきましたので、大阪まで駆け抜けたいと思います。

ーー見どころを聞かせてください。

鈴木:漫画原作ではあるんですけど、演出家の西森さんを中心にテーマである階級社会の下層の人々、隷属する人々というのを、稽古の中でも繰り返し作ってきました。

そしてその上にいる貴族たち、貴族のなかで大英帝国を憂いている僕たちの思いだったりとか、そこに入ってくるシャーロック・ホームズの好奇心のままに生きる生き様だったりとか、色んなものが交錯している瞬間をぜひ観ていただきたいな、というのを感じます。

平野:登場人物がみんなキラキラしておりますので、“魅力という極上の謎”を提供できるんじゃないかなと思っております。

格好良いイケボでそうコメントしたが、数秒の沈黙の後に「格好いいこと言ってるけどそれいつから考えてたの?」「いまの(記事の)見出し狙いでしょ」と吹き出す笑い声とともに、またしても左右からツッコミが入っていた。

テンポの良い会話が印象的で、稽古場や楽屋でのやり取りも想像できるような一幕である。

久保田:モリアーティ陣営を演じさせて頂くんですけど、敵には敵の正義があり、シャーロック・ホームズにはシャーロック・ホームズの正義があり、見えない正義の戦いを観ていただけたらな、と思います。

山本:モリアーティ側とホームズとの駆け引きだったり戦いっていうのが、僕自身舞台上で演じていてすごくワクワクするので、そこが見どころです。

鎌苅:僕はワトソン役なので、なんといってもまずは平野良演じるシャーロックが見どころではあるんですが、(シャーロックとモリアーティの)双璧がどうなっていくか。そこに僕たちも絡んでいくので、どうやって絡んでもつれて解けていくのか、というところを観ていただきたいです。

鈴木勝吾を軸にして、この2人がカンパニーをぎゅっとまとめてくれていますので、どこも手を抜くことなくそれぞれの役を生きようとしている姿が、現代を生きる皆さまになにか伝わればいいなと思います。

ーーモリアーティ陣営とシャーロック陣営がありますが、個人的にモリアーティ派かシャーロック派か教えてください。

鈴木:探偵が好きなので、シャーロック・ホームズやれるのいいなってすごく思っていました(平野を見ながら)。ただ、ウィリアムチームは体制に反旗を翻していく世直し精神があって、そういうのも僕は大好きなので、甲乙つけがたいんですけど……。でもシャーロック・ホームズやりたいな!(笑)

最後は本音がポロリとこぼれ、少年のような笑顔をみせてくれた。

平野:心はモリアーティチームなんですよ。だけどビビリなんで、どっちかって言ったらワトソンですね。ワトソンという人間が1番近いかな、と。誠実だし、嘘つかないし……(と、ここで“相棒”であるワトソン役の鎌苅から「いま、彼は嘘をついています」と絶妙なツッコみが。2人のコンビ愛を感じるやり取りに、つい感心してしまった)

(モリアーティのような)ダークヒーローはすごく憧れるんですけどね、だけど実際そんな度胸はないな、と。

久保田:モリアーティ側ですかね、ダークヒーローは男の憧れ的なものなので。なので今回はその立場にいるので、すごくやりがいを感じています。

山本:僕は謎を解く側がいいですね。仕掛けた謎を簡単に解かれたらイラッとしそうなので、謎を解く側のほうがストレス発散になるかなと。

鎌苅:私はシャーロック側でございます。やはり、ワトソン役を演じていますのでワトソンがいいということを、声を大にして言いたいです。

モリアーティはちょっとしんどそうで、普段の生活からモリアーティの3人は僕らよりももう1個負荷をかけていると思うので、そういう意味ではちょっと朗らかになれるこっちの方がいいな、と。

平野:シャワーとか、(モリアーティの3人は)きれいそうじゃん。

生活感というキーワードから、それぞれの役がどうシャワーを浴びていそうか、という話に。

鈴木が優雅な雰囲気でシャワーを浴びる様子を再現すると、「シャーロックは?」と聞かれた平野は桶でお湯を頭からかける仕草を見せた。これはもちろん原作関係なくそれぞれのイメージではあるが、会見はおおいに盛り上がった。

