12月2日(金)、舞台「はじまりのカーテンコール~yourNote~」が開幕する。本作は、俳優・植田圭輔の、初演出・原案作品。高校生のゆうき(演:高崎翔太)、つとむ(演:田村心)、りょう(演:安西慎太郎)を中心に、夢を追う彼らが苦悩しながら成長していく姿を描いたストーリーだ(脚本・伊勢直弘)。
2.5ジゲン!!では、本作の稽古場を取材。植田が自ら集めた、信頼の置けるキャストたちとの稽古の様子をレポート。さらに、植田の演出について高崎翔太と根本正勝(ウエマツ役)へおこなったショートインタビューもお届けする。
和やかでありながら気持ちが引き締まる稽古場
厳重に感染対策が施(ほどこ)された稽古場。この日は、シーンごとの稽古と初の通し稽古がおこなわれた。植田はタブレットデバイスを手に、時に実際に演じて見せながら、立ち位置の調整や動き方などを細かく指示していた。
指示するだけではなく、役者にも意見を聞き、提案を取り入れている様子が見える。
夢に向かって進むも、壁にぶつかり悩むゆうき(高崎)と、父親のまさし(演:和泉宗兵)。
ゆうきの親友・つとむ(田村)は、有名大学への進学を夢見ている。
るい(演:古谷大和)とりょう(安西)。りょうは、俳優になる夢を持っている。りょうが東京へオーディションを受けに行くところから、本作のストーリーが動き出す。
シーン稽古では細かい演技指導をしていた植田も、通し稽古では後方の席から真剣なまなざしで芝居を見守る。
和やかなシーンでは、思わず笑みが出る瞬間も。
高崎翔太「ストレスのない現場。植ちゃんが何かやる時には絶対に協力したいと思っていた」
――植田圭輔さんの初演出作品ですが、稽古場の雰囲気はいかがですか?
高崎翔太:植ちゃん(植田)は初めての演出だし、皆で話し合いながら稽古を進めていくんだろうな…と思っていたんです。でも、そうではありませんでした。しっかりと全部プランを練ってきてくれていたので、僕たちはその世界観を作り上げていくだけです。キャストもスタッフも皆さん気持ちのいい方ばかりで、お芝居が大好きなプロフェッショナルが集まっています。みんな自分がやるべきことを一生懸命やっていて、楽しくストレスなくやれている現場ですね。でも、僕はセリフ量が多いので、セリフ覚えの大変さは感じています!(笑)
――今作の現場でストレスを感じないというのは、特にどのような時に思いますか?
植ちゃんから出されるオーダーが分かりやすいんです。役者として共通の意識を持っているからかもしれませんが、指示も抽象的ではなく具体的で、しかもスピーディ。「次は何を言われるんだろう…」とハラハラしながら待たずに済んでいます(笑)。やりたいことがきちんと伝わってきますし、植ちゃんが十分に準備してきてくれたから稽古の進み方もとても速いです。あとは、セリフの覚えも含めて僕自身がうまくやれれば…と思っています。
――とても効率がよく、色々な面でスピーディな現場なのですね。
植ちゃんが役者としてやってきた経験が生きていると感じています。植ちゃんはとても忙しいので、稽古の残り期間が少ない状態で現場に合流することも多いんです。その中で「こうした方がいいな」と感じたことを取り入れてくれているんでしょうね。みんながやるべきことをサッとやって早く稽古を終えて帰れる、そこもストレスを感じない点です。
植ちゃんが集めたメンバーなので、植ちゃんも役者を信じて託してくれているシーンがいくつかあります。役者にシーンを託すかどうするかの判断は難しいと思うのですが、信じてもらえるのは嬉しいことですね。
――高崎さんはセリフ量が多いとのことですが、全体を通してどんな作品に仕上がっているのでしょうか?
最近は、登場人物に見せ場やセリフが比較的均等に与えられている作品が多いように感じますが、本作は主人公を軸に話が進む作品です。だから僕のセリフ量はとても多いですし、頑張らないといけません。
僕が演じる“ゆうき”が高校生のときから話が始まるので、現在34歳ではありますが青い物語を味わわせてもらっています。役者を目指す人たちが描かれる話なのですが、伊勢直弘さんが脚本を論理的に組み立ててくださっていて、実際に役者の方が観ても納得いくと感じています。役者を目指すときの第一歩や、やるべきことがきちんと書かれているので、これから役者を目指そうと思っている人が観たとしたらとても勉強になると思いますよ。演じていて、自分の経験を振り返って「こんなことあったなぁ」と感じることがたくさんありますし、共感しながら稽古を進めています。
――最後に、本作を楽しみにしているファンの皆さんにメッセージをお願いします。
以前、僕が初めて脚本を書いた映画の作品に、植ちゃんは主演で出演してくれました。その時から、植ちゃんが何かをするときには絶対に協力したいと思っていたんです。だから今回、声をかけてもらえて本当に嬉しかったですし、植ちゃんのやりたいことや世界観を十二分に引き出せたらと思っています。
“植田圭輔の初演出作品”という看板を見て観にきてくださる方も多いと思います。観劇されるときも、そのことがどうしても前提として頭の中にあるかもしれません。でも、すべてを忘れてしまうほどに物語の世界へ皆さんを引き込めたら…と思っています。ぜひ劇場まで足を運んでいただけると嬉しいです。お待ちしております!
