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薄ミュ新時代の幕開け…新たな景色の中に灯る、確かな“誠”の火 「真改」相馬主計 篇レポート

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ミュージカル『薄桜鬼 真改』相馬主計 篇が、様々な苦難を乗り越え4月2日、ついに初日を迎えた。2012年の初演からいくつもの感動と伝説を生み出してきた「薄ミュ」が、令和という新時代に新シリーズとして歩みだす、記念すべき最初の一歩となる作品だ。

2.5ジゲン!!では初日公演の様子をレポート。「薄ミュ」ファンの心に舞い散る桜吹雪の風景を、より一層濃い桜色に染める手伝いができれば嬉しく思う。

新しさの中に不変の“誠” 「薄ミュ」イズム

原作は新たに『薄桜鬼 真改』に。そして本作から、西田大輔が演出・脚本・作詞を手掛けている。“新たなる「薄ミュ」”と銘打たれた本作は、「真を改める」という文字通り、新しい景色を見せてくれた。

第1幕は池田屋事件から始まる。冒頭から繰り広げられるのは、殺陣に次ぐ殺陣。浴びるような殺陣の中、翻る新選組の羽織を観ていると、「薄ミュ」が今ここに在ることを実感できるだろう。

怒涛の殺陣、それぞれの想いを込めた歌、そしてOPを飾るダンス。それらから感じるのは、「これから新しいものが生まれようとしている」という新しい景色への高揚感とシリーズが新しくなろうとも決して消えることのない「薄ミュ」の灯火だ。

新しさと受け継がれてきたものが舞台上で交わりうねり渦となり、客席を飲み込んでいく。

本作では楽曲が一新されており、往年のファンほど戸惑うかもしれない。慣れ親しんだものから離れてしまうとき、そこには寂しさや悲しさが付き纏うだろう。しかし、手放すからこそ、新しい風が吹き込む余地が生まれるものだ。

時代の流れが大きく変わる幕末を生きてきた彼らも、次の時代へ進むために多くのものを手放すこととなった。それでも、彼らの根っこの部分は変わらなかったはずだ。

楽曲や作品の雰囲気が変わろうとも、「薄ミュ」の芯となる部分には、変わることのない原作やキャラクターへの愛と敬意が溢れている。その想いは、それぞれの歌や殺陣、芝居から感じることができるだろう。

さて、ストーリーに話を戻そう。池田屋事件から始まる第1幕は、主人公・相馬主計(演:梅津瑞樹)とヒロイン・雪村千鶴(演:松崎莉沙)との出会い、相馬主計の新選組入隊、さらに激動の時代を生きる新選組の活躍を描いていく。

第2幕では原作の相馬主計ルートを中心に描かれていき、彼が想いを繋ぐ襷となって奔走する姿が描かれる。相馬は他の名だたる新選組隊士のように剣の腕が立つわけでもない。そんな彼が、「雪村千鶴を守りたい」という一心で、死闘を繰り広げていく。

注目は主演の梅津の“重力”を感じる芝居だろう。彼の背中には、仲間たちから「頼んだ」と託された想いがのしかかっていく。仲間との約束は、相馬の力となる一方、約束への強すぎる想いが彼自身を傷つけてしまうこともある。

それほどまでに強く特別な想いを、彼は華奢な肩に乗せて戦っているのだ。梅津は目には見えない想いの重さを、言葉や一太刀に乗せて客席へと届けてくれる。相馬の約束への覚悟、そして相馬に託した者たちの覚悟。決して軽くはない彼らの想いは、全編を通して痛いほど伝わってくるはずだ。

仲間から託された形のない想いを背負っていくのと対照的に、相馬は千鶴と手を重ね、指を絡め、約束をする。序盤は先輩小姓の千鶴と後輩の相馬という微笑ましい関係性が築かれていくが、2幕ではクライマックスに掛けて2人の空気の濃度がグッと上がっていく。

手を取り合い約束を交わした2人に待つのはどんな結末か。この「薄ミュ 真改」ならではの表現と共に楽しんでもらいたい。

それぞれの生きる意味――各キャラ紹介

「薄ミュ」史上初めて「雪村先輩」と呼ばれる千鶴は、松崎の圧巻の歌唱力によって、そのたくましさが表現されていた。歌詞に感情が乗っているというより、歌声そのものから喜怒哀楽を滲ませる歌い方が印象的で、これがミュージカル初出演作品とは思えないほどだ。

松崎の歌唱力と梅津の演技力によって、“魅せる”作品へと仕上がっていたのが印象的だ。

新選組は近藤勇役の井俣太良、藤堂平助役の樋口裕太、山崎烝役の椎名鯛造、山南敬助役の輝馬が続投キャストとなっている。

シリーズに出演し続けている井俣がステージにいるだけで、どっしりとした安心感が生まれる。大黒柱としての存在感は今作でも健在。一新された要素が多い中で、彼の存在はファンにも揺るがない安心感を与えることだろう。

全編を通して熱くシリアスなシーンが続く中、平助は清涼剤のような爽やかな風を吹き入れてくれる。原田左之助(演:川上将大)、永倉新八(演:小池亮介)との新たな三馬鹿トリオも、平助の安定した存在感が支柱となり、3人らしいいつもの空気感が生まれていた。


山崎の身軽さも健在。健在どころか、前作よりも磨きが掛かっているようにさえ見えた。その役柄上、どうしても闇に紛れてしまうことが多いキャラクターだが、しっかりと見どころが用意されているのでファンは安心してほしい。

