ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」〝頂の景色・2〞が3月20日(土)、東京・TOKYO DOME CITY HALLで開幕。公演に先立ち実施されたゲネプロの様子をキャストコメントと共にレポート。
今作で描かれるのは春高“魔の3日目”の第2試合。因縁のライバル・音駒高校に競り勝った烏野高校は、鴎台高校との試合に臨む。
2015年の初演から約5年半。常に進化を続け、圧倒的な熱量で観客を魅了してきた演劇「ハイキュー!!」。シリーズ11作目となる今作で、ついに終幕を迎える。
ついに始まる「小さな巨人対決」
前作の春高3回戦で、音駒高校に勝利を収めた烏野高校。迎えた同日の準々決勝で、日向翔陽(演:醍醐虎汰朗)はとうとう星海光来(演:輝山立)と“小さな巨人”の名をかけて戦うことになる。
烏野高校が戦う鴎台高校は、「レベルをMAXまで上げた伊達工業に、ユースクラスのエースが居る」強豪校。昼神幸郎(演:江本光輝)や白馬芽生(演:新谷デイビッド)を筆頭に、高いブロックが烏野高校の前に立ちはだかる。
星海は、小柄な体を忘れさせるほどの存在感でコートを駆け回る。アタックの際の高いリフトや体幹の安定したアクロバットは、“小さな巨人”と呼ぶにふさわしい迫力だ。
なかなか鴎台のブロックを攻略できない烏野だが、試合に流れを呼び込んだのは月島蛍(演:山本涼介)と日向の1年生ミドルブロッカーコンビ。月島のクレバーなプレーが鴎台のアタッカーたちの攻撃を塞ぎ、反撃の活路を開いていく。
また時を同じくして、梟谷学園高校は貉坂高校と対戦。木兎光太郎(演:桜庭大翔)と桐生八(演:川﨑優作)のエース対決にも注目だ。
仲間からの鼓舞や歓声を力に変える木兎と、それをプレッシャーに感じてしまう桐生。一見すると対照的な2人だが、仲間の存在を糧にエースとして成長していく姿はどちらも力強く、頼もしい。
特に、木兎が「ただのエースになる」と語るシーンは、赤葦京治(演:髙﨑俊吾)や木葉秋紀(演:東拓海)たちとの絆が感じられ、思わず涙腺が熱くなる。
第2幕になると、試合は終盤に向けて一気に加速していく。
怒涛の試合展開は、今回も和田俊輔による音楽やプロジェクションマッピングによって彩られている。傾斜のある八百屋舞台を使って、登場人物が飛び出してくるかのような迫力ある演出もおなじみ。
また、田中冴子(演:安川里奈)を筆頭に和太鼓の演奏もパワーアップしている。宮侑(演:松島勇之介)や初代“小さな巨人”の宇内天満(演:佐川大樹)を加えた烏野応援団からも目が離せない。
一進一退の攻防が続く烏野と鴎台の試合はハラハラして胸が苦しくなるが、不思議と爽快感もある。眩しいライトを浴びる選手たちは汗の一粒までが輝いており、会場全体が熱気と高揚感に包まれていく。まるで、本当に東京体育館の観客席に座っているような感覚を覚えるだろう。
いつまでも続いてほしいと思ってしまうほど心躍る試合展開。だが、ついに終わりを迎える。
試合終了後、武田一鉄(演:鎌苅健太)が真摯に言葉を紡ぐ姿は今作屈指の名シーン。「君たちの何もここで終わらない」と語る武田の言葉のとおり、選手達の物語は決してここで終わらずに続いていく。
過去から現在、そして未来へ…
演劇「ハイキュー!!」の一つのテーマ“繋ぐ”。今作では、一際そのテーマを強く感じることができた。
日向と影山飛雄(演:赤名竜之輔)の中学時代の出会い。赤葦の運命を変えた木兎との出会い。桐生が“悪球打ち”と呼ばれるに至ったエピソードや、星海と昼神の絆など、選手達の「過去」の物語が随所に散りばめられている。その全てが繋がって、現在の彼らを鮮やかに、そして生き生きと映し出されていた。
そして、「今」の物語は5年後の「未来」へと繋がっていく。物語の終盤では、登場人物の未来を垣間見ることができる。
例えば、成長した及川徹(演:遊馬晃祐)の姿を、初演から及川を演じ続けた遊馬が見事な存在感で演出。他にも株式会社Bouncing Ballの代表取締役になった孤爪研磨(演:永田崇人)や日本バレーボール協会の競技普及事業部に所属した黒尾鉄朗(演:近藤頌利)も映像出演しており、成長した彼らの姿に思わず胸が熱くなるだろう。
5年半にわたって感動を与え続けてくれた演劇「ハイキュー!!」。いよいよ終幕かと思うと寂しさを覚えるファンも多いだろう。
しかし観劇後には、不思議と爽やかな気持ちになるはずだ。シリーズ集大成をうたうに相応しい今作、寂しさを上回るとびっきりの希望が詰め込まれている。
“小さな巨人対決”の結末。そして彼らがどのような未来に進むのか。舞台の上で生まれた物語の全てを、どうかその目で見届けてほしい。
キャスト&ウォーリー木下コメント
醍醐虎汰朗(日向翔陽役)
演劇「ハイキュー!!」がついにファイナル公演となります。今まで関わってきた全ての方々の想いを繋ぐことを目標に掲げて、稽古期間を日々過ごしてきました。
前向きになれる熱い作品になっていると思います。あとは、皆さまと一緒に育てていきたいです。集大成に相応しい作品になるように、スタッフ、キャスト一同、楽しんで最後まで走り切ります! 是非、楽しみにしていてください!!