根本正勝「圭輔は柔軟で熱い。彼の求めるオーダーに応えたい」
――本作はあらすじを拝見すると、とてもリアルな人間関係や心理描写が描かれる作品だと感じます。
根本正勝:僕たちが普段生きているこの世界と変わらない世界観のリアルな話です。友情、青春、親との対立、それから社会に出てぶつかるさまざまな大きな壁。誰にでもそういうことはあるのではないかと思うので、お客さまにも共感していただけるのではないかと。役者をやっている身としては、本作のキーワードにもなっている“役者”の部分にとても共感します。
――共感するところが多いリアルな世界線の作品と、エンタメ要素の強い作品とでは役作りは変わりますか?
どんな世界線であっても、その中で交わしている人と人との会話には嘘はつけないし、リアルなものだと思っています。もちろん表現の方法は違いますが、大枠は同じなんですよね。どんな役でもキャラクターでも、1人の生きている人間としてとらえれば。これからも、どちらも演じていければいいですね。
――7人という比較的少人数のキャストでの舞台です。稽古場の雰囲気はいかがですか?
無駄がなく、コミュニケーションも取りやすく、とてもいい現場ですよ。圭輔が考えてきてくれたプランをきちんと捉えて表現しようとしている人たちばかりです。稽古も、きちっとやるときと休むときのメリハリがきいていて、バランスがいいですね。
――植田さんと長い付き合いだからこそ感じる、演出面や稽古場作りでの「植田さんらしさ」はどこでしょうか。
柔軟さと熱さですね。舞台は、1カ月ほどの時間をかけて作っていくぜいたくなものですが、圭輔はそのずっと前から柔軟にスタッフの皆さんとコミュニケーションを取って、充分に準備してきてくれたのだと感じます。初日の立ち稽古で位置取りをしたのですが、すでに「圭輔はこうしたいんだ」と察するものがありましたし、迷いがなくてやりやすいです。
圭輔は稽古中に役者や周りをよく見ていて、自分が目指す方向に対して譲れない部分はしっかりと伝えてくれる一方で、僕ら役者の提示したものもどんどん取り入れてくれます。自分のやり方にこだわって枠を固めすぎてしまうこともなく、逆に、枠を突き破ったとしても「それおもしろいですね」と柔軟に対応できる。これは、圭輔がこれまで役者として得てきた経験値の高さによるものでしょうね、やりがいがあります。
柔軟にいろいろなことに対応している圭輔ですが、芯が熱い人なのは分かっているので、彼の求めるオーダーには応えたいと強く思っています。
――植田さんのように、第一線で活躍している俳優さんが脚本や演出を若いうちから手がけられることが増えてきたように感じます。根本さんはどのように感じられますか?
大賛成です! 僕も脚本・演出の経験があるのですが、その時にしか感じられないものや情熱というものがありますし、経験した人にしか分からない世界や見えない景色があります。これは脚本・演出に限らない話ですが、やると決めて行動した時点で7割くらいは成功していると僕は思っているんです。
やるからにはさまざまな挫折や苦労を経験すると思いますが、それは、動いた人だからこそ得られる勲章です。何かをやってみたいと思っている人は、その時の気持ちを大事にどんどん動いてほしいですね。僕は今回、そうやって動いてくれた圭輔の作品に参加できるのを嬉しく思っています。
――最後に、本作への意気込みとファンの皆さんへメッセージをお願いします。
圭輔のもとに集まった信頼できるキャストとスタッフで、今できる最高のものを作り上げていきます。今、わくわくしながら楽しみにしてくださっている方が、きてよかったと心から思ってくださるように。特別な空間である劇場という場所にくるのはやっぱりいいな…と感じて味わってもらえるものをお届けしたい気持ちでいっぱいです。ぜひ楽しみにしていてください。
取材・文・撮影:広瀬有希
広告
広告