2020年に始動したメディアミックス演劇コンテンツ「青山オペレッタ」の初舞台化作品『青山オペレッタ THE STAGE〜ノーヴァ・ステラ/新しい星〜』が2021年4月22日(木)、初日を迎えた。
初日を前に行われたゲネプロの様子を、劇中ショットと共にレポートする。ストーリー自体は事前に発売されたドラマCDの内容に準拠しているので大きなネタバレはないが、劇中衣装なども掲載している。衣装も含め新鮮な気持ちで楽しみたいという人は、観劇後に読んでもらえたらと思う。
ノーヴァの歩みを肌で感じる1幕
青山に構える伝統ある劇団・青山オペレッタに新たに創設されたチーム「ノーヴァ」結成の物語を描く本作。第1幕ではドラマCDでこれまで描かれてきたストーリーが、舞台という形でリアルをまとっていく様子を肌で感じることができる。
物語は宮嶋あさひ(演:長江崚行)が青山にやってくるところから始まる。彼は母親の影響で劇団のファンであるものの、芝居やダンスに関しては全くの素人。しかし、なぜか実力者揃いの劇団オーディションに合格してしまったという奇跡の新人劇団員だ。
▲思わず守ってあげたくなるかわいさがある宮嶋あさひ(演:長江崚行)
彼がノーヴァのメンバーと出会い、切磋琢磨しながら半年後の旗揚げ公演成功に向けて奔走する姿を描いていく。
実力者ばかりが揃うノーヴァで、唯一素人のあさひ。主人公である彼の成長が本作の軸となり、ノーヴァ全体の成長へと繋がっていく。
あさひの表情の深みがワンシーンごとに増していったのが印象的だ。憧れの劇団への入団という、どこか非現実的な現実を前にふわふわとしている登場シーン。そこからレッスンを経て、仲間との衝突や結束を体験し、旗揚げ公演へ。
▲入団当初は苦悩する場面も多いあさひ
▲ぶつかりあいながらも初めての“友情”を知っていく。左から矢地桐久(演:大平峻也)・あさひ・斎鷹雄(演:中山優貴)
その過程で、あさひがスポンジのようにそこでの刺激を吸収し、自分の表現へと昇華していく姿を、長江は繊細に演じていた。1幕終盤に差し掛かる頃には、彼のまとう空気は素人のそれではなくなっている。刻々と移り変わっていく、決して派手ではない些細な変化を見逃さないようにしてほしい。
▲青山で出会う斎とあさひ
そんなあさひが最初に出会うのが、のちのルームメイトとなる斎鷹雄(演:中山優貴)だ。世界的なバレエ団で活躍していたバレエダンサーという斎を演じるにあたり、インタビューでは説得力を持たせたいと語っていた中山。
ダンスレッスンのシーンではバレエを取り入れた動きで、持って生まれた手脚の長さを存分に活かしていた。微笑みの貴公子として柔和な笑顔を絶やさない斎が、劇中劇ではまるで違う表情を見せる点も見どころだろう。
▲全身ショット撮らねばという使命感に駆られた魅惑のスタイルの持ち主・斎
あさひ以外のノーヴァメンバーは全員、既に表現の世界で結果を残してきた者たちだ。中山に限らず、どのキャストも舞台で演じる以上は説得力を持たせることにこだわりを抱いていたように思う。
▲ニコニコとしていて掴みどころのない櫻井ノエ(演:大隅勇太)
▲子役からの脱却を目指す野心家な長衛輝夜(演:矢部昌暉)
▲看板役者としての誇りとプライドを持つ桐久
▲ある想いを抱いてノーヴァへ移籍した加賀見祥太(演:友常勇気)
人気オペラ歌手の櫻井ノエ(演:大隅勇太)、元天才子役の長衛輝夜(演:矢部昌暉)、大衆演劇の看板女形の矢地桐久(演:大平峻也)、ベテラントップスタアとして劇団で活躍してきた加賀見祥太(演:友常勇気)。
それぞれの畑で培ってきた経験値とプライド、そして想いがノーヴァという鍋の中で煮詰まり洗練されていく様子が、1幕ではテンポ良く描かれていく。
▲ルームメイト同士の距離感の変化にも注目だ
▲矢部演じる輝夜の表情の移ろい方も絶妙で思わず目で追ってしまう
一見調和しそうにない6色が混ざり合っていく様子は、観客の目の前で繰り広げられている演劇というエンタメそのものとも言える。
多様なバックボーンを持つキャストやスタッフが集い、ひとつの舞台作品が生まれていく。そんな舞台が生まれるまでの過程や情熱を、ノーヴァの成長と団結を通じて感じることができるだろう。
演劇の力を感じさせる「十二夜」
旗揚げ公演までの道のりをノーヴァと共に歩んできた観客を待っているのが、2幕で上演される旗揚げ公演「十二夜」だ。シェイクスピアの喜劇を、小劇場あがりの演出家・槙晋作(演:利根健太朗)が手掛けた作品として上演。