山南を演じる輝馬、風間千景を演じる鈴木勝吾。この2人はどちらも、熟した芝居と歌で観客の視線を奪っていた。山南は今作では不気味さが数割増しに感じられた。狂気をはらんだ歌声、芝居に「山南敬助 篇」を夢見るファンがさらに増えるのではないだろうか。

2016年ぶりに「薄ミュ」に帰ってきた鈴木は、以前インタビューで今のカンパニーの中で感じて生まれた風間千景を演じたいと話してくれた。

今の鈴木が演じる、今の風間千景。数年間、熟成された役者・鈴木勝吾の上に築き上げられた風間千景は、得も言われぬ鬼気をまとっていた。彼が現れる度、ステージ上の空気が一変する様は、ぜひ劇場や配信で感じてみてほしい。

新章突入ということもあり、本作は新キャストが多い。

久保田秀敏が演じる“鬼の副長”土方歳三は、静かに炎を燃やすような佇まいに仕上がっていた。終盤に向けて苦しい立場へと追い込まれていくが、その中でも燃え続ける信念に胸打たれることだろう。

寡黙な最年少幹部・斎藤一を演じるのは大海将一郎。多くは語らない分、斎藤の視線は雄弁だ。あえて言葉にしない想いを、視線から感じ取ることができるはずだ。相馬に語りかけるシーンでは、彼の声の持つ説得力が大きなカギとなっているので、その声にも耳を傾けてみてほしい。

菊池修司が演じる沖田総司は、意地悪でひょうひょうとした態度の中にもかわいらしさが感じられた。近藤の過酷な運命がしっかりと掘り下げられている本作では、近藤を慕う沖田の感情の発露も一際大きなものとなっている。彼が顕にする本音がどんなものか、ぜひ注目を。

本作初登場キャラクターにして、相馬を語る際に欠かせないのが、小姓の野村利三郎(演:園村将司)と三木三郎(演:砂川脩弥)だ。

彼らの完成度の高さがあることで、終盤の相馬の物語が一層色鮮やかに浮かび上がっている。野村の放っておけない子犬感や三木に漂う怒りと悲哀にフォーカスすると、また違った視点からこの物語を楽しめるだろう。

鬼側のキャラクターとしては、天霧九寿役の横山真史が新キャスト。不知火匡役の末野卓磨、千鶴の父・雪村綱道役の川本裕之が続投している。腕利き揃いの新選組でも勝てないかもしれないと、その場に絶望感を与える彼らの存在感はさすがの一言だ。

以前、インタビューで梅津は見どころは全員だと語っていた。観劇したことで、その言葉の意味を理解した。

どのキャラクターもソロパートや殺陣の見せ場、原作のグッとくるセリフを口にするシーンが多く、全キャラクターが主人公と言っても過言ではないほどである。メインディッシュが多すぎて、食べきれない。そんな贅沢な悩みが生まれてしまうほど、各キャラの魅力がしっかりと描かれている。

観劇前には心の容量をしっかり空けておくことをおすすめする。そうでないと、すぐに胸がいっぱいになってしまうだろう。

舞う桜吹雪に感じる、新たな「薄桜鬼」の到来

長い冬を越えて迎えた芽吹きの季節。待ちわびていたファンの想いはもちろんだが、何よりも感じたのはキャスト陣の「届けたい」という熱量だった。

悔しい想いを経て1年待った者、そんな彼らの想いを託された者。奇しくも逆境を与えられることになった彼らの芝居は、激動に時代にもがきながらも“道しるべ”を目指し続けた新選組の姿に重なった。

「あなたにとっての生きる道しるべとは何か」

観終わった後、観客はそんな問いを投げかけられた気分になるかもしれない。同時に、この作品を観たことで、道しるべの先へと突き進む力を受け取ったことを実感するだろう。

新しくも変わらない「薄ミュ」の誠に、また次の桜の季節に出会えることを切に願っている。

文:双海しお

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公演情報

タイトル

ミュージカル『薄桜鬼 真改』相馬主計 篇

原作

オトメイト(アイディアファクトリー・デザインファクトリー)

演出・脚本・作詞

西田大輔

公演日程

2021年4月2日(金)~4日(日)東京・日本青年館ホール
2021年4月8日(木)~11日(日)兵庫・AiiA 2.5 Theater Kobe

出演

相馬主計:梅津瑞樹 雪村千鶴:松崎莉沙/土方歳三:久保田秀敏 沖田総司:菊池修司 斎藤一:大海将一郎 藤堂平助:樋口裕太 原田左之助:川上将大 永倉新八:小池亮介 山南敬助:輝馬 山崎烝:椎名鯛造 三木三郎:砂川脩弥 野村利三郎:園村将司 近藤勇:井俣太良/天霧九寿:横山真史 不知火匡:末野卓磨 雪村綱道:川本裕之/風間千景:鈴木勝吾

アンサンブル:佐藤佑樹 坂本和基 来夢 榮桃太郎 藤希宙 徳留達也 工藤純一朗 伊藤智則

公式HP

https://www.marv.jp/special/m-hakuoki/

公式ブログ

http://m-hakuoki.jugem.jp/

公式Twitter

@m_hakuoki

主催

ミュージカル『薄桜鬼』製作委員会

(C)アイディアファクトリー・デザインファクトリー/ミュージカル『薄桜鬼』製作委員会

WRITER

双海 しお
 
							双海 しお
						

アイスと舞台とアニメが好きなライター。2.5次元はいいぞ!ミュージカルはいいぞ!舞台はいいぞ!若手俳優はいいぞ!を届けていきたいと思っています。役者や作品が表現した世界を、文字で伝えていきたいと試行錯誤の日々。

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