2019年11月1日(金)より、ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」〝飛翔〞がTOKYO DOME CITY HALLで幕を開けた。
2015年に公演された初演から、常に新しい可能性にチャレンジし続けている演劇「ハイキュー!!」。今回は主役校烏野高校に新キャストを迎え、ついに「新生烏野」が始動する。
昨年12月の〝最強の場所(チーム)〞で烏野高校の全キャストが卒業して以降、新生烏野のお披露目を心待ちにしていたファンも多いだろう。そして今回は、佐久早、星海、宮といった新キャストも登場する。
シリーズ8作目となる今作、今まで積み上げられた思いを託された彼らがどのように羽ばたくのか。‶頂〟を目指す彼らの眩しい姿は必見である。
「2.5ジゲン!!」では、ゲネプロの様子及びゲネプロ前におこなわれた囲み会見の様子をお届けする。
それぞれの壁にぶち当たる第1幕、その先に見えてくるものは?
スタイリッシュな音楽、キャスト勢揃いのOPは、開始早々観客の熱を高めてくれること間違いなしだ。
『3度のボレーで攻撃へと‶繋ぐ〟球技である』――ファンにとってはお馴染みのこのモノローグ。今作のテーマが「繋ぐ・託す」といったワードだからだろうか、聞いていて感慨深いものがあった。
第1幕は、和気藹々とした初詣のシーンから始まる。おみくじを引いて一喜一憂する3年生澤村大地(演:日向野 祥)、菅原孝支(演:一ノ瀬 竜)、東峰 旭(演:福田 侑哉)と、それを励ます清水潔子(演:大久保 聡美)。今回清水は、ストーリーテラーとしてのポジションも担っている。
1、2年生は新年早々羽子板に興じたりと、烏野高校の仲のよさは見ていて微笑ましい。
そして迎えた春高本番。第1幕は、春高初日を迎える前の全日本ユース強化合宿、宮城県1年選抜強化合宿を振り返るといったかたちで物語が展開する。
今まで練習試合や合同合宿、そして公式戦と、チームで戦ってきた烏野だが、今回は個々の成長を遂げていく姿が印象的であった。
全日本ユース強化合宿に召集された影山飛雄(演:赤名竜之輔)は、迷わず合宿への参加を決める。悔しがる日向翔陽(演:醍醐虎汰朗)に「先に行くぜ」と告げる影山の姿は、清々しいくらいにバレーボールに対して真摯だ。
バレーボールに対して真っ直ぐな姿勢は、日向も同様であった。呼ばれてもいない宮城県1年生選抜強化合宿に押しかける日向は、確かに無鉄砲ではあるがバレーボールへのひたむきさで溢れている。
見ていて思わず「頑張れ……!」と応援したくなる姿には、日向のがむしゃらな魅力がたっぷりと詰まっていた。
こうして東京と宮城という離れた場所で、2人はそれぞれの戦場へ一歩踏み出すことになるのだ。
宮城県1年生選抜合宿で、日向に与えられたポジションはボール拾い。練習に参加することすらままならない中で、日向はコートの外でしか得られない視点で徐々に成長を遂げていく。
対する影山は、順風満帆な合宿生活を送――れるはずがなかった。全日本ユース強化合宿に召集された選手は、ひと癖もふた癖もあるつわものばかりだ。
今作が初登場となる佐久早聖臣(演:つわぶき峻)、星海光来(演:輝山 立)、宮 侑(演:松島勇之介)の3人が、どのように舞台で生きているか楽しみにしていたファンも多いだろう。影山との掛け合いの中で、3人の魅力も存分に発揮されていた。
「おりこうさんよな」宮が影山に告げた一言。原作でも印象深いこのシーンは、影山に変化をもたらすきっかけにもなっている。
星海はその運動神経を活かし、舞台上を動き回る姿も印象的であった。小さな体躯を感じさせない圧倒的なその存在感は、まさしく〝小さな巨人〟と呼ぶにふさわしい。
新たな場所で、新たな出会い。さまざまな体験を経て成長していく日向と影山。もちろん、頂を目指して成長をしているのは2人だけではなかった。
時を同じくして、烏野高校排球部全員が、「チームにどうやったら貢献できるのか」とそれぞれの成長を遂げていたのだ。
場所は違えど頂を目指して走り続ける彼らの姿は、離れていてもチームであるという繋がりを見せてくれた。
第2幕、――これが新生烏野だ!
