8月27日(日)に、大好評のうちに幕を下ろした劇団「ハイキュー!!」旗揚げ公演。このたび、U-NEXTにて公演の模様が全景映像・スイッチング映像でアーカイブ配信される。
2.5ジゲン!!では、公演中のキャスト4人(加藤憲史郎/日向翔陽役、若林星弥/影山飛雄役、熊沢学/田中龍之介役、藤林泰也/及川徹役)と本作の演出を務めた須賀健太にインタビューを実施。
観客の反応を受けて感じたことや、本作で新たに取り入れたこだわりの演出ポイントなどについて話を聞いた。
劇団「ハイキュー!!」旗揚げ公演 U-NEXTアーカイブ配信概要
※以下のリンクはプロモーションを含みます
■対象公演・チケットリンク■販売期間
9月29日(金)18:00~12月29日(金)23:59
※購入から1週間視聴可能
■アーカイブ配信 2種購入特典映像
・対象:9月29日(金)18:00~10月31日(火)23時59分までに、配信作品4種のうち2種の購入者
・内容:「バックステージ 速攻編集版」(予定)
※詳しい視聴デバイスに関してはサービスサイトをご覧ください。
――――現在、劇団「ハイキュー!!」旗揚げ公演の公演期間中ですが、稽古から初日を経て、あらためて現在のお気持ちをお聞かせください。(インタビューは公演期間中に実施)
加藤憲史郎(日向翔陽役):稽古が始まってから今日まで、キャスト全員の団結がどんどん強まってきていて、本当の部活のようになっていると思っています。
若林星弥(影山飛雄役):稽古の時とは違ってお客さまが入られるので、より「観られている」意識が強くなっています。すべての動きを、きちんと“見せられるもの”にしなければいけない、と。
熊沢学(田中龍之介役):「お客さまが入って舞台は完成するんだ!」とあらためて感じました!
藤林泰也(及川徹役):疲れよりも楽しさが勝つ、そんな舞台です。
須賀健太(演出):学が言っていたように、お客さまが劇場に入って初めて「ハイキュー!!」の世界が完成するものだと改めて思いました。それから、稽古では全力ではなかったのでは? と思うほどに本番の舞台ではみんな元気に躍動していて(笑)。やはり舞台には“本番”というマジックが存在していて、そこにしかないエネルギーがあるのだと感じています。
――――「お客さまが入って完成する」とお2人から出ましたが、客席からの反応を具体的にどのように感じていましたか?
加藤:気持ちの入り方がまったく変わる、と感じました。観られる“目”の数が違うので、演じる側としてはプレッシャーであると同時に「多くの人に細かいところまで観てもらいたい」と緊張感を持ってさらに工夫を重ねられます。舞台にとってお客さまは必要不可欠な存在ですね。
若林:反応がダイレクトに伝わってくるので「この世界をお届けしたい!」という気持ちがより強くなります。もちろん緊張はするのですが、いい緊張感を持ってお芝居できていると思っています。
熊沢:お客さまが楽しんでくださっているのがうれしいですし、お客さまも僕たちが楽しんでいるのをご覧になって楽しんでくださっているのかな、と感じます。舞台上と客席とで、より高め合っているのかな、と。
僕の個人的なことで言うと、細かい動きはもちろん、試合中や興奮しているとき、悲しいときなど、それぞれの状況での呼吸の違いにも気を付けてお芝居するようになりました。
藤林:兼役で舞台に出るときは、特にお客さまの表情がよく見えます。楽しそうに笑顔を見せてくださっていたり、涙をぬぐっていたり…。そういった姿を見ると「伝わっているんだ」と感じて、思わずにこにこしてしまうんです。兼役としてボールを渡すだけのお芝居でも心を込めて楽しみながらやっています。
須賀:稽古場にはお客さまはいませんから、リアクションを返すのは僕だけです。だから、どうしても彼らは稽古をしながらたまに「大丈夫かな」と不安そうな顔を見せてしまうときもあったんですよね(笑)。
でも本番では、僕が原作を読んで感じたものがお客さまに伝わり、舞台上の彼らに大きな反応となって返ってきていて。それを受けて舞台上で安心している彼らを見て「ほら言っただろ、大丈夫だって」という気持ちになりました(笑)。
それから、お客さまからも「ここが好き」「このシーンが観たかった」というような声をたくさんいただいています。僕の大好きな「ハイキュー!!」とお客さまの観たかったものに、ズレや違いがなかったとうれしく思っています。
――キャストの皆さまにお聞きします。須賀さんの演出を受けて「須賀さんが役者だからこそ」と感じた点はありますか?