ーーお客様へのメッセージをお願いします。

鎌苅:素晴らしい原作をミュージカルで観られるということも、時代を遡れる作品を今観られるということもとても楽しみです。この時代を見届けていただけたら嬉しく思います。

山本:原作ファンの方も、原作を知らない方もすごく楽しめると思いますし、原作を知らない方はこの舞台を観て原作を読みたくなる。そんな作品なので、ぜひ観ていただきたいなと思います。

久保田:ただ原作を舞台化したという作品ではなく、そのなかに人間模様やいろんなドラマが描かれております。音楽とあわせて心情を表現していますので、すごい大作になっていると思います。ぜひお楽しみください。

平野:コナン・ドイルのシャーロック・ホームズを原案としているので、もちろんストーリーは面白いですし、目で観て楽しい、音楽的に耳で聴いて楽しい、そして観終わった後に頭で考えて楽しい。とてもたくさんの“タスク”が詰まっている作品です。

それを彩るキャスト陣営の“魅力という最大の謎”(周囲からは「また〜」と一斉に声があがった)で皆さまをお迎えしますので、ぜひ遊びにきてください。

鈴木:『憂国のモリアーティ』という素晴らしい原作をミュージカル『憂国のモリアーティ』として改めて皆さんにお届けできるのが非常に楽しみです。

モリアーティ陣営からすると、体制に反旗を翻し、時代に反旗を翻していく。一緒くたにするわけではありませんが、演劇っていうのはそういった歴史があったのかなとも感じますし、階級社会のなかに生きる人たちへのテーゼだったりもするので、お客様も今の時代に投影して観ていただけたらいいかな、と思います。

大英帝国の物語ですが、今の日本における色んなことをこの舞台を通して皆さんに問いかけたいな、と思っています。そのあたりを劇中で感じていただけたら嬉しいなと思います。

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公演情報

タイトル

ミュージカル『憂国のモリアーティ』ミュージカル

原作

【構成】
竹内良輔

【漫画】
三好輝『憂国のモリアーティ』(集英社「ジャンプSQ.」連載中)

脚本・演出

西森英行

音楽

ただすけ

期間・劇場

【東京】
2019年5月10日(金)~19日(日)
天王洲 銀河劇場

【大阪】
2019年5月25日(土)~26日(日)
柏原市民文化会館リビエールホール 大ホール

出演

ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ:鈴木勝吾
シャーロック・ホームズ:平野良
アルバート・ジェームズ・モリアーティ:久保田秀敏
ルイス・ジェームズ・モリアーティ:山本一慶
セバスチャン・モラン:井澤勇貴
フレッド・ポーロック:赤澤遼太郎
ジョン・H・ワトソン:鎌苅健太
ミス・ハドソン:七木奏音
ジョージ・レストレード:髙木俊
レニー・ダブリン男爵:山岸拓生
ジェファーソン・ホープ:山﨑雅志
ブリッツ・エンダース伯爵:小南光司
安島萌
荒木栄人
伊地華鈴
大澤信児
貴嶋美愛
今野晶乃
佐々木駿也
下道純一
白崎誠也
堀部佑介
松谷嵐
ほか

チケットについて

【(※)プレミアムチケット】
10,800円(税込)

※公演パンフレット(販売品)とプレミアムチケット限定グッズ(非売品)がセットになっているチケット

【一般】
7,800円(税込)

チケットの取り扱いについて

未定

公式サイト

https://www.marv.jp/special/moriarty/

公式Twitter

@mu_moriarty

公式Instagram

@mu_moriarty

Ⓒ竹内良輔・三好 輝/集英社 Ⓒミュージカル『憂国のモリアーティ』プロジェクト

WRITER

双海 しお
 
							双海 しお
						

アイスと舞台とアニメが好きなライター。2.5次元はいいぞ!ミュージカルはいいぞ!舞台はいいぞ!若手俳優はいいぞ!を届けていきたいと思っています。役者や作品が表現した世界を、文字で伝えていきたいと試行錯誤の日々。

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