LIVE-MUSICAL-STAGE 『チャージマン研!』2023が、12月23日(土)に開幕する。
本作は、1974年放映のアニメ「チャージマン研!」の舞台化第3弾。2019年の初演では「何を見せられているのか」「高熱の時に見る夢のよう」とSNSでも反響を巻き起こした。
2.5ジゲン!!では、初演ぶりの復帰となる髙﨑俊吾と、前作(R-2/2020年)から引き続き出演する東拓海、2人の“研”にインタビューを実施。プライベートでも仲の良い2人に、『チャー研ステ』の魅力をたっぷり語ってもらった。
――前作(R-2)から3年ぶりの新作となります。上演決定のお知らせを聞いた時はいかがでしたか?
髙﨑俊吾:いろいろな意味で「またやるのか!」と思いました(笑)。チャー研ステは非常にチャレンジングで、これまでにない経験をたくさん得られた作品です。これまでよりもさらに頭のおかし…いや、レベルアップした作品になりそうで今から楽しみにしています。
東拓海:「またやるだろうな!」と思っていました(笑)。多くの方々に長年愛されている「チャージマン研!」なので、きっとこの先もブームを繰り返しながら舞台も20年、30年と続いていくでしょうね。
髙﨑:30年したら僕、還暦になっちゃう。
東:いいじゃない、還暦研! おもしろいよ。僕は一生やり続けるよ。
――前作では2公演のみの共演(髙﨑はゲスト出演)でしたが、お互いの研をご覧になってどのように思われましたか?
東:巷(ちまた)では「(髙﨑の研を称して)だいぶやばい研がいる」と言われていましたが、僕は彼(髙﨑)のいろいろな面を知っているので「まだ隠しているな」と思っていました。まだ彼は本気の「ほ」の字も出していないですよ!
髙﨑:自分ではだいぶ暴れていたつもりなんだけど!(笑) それを言うなら拓海の方こそですよ。前作で、自分が出ていない回の上演を配信で観ていたのですが、そのときはとんでもなくぶっ飛んでいたのに、いざ共演したら「僕の“コロ研”を立ててくれている」と感じて。僕と拓海は“研”としてのキャラクターの方向性が似ている部分があるからかな。
東:僕は髙﨑くんの出ていない前作(R-2)からの出演なので、立ち位置として“託された”感を持っていて。だから似ていたのかな、と感じています。
――おふたりはどのように“研”のキャラクターを作っていったのでしょうか?
髙﨑:初演は、「チャージマン研!」を舞台化するにあたって「どうすれば?」と全員頭にハテナマークを浮かべた状態から始まったんです(笑)。「4度同じことを繰り返す」なども、稽古をしながら1つひとつ生まれていって。そんな中、僕自身も稽古終盤までずっと試行錯誤をし続け…追い込まれてつい出たのが「コロスヨ☆」でした(笑)。
でも「これだ!」とハマった感はあったものの、ワードチョイスとして大丈夫かなと心配もあったんですよね。演出のキムラ(真)さんに相談の上、かわいさをアップさせて狂気とバランスを取りながら“コロ研”を作っていきました。
東:「R-2」は(感染症の飛沫対策で)録音したセリフに合わせての口パク演技だったので、ボディランゲージを大きくしようと思って。初演とは違うおもしろさも出したかったし、口パクでどこまで表現できるかな、と(笑)。
本番ではずっと不安定な橋を渡り続けているような気持ちだったので、今回は頑丈な橋を架けたいですね。今作はセリフも通常の声出しに戻るので、また新しく研と向き合わなければ…と思っています。
ボールが投げっぱなしになるのも、チャー研ステ!
――前作の稽古中、特に印象に残ったことを教えてください。
東:チャー研ステの現場は、基本的に「ダメ」「NO」がなくて、一度全部受け入れてくれるのが特徴なんですが、それでも「それだけはダメ!」とキムラさんに言われたことがあって(笑)。そこで「これはダメなんだ」と、やってはいけない限界のラインが分かりました。
髙﨑:何をやっちゃったのか気になるなあ(笑)。僕が印象深いのは、初演でご一緒した安達勇人(初演・R-2/チャージマン研・泉研役)さんのことです。稽古ではずっとオーソドックスな研をやっていたのに、終盤に突然茨城弁で喋り出したんですよ。「その手があったか!」と衝撃を受けました。
あまりにもおもしろすぎて、カンパニー全員笑いをこらえられなかったほどです。それまでの稽古ではそんな空気はみじんも感じさせなかったのに、本当に突然のことでした(笑)。
――稽古の方法などで「他の作品と大きく違う」と感じていることは何ですか?
東:他の舞台作品では、状況や感情を考えた上でセリフを口にします。でもチャー研ステでは“考えたら負け”なんです。
髙﨑:そのセリフを言うのにベストである「間」やタイミングなどについては考えますが、相手と言葉のキャッチボールをしてはいけない。お互いに一方的に投げ合う…壁あてかドッジボールのような(笑)。だからこそ、不意にきちんとしたお芝居をすると逆におもしろくなるんです。
なにがウケるか分からないおもしろさと、何をやっても受け入れてもらえる安心感がある現場ですね。
東:共演者の方々もみんな頼もしいです。僕たち“研”以外のキャストさんたちが崩れずに支えてくださっているからこそ、“研”がいろいろなことにチャレンジできるのだと思っています。
髙﨑:ゆづ(星元裕月/キャロン役)は、それぞれの “研”に臨機応変に対応して、作品をよりおもしろくしてくれるので頼りにしています。先ほどのボールのたとえで言うならば、僕たちが一方的に投げたボールでも、ゆづはうまくさばいてくれるというか。
東:たまに、ぶつけようとした球を思いっきり打ち返されたりもするけれどね!(笑)
――今作から参加する研役のお2人(大見拓土・横井翔二郎)はいかがですか?
