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人と人とが共感し共存することの本質を問いかける、ミュージカル『SERI~ひとつのいのち』ゲネプロレポート

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conSept 新作ミュージカル『SERI~ひとつのいのち』が、10月6日(木)東京・博品館劇場で初日を迎えた。

本作は、娘・千璃(せり)の誕生にまつわる医療裁判、繰り返される千璃の手術などを記した倉本美香氏による『未完の贈り物(2012年刊)』が原作のミュージカル。千璃自身が感じたかもしれないことに想像を巡らせ、千璃と母、父の親子3人を通して、人と人とが共感し共存することの本質を問いかける作品となっている。

2.5ジゲン!!では、初日挨拶に登壇した千璃役の山口乃々華、千璃の母・美香役の奥村佳恵、父・丈晴役の和田琢磨と、その後に行われたゲネプロについてレポートする。

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初日を迎えるにあたり、現在の心境を聞かれた山口は「ワクワクした気持ちが強いです。こういう気持ちになったのは初めてです。これまでは緊張でお腹が痛くなってトイレから出られないというタイプだったので…。時間をかけて丁寧にお稽古してきたので、早く皆さんに観ていただきたい気持ちでいっぱいです」と、鮮やかなブルーの衣装に負けないぐらい、爽やかな笑顔で答えた。

続けて奥村は「まずはこの作品をお客さまにやっと届けられるということで、うれしい気持ちでいます。稽古でこれまでやってきたことを信じて演じたいと思います」と語り、和田は「とても温かい作品に仕上がったと思うので、早くお客さまに届けたいですし、座組の雰囲気を感じ取っていただきたいです。多くの方に千璃の生きざまを知ってほしいので、開幕するのがとても楽しみです」と答えた。

「作品の中で1つだけアピールするならどのシーン?」という質問に対して、山口は「たくさんいいシーンがあるのですが、その中でも無言劇に注目していただきたいです。せりふを言わずマイムで表現しているのですが、日常のにおいや空気感が伝わると思います」と語った。

奥村は「チームワークを見てもらいたいです。スタッフさんも含めて、必死にそれぞれの持てる力をすべて出しています。みんなで『よしっ!』という気持ちでやっていますので、そういうところを見ていただきたいです」と座組の結束力の強さをアピール。

和田は「千璃ちゃんを演じる山口さんが、せりふは少ないのですが身体表現で心境を表現しています。舞台袖から見ていても本当に感動しますし、言葉がなくても生きることに対しての情熱をすごく感じるので、ぜひ注目してほしいです」と回答した。

本作は“一つの命に贈る愛と祝福の物語”だが「最近まわりから愛されているなと感じた瞬間はありますか?」という質問に対して、3人がそれぞれ用意されたボードに書いて答えを発表した。

山口は「(奥村)佳恵さんからアメをもらったこと」とし、稽古期間中にアレルギーで鼻と喉の調子を悪くした山口に、奥村がのど飴をサッと渡してくれたエピソードを披露した。「ありったけのアメを全部くださいました(笑)。その時にあふれんばかりの愛を感じて、ママ最高! って思いました」と笑いを誘っていた。

和田は「みんなが集合した時に和田だけおらず、みんな『和田ならいいか』と言っていたそうです。それは愛と言えますか?」とボードに書き込んでいた。それを見た山口がすかさず「それって愛なんですか?」と突っ込みを入れる一幕も。

それに対して和田は「さっき楽屋で、(植本)純米さんに『僕がまわりに愛されている瞬間ってありますかね…』と質問したら、こうやって言われたんですよ。僕もそれって愛されているって言えますか? って言ったんですけど…」と笑顔で説明。

山口が「えー!それでいいんですか? 和田さんのおもしろギャグをみんなで笑ったりしてるじゃないですか~」と言えば、奥村も「常にみんなに笑顔を与えていらっしゃるし!」と付け加え、和田が座組のみんなから“愛されている”エピソードを代わりに披露した。

そして奥村は、愛されていると感じている瞬間は「常に」と答え、「座組全員が、お互いのことを思いやっている素晴らしい人たち。この作品は愛の中で作り上げたものだと思っています!」と力強くまとめた。

