10月26日(水)から東京・CBGKシブゲキ!! にて、eeo Stage action 劇団MNOP#2『悪を以って愛と成す』が開幕する。
本作は、鵜飼主水と萩原成哉のユニット・劇団MNOP(もんどなるやオリジナルプロジェクト)による新作公演。暴力があふれ無法地帯となった街で、守るものを持つ11人の男たちが黒スーツに身を包み、日本刀でアクションを繰り広げる。頂点に立つ男は何を持ち、何を見るのか…?
2.5ジゲン!!では、主演兼殺陣振付の鵜飼主水と富田翔に対談インタビューを実施。スタイリッシュなビジュアル撮影の裏側や稽古場の雰囲気、お互いに感じていることなどについて語ってもらった。隙あらばジョークを飛ばす富田に鵜飼が突っ込む、息の合ったインタビューをお届けする。
――まず、本作の制作とご出演が決まった時のお気持ちからお聞かせください。
富田翔(公羊/クヨウ役):主水はオーディションだもんね。
鵜飼主水(享次/キョウジ役):主宰! 主宰だから!(笑) 僕は、今作で脚本・演出を担当している萩原成哉とMNOP(もんどなるやオリジナルプロジェクト)というユニットを組んでいて、普段は無声劇を織り込んだ朗読劇をおこなっています。今回は “劇団MNOP”としては2作目であり、朗読劇ではなく大人数で作り上げる初めての舞台です。
出演していただく方々も成哉と相談して、「この方と一緒に舞台をやりたい!」と思う人を集めました。わがままを言ってお願いした方ばかりなので、決まった時は「夢がかなった!」という気持ちでした。この公演ができるのをとても幸せだと感じています。
富田:僕は、主水と成哉くんに急に呼び出されて…。
鵜飼:言い方! 怖い話じゃないですよ!(笑)
富田:たくさんの殺陣や、「男たちだけの物語を作りたい」という話や、お2人が見せたいものを熱く語ってくださって。その舞台に自分を必要としてくれているんだ、と思いその場ですぐに「ぜひやらせてください」とお返事しました。
――今回自身が演じられる役について簡単な紹介と、ご自分との共通点がありましたら教えてください。
鵜飼:僕が演じる享次は、いわゆる“主人公らしい”人物ではあるのですが、同時に、情けない部分もあります。話の中で彼にとっては大きなできごとがあって、そこでつまずき、とことん落ちてしまうその落ち方や情けない部分が自分に似ていると感じます。
人は何かを失ったとき、それをどれだけ本気で大事にしていたかによって、感じる喪失感や衝撃度が大きく変わると思います。僕自身、今年に入って舞台の予定が何本かなくなってしまったときはとても落ち込みましたし、きつい思いもしました。でもそのような状況になったからこそ、失ったものがどれだけ大事だったのかを改めて認識したり、環境を変えたいと思い立ったり、助けてくれる人の存在に気づけたりもするんですよね。
先日誕生日を迎えて35歳になりました。これまで得てきた経験をお芝居に乗せて、本作を届けられたらいいなと思っています。
富田:僕の演じる公羊は享次に対して、“この男に懸けている”と言えるほどにとても強い思いを抱いています。でも、あるできごとがあって裏切られたと思い込み、20年も姿を消してしまうんです。強い信念を持っている人物なのですが、周りに協力してくれる人や相談できる相手がいないために、その信念がどんどん間違った方向へと行ってしまいます。僕も公羊と似たところはありますが、幸い僕には助けてくれる方々が周りにいたので、彼のようになりませんでした。
「生きるためには戦うことや人を殺(あや)めることがあたりまえ」という、現実とは異なる価値観の世界なので、孤独ではあるけれども孤独を普通に感じている面もあります。そんな人たちで構成されている世界ですが、気持ちのすれ違いや行き違いを表現して、彼(公羊)の内面を引き出していければと思っています。また、公羊は目が不自由な人間です。お芝居は目を開けてしますが、目が見えないことをどう表現するかが難しいですね。
――お互いに「ここがすごい」と感じている点を教えてください。
鵜飼:僕は今作では主宰に加えて殺陣振付もしているので、やることがとても多いんです。場を進行させなければならないのに、あれこれ考えていると頭がいっぱいになってしまうこともあって…。そんな時、翔さんが場を和やかにしてくれることで、稽古場の流れが止まらずに済んでいます。自然にその場をまとめたりもしてくれるので、器が大きいしすごいな、と感じています。
富田:主水はやることが多いので、僕が担える部分は担えれば、と。やはり舞台は本番がすべてなので、そこに向けて作品を作りあげていく稽古場をしっかりまとめられたらと思っています。
鵜飼:それから、ひとことの発信力がすごい。普通の人なら何か言っても周りの数人にしか伝わらないけれど、翔さんの言うことは全員に伝播するんです。人を惹きつける力があるんでしょうね。とても助かっているし、稽古が楽しいです。
翔さんには嘘がありません。責任感が強く自分のやるべきことに対してまっすぐですし、しっかりとこなしたい部分への筋が通っています。ふざける時はふざけるんですけれど(笑)。主役としての在り方も脇で支える存在の居方も熟知しているので、頼りになりますね。
富田:そんな大したことじゃありません(笑)。今作ははじめましての方が多いから、積極的にコミュニケーションを取っていかないと、とは思っています。まったくふざけ所のない役なので、稽古場でふざけておかないと怖い人だと思われちゃうから(笑)。
――富田さんは鵜飼さんについてどのように感じていますか?
