*pnish*の結成20周年公演である *pnish* vol.16『*pnish*(パニッシュ)』が6月17日(木)、東京・赤坂RED/THEATERで開幕した。
*pnish*は「気軽に観ることができて、楽しい舞台を届けよう」というモットーのもと、佐野大樹、森山栄治、鷲尾昇、土屋佑壱によって2001年7月1日に結成されたユニット。本公演は5年ぶりで、終演後に*pnish*にゆかりのある人物がゲスト出演し、アフタートークが行われる。
4人が全員40代を迎えた今、どんなものを見せてくれるのだろうか。開幕前に行われたゲネプロの様子とキャスト&脚本・演出の村井雄(KPR/開幕ペナントレース)のコメントを紹介する。
バーに集う4人の男たち
とあるバーのカウンターで眠っていた一人の男が目を覚ます。男の名は江利川(演:佐野大樹)。なぜここにいるのか、この店がどこにあるのか、何も心当たりがない様子。店の中には彼一人。店員もおらず、カウンターに置いてある自分が飲んだらしきグラスを見てしまったからには、そのまま店を出ては無銭飲食になってしまう…。
その時、店の黒電話が鳴る。江利川が思わず取ってしまった受話器の向こうからは、聞き覚えのある音楽が。音楽が止み、照明が切り替わると、店の入り口には一人の男が立っていた。そして一人、また一人とバーに男たちが集まってゆく。彼らはなぜこのバーに集められたのだろうか…?
江利川(演:佐野大樹)、通称「エリック」。現在、日生劇場で幕や照明器具などさまざまなものを上げ下げする“綱元”の仕事をしている。大学時代に映画『オペラ座の怪人(2004年公開版)』に魅了され、ミュージカル研究会を設立するも、歌がうまくなかったため、役者ではなくドラマターグと呼ばれる制作スタッフとして役割を全うした。
軽野(演:森山栄治)、通称「カルロッタ」。現在はお笑い芸人として活動中。大学卒業後、一度は日の目を見たものの、今はすっかり一発屋芸人に。再びその栄光を夢見て、「朝日に焼き尽くされるまで踊り明かす」を口癖にしている。
沢尻(演:鷲尾昇)、通称「ジリー」。バーのバーテンダー兼オーナー。大学時代のミュージカル研究会では、脚本・演出・美術・俳優と同研究会の中心的人物であった。
讃井(演:土屋佑壱)、通称「シャヌイ」。現在は実家の骨とう品屋を継いでいる。ミュージカル研究会では、江利川と付き合っていた江田ちゃん(通称「ダーエ」)を江利川から略奪。大学卒業後に結婚している。
さて、これら登場人物の通称を見て、何か思い当たらないだろうか。皆「オペラ座の怪人」の登場人物だ。ではオペラ座の怪人を予習しておかなければ? と思うかもしれないが、全くそんなことはない。*pnish*の舞台は、難しい予備知識や肩肘張って頑張って観るものではなく、モットーそのままに「気軽に観ることができて、楽しい舞台」だからだ。
今回も、まるで旧友の家でお菓子を食べながら一緒にテレビを観ているような気分で、気楽にゆったりと4人のメンバーがわいわいわちゃわちゃと芝居を楽しむ様子を観られる。
アドリブか台本か分からない素を感じさせる笑顔、少しでもタイミングがズレれば成り立たないような言葉の掛け合いなど、20年の歴史を感じさせる4人の息の合ったやりとりに、マスクの下で思わずにこにことしてしまうシーンばかりだ。
今回の本公演は5年ぶりであり、全員が40代に入っている。筆者は10代、20代の頃は、40代の人は皆、落ち着いて何事にも達観した“大人”だと思っていた。しかし実際にその年代近くになってみれば、皆が皆そうではないことに気付くだろう。
過去の恋愛を引きずって一歩踏み出せない人もいれば、まだまだ夢を諦められずにチャレンジを続けている人もいる。いくつになっても諦めたり遠慮したりせずに、自分が楽しいと思うことをしてもいい。筆者は*pnish*を見ているとそう感じる。
汗だくになりながら限界まで踊ったり芝居をしている彼らの姿に、若い世代のファンは「こうなりたい」と思い、同世代のファンは「まだまだ頑張れる」と笑顔と力をもらえるだろう。
開幕コメント
脚本・演出:村井 雄(KPR/開幕ペナントレース) コメント
*pnish* vol.16『*pnish*』の脚本・演出を担当しました村井雄と申します。今回、結成20周年という記念すべきタイミングでご一緒させていただいたことに感謝しております。*pnish*メンバーの魅力を浴びに浴びながら、稽古場で生まれた素敵な“偶然”の数々を積み上げ、このメンバーでしか創れない“奇跡”が生まれたと思っております。演劇並びにエンタメの可能性を再確認することのできた幸せな稽古の日々でした。いよいよ本日より本番が始まります。たくさんの方にご覧いただきたい作品になりました。劇場にてご来場を心よりお待ちしております。
佐野大樹 コメント
20周年公演がついに始まります。やれることをとにかく全力で突き進んでまいりました。4人だけの稽古は面白くもあり大変でもありながら新たな発見もありました(笑)。もちろんまだまだやれることもあると思います。特に今回は本番を通して日々進化していくものだと思っています! 40代の男たちがバカバカしくも熱く、体当たりして壊れながら、汗水垂らしつつ限界に挑戦しておりますので、是非是非遊びに、そして応援しに来てください!(笑)
森山栄治 コメント
5年ぶりに4人が集まっての稽古がスタートしたのは約1カ月前。久しぶり! という和気藹々とした空気ではなく、脚本と戦ってる3人の空気に圧倒されたのを覚えてます。完全に出遅れた! って(笑)。笑いありダンスありの*pnish*公演ですが今回はそんな中に脚本・演出の村井さんの色も含まれてさらにパワーアップしたと思います。40過ぎた男たちが一生懸命馬鹿やってる姿をどうぞ劇場で確認してください。
鷲尾 昇 コメント
いよいよ5年振りの*pnish*公演! 20周年という節目の公演が開幕します。これまで*pnish*を毎回観にきてくださっている方は勿論、久しぶりに足を運んでいただける方、そして初めてご覧になる方。全ての方々に、思いっきり笑って元気になって帰っていただける、そんな作品をお見せすることが出来たらいいなと思っています。40代になった僕らの全力の姿、是非お楽しみください。では、皆さんとお会い出来ることを楽しみにしております。
土屋佑壱 コメント
昨年からの、何が日常でどれが非日常なのか分からない状況の中、20周年の年を迎え、初日を迎えました。手放しで喜んで、握手して酒場で語らう。とはいきません。しかしその中で、色々な配慮の上で進行してみんなで芝居を積み上げて、ようやく初日の舞台に立てるという喜びは、キャストスタッフお客さんみんなで分かち合いたいと思います。期待に応えたいというのと期待を上回れたらいいなという思いで、何が起こるか分からないこの状況に油断することなく、千秋楽まで、4人は赤坂RED/THEATERにいます。最後までお付き合い、よろしくお願いします。
本公演は7月4日(日)まで赤坂RED/THEATERで上演。
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