最後に代表して山口が「この作品には、人との支え合いや愛されているからこそ自分が存在できること、そして楽曲の歌詞にもいろいろ感じ取ってもらえる素敵なメッセージが詰め込まれています。ぜひ観に来ていただけたらと思います」と元気にメッセージを送り、初日挨拶は終了。

カメラマン:オノデラカズオ
(C)2022,conSept LLC

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ここからはゲネプロの模様をお伝えしよう。

物語は、ニューヨークで生活する美香と丈晴夫妻に初めての子どもが誕生するところから始まる。もうすぐ会える我が子に対してワクワクとした気持ちが抑えられない2人。生まれてくる子が女の子だと確信している美香は、名前を「千璃」にしようと提案する。

ところが生まれてきた子は、両目ともに眼球がないという障がいを持っていた。千璃をとり上げた産婦人科医は慌ててその場を立ち去り、看護師たちも動揺を隠せない。美香と丈晴は「おめでとう」と祝福されるはずだった我が子の誕生が、思いもよらない状況になったことに戸惑いを覚える。ここから美香、丈晴、そして千璃の長い闘いが始まるのだ。

千璃を演じた山口は、ほぼせりふはなく、高い台の上に乗り身体全体で千璃が感じたであろう心情を表現していく。もともとダンサーとして活躍していたこともあって、キレのある伸びやかなパフォーマンスに目を奪われる。そして、山口が自然に幼い子どもに見えてくる見事な振り付けにも注目したい。

美香役の奥村は、せりふと歌の多さに圧倒されるほど、思っていた以上にパワーがいる役だと実感した。そうした中で美香の心境の変化を表現していくのは、大きな苦労を伴ったはずだ。

ゲネプロ前の挨拶で山口が見どころとして挙げていた「無言劇」がその最たるものだといえるだろう。千璃が生まれてから経験してきた美香と丈晴の日常を、せりふなしで表現していくのだが、笑顔だった美香が育児に疲れてやつれていく様を、奥村は痛々しく表現していた。

そして丈晴役の和田は、千璃の障がいに戸惑いながらも、前向きに温かく家族を包み込む男性を熱演していた。

事前インタビューで「クッションのような男性を演じたい」と語っていた和田。千璃と美香が転ばないように必死で支えようとする様は、まさにクッションそのもの。もともとの柔らかな雰囲気も相まって、おおらかで前向きな丈晴は和田にハマり役だと感じた。

しかし千璃を巡って美香と意見が対立する場面では、そのおおらかさの裏にある弱さをむき出しに。そのギャップは「ああ、人間ってそういうものだよね」と観ている者を納得させる説得力があった。

この物語は、美香と丈晴の2人が、力を合わせて千璃とともに成長していく様を描いている。異国の地で、時に冷たい言葉を浴びせられることもあったが、一方で産婦人科医のオオクボ(演:植本純米)を訴えるにあたり、力になってくれたミラー弁護士(演:樋口麻美)らの存在も大きい。つくづく「人間は、1人で生きているのではない」ということを実感する。

桑原まこによる美しい音楽が生演奏で奏でられ、1つの家族の物語を紡いでいく130分。障がいをテーマにした物語とあって、観るのを躊躇する人もいるかもしれないが、生きることの素晴らしさや人間の強さを感じさせてくれる前向きな作品だと感じた。

ミュージカル『SERI~ひとつのいのち』は、10月6日(木)~16日(日)に東京・博品館劇場で、10月22日(土)・23日(日)に大阪・松下IMPホールで上演される。

取材・文・撮影:咲田真菜

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公演情報

タイトル

conSept Musical Drama #7 『SERI~ひとつのいのち』

公演期間・劇場

2022年10月6日(木)~10月16日(日)
東京・博品館劇場

2022年10月22日(土)~10月23日(日)
大阪・松下IMPホール

原作

倉本美香『未完の贈り物』

脚本・作詞

高橋亜子

作曲・音楽監督

桑原まこ

演出・振付

下司尚実

出演

⼭⼝乃々華、奥村佳恵、和⽥琢磨
植本純⽶、⼩林タカ⿅、樋⼝⿇美、⾠⺒智秋、内⽥靖⼦、⻑尾純⼦、⼩早川俊輔

企画・製作

conSept

主催

conSept、関⻄テレビ放送

公式HP

https://www.consept-s.com/

公式Twitter

@consept2017

公式Instagram

@consept2017

(C)2022,conSept LLC

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