インタビュー

植田圭輔、15年の経験を初演出にぶつける 『はじまりのカーテンコール~your Note~』に懸ける思いとは

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俳優デビューから15年。プレイヤーとして着実に歩み続けている植田圭輔が『はじまりのカーテンコール~your Note~』で初めて原案・演出に初挑戦する。

本作は、青臭く不器用でも、夢を信じて進む若者たちの青春群像劇。植田が経験してきた演劇の世界にも重なる等身大の物語である。

なぜ今、原案・演出に挑むのか? 本作へ懸ける思いを聞いた。

――まず、この企画が生まれた経緯を教えてください。

これまでたくさんの演出家と出会い、その人独自の色や才能を知っていく中で、20代後半ぐらいから稽古場で演出家を見ていることが多くなった自分に気づいて。自分は演出にも興味があるのかなと思い始めていました。

ちょうど昨年、『植田圭輔の舞台制作への道 Road To Stage Project』という配信番組が始まり、番組の中で「自分発信で実際に舞台をつくるとしたらどんな話がいい?」と聞かれて提案したのが今作の原案です。実現できるといいなと思っていたら、ありがたいことにお力添えをいただける今の制作チームがいて…という流れです。

――原案からスタートしたのですね。今作では、高校の同級生3人を中心とした青春模様が描かれます。この物語を、と考えたのはなぜですか?

僕は小劇場から俳優活動を始めました。今は“2.5次元作品”と呼ばれる作品への出演も多いですが、「(舞台で)ただ生きている、それだけでいい」というシンプルだけど1番難しい点を養えるのが、今作のようなストレートプレイなんです。

加えて、僕は演出初心者なのでそこを何で補えるかと考えると、等身大の青春物かなと。身近にある事柄や今自分が考えていること、目にしている仲間・家族などにフォーカスを合わせていくうちに、自然とこういう物語になりました。

――脚本の伊勢直弘さんとは、どのように脚本を作っていったのでしょうか?

原案を脚本家に具現化してもらうためにはどう伝えていくのがよいのかわからなかったので、まず伊勢さんにご相談させていただきました。「ノーマルなルールもわからない初心者なので、どうやって進めていけばいいですか」、と。伊勢さんには「植ちゃんが思っていることを臆せずに伝えてほしい」と言っていただき、「もっとこういうセリフがいい」「役者の感覚としてはこうしたほうがいい」など、僕の考えを遠慮なく伝えて脚本に起こしてもらいました。

――では、演出家とはどんな位置付けだと考えていますか?

進むべき道を先導していく人であり、最終的には1番後ろでみんなのことを見守っている存在、かな。そして、本番になればあとは役者に任せて見守るのみ。稽古期間、場当たり、ゲネプロまでが仕事。出るとこは出て引くとこは引いて、その塩梅の上手な人が演出家としても才能があると思うので、そういう存在になれればと思っています。

――演出プランなどはすでに組み立てていますか?

ミザンス(芝居中の動きや位置)に関しては細かくつけていく予定はないですね。例えば、舞台として美しくみせるためにシンメトリーになっているか、動きをどうそろえるかなど全体の配置を決めていくのも演出だと思いますが、この作品に関してそこは必要ないんです。もちろん全体のバランスや段取りは考えますが、俳優それぞれがやりたいことを明確に持ってきてくれると思うので、俳優と話しつつ決めていきたい。そこに柔軟に対応できるよう準備をしていくのが、僕の演出の第一歩です。

――出演者は、俳優として共演したことのある方ばかりですね。

はい、なので稽古でこの人はスロースターターだとか、いきなりトップギアからくるだろう、など予想はできます。でもそれはあくまで役者として共演したときの目線。演出の立場で見ると違うかもしれないので、自分が思い描いているイメージを強要したくない。この現場で、皆さんのあり方がより素敵になっていけば、ということを考えています。

――特に夢もない主人公のゆうき、有名大学を目指すつとむ、俳優を夢見るりょう。物語は親友3人たちの変化をあたたかく見つめる一方で、演劇業界の裏話や、夢と現実への切実な思いも描かれます。

業界の裏側を見せている感覚はあまりないのですが、リアリティは大事にしています。ゆうきをはじめ登場人物が悩んでいることは、どんな職業に関してもあると思うんです。お客さまにはそこに自身を投影してもらいたいですし、「どう切り抜けていくか」を一緒に考えてほしいと思っています。

――物語の中のポイントなどあればお聞かせください。

例えば、根本(正勝)さん演じるウエマツは僕にとってのポイントだと思っています。ウエマツのせりふには僕が周りから言われて心に響いた言葉などを入れているんです。伊勢さんには人物の性格や背景を話して、それぞれの役を書き起こしてもらったのですが、ウエマツは特にそれを細かくやりました。

――俳優を目指すりょうの言葉もとても興味深い内容ですね。

りょうは言葉で生きざまを納得させられるようなキャラクターで、今作のアイコンのような存在になってほしいと思って、安西慎太郎くんにお願いしました。その言葉を誰が言うかで、内容の濃さが変わると思うんです。本気で取り組んでいる人がいえば真実になるし、わからないまま言っていたらその場しのぎの言葉として流れていくだけ。しんた(安西)じゃなきゃ納得させられないせりふも多くて、難しい役を渡していると思います。

