2019年4月4日(木)に初日を迎える鳥越裕貴主演の舞台『桃源郷ラビリンス』のゲネプロが4月3日に公開された。
「2.5ジゲン‼︎」では、公演に先立ち吉備桃太郎役の鳥越裕貴と大和尊役の高橋健介に単独インタビューを行ったが、そこで語られていた内容も絡めてゲネプロの様子をお伝えする。(まだ読んでいない読者はぜひ観劇の前に読んでみてほしい)
物語は古民家カフェ・桃源郷での日常から始まる。自由人な祖父・吉備真備(中村優一)と居候の珠臣樹里(山本一慶)がカウンターでまったりとおしゃべりしているのを横目に、慌ただしく働く本作の主人公(鳥越裕貴)。鳥越いわく「いい人すぎる」桃太郎の姿がそこにはあった。
桃太郎を敬愛する犬養津与志(杉江大志)に、超のつく方向音痴の楽々森類(遊馬晃祐)も加わり、転生者たちが集う何気ない日々が描かれる。
カフェの雰囲気に引っ張られほのぼのとした気持ちで観始めたのだが、ある事件をきっかけに、ストーリーは次第にきな臭い方向へと動き始める。
誰もが知る昔話「桃太郎」では、桃太郎は鬼退治をする。転生者である彼らもまた、鬼と対峙する運命にあった。
しかし、昔話のように鬼を倒せばいいという話でもないのが、この作品の深さであり面白さなのだろう。人間に鬼として忌み嫌われてきた彼らもまた、この世界で必死に生きていた。桃太郎たちとの戦いの合間に見え隠れする彼らの、とても“人臭い”感情が印象的である。
いわば正義の味方である桃太郎に対して、鬼の頭領として彼の前に立ちはだかるのは桃太郎の親友の大和尊(高橋健介)だ。
インタビューの印象ではあまり絡みがないのかと思ったが、後半はガッツリとやり取りがあったので2人の共演を楽しみにしていたファンは期待していて欲しい。
親友として年に1度会えるのを楽しみにしているかわいらしい2人の関係性が一転、刀を交える関係になってしまう。想像するだけで、辛く悲しいシーンだ。
そして、座長を担う鳥越の熱演がより一層光るシーンでもあった。言葉の端々にまで丁寧に感情が乗せられており、彼の苦しみが客席にじわりと広がっていった。奇をてらった演出などはないが、その分、鳥越はじめキャスト陣の緻密な役作りがものをいう作品に仕上がっている。
▲桃太郎の視線の先には……
印象的なキャラクターという意味では、エイブラハム・D・ストーカー(金子昇)とその部下のマーティン・ベアード(仲田博喜)だろう。
お茶目な上司と、それに振り回される部下といった様子がとても微笑ましかった。とはいえ、きれいな笑顔に騙されてはいけない。物語のカギを握る重要な役どころなので、ぜひ最後まで彼らに注目していて欲しい。
クライマックスでは転生者たちのビジュアルが変わるのも見どころのひとつだろう。
それぞれ由来する人物(動物)にちなんだビジュアルは、可愛かったり格好よかったりとバラエティに富んでいる。公演グッズにはなっていない姿なので、観劇予定のファンはしっかり脳内ハードディスクに記憶しよう。
本作は小説『桃源郷ラビリンス』を原作としたマルチメディアミックス作品だ。この舞台のあとには映画公開も控えている。
映画を観ようと思っている原作ファンは、ぜひこの舞台版も観たほうがいいだろう。舞台のなかで描かれた出来事や人間関係に、映画をより楽しむためのエッセンスが散りばめられているように筆者は感じた。
時を超え現代に蘇る、いにしえからの“縁”(えにし)が生み出す物語を劇場で味わってほしい。作品が掲げる“新しい『桃太郎』”に出会えるだろう。
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