2020年にプロジェクト中止となったミュージカル『薄桜鬼 真改』相馬主計 篇が、2021年4月に再始動する。
「真改」シリーズとして新たな幕開けを迎える作品とあって、多くの「薄ミュ」ファンが公演を心待ちにしているだろう。
今回は、主演・相馬主計役の梅津瑞樹と風間千景役の鈴木勝吾にインタビューを実施。「薄ミュ」への想いや本作の見どころ、共演者について話を聞いた。
梅津瑞樹「お待たせしました」、本作への想い
――まずは「お帰りなさい」でしょうか。「真改 相馬主計 篇」が1年越しに再始動となりますが、主演を務める梅津さんは改めて上演が決まった際、どんな心境でしたか。
梅津瑞樹(相馬主計役):皆さんが上演を楽しみにしてくださっているのを感じている中、上演中止という形になってしまったことで、辛酸をなめたような部分もありましたので、「お待たせいたしました」という気持ちが一番大きいのかなと思います。演じる側からすると、ただただ「やったぜ」という感じですね(笑)。ようやく胸につかえていたものが取れそうだな、という気持ちです。
――一方で鈴木さんは2016年ぶりの「薄ミュ」出演となりますね。
鈴木勝吾(風間千景役):いや~どうやらそうらしいですね!
――ファンからも反響も大きかったと思いますが、出演が決まった際の心境を教えてください。
鈴木:純粋に嬉しかったですね。最初はその気持ちが一番大きかったんですが、反響をたくさんいただいたことが嬉しかった半面、きっと皆さんが待っていてくださったのは僕が出演していた頃の当時の仲間で作り上げてきた風間千景であって。どっちがいい悪いという話ではないんですが、今回は(演出・脚本・作詞の)西田大輔さんを筆頭とした新しい仲間と一緒に作っていくことになるので、「僕は何を期待されているんだろうか…」という不安は感じましたね。
もちろん、あの時はあの時のメンバーと作り上げたものであって、今回は僕も月日を経て変わっただろうし、周りのメンバーも変わったので、どういった風間像が生まれてくるのかなっていうのを楽しみに感じています。
――久しぶりに風間を演じる上で、楽しみにしている部分や特に意識している部分はありますか。
鈴木:楽しみなところは全部ですね(笑)。
意識というところで言うと、いい意味で追っかけないようにしたいなと思っていますね。以前出演していたときとは違う仲間と一緒に、今の僕が向き合って出てくる“答え”を大事にしたいというか。演出家さんも違いますし、キャストも違う中で、5年ぶりに風間千景と向き合う自分の気持ちと環境を大切にしたいなって思っています。
鈴木勝吾にとって「薄ミュ」は原点であり宝物
――梅津さんは1年ぶりに相馬を演じることになりますが、この1年で役や作品に対して新たな気付きや変化はありましたか。
梅津:変化という変化はないかもしれないですね。僕の中では「いつか絶対またこの作品をやれる」って信じていたので、このまま上演できないかもしれない…みたいな作品に対するモチベーションの低下は一切なくて。
別の現場にいても、相馬主計やミュージカル『薄桜鬼』のことは、いつも心の中にありましたし。殺陣をやる機会もあったんですが、“この現場で少しでもスキルアップすれば、また「薄ミュ」に活かせるな”とか考えていましたね。
それはもちろん、この「薄ミュ」をやっているときも、他の作品に対して思うことでもありますが、意識という意味ではこの1年間、殊更この作品を意識していたというのはあると思います。
――鈴木さんもご自身の中で「薄ミュ」の存在を感じる瞬間というのはありますか。
鈴木:ありますね。やっぱり“原点”だし、ミュージカルやストレートを含めて、演劇の楽しさや美しさを最初に教えていただいたのが「薄ミュ」だったり、(当時、脚本・演出を手掛けていた)毛利(亘宏)さんだったりしたので、そこは当時と変わらずに、今も自分の中にありますね。
当時の仲間たちとの絆も「薄ミュ」以外の場所でもずっと培ってきましたし。やっぱり風間千景という役やミュージカル『薄桜鬼』という作品は、僕にとって“原点”であり“財産”なので、今もこうしてシリーズが続いていること自体が嬉しいですね。だから、この作品はこれからもずっと僕の中に在り続ける“宝物”ですね。
新たなカンパニーで挑む、新たな戦い