――「親の後を継ぐだけ」と漠然と生きていたゆうきの変化も見どころです。

ゆうきは、男女問わず現代人の大多数が通るであろう道を歩いていますよね。現代は、自分の将来について明確な夢や目標を描きづらい世の中なのかなと思うんです。「服が好きだからなんとなく服屋さんになれたらいいな」とか、「なんとなく安定してそうだから公務員かな」みたいな人も多い。でも、“なんとなく”は夢じゃないと思う。だからこそ、ゆうきという存在が最もお客さまの等身大になるように、と最初から考えていました。

ゆうきは、なんとなく生きてきて、なんとなく友達と一緒にいる時間が大事で、友達が青臭いこと言えば一緒にテンションあがって応援もする。めちゃくちゃリアルな学生像です。そんな学生も時を経て大人になったらいろんなことがあって。当たり前だと思っていた日常がそうじゃなくなっていく中で、彼が何かを見つけ出し悩んで、それでも生きていく、ということをゆうきには託しています。

――ほかにも、高崎翔太さんと田村心さんのシーンなど、演劇的な仕掛けも多くて興味深いです。

そこは、プレイヤーからしたら旨みの部分になると思います。びしっとはまれば、俳優自身もどんどん乗っていけるし、感覚がとぎ澄まされていくはず。本人たちの実力勝負でもあるので、そこも一緒に楽しんでいければと思っています。

――植田さんご自身のこともお聞きします。俳優を目指したきっかけは?

僕は、役者になりたいとか芸能界に入りたいとは一切思っていなかったんです。ジュノン・スーパーボーイ・コンテストの参加をきっかけに、なんとなく流れにのって舞台に立つようになって。気づいたら俳優業が「自分にはこれしかない」という存在になっていた。だけどまさか自分が舞台演出をやるとは思っていなかったので、「人生おもろいなぁ」というのが今の率直な感じです。

自分にとっての分岐点をくれる人と出会うことができて、今があるというのをすごく感じますね。10代の頃はとにかくテレビドラマに出たかったのですが、いつしか「とにかく芝居がやりたい」になっていき、より濃いものを時間かけてつくりあげたくなり、それが演劇でした。いろんな役を演じる中で、興味も広がり、演出家にも挑戦できる。好きなことを続けてきたからこそ、この流れが生まれたのかなと思います。

――演出は今後も続けていこうと思いますか?

それはこの作品が終わってからでないとわからないですね(笑)。人に物事を効率よく伝えることが得意で、演出家に向いていると言われますが。でも、僕自身が1番好きなのはプレイヤー。両方を続けていくかは、自分の心がむくままに素直に決めていきたいです。

――インタビューでも、自分の考えを端的に言語化して伝えているのを感じます。

具体的に伝えないことがカッコいいという時代もあったと思います。演出家は「違う!」とだけ言って、何が違うのか具体的には教えてくれない。だからずっとわからないままで、でも「自分で気付け!」と言われるのでそういうものかと思って悩んだり。そこに大事な部分もあるかもしれませんが、時間もかかるし効率的ではないと考えるようになりました。

最近は、演出家と役者との間のハラスメントに関する改善がされつつあります。コロナ禍でマスクをつけて稽古をするなど制限も増えている。そうなると効率も重視されますし、きちんと言葉で伝えていくことがより大事になってくる。今、求められるのは人間関係もスマートにこなせる人だと思うんです。「黙って自分についてくればいいんだ」という武将みたいなタイプではなく、いわゆる「軍師」みたいな人がトップにふさわしい時代じゃないかなと思うんです。

言葉で伝えていくことは難しいし根気がいるけど、僕自身も日ごろから意識しているので、演出家としても丁寧に言葉で伝えて創作していくということには自信をもって取り組めると思います。

――最後に、観終わったお客さまにはどんなものを持って帰ってもらいたいですか?

俳優のときは、「この役に感情移入してほしい」や「こう感じてほしい」などがありますが、この作品に関しては少し感覚が違いますね。何かを始めるとき、近くには家族や友人や誰かがいるはずで、生きていれば必ず誰かに支えられている。自分の人生は自分ひとりのものではなく、そういう周りの人たちの人生でもあると感じてほしいです。

観に来た人には、自分の目で見て、自分が感じたことを大切にしてほしい。この作品を「きれいごとでしょ」と言う人もいるかもしれない。自分でそう感じたならそれでいい。でも、別の受け止め方をする人がいるかもしれない。「自分とは違う感性が存在するんだ」ということも伝えたいメッセージの1つです。

登場人物たちの言葉を聞いて、「周りにいる人をちょっと大事にしよう」とか「もう少し頑張ってみよう」とか、そういう風に思ってもらえたらうれしいです。ふと立ち止まったときに思い返してもらえるような作品になるといいなと思っています。

取材・文:田窪桜子
(C)はじまりのカーテンコール製作委員会

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公演情報

タイトル

「はじまりのカーテンコール~your Note~」

公演期間・劇場

2022年12月2日(金)~12月11日(日)
東京・六行会ホール

原案・演出

植田圭輔

脚本

伊勢直弘

出演

ゆうき:高崎翔太
つとむ:田村心
りょう:安西慎太郎
まさし:和泉宗兵
るい:古谷大和
タケル:河原田巧也
ウエマツ:根本正勝

制作

株式会社FAB

公式HP

https://www.fabinc.co.jp/curtaincall

公式Twitter

@_yourNote_

(C)はじまりのカーテンコール製作委員会

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