簡単に劇中劇という言葉で片付けてしまえないほど、そこには1幕とは別物の、存在感ある1本の舞台作品が出来上がっていた。観劇しているうちに、「青山オペレッタTHE STAGE」ではなく、ノーヴァの「十二夜」を観にきたのだと感じるほど、濃厚なノーヴァの演劇空間が広がっていたのだ。
王子様然とした斎演じるオーシーノ公爵と、桐久演じる喪に服す令嬢・オリヴィア。そしてベネラ(女役)としてヴァイオラと双子のセバスチャンの2役を演じるあさひ。彼ら4人の間では複雑な恋の矢印が飛び交い、勘違いによってこじれていく様子が、ときにコミカルにときに情熱的に描かれていく。
▲オーシーノ公爵役の斎
▲とにかくかわいいヴァイオラを演じるあさひ
▲もう1人のベネラ・桐久が演じる美しい令嬢オリヴィア
喜劇らしいトラブルメーカーとして登場するのは、どんちゃん騒ぎが大好きなノエ演じるサー・アンドルー・エイギュチークと輝夜演じるサー・トービー・ベルチ。
本来のノエと輝夜とはかなり性格が異なる人物を演じているので、そのギャップがさらに面白おかしさをプラスしていた。
▲どんちゃん騒ぎでトラブルを大きくしていくノエ演じるアンドルーと輝夜演じるトービー
▲場の混乱をさらに煽るトービー
ノーヴァ最年長でありトップスタアとして圧倒的な存在感を放つ加賀見は、「十二夜」では船長アントニオを演じている。劇団に対して人一倍熱い想いを抱く加賀見らしい、熱量感じる骨太なアントニオの姿は必見だ。
▲男らしいアントニオは加賀見のハマり役
キャラクターとはまた違った芝居を楽しめるのは、劇団ものならではの醍醐味。前述したように一つの作品としてしっかりボリュームがあるので、もともと「十二夜」を知らないという人でも、話に置いていかれるということはないだろう。安心して楽しんでほしい。
この「十二夜」で特筆すべきは、やはりあさひの芝居だ。本来の女性の姿のヴァイオラ、ヴァイオラが男装したシザーリオ、そして双子の兄のセバスチャン。ベネラとして女性を演じながら、男を演じ、ときに乙女として恋焦がれる姿を、長江はあさひとして演じ切っている。
▲アントニオと話すのは双子の兄・セバスチャン
文字にすると複雑な設定の役どころだが、実際に観てみると、同じ容姿ながらその場にいるのがどの人物なのかスッと理解することができる。まさに長江の実力あってこその役どころとなっているのだ。彼の芝居を堪能したいという人にはたまらない「十二夜」だろう。
3人の良き指導者がスパイスに
ノーヴァにとって欠かせない存在といえば、メイちゃんこと相良明之介(演:杉江大志)だ。大らかな愛でノーヴァを箱推ししているメイちゃんの愛は、舞台版ではよりパワーアップしていた。
▲メイちゃんかつ杉江大志のショータイム
「スーパーメイちゃんタイム」とでも呼ぶべきだろうか。メイちゃんがこれでもかとクセ強めで登場するシーンがいくつかあるので、メイちゃん推しのファンはお楽しみに。
▲とにかく愉快ということが伝わるであろうスーパーメイちゃんタイム
▲同期である加賀見とのワンシーンも
先輩劇団員である南雲朝斗(演:北川尚弥)と美園爽人(演:丘山晴己)も登場。登場シーン自体はノーヴァに比べれば限られているが、インパクトは抜群。記憶に残る存在として、しっかりとオーラを放っていた。
▲情報量の多い南雲朝斗(演:北川尚弥)と美園爽人(演:丘山晴己)の登場シーン
果たしてどんな形での登場になるのか、舞台ならではの“生”感はぜひ劇場や配信で確認してみよう。
3次元へと歩み出した「青山オペレッタ」
これまでボイスドラマやドラマCDに登場した声優陣がそのまま舞台にも出演している本作。キャラクターへの理解度という意味では、間違いなく誰も彼もが“本物”なので、圧倒的な安心感がある。
ノーヴァをプロデュースする夢咲辰樹も原作通り下野紘が声の出演という形で参加。これまで展開されてきた2次元でのコンテンツが、そのまますっと立って動き出して3次元になったような、なんとも不思議な感覚を味わえる作品と言えるだろう。
▲ベネラがいるからこそのレビューでの一コマ
旗揚げ公演後のレビューショーでスポットライトを浴びているノーヴァメンバーを観ていると、「ついにここまで辿り着いたんだね」と思わずホロリとしてしまうかもしれない。コンテンツが育っていくとはどういうことか、ノーヴァの成長に重ねずにはいられなかった。
「青山オペレッタ」は早くも年内に第2弾舞台化が決まっている。次回作に向けて、この『青山オペレッタ THE STAGE〜ノーヴァ・ステラ/新しい星〜』は大きな追い風になるに違いない。
取材・文・撮影:双海しお
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