2019年12月7日(土)、新宿FACEにて本格文學朗読演劇 極上文學 第14弾「『桜の森の満開の下』~孤独~」が開幕した。
「極上文學」は今年で8年目。今作は、これまでの連作の中で唯一映像化していない第1作目で取り上げた、坂口安吾の『桜の森の満開の下』の上演となる。
初日前に行われた場立ち稽古の様子と、出演者たちからの言葉をお届けする。(写真は全部で19枚。本文中に入りきらなかった分は下の「画像一覧」に)
複数の役者による幾通りもの組み合わせ、無限の解釈、贅沢な体験。
「極上文學」は、名作文学の朗読劇だ。過去には『銀河鉄道の夜』『高瀬舟・山椒大夫』といった作品が取り上げられている。役者たちは「読み師」、「語り師」、「具現師」に分かれ、本を手に演じ、読み、小説の世界を観客に伝える。
特筆すべき点は、役者の組み合わせが日と回によって異なることだ。組み合わせが変われば舞台の印象はまったく変わる。つまり、普段の舞台以上に同じものは見られない。
できれば複数回観て、解釈や演技の違いを感じてほしい。
名作小説を、難しい・取っ付き難いと避けて通る人は多いだろう。しかし、難しく考えることはない。楽しみ方や読み方の決まりはなく、文章、物語、書かれた背景など、読みたいように読めば良いからだ。
朗読劇や読み上げは、文章の息遣いを引き出す表現方法だ。「極上文學」はそこに演劇要素を足し、朗読と舞台双方の良い所を取っている。視覚、聴覚、想像力を刺激する、非常に贅沢な体験ができると言っていい。
小説の読み方に「こうでなければならない」という決まりは無い。もともと坂口安吾が好きで原作を読み込んでいる人は、ひとつの解釈として楽しめるだろう。
逆に、原作を読まずとももちろん楽しめる。この舞台をきっかけに坂口安吾の小説や、これまで取り上げられた作品を読んでみるのも良い。
また、学生用の特別価格券種「書生シート」を紹介したい。最後列ではあるが、新宿FACEの格闘技配置座席だ。10列目。舞台全体を見渡せる充分な席だろう。
極端な話高校生でも、あるいは中学生でもいい。内容を深く知り解釈を固めようと必要以上に意気込んだり、難しくとらえることはない。
生身の人間が表現する極上の文学を聴き、観て体験する。この数時間が若い感性を持つ人にとって、極上の財産になるだろう。
目の前の役者たちの声色や表情、動き、はらはらと舞い落ちる花びらの美しさに目を奪われる。恐ろしさをはらんだ美しさに、時おり背筋を冷たいものが伝う。
美しい日本語の、語呂・語感。演出・キムラ真が作り上げる耽美な世界で、新しい読書体験をしてみてはどうだろうか。
「僕の回が一番面白い!」それぞれの解釈のマルチキャスティング。14名のコメント紹介
公開された場当たり稽古の前にフォトセッションがおこなわれ、キャストたちからコメントが寄せられた。
読み師
荒木健太朗(鼓毒丸役)
荒木の回だけに来てください!(場内爆笑)。極上文學は長いシリーズなので、お客様はそれぞれに好きなものがあると思います。
僕はシリーズ作品を演じるうえで「最新作が絶対にベストなんだ」という気持ちをもって今までやってきました。この作品でも、僕の鼓毒丸が一番面白いと思いますし、みんながそれぞれその気持ちでいると思います(笑)。
実は今日が「はじめまして」のキャストもいますが、このセッションを楽しんでいただければと思います。
梅津瑞樹(鼓毒丸役、ミレン/アコガレ役)
極上文學というのは、本格文學朗読演劇シリーズと銘打たれております。本格文學、というと皆さん難く捉えてしまうかもしれませんが、全然そんなことはありません。
読むのが面倒くさいという方でも、観ていただけたらその世界の中に入り込める、というのがこの作品の最大の利点だなと思います。僕も小説が大好きで、この作品に携われることが本当に光栄です。皆さんにもその現場を観に新宿までいらしていただけたら嬉しいです
太田将熙(鼓毒丸役)