東:まず拓土くんは、まだ稽古序盤なのに、もう彼なりの“研”ができあがっているので驚いています。自分を含めて他の誰かが同じことをやっても、あのおもしろさは再現できませんね。彼自身の魅力がたっぷり出ていて、“愛される研”が確立しているな、と。
髙﨑:しいて言うなら…“柴研(犬)”かな?(笑)
東:横井さんはとにかく頼もしい方です。もし誰かがつまずくようなことがあっても、横井さんならそれらを拾い上げて全部プラスに変えてくれるだろうという安心感があります。だからこそ「横井さんがいるから何をやっても大丈夫」と思ってしまっていて(笑)。
髙﨑:何でもできる達者な方なので、僕も甘えてしまっています。「何かあっても横井さんが回収してくれるだろう!」と。投げっぱなしになるのもチャー研ステならではの魅力なんですけれどもね(笑)。
2人が得たものと失ったものとは…?
――演者だからこそ感じる、チャー研ステの魅力とは何でしょうか?
髙﨑:ぜいたくなキャストの方々が集まってものすごいことをしている、というのがまずおもしろいです。また、お芝居だけに集中するのではなく、広い視野を持っていなければいけないので役者として力がつくと感じています。お客さまとの距離が近いので「見られている」と実感できて、演者としても受け取れるものが多いです。
東:全方向に客席がある特殊な作りの舞台なので、「全部見られている…」と最初は緊張していました。でも途中から、「何をやっていても、どこからでも見られるんだから」と達観するようになりましたね(笑)。あきらめの境地と言うか。
髙﨑:確かに、もう普通の舞台の方が緊張するかもしれない。チャー研ステだとお客さまの表情がよく見えるので、反応がダイレクトに得られて安心する面もあります。これほどまでにお客さまと目を合わせてお芝居をした舞台もなかなかありませんし、積極的に皆さんに絡みにいっていました。観に来てくれた役者仲間を見つけたら、「絡むなよ」という空気を察してもあえて目を合わせにいったり(笑)。
東:チャー研ステを観てくれた役者仲間たちからは「ぶっ飛んだ作品だね」と同じくらい「うらやましいね」と言われます。僕も初演を観たときに同じ感想を抱いたので、役者目線でうらやましいと思ってもらえるのは、素直にうれしいですね。
髙﨑:「お客さまに楽しんでいただく」のは同じなのですが、「物語をお見せする」のではなく、ただただ楽しんでいただきたい、楽しませたい、という気持ちでみんなが臨んでいます。
シーンによってはスマホを操作したり撮影したり、少しぐらい会話をするのもOKという…スポーツ観戦に近いかもしれませんね。ラフに笑えて、日々にちょっとした楽しみが増える。チャー研ステはそんな魅力のある作品だと思っています。
――本作に出演したことで得たものと失ったものは何ですか?
髙﨑:拓海は、度胸を得て理性を失ったよね(笑)。
東:…というのもあるのですが(笑)、お客さまのあたたかさを改めて実感したのが大きな得たものですね。ふだん、特に本番前は「受け入れてもらえるだろうか」と不安を感じることがとても多くて。
でも、あれだけ近くでたくさんの反応をダイレクトに感じられて「お客さまは、自分が思っているよりも心を開いて観劇してくださっているんだ」と思ったんです。チャー研ステを通して、人のあたたかさを感じましたし、自分の中にあった不安などをなくせました。
髙﨑:得たものは広い視野です。お客さまの反応が見えるからこそ、次にどうするべきか臨機応変に対応していく力がついたように感じます。
失ったものは…「髙﨑俊吾は絶対にものすごく真面目な人物なんだろう」という周りからの先入観です。この作品で殻を破れたと感じています。よく演じているような役柄とはまったく違うキャラクターですから、本作で僕を知ってくださった方は、他の作品での僕をご覧になったら温度差で風邪を引いてしまうかもしれませんね(笑)。
――最後に、本作の見どころとファンの皆さまにメッセージをお願いします!
東:原作アニメの持っている多くの特徴を、きちんとまじめに舞台で表現している作品です。原作のおもしろさと役者の力が合わさっているので、原作ファンの方も舞台ファンの方にも楽しんでいただけると確信しています。僕に特別注目しなくても、観てくださる方々の視界のどこかに入りに行くつもりでいます!
髙﨑:“コロ研”が帰ってきます! でも、あの頃のままではなく進化したものもお見せしたいので、さらにパワーアップした“コロコロ研”にぜひ注目していただきたいです。
舞台の世界は、照明や映像などさまざまなものが日々進化しています。そんな中でチャー研ステは、ほぼ生身で、セットやその他も低コストに“思わせている”作品です。人間が全力で体を張って何かをやるおもしろさは、目の肥えた舞台ファンの方々にも魅力的にうつると信じています。多くのスタッフの皆さんと力を合わせて作り上げているので、ぜひ楽しみにしていてください。
取材・文:広瀬有希/撮影:梁瀬玉実
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