「怪盗探偵山猫 the Stage ~船上の狂想曲~」が1月20日(木)、東京・大手町三井ホールにて幕を開ける。神永学によるミステリー小説「怪盗探偵山猫」シリーズの舞台化作品で、2021年1月に上演された『怪盗探偵山猫 the Stage』の第2弾。今作は神永による完全新作ストーリーで、豪華客船を舞台に山猫とシージャック犯たちの対決が描かれる。
2.5ジゲン!!では、天才怪盗・山猫を演じる北村諒とシージャック犯のリーダー・鵜飼/オルカ役の安里勇哉に対談取材を実施。それぞれの役への向き合い方、お互いの役と本人とのギャップや共通点、2022年の抱負などを、本作の見どころと共に聞いた。
――まず、今作のお話が来た時の気持ちを教えてください。
北村諒(山猫役):またこうして山猫のお話を届けられる機会を頂けてとても嬉しかったです。前作はちょうど一年前になりますね。コロナの影響が強い時期で、マウスシールドを着けて舞台に立ったことと、劇場に足を運べないというお客さまも多くいらっしゃったのを思い出します。
安里勇哉(鵜飼/オルカ役):嬉しかったし、とても楽しみに感じました。前作も見させていただいたのですが、きたむー(北村)がぴょんぴょん飛び跳ねたりもしていて、アクションがたくさんあって爽快で楽しい作品でしたね。今回は前回を上回るアクション量の舞台になっていると思いますよ。
――今作の脚本は原作者の神永学さんによる完全新作の書き下ろしです。脚本を読まれた感想はいかがでしたか。
北村:海外ドラマのような展開でワクワクしました。今作の舞台は客船なのですが、客室の中や船の通路が目に浮かぶようでしたし、「ここは排気口をつたったりするのかな…?」なんて想像しながら読みました。すごく想像力がかき立てられる脚本です。
安里:台本というよりも小説を読んでいる気分でした。一つ一つの描写が丁寧に書かれているので、目の前にその場面が浮かぶんですよ。船の通路だったり、山猫の動きだったり…。舞台の脚本というよりは、神永先生が新たな「怪盗探偵山猫」の小説を書き下ろしてくださっている…そんな印象を受けました。
――安里さんが演じられる鵜飼はどのような人物ですか。
安里:シージャック犯のリーダーという設定ですが、ただの悪党ではありません。なぜ鵜飼がシージャックをしたのか、その理由が今回のストーリーの重要なポイントになってきます。
人物像としては、オリジナルのキャラクターなので稽古しながら探っているところです。例えばですが、ジェー(山田ジェームス武/海月役)の演じる海月がだいぶぶっ飛んだ人物なので、鵜飼も同じような性格にならないように…など、演出の私オムさんと話し合ったりしています。
北村:役の作り方も稽古も、原作の無いストレートプレイの舞台に近い感覚ですね。今回で言えば山猫と里佳子(演:平田裕香)以外はみんなオリジナルのキャラクターなので、脚本をヒントに人物を作り上げています。
安里:鵜飼も、山猫や他の人物と同じく強い信念を持っています。その信念はひょっとしたらゆがんでいるのかもしれないけれど、実際にその立場になったとしたら…と考えると気持ちが分かるんですよね。彼の持っている信念や大義に注目して観ていただきたいです。
彼の謎については最後まで観ていただければ全て分かりますので、2度目の観劇がより楽しくなること間違いなしです。だからこの時、この人物と視線を絡ませていたんだ、こういう動きをしていたんだ、などたくさんの事が発見できると思いますよ。
鈴木勝吾くんの演じる海老沼も謎だらけの人物です。なぜ船の中にいるのか、なぜ山猫と行動を共にするのか、最後まで楽しみに観てほしいです。
北村:たくさんの謎が物語に奥行きを与えているので、何度見てもそのたびに新しい発見ができて楽しめるはずです。書き下ろしの作品は、誰もがストーリーの展開を知らずに観ることになりますよね。その最初の「どうなるんだろう?」というドキドキわくわく感はもちろん、2度目はストーリーを知った上で観るので、より感情移入したり物語に没入して観られます。ぜひ2回、3回と観てほしいです。
安里:何なら14回でも(笑)。
北村:それは全通じゃん!(笑) 今回は配信もあるのですが、山猫は表情が豊かなので、配信のアップでの映像も楽しんでいただけるのではないかなと思います。
――お二人はそれぞれ、“山猫”の魅力についてどのように捉えていますか。
北村:曲がったことが嫌いで、自分に真っ直ぐな人物ですね。だからこそ、ぶれたり迷っている人を見るとつい説教くさいことを言ってしまう(笑)。僕、北村諒が思う“山猫の信念”はきっとこれだというものはあるので、それを強く持った上で演じています。
安里:山猫のセリフには、聞いていて刺さるメッセージ性の強いものがありますね。
北村:周りをかき乱しておちょくって、その人物たちがイライラしたり頭に来たら勝ちだと思っている部分もあります。そういう役は演じていてとても楽しいですね(笑)。
安里:楽しそうだよね、きたむー。
北村:うん、すごい楽しい!