合宿も終了し、迎えた伊達工業高校との練習試合。伊達工の武器である青根高伸(演:新井 將)、二口堅治(演:木村 敦)、黄金川貫至(演:羽富琉偉)の3人によるバンチリードブロックが烏野高校の前に立ちはだかる。
伊達工のブロックは、キャスト陣の平均身長はなんと約187cm。鉄壁の名にふさわしい迫力を、ぜひ劇場で体感していただきたい。
この試合シーン、ダンスと音楽がとにかく魅力的であった。単純なように見えて複雑なフォーメーション、そしてスピーディな動きが試合の疾走感を演出してくれている。
アクロバットな動きも取り入れられたダンスは、今作の見どころのひとつだろう。あっちもこっちも忙しく、目がいくつあっても足りないというのが筆者の感想である。ちなみに本公演から、振付を梨本威温(EMPTY INC)が担当している。ここにも、新生要素が満載だ。
それぞれが成長して迎えたこの試合だが、不穏な空気が流れ始める。
「俺は良いトス上げています!!」そう激昂する影山。その姿は、かつてチームメイトたちにコート上の王様と呼ばれた時と重なってしまう。
仲間たちから一歩離れて、やってしまったと言わんばかりの影山の表情は見ていて胸が締め付けられる。しかしそんな影山に、日向は真っ直ぐな言葉を向けた。
「王様って何でダメなの?」
日向から影山に王冠が与えられた瞬間に、新生烏野が生まれたのだと筆者は強く感じた。
きっと、影山に与えられるコート上の王様という異名は、今も昔も変わらない。しかし込められた意味が確かに変わってきているのは、烏野高校がチームとして繋がっている証拠だろう。
この試合から羽ばたく新生烏野の第一歩を、ぜひ劇場で見届けて欲しい。
囲み会見コメント
ゲネプロに先立ち、全体フォトセッションと囲み会見がおこなわれた。会見には新生烏野の十一名(醍醐虎汰朗、赤名竜之輔、山本涼介、織部典成、鐘ヶ江 洸、北澤優駿、中谷優心、長田翔恩、日向野 祥、一ノ瀬 竜、福田侑哉)そして演出・脚本のウォーリー木下が登壇した。
――シリーズ8作目というところでメンバーも一新しましたが、意気込みをお願いします。
醍醐虎汰朗(日向翔陽役):精一杯頑張りたいと思います。よろしくお願いします! 前回のキャストから一新して、烏野は全員新しくなりました。
演じる人が違うのでもちろんまったく同じものはうまれないんですけれども、スポーツならではの熱量や躍動感はしっかり引き継がせていただいて作ったつもりなので、胸を張ってお届けできるかなと思います。
赤名竜之輔(影山飛雄役):僕はお芝居は今回が初めてなのですけど、キャスト一同たくさんの方に助けられていいものができたと思います。楽しみにしていてください。自分がこの演劇「ハイキュー!!」に貢献できる部分であったり、逆に皆さんに助けてもらう部分があったり……それがいいバランスで、濃い稽古期間になったと思います。早く観て欲しいです。
山本涼介(月島 蛍役):今回、シリーズ8作目ということで、今まで出ていた人たちの分の気持ちも背負って精一杯頑張りたいと思います。よろしくお願いします。
織部典成(山口 忠役):本日はお忙しい中ありがとうございます。新生烏野として初日の幕が開けるわけなんですけども……。今まで、切磋琢磨して作り上げてきました。タイトルにもあるように、〝飛翔〞できるように頑張りたいと思いますので皆さま応援よろしくお願いします!
鐘ヶ江 洸(田中龍之介役):稽古でやるべきことは全部やってきました。あとは本番やるだけだと思っています。楽しみにしていてください!
北澤優駿(西谷 夕役):もう前しか見えないというか、……後ろは見えないです! 行ってきます!
