レポート

信念の果てに見える“セカイ”とは 『悪を以って愛と成す』ゲネプロレポート

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鵜飼主水と萩原成哉のユニット・劇団MNOP(もんどなるやオリジナルプロジェクト)による新作公演、eeo Stage action 劇団MNOP#2『悪を以って愛と成す』が10月26日(水)に初日を迎えた。

2.5ジゲン!!では公演前に、主宰であり主演兼殺陣振付の鵜飼主水と富田翔との対談インタビューも実施した本作。本記事ではゲネプロレポートを劇中写真とともにお届けする。

ストーリーの核には触れないが、全体のあらすじや世界観、登場人物の役どころも紹介しているため、事前情報なしで観劇したい場合は観劇後に読んでもらえたらと思う。

信じるもの、信じられないもの、愛するもの、憎いもの、守りたいもの、壊したいもの。それぞれの想いを胸に刀を握る男たちの生きた証を刻む、生き様の物語と熱気が劇場を満たした。スーツ×日本刀アクションを堪能したい人はもちろん、重く痛く苦しいけれども胸抉られる物語に触れたいという人にはぜひ足を運んでもらいたい作品だ。

かつて享次(キョウジ・演:鵜飼主水)という男が“セカイ”の頂点に立った。その傍らには、彼がこれから作るセカイを見届けたいと願う公羊(クヨウ・演:富田翔)が立っている。しかし20年後、セカイを征したはずの享次の姿はそこに無く、街は混沌に包まれていき…。

▲左から公羊(演:富田翔)と享次(演:鵜飼主水)

争いが起きては頂点に立つ男が現れ、世界は平和になる。それが繰り返される世界で、先の争いの渦中にいた男たちは、争いの後に訪れた“平和”と呼ばれる時代で何を願い、どう生きるのか。

姿を消した享次に、孤独のなかで己の信念を貫き続ける公羊、戦場で拾った命に生きる意味を見出す信(マコト・演:土田卓)、祈りを捧げ続ける祈(イノリ・演:吉田宗洋)。回想シーンも織り交ぜながら、彼らが今に至った経緯が繊細に綴られていく。

▲渋いスーツ姿と漂う孤独感が見事にマッチする公羊

▲独特な存在感を放つ祈(演:吉田宗洋)

争いを知る大人たちと、争いを知らぬ若者たちとの対比も印象的に描かれていた。若者たちは、「セカイを守るために戦う」という使命を本能的にまっとうしようとしている。とくに仁(ジン・演:星璃)と陽(ハル・演:伊藤澄也)は、大人にそう教えられて生きてきたのか、まっすぐに戦うことを信じている若者たちだ。

さらにそれぞれの思惑や願いを胸に秘めた刻(トキ・演:中尾拳也)や愚(オロ・演:須永風汰)、純(スミ・演:黒木文貴)、流(ナガレ・演:奥村等士)の生き様も交錯していく。

▲ある絆で結ばれている純(演:黒木文貴)と信(演:土田卓)

▲中尾スマイルを封印した役どころに注目の刻(演:中尾拳也)

▲不思議な存在感で作品のスパイスとなっていた愚(演:須永風汰)

▲名前通りまっすぐな青年・純(演:黒木文貴)

▲インテリな雰囲気漂う陽(演:伊藤澄也)

▲仁を演じる星璃の身のこなしは流石の一言

▲面白い役どころを担う流(演:奥村等士)

見どころはなんといっても、主演の鵜飼が担当している殺陣だろう。幕が開けると同時に始まる大立ち回りに、登場人物総出演で殺陣ありのオープニング。最初の10分だけでも、所狭しと繰り広げられる大迫力の殺陣を堪能できる。しかも今作は衣装がスーツとあって、細かな所作や美しいシルエットも楽しめる仕様となっている。

享次の豪胆な人柄を表す鵜飼の立ち回りや、富田が演じる目の見えない公羊の鬼気迫る殺陣は、ベテランならではの迫力を感じられた。

狂気をはらんだ中尾演じる刻の恐ろしさや、須永演じる愚の柔和な表情の下の底しれぬ不気味さ、等身大な姿に思わず感情移入したくなる黒木演じる純のピュアさ。それぞれの個性が役者によって丁寧に引き出されていたおかげで、やや複雑に感じる相関図も素直に受け取ることができた。

全体的にハードな世界観だが、友情を感じられる仁と陽のやりとりや、流の無垢さが、作品のよいスパイスになっていたように思う。

また、本作では楽曲提供のシンガーソングライター・おだともあきが詠詩(エイジ)役として舞台初出演を果たしている点も見逃せない。詠詩の歌声が争いばかりのセカイに鳴り響くとき、その歌はどんな意味を持つことになるのか。同じく言葉で紡がれる演劇の世界を愛する者にとって、彼の歌声が響くシーンはこみ上げてくるものがあるかもしれない。

▲祈と言葉を交わす詠詩(演:おだともあき)、彼の劇中歌に注目だ

戦い他人を傷つけることが当たり前となってしまったセカイで、愛と正義と悪は、このセカイを生きる者たちをどんな結末へと導くのか。物語が示すひとつの結末が胸に刺さると同時に、決して平和とは言い切れない現実を生きる我々に、そっと寄り添って勇気を与えてくれる作品になっているのではないだろうか。

主演であり主宰でもある鵜飼は、MNOP(もんどなるやオリジナルプロジェクト)として「あなたのためのエンターテインメント」を掲げている。つまり、この物語の結末をどう受け取るのかは、観劇したあなた次第なのだ。自分ならこの物語にどんな意味を見出すのか、そんな気持ちで劇場に足を運んでみてほしい。

eeo Stage action 劇団MNOP#2『悪を以って愛と成す』は、東京・CBGKシブゲキ!!にて、10月30日(日)まで上演予定。

取材・文・撮影:双海しお

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公演情報

タイトル

eeo Stage action 劇団MNOP#2『悪を以って愛と成す』

公演期間・劇場

2022年10月26日(水)~10月30日(日)
東京・CBGKシブゲキ!!

出演

享次(キョウジ):鵜飼主水

刻(トキ):中尾拳也
愚(オロ):須永風汰
仁(ジン):星璃
陽(ハル):伊藤澄也
純(スミ):黒木文貴

流(ナガレ):奥村等士
信(マコト):土田卓

祈(イノリ):吉田宗洋
詠詩(エイジ):おだともあき

公羊(クヨウ):富田翔

脚本・演出

萩原成哉

殺陣振付

鵜飼主水

楽曲提供

おだともあき

音楽

黒木脩平

協力

MNOP、ワタナベエンタテインメント、サムライロックオーケストラ、GVM、バッテリー、和奏AGENCY、サンミュージック

公式HP

https://eeo.today/stage/title/akuai

公式Twitter

@eeo_stage

(C)2022 MNOP『悪を以って愛と成す』/eeo Stage

WRITER

双海 しお
 
							双海 しお
						

アイスと舞台とアニメが好きなライター。2.5次元はいいぞ!ミュージカルはいいぞ!舞台はいいぞ!若手俳優はいいぞ!を届けていきたいと思っています。役者や作品が表現した世界を、文字で伝えていきたいと試行錯誤の日々。

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