――お付き合いの長いお2人ですが、深く絡む共演は初めてだそうですね。
北村:あさてぃー(安里)とは舞台『弱虫ペダル』からの付き合いになります。それからも一緒に作品を作っていたりもしたんですけれど、がっつり絡むことは意外となかったので、今回はとても嬉しいですね。稽古も楽しいです。
安里:同一人物を演じたりもしていました(笑)。僕はずっときたむーの舞台を観ているのでがっつり絡むのは初めてな感じはしないですよ!
――お互いが感じる、演じる役とのギャップや共通点があったら教えてください。
安里:きたむーは山猫にものすごく合っていますよね。ひょうひょうとした性格で何を考えているか分からないミステリアスなところもあるし、一方、すごくちゃんとした考えと強い信念を持っている。そのチートとも言える最強のキャラクター性がきたむーにぴったりだと感じています。
きたむー自身は基本的に静かな人なんですけれど、いじれる人がいるとスッ…といじる空気感も山猫っぽいです。今回は岸本を演じる宮下貴浩さんがいじられ役になっています(笑)。
ギャップとしては、山猫は「俺様超絶イケメン」とか言うんですけれど、そういうセリフって実際はそうでもない人が言ってこそ面白くなると思うのに、超絶イケメンのきたむーが言うから「おい!」「いやいや」とか突っ込むべきところでも「確かにそうだよ…」ってなっちゃうことです(笑)。
北村:あさてぃーと鵜飼の共通点は、熱いハートを持っているところですね。今回稽古をしていて、あさてぃーに関しての新しい発見がたくさんできています。
出身である沖縄タイムで生きていて、おおらかでふわっとしているあさてぃーをずっと見てきたので、鵜飼という人物像を作り上げる工程やアプローチの仕方を見て、こんな一面があったんだと感じました。鵜飼は、シージャック犯のリーダーという、役割としても人物の背景としてもとても重いものを背負っている人物なので、考えなければいけないことがたくさんあるんですよね。
お芝居に対して熱い人だというのは舞台『弱虫ペダル』の時から知っていたんですが、役の掘り下げ方などを間近で見て、すごく素敵だなと改めて感じました。その熱い思いが、鵜飼がシージャックをするにあたっての想いと重なっているので、とても魅力的な人物に仕上がるはずです。
――稽古場の雰囲気はいかがですか?
北村:オムさんが柔らかい人柄の方だからか、穏やかでほわっと温かい現場です。
安里:和気あいあいとしながらも、いい意味でピリッとするところはちゃんと集中して、そうではないところでは笑顔のたくさんある座組ですね。稽古そのものは、こんな真冬だというのにみんな汗だくです。銃もあるけれど基本的には素手でのアクションなので“手”を覚えるのが本当に大変で。
北村:そう、素手での接近戦が多いから間合いが近くて難しいんです。
安里:山猫は高いとこから飛び降りるアクションも多いから、きたむーは人一倍汗だくになりながら頑張っています。座長としてもすごく座長らしくて、この前、雪が降ってものすごく寒かった日に、温かいスープを差し入れで買ってきてくれたんですよ。さすがですね。「分かってますわ、寒い日にこの差し入れは…」ってなりました。
北村:俺、優しいね!(笑) 俺自身は山猫みたいに盗まないで配っちゃうタイプだからね。
――2022年最初の舞台です。改めて今年の抱負を教えてください。
北村:仕事も人間関係もさらに真摯に、そして穏やかに。去年から30代がスタートしていますので、より一層、一つ一つの物事に責任をもってちゃんと向き合っていきたいなという気持ちでいます。
安里:まずは、無事に今作が全公演上演できること。それから、きたむーと同じく一つずつの物事をしっかりと丁寧に。
皆さんも僕たちも、この2年ほどのコロナ禍で色々な感覚が変わったと思うんです。何事も当たり前ではないのだとありがたさを感じながら、舞台だけに限らず何かしらの作品やイベントなどもお届けできたらと思っています。それから、時間を大切にしていきたいです。
――最後に、本作の見どころとメッセージをお願いします。
安里:前作を観られた方はもちろん、今回は神永先生書き下ろしの新作ストーリーなので原作ファンの方の期待値も高いと思います。前回を越えて楽しんでもらえるように、カンパニー一同頑張っているところです。座長・北村諒に背負われながら後押しもしていきたいなと思っています。楽しみにしていてください!
北村:今、一つの作品を作り上げるために全員で話し合いながら稽古を進めている最中です。神永先生の描きたいものが詰め込まれた新作のストーリーなので、これを立体である舞台で表現するにはどうしたらいいだろう? どうしたら舞台として面白くなるんだろう? と全員で模索しながら作っています。
幕が開いてお客さんにこの作品を届けられた時、きっとものすごく嬉しさを感じるんだろうなと想像しています。
安里:…で、「俺様を見ろ」と?(笑)
北村:そう、最終的には“山猫を見てください”!(笑) それからやっぱり、舞台は劇場で観ていただくのが一番です。皆さんに感染対策のご協力をお願いすることもたくさんあるのですが、劇場で生の空気を味わっていただきたいので、ぜひ会いに来ていただけたらなと思っています。
取材・文:広瀬有希/撮影:友野雄
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