初めに言いたいことは「これは朗読劇ではない」ということです。それくらい、台本は持っていますがすごく動きますし、朗読なのに360度からステージを観られてしまう。一瞬も隙が作れない熱い作品です。
坂口安吾の書いた文学作品が、キムラさんの演出、神楽澤さんの脚本によって本当に素敵な作品になっています。それを僕らが体現する姿を観に来ていただけたら嬉しいです。
田口 涼(ツミ夜姫役)
女性役を演じることがこの頃多くなってきたんですが、最初に女性役を演じた時に、参考にさせていただいたのが三上 俊さんなんです。
今回は同じ役をやらせていただけるということで「ミカシュンさんより、はるかにヘボい」と言われないように頑張りますので、よろしくお願いいたします(笑)。
田渕法明(ツミ夜姫役、ミレン/アコガレ役)
マルチキャスティングということで、毎回組み合わせが違うことにより、劇場内でのセッションのような雰囲気になっております。
本当に場がキュッと締まったり、はたまた和やかになったり、お客様と一緒に感じながら出来上がっていく作品だと思います。一緒に作品を作り上げる感覚で、ご覧いただけたらと思います。
轟 大輝(ツミ夜姫役)
今回は自分が座組で最年少ですので、先輩方の胸を借りるつもりでしっかりと楽しんでいけたらいいなと思っています。よろしくお願いします!
松本祐一(ミレン/アコガレ役)
僕にとって極上文學での初の女性役ということで、色々と研究して舞台に挑もうと思っています。人が変われば同じ役でも違った見どころが出てきますので、そこを楽しみに観劇してくださると嬉しいです。
三上 俊(ツミ夜姫役)
文学作品ということで難しい印象もあるかと思いますが、今回は伝えることをテーマにみんなで作ってきました。お客様にも分かりやすく楽しんでいただけるんじゃないかと思います。
個人的な話なのですが、スタジオライフという劇団を退団して以来、その時の同期である荒木健太朗と、初めて共演するので本当に楽しみにしています。ぜひ、俺と荒木の回を観に来て下さい(笑)。
宮城紘大(鼓毒丸役)
僕は極上文學シリーズを観に行ったことがあり、その時からプレイヤーとして関わってみたいと思っていました。今回その願いが届き、この作品に鼓毒丸役として参加することができて幸せです。
僕にしかできない鼓毒丸がある、と稽古を通して思いましたし、他の人もそうなのだと、皆さんの稽古を観ても思いました。どの回も、みんな違ってみんないいとお客様が思えるように、僕たちは全力で板の上で生きたいと思います。
ぜひ、三上さんと荒木さんの回だけではなく、宮城紘大の回も観に来てください!(笑)。
山本誠大(ミレン/アコガレ役)
この作品は役者によってアプローチの仕方が違います。その場で生まれる役者同士のコミュニケーションなども毎公演違ってくると思いますので楽しみにしていてください。
語り師
ランズベリー・アーサー
今回は語り師ということで物語を紡いでいくのですが、本を書いている、というような感覚もあり、ほかの皆さんが演じている読み師ともリンクするところがあります。そういったところにも注目して楽しんでいただけたら嬉しいです。
榊原優希
この語り師という役は、物語を紡いで、物語を作り出す存在です。ご来場いただいた皆様にも、彼の紡ぐ物語をしっかり楽しんでいただけるように演じたいと思います。
笹 翼
坂口安吾さんが作り上げた『桜の森の満開の下』という世界観を、現代でも作り上げていきたいです。語り師という立ち位置ではございますが、お芝居の中での姿にも注目して観ていただけたらと思います。
高坂知也
すごく頭がいい役なので、ちょっと頭の良さが追い付かないです(笑)。頭がいい人ならではの苦悩や、独特な世界観、ちょっと怖いけれども綺麗な雰囲気。自分なりに一生懸命、そういったものを皆さんにお届けできたらと思います。
撮影:K.Hikaru
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