Live-Musical-Stage『チャージマン研!』2023が、12月23日(金)に東京・新宿FACEで開幕した。
本作は、2019年に初演がおこなわれた“チャー研ステ”の第3弾。今作では、原作の名作回などで構成された「通常公演」と、年越し特別公演(12/26(火)は特別公演の納会バージョン)が上演される。
舞台作品・ミュージカル作品の枠を超えたエンターテインメントであるチャー研ステは、今回もどれだけ多くの観客を楽しませてくれるのだろうか。2.5ジゲン!!では、すでに開幕している公演の様子をレポートする。
※本記事は、初日公演の内容を中心に全体的にネタバレがございます。
※写真は初日公演とは別のものとなります。
3年ぶり、3回目となる今回のチャー研ステは、過去作を経てさらに観客を楽しませる要素がてんこ盛りとなっている。研役は4人から6人へ増え、新企画「お祝い席」、年越し特別公演など、さらにギリギリなチャレンジをした作品となった。
見えている暗転、作画の少ないアクション、堂々たる尺稼ぎに次ぐ尺稼ぎ。親の顔より見た某怪獣の映像、逆さ吊りの研人形を奉る謎の儀式、原作の名作回を“忠実に”舞台化した箇所…。
従来どおりのこれらの要素に加え、今作ではギリギリを超えてアウトな、マイキーならぬマイ研(日替わり/初日公演は横井翔二郎)、舞台の片棒を担がされるお祝いハッピージュラル企画などが足され、さらには初演でおこなわれた「4カ所同時多発シーン」が復活。顔面の筋肉が痛くなるほどひたすら笑った後は、撮影不可の本気の芝居パートへ突入。感情をぐるぐるとかき回されたまま狂乱のエンディングを迎える。
原作アニメの魔王役・佐藤昇による丁寧な生ナレーションとスクリーンの映像画面が合っていなくても、スカイロッドがなかなか降りてこなくとも、ボルガ博士が天井に引っかかっても、すべての事故が「チャー研なので」と楽しめてしまう。このゆるさがクセになる作品だ。
第2弾のR-2(2020年)は、コロナ禍の真っただ中でも何とかしてエンタメを届けたいと、厳しい規制の中でも数々の創意工夫を凝らしていた。
事前録音に合わせての口パクなども、チャー研ステらしくツッコミどころが満載で楽しかったのだが、それでも演者・制作陣は抑圧ややりきれなさを感じていたかもしれない。筆者もいち観客として「この状況下で作品らしさを失わずによく上演してくれている」と感謝しながら、もっと自由にやれたなら…ともどかしさを感じる部分もあった。
しかし今作では、それらのうっぷんを晴らすかのように、キャスト全員がのびのびと自由に演じ暴れ、そして心の底から本作を楽しんでいる様子が伝わってくる。
空いている席に突然腰かけて観客とマイクオフのトークを始めるジュラルの魔王(演:村上幸平)、芝居に支障をきたすほどに笑いが止まらなくなってしまう大見研(演:大見拓土)、それを見てツボに入ってしまう、かわいさがとどまるところを知らないキャロン(演:星元裕月)。場内をうろうろと歩き回る謎ロボットのバリカン(演:赤間頼依)もかわいらしい。
過去作では爆弾として見事に散ったボルガ博士(演:山﨑玲央)は、今作ではどのような活躍を見せてくれるのか…? それは実際に観て確かめてほしい。
物騒な中村研(演:中村誠治郎/パパ役と兼)、様子がおかしい東研(演:東拓海)、狂気の沙汰の高崎研(演:高崎俊吾)、その器用さで空気を広げる横井研(演:横井翔二郎/パパ役と兼)、情緒の高速ジェットコースター古谷研(演:古谷大和)。
今作には登場していない茨城研(演:安達勇人)のテイストをエンディングの振付で感じられるのも、従来ファンにとってはうれしいところだ。
超個性的な研たちがそれぞれの能力を発揮し、それが観客に伝わっているのは、魔王を演じる村上幸平の力と存在によるものが大きい。
公演中、すべての研に対してまったく態度を変えず笑いもせず真剣に対峙することで、研1人ひとりの個性がより際立って見える。もしも通常の舞台作品のように相手によって自分の芝居も変える手法であったとしたら、“チャー研らしさ”が損なわれてしまっていたのではないだろうか。
R-2前のインタビューで村上は「魔王役は僕の集大成」と語っていた。「そんなばかな」と思ってしまうかもしれない風体の役だが、バランス感覚や存在感など、村上幸平の魔王あってのチャー研ステと言っても過言ではないだろう。
今作から参加のジュラル星人リーダー・上杉周大は、場を回しながらギターを手にたっぷりと歌を聞かせてくれる。ネタではなく本格的な歌唱によるミュージカルパートもあり、まさに“LIive-Musical-Stage”の名の通りだ。
「観客席と舞台」という概念はほぼここでは通用しない。客席もまたチャー研ステの一部である。とはいえ堅苦しく考えたり難しく構える必要はない。ただただ、目の前に起こったことだけ受け入れればいいのだ。紙テープを思い切り投げ入れまくるもよし、スマホで推しをひたすら連写するもよし。ゆるく自由に楽しめるのも本作ならではの魅力である。
また、本作は過去作同様にニコ生での配信もおこなわれている。家でゆっくりと、寝転んで飲食しつつツッコミのコメントを書き込みながら観るのも実に楽しい作品だ。
実力のある役者たちが本気でぶつかり、ふざけ、楽しんでいる。年の瀬にひたすら笑って生の芝居と歌を浴び、作品の中に巻き込まれる感覚を味わえば、来年もがんばろうという気持ちがきっとわいてくるはずだ。
公演は12月31日(日)まで東京・新宿FACEにて。日によって4カ所同時多発シーンの参加募集の追加受付もあるので、公式X(旧Twitter)を確認しよう。
取材・文:広瀬有希/カメラマン:鏡田伸幸
(C)2023 鈴川鉄久/ICHI/チャージマン研!Lol
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