――共演が楽しみなキャストを教えてください。
梅津:それこそ、この作品のお話をいただいたときに最初に見たのが鈴木さん主演の「風間千景 篇」のダイジェスト映像だったんですよね。それを見て「すごい!」と思った印象がとても強く残っていて。そういう意味では、こうして鈴木さんと共演できるのは感慨深いなと思っています。
もちろん、自分の中には以前のキャストさんの風間像があるんですけど、違う方が演じられることで、キャラクターのまた違った一面が見えてくるんじゃないのかなと思っているので、すごく楽しいというか面白い機会をいただいたなと思いますね。
新キャストの方々も含めて、新しい座組で戦えるのは楽しみです。新キャストの方では、三木三郎役の砂川(脩弥)くんとご一緒する機会があって。すごく実直そうな方だったので、本編では彼とはバチバチした関係になるんですけど、今から共演が楽しみです。
鈴木:僕はご一緒したことのない方が多いので、知っている方の話になっちゃうんですけど、風間にとってはキーとなってくる土方歳三役のくぼひで(久保田秀敏)くんとは、親交もありますし、他の作品で共演もしていて。その作品では共に寄り添って肩を支え合う関係だったんですけど、そこから刃を交え合う関係になるので、そこにすごく不思議な感覚がありますね。でも、純粋に一緒にやれるのが楽しみです。
あと、「薄ミュ」の真ん中(座長)ってすごく大変なので(笑)。
梅津:(笑)。
鈴木:前回上演できなかった分も含めて、今回梅津くん主演でまた上演できて良かったなって思いますね。
まだ梅津くんとは数回しかお会いしていないんですけど、毛利さんや(近藤勇役の井俣)太良さんからは、「彼がこんなに大きくなるなんてなぁ」なんて話も聞いていたので(笑)。
演劇って地続きでみんな繋がっているし、太良さんがそう言っていたくらい、梅津くんは素敵な役者さんなんだろうなって思うので、そんな方を主演に置いて作品を作れることが、すごく楽しみです。
――では最後に、本作の見どころと、ファンへのメッセージをお願いします。
梅津:まずは、2度目となりますが「お待たせしました」。本当にそれに尽きるなと。
この期間、世界にも色んなことがありましたし、この作品もキャストが変わったという変化があるにはあるんですけど、多分みんなが「いつかやろう」って思っていたし、この作品が持つパワーは絶対に揺るがないっていうことを信じていたと思うので、それをようやくお披露目できると思うと今から楽しみです。
今回、主演として立たせていただくことになりますが、全てのキャラクターに見せ場があるし、己の信念をぶつけて散っていくので、見どころは全てのキャラクターだと思います(笑)。
一応「相馬主計 篇」とはなっていますが、それぞれの隊士の生き様を刮目して観ていただけると嬉しいです。
鈴木:本当につらい時代の中で、この桜の季節に作品をやれることを嬉しく思いますし、演劇の必要、不必要を問われている時代の中で、それは幕末に散っていった彼らの姿に重なるところもあるのかなと。
常に窮地の中で戦っている男たちの物語なので、僕は鬼側ではあるんですけど、僕も含めてまだ“青い”若い俳優たちが一つの夢を見て舞台に立って、ミュージカル『薄桜鬼』というテーマの中で戦っていく姿っていうのが、きっと色んな人に届くメッセージになると思うので、演劇を通して来てくださったお客様に伝えられればいいなと思っています。
* * *
昨年は残念ながら上演が叶わなかったミュージカル『薄桜鬼 真改』相馬主計 篇が4月1日から上演される。「薄ミュ」ファンにとっては長い“冬”が続くこととなったが、ようやく満開の桜舞い散る“春”を迎えられるのではないだろうか。
シリーズにとって新たなスタートとなる「真改」で初登場キャラクターとして主演を務める梅津瑞樹と、初演の2012年から長年作品に携わってきた鈴木勝吾。この二人の出会いによって、また新たな変化と“時代”が生まれるのではと予感させてくれる対談となった。
初日の幕が開く瞬間が、今から楽しみでならない。
取材・文:双海しお/撮影:ケイヒカル/ヘアメイク:城本麻紀/スタイリング:吉田ナオキ
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