『シュレック・ザ・ミュージカル』が8月15日(月)、東京・東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)で開幕した(15日はプレビュー公演)。
『シュレック』は『マダガスカル』、『カンフー・パンダ』など数多くの子ども向けアニメ映画を手掛けてきた、ドリームワークスが2001年に制作したアドベンチャーコメディ映画で、史上初のアカデミー長編アニメ映画賞を受賞した大ヒット作だ。
「仲間との絆」や「真実の愛」、「困難に立ち向かう」という普遍的なテーマを、ジョークやパロディ満載で描いた映画『シュレック』をもとに、2008年にブロードウェイでミュージカル化。今回日本初上陸するのは、そのブロードウェイミュージカルのトライアウト公演だ。
物語の主人公は、人里離れた森の沼のほとりに住む、怪物・シュレック(演:spi)。彼にまつわる恐ろしい伝説とは裏腹に、気ままな生活を送っていた。
そんなある日、領主によって国を追放されたピノキオ(演:新里宏太)をはじめとするおとぎ話の住人たちが、シュレックの住む森に押し寄せてくる。静かな生活を取り戻したいシュレックは、追放令を取り消すよう、領主・ファークアード卿(演:泉見洋平)に交渉する。
真の王になるために、プリンセスとの結婚を目論んでいたファークアード卿は、「自分の代わりにドラゴンと戦って、囚われの姫・フィオナ(演:福田えり)を救い出せ」という交換条件を出す。仕方なく、シュレックは、お調子者で喋るロバのドンキー(演:吉田純也)を道連れに、沼を取り戻すために冒険の旅に出てーー。
初日となる16日(火)13時公演を観劇した。
いやはや、子ども向けと言って侮るなかれである。
ストーリーは単純明快で分かりやすいものなのだが、そこで描かれるテーマは実は多様で深い。キャッチーな描かれ方ゆえ「なんだか楽しいミュージカル」には間違いないが、世の中に蔓延る「見た目至上主義」や、シュレックやフィオナら登場人物の「孤独」などに思いを馳せると、想像以上に大人向けなミュージカルなのかもしれない。
シュレック役のspi。特殊メイクゆえ、顔はほとんど分からない。が、その出で立ち、歌唱力、芝居の間に至るまで「これはspiにしかできない」と多々思わされる。卑屈だけれど、心優しいシュレックで、最初から最後まで観客の心を離さなかった。
フィオナ役の福田えり。アンサンブルキャストとして数々の人気ミュージカルに出演してきた福田は、その百戦錬磨の力を遺憾無く発揮。ドンキー役の吉田純也、ファークアード卿の泉見洋平らも役になりきり、思い切り舞台で暴れている。フルキャストオーディションゆえか、それぞれの出演者の熱意と実力を肌で感じる舞台だった。
初日公演終了後、主演のspiと、公演応援サポーターの近藤春菜(ハリセンボン)が会見に登壇した。その内容の一部をお伝えする。
ーーまずはご挨拶をお願いします!
spi:シュレック役のspiです。本日はよろしくお願いします!
近藤春菜:ハリセンボンの近藤春菜です。応援サポーターは私しかいないと思って、やってまいりました。よろしくお願いします!
ーー近藤さんは舞台を客席からご覧になったということですが、感想を教えてください。
近藤春菜:めちゃくちゃ面白かったです。シュレックって、CGのアニメで、アニメだからこそできる世界だと思っていたので、ミュージカルで生でどういう風にやられるのだろうと思っていたら、想像をはるかに超えていました。いろいろな仕掛けがあったりして、めちゃくちゃ面白かったですね。
お気に入りのシーンもたくさんあります。シュレックを特殊メイクでされながら、あの歌唱力、あの演技、感動しました!
spi:たまんないっすね。嬉しいです。ありがとうございます。
ーー近藤さんが観に来られるというのはご存知でしたか?
spi:エレベーターでチラッと会ったんですよね(笑)
近藤春菜:そう。この状態のspiさんにまさか裏のエレベーターですれ違うとは(笑)。本物だっ!と思ってびっくりしました。
ーーどのシーンが印象的でしたか?
近藤春菜:子どもから大人まで楽しめるシーンがいっぱいあるんですけど、夢中になって観たのは、歌唱シーンはもちろん、2幕すぐのフィオナ姫とのやり取りです。
「シモ」のやりとりと言いますか、すごいシーンがあるんですよ。そこが本当に面白くて!おならのシーンがあんなにあるとは!おならするたびに、黄色い花が咲くなんて、ミュージカルだからこそ。楽しかったです(笑)。
ーー今、隣にシュレックに変装したspiさんをご覧になっていかがですか?
近藤春菜:めちゃくちゃ迫力ありますね。眉毛や鼻など、細かいところもすごく精密に作られていて。この特殊メイクができるまでの過程が書かれていたものを見たのですが、spiさんはイケメンじゃないですか。めちゃくちゃイケメンが、特殊メイクで、ここまでシュレックになる……。役者魂というか、シュレック魂を感じました(笑)。
ーーシュレックといえば、近藤さんですが……。
近藤春菜:シュレックじゃねえけどな!不思議な感じですね。「シュレックじゃねーよ!」と10年以上言わせていただいて、今回ミュージカルの応援サポーターということで、不思議な縁を感じます。
会見に出席したり、シュレックを間近に感じられたりするのは、「シュレックじゃねーよ!」と言い続けたからこそ。否定していたら関わるんだという(笑)。
ーーspiさんは元祖シュレックを目の前にしてどうですか?
近藤春菜:いや、spiさんは別にシュレックの暖簾分けじゃないのよ(笑)。
spi:春菜さんがずっと「シュレック」「シュレック」と言ってくれたから、名前が廃れずに、この舞台ができたんじゃないかなと思います。光栄です。
ーーもしミュージカルで何か役をするとしたら?
近藤春菜:きょうの皆さんの舞台を観ていたら、ミュージカルってすごいなと思いました。自分が出るとしたら、あそこまで迫力のある歌唱ができないので、もし『シュレック』に出させていただくとしたら、(見た目は)シュレックに一番近いんですけど、ピノキオかな。子どもたちからもウケてましたけど、鼻を伸ばすシーンをやりたいなと。
spi:バッチリじゃないですか!ぜひ!
近藤春菜:いやいや、素晴らしかったです、みなさん。
ーーシュレックはやはり譲れない?
spi:いや、全然Wキャストで(笑)。ノーメイクでどうぞとはあまり言いたくはないですけど(笑)。
近藤春菜:私だけノーメイク、おかしいでしょう!(笑)。フィオナ姫もいいなと思うんですけど、普通のプリンセスじゃないですからね。パワフルなフィオナ姫って、なかなかできないですしね。
ーー最後にファンの皆様に一言お願いします!
spi:最高に楽しい舞台です。笑って泣いて、いい気持ちで帰れる舞台だと思うので、ぜひ皆さま、遊びに来てください!
※※※
1幕50分、休憩20分、2幕45分。公演は8月28日(日)まで。お見逃しなく!
取材・文:五月女菜穂
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