富田:主水は、助けたくなる人ですね。すごくしっかりして隙が無いように見えて実はとても人間味があるから、「主水のために頑張ろうぜ!」という空気が生まれやすいと感じています。人間味って、ダメな自分をさらけ出すことによって生まれることもあると思うんです。僕はそれができるまでにとても時間がかかったので、主水はすごいな、と。
それからやっぱり、主水が付ける殺陣は面白いです。これまでさまざまな殺陣をやってきましたが、主水のは想像できない“手”が来るんですよ。役者として出演していながら他の役者にも動きと“手”をつけるのは、自分には到底できないしすごいなと感じています。だからこそ、テンションが上がって「いい殺陣付けんじゃねえか!」と、ふざけてしまうんですけれど(笑)。
――キービジュアルは黒スーツ×日本刀のスタイリッシュなものですね。ビジュアル撮影時のエピソードや、衣装についてお聞かせください。
鵜飼:「日本刀×スーツでやりたい!」というコンセプトは初めからあって、それをお伝えしたところ、素敵な衣装を作っていただけました。撮影のとき僕はポージングなどのディレクションをしていたのですが、「かっこいい!」とずっと言っていましたね。これは勝ったなと(笑)。僕自身の撮影では、ロングコートの“ひらみ”を活かしたくて、躍動感が伝わるように動きました。
富田:撮影時はちょうど某野球のイベントに合わせて体を作っていた時だったので、筋肉で衣装が全然入りませんでした(笑)。撮影中は「大丈夫ですよ」なんて言われたんですけれど、写真を見るとパンパンですね!(笑) 実際にスーツを着て動くとなると可動域の問題も出てきますし、汗をかいたらより動きづらくなりそうです。
鵜飼:靴も、革靴でやりますしね。段差が多いセットになる予定なので、アクションのときに体にかかる負担が大きいです。だから、とにかく怪我だけはしないように。日本刀×スーツのかっこよさを活かしながらも、気を付けていきたいです。
――稽古場の雰囲気はいかがですか?
富田:殺伐としています。
鵜飼:何でだよ(笑)一番空気をほぐしてくれているのは、あなたでしょ!(笑) 和気あいあいとしています。
富田:僕が稽古で衝撃を受けたのは、おだともあき(詠詩/エイジ役)さんですね。歌はもちろん圧巻。初めてのお芝居だと聞いていたのに、稽古を見ているとストレートに自分の心を真っすぐに出していて驚きます。僕とはお芝居が違うタイプで、怖ささえ感じるくらいです。たくさん練習しているんでしょうね。
鵜飼:そう、とんちゃん(おだの愛称)のセリフには“嘘”が少ない。お芝居は作られたものなので、いわば「嘘にどれだけ実感を込められるか、どれだけ本気になれるか」が肝(きも)だと思うんです。とんちゃんは、セリフの中にうまく実体験の感情を混ぜているのでしょうね。稽古を見ていて、彼自身の優しさが伝わってきます。
――おださんとは「お芝居が違うタイプ」とのことですが、富田さんは普段どのように役に命を吹き込んでいるのでしょうか?
富田:僕は、心・技・体で言う“心”を最後に入れています。そこに行きつくまでとても時間がかかるし苦しいのですが、最後に心を入れたいと思っていて。だから、まず心ができている人を見るとハッとします。須永風汰(愚/オロ役)も心が先のタイプですね。気持ちがセリフに乗ってまっすぐ飛んでくるように感じます。
僕は自分が持っていないものを持っている人に惹かれるので、この現場はとても刺激的です。今作は、“心”がしっかりできていないと成立しないシーンが多いので難しいですね。
鵜飼:うん、僕たち2人のシーンは特にそう。心ができていないまま“嘘”の言葉だけで会話すると、すぐお客さまにそれが伝わってしまう。稽古で、より人間らしさを詰めていく作業をしっかりとやり切りたいです。
富田:最後は心のままに。そのとき描いた感情でのやりとりに行きつければ、本当にいい作品になるんじゃないか、と感じています。
――タイトルにもついている「悪」。フィクションの世界では、悪は魅力的な存在として描かれることがたびたびありますが、お2人の考える「悪」のかっこよさについて教えてください。
鵜飼:悪役と呼ばれる側の人たちは、自分の信念に対して責任を持っていて、自信を持って「これが俺だから」と発信していると感じます。彼らは自分の行動を正義としてやり抜いているのに、片方から見たら“悪”とされてしまう。どの立場から見た場合に“悪”となるのかが難しいですが、自分の行動や信念に責任を持っているのはかっこいいなと解釈しています。
富田:信念を持っている“悪”に憧れの気持ちを持つ人は多いと思います。人は自分の中にある衝動などを抑えて生きている部分があると思うので、フィクションの世界でそれを思い切りやっている姿を見ると、かっこいいと感じるのでしょうね。何かをぶっ壊したい! と思っても、普通はだめだと教えられて育ちますから。
――本作では、それぞれがどのような信念を持って生きているのか注目ですね。では最後に、ファンの皆さんへメッセージをお願いします。
鵜飼:主宰として、毎日が幸せです。MNOP(もんどなるやオリジナルプロジェクト)は「あなたのためのエンターテインメント」を掲げて活動していますので、ご来場・ご観劇の際は、わくわくドキドキする気持ちや、来てよかったと思っていただける作品を作り上げます。機材席の解放などもしまして、まだお席がある日もございます。ぜひ初日から劇場へお越しいただければと思っております。
富田:今回、主水と成哉くんの舞台に初めて出演させていただきます。2015年の主演舞台では、演者であり殺陣指導にも入ってくれていた主水にとても助けられました。今回は逆の立場で、真ん中にいる主水を支えていきます。最後の最後まで戦い抜ける強い座組です。思いを強く持ってお届けしますので、ぜひ生の空間でご観劇ください。
取材・文:広瀬有希
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