中谷優心(縁下 力役):今回の現場は本当にやったことがないことがたくさんあったので、皆で引っ張りながら、引っ張られながら頑張ってきました。僕自身も初日を楽しみにしているので、皆さまにも楽しんでいただけたらと思います。
長田翔恩(木下久志役):今までにない木下という役をやらせていただいて、本当に光栄です。新生烏野が一丸となって戦う姿をぜひ皆さんご覧ください。よろしくお願いします。
日向野 祥(澤村大地役):2ヶ月近く稽古をずっとしていて、一丸となって挑むわけですけども……。とにかく観てくださる方に、心が動くような感動をお届けできるように精一杯頑張りますのでよろしくお願いします。
一ノ瀬 竜(菅原孝支役):皆で楽しんで全員バレーをやっていけたらと思います! よろしくお願いします。
福田侑哉(東峰 旭役):本日11月1日、コミックス40巻も発売しました! 表紙が東峰 旭です! この仲間なら乗り越えられると思いますし、ひとつひとつ丁寧にやっていきたいと思いますのでよろしくお願いします!
――今回の新たな見所を、演出家のウォーリー木下さんお願いします。
ウォーリー木下:今回は、烏野高校が宮城県代表に決定し、次はいよいよ日本一を目指すという、その前夜の物語です。
キャストの彼らが新生烏野として集まってきて、新しいチームを作ることとリンクした台詞もたくさんあります。『今、新しいものがうまれるな』ということが客席まで伝わると思います。美術、振付、映像も刷新しました。音楽も実は全部新曲です。
バレーボールや演劇を、新しい切り口から作ることができるんだという発見がたくさんあった稽古場でしたので、お客さまもまだまだ「ハイキュー!!」から新しいものがうまれるんだなと思って欲しいです。
――ここを特に注目して観て欲しいというところはありますか?
赤名:どこかで皆が120%で汗をかくシーンがあるんですけど、それはお芝居ではなくて気持ちでやっている場面です。
前回から引き継いでいる気持ちだとか、今僕たちが舞台にかける思いを表現している魂のシーンなので、そこを皆さまに受け取っていただけたら幸せなのかなと思います。
――ファンの皆さんに一言お願いします。
ウォーリー木下:演劇「ハイキュー!!」シリーズ8作目ですけど、温故知新というか……。今までの熱量は引継ぎつつ、新しいキャストが新しいドラマを作っています。今回試合は少ないですが、演劇として楽しめるところがたくさんあると思いますので、初めましての方もここからみていただけたらうれしいです。
醍醐:泣いても笑っても今日幕は開くので、僕たちにできることはすべてやってきたつもりです。あとはこの熱量を皆さまに届けるだけなので、受け取って欲しいですし、伝わったらうれしいです。
会見中は、キャスト陣の仲の良さが垣間見える瞬間もたくさんあった。
例えば織部がやや緊張した面持ちで意気込みを語れば、一同から「今のって携帯に書いてあったやつ?」「楽屋で練習してたやつ?」とツッコミが飛ぶ。それに対し織部が「やめて! 一番ダサいやつ!」と笑いを誘う場面もあった。
また、赤名は現在醍醐の家に居候中とのこと。きっかけは「僕の家より虎汰朗くんの家の方が稽古場に近いから」というシンプルなもの。ちなみに居心地については「寝心地が悪くて、大阪の実家からマットレスを送ってもらいました(笑)」らしい。
繋がり、託される気持ち
シリーズ8作目となる今作のテーマは、「繋ぐ・託す」といったもの。観劇中、何度もこのテーマが筆者の頭を過ぎった。
ストーリーはもちろん、前キャスト陣からの気持ちを引継ぎ舞台に立ってくれている新生烏野の熱量が、観客席まで伝わってきたのだ。彼らの熱い姿に、思わず「頑張って!!」と心の中でエールを送ったのは一度や二度ではない。
新生烏野の挑戦は、まだまだ始まったばかり。これから戦うライバルたちも登場し、演劇「ハイキュー!!」の勢いは止まらない。‶頂〟を目指して、飛べ! 新生烏野!
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