赤名竜之輔(影山飛雄役)
演劇「ハイキュー!!」の終幕〝頂の景色・2〞で影山飛雄を演じられることを心の底から光栄に思っています。稽古から演劇「ハイキュー!!」ならではの熱量が爆発していました。限界のその先まで自分たちを追い込み、稽古期間を過ごしてきたので、終幕にふさわしい作品になったと思います。
初演からの、言葉では表わすことができないくらいの沢山の想いを無事午秋楽まで繋げられるように、そして繋げてきてくれた全ての人に感動や勇気を与えられるように頑張っていきたいと思います。
輝山立(星海光来役)
この作品でしか経験できないことを沢山経験させていただいた稽古期間でしたし、チームのみんなと過ごした時間はまるで高校3年間を凝縮したような濃密な時間でした。座組が一丸となり必死に準備した分、今は本番を皆さまにお届けすることが楽しみで仕方ありません。
改めて、このシリーズのファイナルに出演させていただくこと、星海光来を演じさせていただくことに心から感謝をし、これまで演劇「ハイキュー!!」を繋いでくださった劇団「ハイキュー!!」の皆さんと一緒に、この作品で演劇の頂を見たいと思います。最強の演劇「ハイキュー!!」を楽しみにしていてください。
桜庭大翔(木兎光太郎役)
最終章である〝頂の景色・2〞は一層今まで歩んできた歴史が垣間見える、まさに集大成としてふさわしい作品に仕上がっています。そして、演劇「ハイキュー!!」は今まで出演した全てのキャストたちが繋ぎ、創り上げた作品だと改めて感じました。
今回で終わってしまうのは本当に寂しく思いますが、最後はやっぱり僕たちらしく、最高に盛り上げていきたいと思います! 応援のほど、よろしくお願いします!
遊馬晃祐(及川徹役)
稽古場ではバレーボールの指導だったりチーム作りの手伝いなど、今までとは違った立ち位置になることも多く、いつもより客観的に演劇「ハイキュー!!」を見ていました。今まで僕たちがやってきたことを少しでも伝えられていたらいいです!
及川徹も久々に観てもらえるのでワクワクしてます! 演劇「ハイキュー!!」は本当にすごいです! 初めて通しをした時にプロデューサーが言ってくれた言葉、「ずっと終わってほしくない」。それくらい初演からの歴史や想いが詰まった作品となっています。ウォーリーさんの演出がやばい!! スタッフさんもずっと繋げてくれてありがとう!! 僕たちの最後をぜひ見届けてください。
演出・脚本:ウォーリー木下
最後の最後まで格闘した演劇「ハイキュー!!」でした。今まで一番苦労したかもしれません。それはピリオドを打つための最善の答えを探したからです。でも、途中で気づきました。答えなんてないと。それは今までもそうでした。観客の皆さまそれぞれの中に答えがあって、僕らはそれを少しだけ手伝うような気持ちで演劇を創っています。
僕らがすることは、ただただまっすぐに演劇をするだけです。今回の作品は、5年半かけてつくった演劇です。本当にたくさんの筋肉をつけました。僕もキャストもスタッフも。ぜひ劇場でお確かめください。
文:水川ひかる
撮影:ケイヒカル
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