『怪盗探偵山猫 the Stage ~船上の狂想曲~』が1月20日(木)、東京・大手町三井ホールにて開幕した。
本作は「心霊探偵八雲」シリーズなどでも人気の神永学によるアクションミステリー小説「怪盗探偵山猫」シリーズの舞台化作品。2021年1月に上演された『怪盗探偵山猫 the Stage』の第2弾となる。今作は神永学による完全新作ストーリーで、豪華客船を舞台に山猫とシージャック犯たちの対決が描かれる。
2.5ジゲン!!では、初日に先駆けて行われたゲネプロの様子をレポートする。
東京湾で一隻の豪華客船が出航した。船の名前はプリンスオルカ号。航行の全てが人工知能(AI)で管理された世界初の客船だ。メインホールではウェルカムパーティーがおこなわれており、そのバーカウンターでひときわ容姿端麗なバーテンダーが飲み物を作っている。――山猫(演:北村諒)。山猫の狙いは、この客船で開催されるオークションの品を盗むことだった。
やがてオークションが始まるが、突如「オルカ」と名乗る武装集団が現れ乗客を人質にとってしまう。オルカのリーダーである鵜飼(演:安里勇哉)は、乗客の中から坂又亮太(演:定本楓馬)という大学生を呼び出す。坂又は内閣官房長官の息子で、大学生でありながらこの船のAIシステムを開発した会社の創始者だった。坂又は鵜飼にとらわれ、鵜飼が日本政府と、とある交渉をするためのカードとなってしまう。
一方、ある船内で一人の男が目を覚ます。男の名は海老沼(演:鈴木勝吾)。しかし海老沼は、自分が誰でなぜここにいるのか分からない状態だった。しかも、彼の目の前には一体の死体。殺したのは誰なのか? 自分なのか? 混乱する彼の前に、鵜飼が雇った殺し屋・鮫島(演:相馬圭祐)が姿を現す。
海老沼の正体、シージャック犯の目的…さまざまな謎が幾重にも重なった物語が始まる。果たして山猫は、無事にオークションの品々を盗み出し、爆弾が仕掛けられた豪華客船から脱出できるのだろうか?
* * *
政府との交渉、潜入捜査など、単語だけを聞くとストーリーが少し難しそうかと感じるかもしれないが、テンポよく謎が次々と明かされていくので難しいことはない。骨太で社会的なテーマだが、エンタメとして楽しめる作品だ。特に終盤は怒涛のように「この人もあれだったの?」「あの人もこれだったの?」と息つく間もなく驚く展開になっている。
アクションは銃もあるがほぼ素手。狭い船内、船の通路、(恐らく)ボイラー室や貨物室など、多くの障害物がある中での激しい格闘は迫力満点だ。特殊映像やプロジェクションマッピングなどが使われていないので、船内はどんな装飾なのか、船の外はどうなっているのか、など想像力を膨らませながら観る楽しみがある。
ラストまで痛快な上、観劇後は「そういえばあの時あの人は…?」ともう一度観劇したくなる謎と真実がいくつも重なっている。ぜひ、一度目は深く考えずにたくさんの驚きを得て、2度目以降は各キャラクターたちの動きに注目して観てほしい。
山猫を演じる北村諒。ひょうひょうとしていてミステリアス。義賊と言われるとむっとするため根っからの悪党かと思いきや 信念からブレているような行動を取る人物に対してはイラつきながら説教をしたりもする。猫のように気まぐれで、どこから現れるかわからない神出鬼没の存在。ひょっとこのお面を外して「俺様超絶イケメン」と言われれば、はいその通りですと答えてしまいそうになる。
本作では、北村ファンにとっては思わずにやりとしてしまうシーンが盛り込まれている。原作があるものの“北村諒の山猫”用にと書き下ろされた本作ならではだろう。
シージャック集団「オルカ」のリーダー・鵜飼役の安里勇哉。凛とした正義を感じさせる声は、悪を演じれば逆に、自らの信じる大義のために犯罪に手を染める人物の恐ろしさを表現している。彼はなぜシージャックをし、政府と大きな交渉をすることになったのか…?
鈴木勝吾演じる海老沼。記憶を失った海老沼は、どうやらシージャック犯とも何かただならぬ関係がありそうで――? 記憶を失った海老沼の焦りやいら立ちといったさまざまな感情が、鈴木のひたむきな演技で強烈に伝わってくる。恐らく日替わりであろうポイントも、彼がキーになっているので楽しんでほしい。
シージャックの一人、海月(くらげ)を演じる山田ジェームス武。狂気を感じさせるクレイジーさと、終盤に見せる顔の違いにはっとさせられる。言わずもがな超人的なスタイルの持ち主で、アクションもよく映える。
相馬圭祐演じる鮫島。正直怖い。どこまでも執拗にターゲットを追いつめる様に執念を感じる。
今回登場するどのオリジナルキャラクターも最後には「そうなの?」と驚く展開が待っている。神永学書き下ろしである怪盗探偵山猫の新しいオリジナルストーリー、ぜひ小説でも読んでみたいと思わせてくれる舞台だ。待ち、そして期待したい。
ゲネプロとは別の話になるが、会場の大手町三井ホールは2020年6月にオープンしたばかりなので、劇場としてまだ馴染みの無い人も多いだろう。劇場への実際に感じたアクセスを記載するので参考にしてほしい。
まず、劇場から一番近いのは千代田線の大手町駅だ。東西線からだと10分ほど歩くので、できるだけ千代田線か半蔵門線をおすすめする。劇場の入っているOTEMACHI ONEビル直結であるC5またはC4出口が推奨だが、C5は日曜祝日は封鎖されるということなのでC4がいいだろう。そこからエスカレーターまたはエレベーターで3階へ上がり、左奥突き当りが大手町三井ホールだ。
駅直結なので寒い季節には大変ありがたいが、正直ビル内で迷いやすいので、迷ったらC4出口か3階、と覚えておけば大丈夫だろう。
公演は1月30日(日)まで大手町三井ホールにて行われる。
取材・文:広瀬有希
(C)Manabu Kaminaga/KADOKAWA/エイベックス・ピクチャーズ/Office ENDLESS
北村諒 コメント
1年ぶりの『怪盗探偵山猫 the Stage』! 山猫としてまた帰ってこれたこと、そして皆様にお会いできること、大変嬉しく思います。書き下ろしのストーリーと、新たなメンバー。面白くないワケがない! ということで、船上で起こる事件に皆様も巻き込まれ、体感して、楽しんでください!! 最後まで気を抜かず、公演を無事に終えられるよう努めます!
鈴木勝吾 コメント
時勢下でありながら。初日を迎えることができるのを嬉しく思います。これも全て普段から応援してくださっている皆様のお力添えあってのことです。ありがとうございます。大いにふざけ、大いに真剣にこの作品を届けたいと思います。北村諒という素晴らしい座長と共に様々な縁で繋がった仲間と届けます。重ね重ね、応援よろしくお願い致します。
定本楓馬 コメント
坂又役の定本です。皆さまに愛されているこの山猫という作品に参加できることを光栄に思います。ドキドキする展開、華麗なアクション。どれも迫力満載ですので、どっぷりと山猫の世界に浸っていただけたら嬉しいです!
安里勇哉 コメント
きたきたきたー!!! 遂に『怪盗探偵山猫 the Stage~船上の狂想曲~』の初日です。シージャック犯のリーダー鵜飼を皆さんの前で演じられるのが楽しみです! 千秋楽まで気合いを入れて鵜飼の人生を生きたいと思います。2022年一発目の舞台…! 気合い入れていくぞー!
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