加藤:役者のことを理解してくださっているので、もうね…すごいんですよ!
若林:うん、とにかくすごい。僕は舞台に立つのが初めてなので、声の出し方などの基本的なことから須賀さんに聞いてしまって…。不安なこと、分からないことをすぐに聞ける頼もしい方がいてくださるのは本当にありがたかったです。
熊沢:存在感が特別な方です。須賀さんが笑ってくれたらすごくうれしい。だから、須賀さんが笑ってくれるにはどうしたらいいんだろう? と常に考えて研究していました。それから、稽古場ではさまざまな「ハイキュー!!」関連のTシャツやジャージを着ていて、愛がすさまじいです!
須賀:学ね、いつもものすごい眼力でずっと見てくるんですよ!
熊沢:違うんですよ、目が自然と須賀さんを追っちゃうんです。あと、須賀さんは笑い声が大きいです(笑)。
須賀:あえて大きい声で笑ってるの!(笑) 反応が見えたら安心するでしょ? 特にゲネプロのときは意識して大きな声で笑っていました。ゲネプロはお客さまが入っていない状態でおこなうので、客席からの反応が分かりにくいんです。だから、彼らの不安が大きくなってしまわないようにと。
藤林:須賀さんのこの考え方が「役者ならではだな」と思います。それから、役者だからこそ、公演中の演者の体の疲れ方も熟知してらっしゃるんですよね。その状況に合った適切な声かけをしてくださっています。
それから、稽古に入る前のアップ(準備運動)も一緒にしてくださいます。身体的にキツいことも役者と一緒になってやってくださるからこそ、深い理解を持ってさまざまなことを判断できるんだ、と感じています。ありがたいです。
――須賀さんご自身は、役者であるご自身が演出をされる点についてはどのように感じられていましたか? 役者だからこそ、ということがありましたらお聞かせください。
須賀:稽古に入る前は悩みました。全部口で説明してから彼らの芝居をジャッジしていくか、それとも自分が演じて見せるか…。でも、結局テンションが上がって「こうだよ」と演じて見せてしまって(笑)。役者である以上、口だけで説明するのは不可能に近いのでは? と感じました。
それで実際に演じて見せると、特にこの2人(加藤と若林を見ながら)がいい顔をするんですよね(笑)。
加藤:本稽古に入る前、須賀さんが日向のセリフをひとこと読んでくださって「すごい! 須賀さんの日向を見ちゃった!」となりました!
若林:帰り道に憲(加藤)と「俺たち、須賀さんの日向のセリフ聞けちゃったな…!」って。
須賀:でも、日向だけでなく「影山はこうだと思う」と影山を軽く演じて見せても「本物だ!」って言うんです。僕は影山はやっていないよ!(笑)
若林:影山に見えたんですよ! もう、とにかくすごい人なんです。
――では次に、本作の演出面について須賀さんにお聞きします。演劇「ハイキュー!!」とはまったく違う作品に仕上がっている、と同時に“引き継いでいる!”と感じる部分もありました。これらの選択はどのようにされたのでしょうか?
須賀:ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」が5年半の歴史の中で培(つちか)い、つないできたものはリスペクトするべきだと考えたんです。僕が出演していたかどうかを抜きにしても、それらは、演劇「ハイキュー!!」に関わってきたすべての人たちが作り上げた賜物(たまもの)ですから。
でも本当は、すごく悩みました。「前にやったことはやらない」と口癖のように言っていたときがあって。でもあるとき、逆張りばかりの考え方をしていてはもったいないと気づいたんです。いいものはいいし、おもしろいものは使えばいい、と。
演劇「ハイキュー!!」も劇団「ハイキュー!!」も、「ハイキュー!!」の作品としてのおもしろさは変わりません。その根幹さえブレなければ、選択肢が多い方がクリエイティブになれるんだと分かりました。ここは前のものを使いたい、ここは違う見せ方をしたい、と表現の幅が広がったと感じています。
――逆に、今作に新たに入れたこだわりの演出についてお聞かせいただけますか?
須賀:教頭のカツラが飛んでいくところです!(笑)
――まさかの細かい部分ですね(笑)
須賀:そう、「そこ?」って言われるようなところにこだわりたくて(笑)。でも、そういう細かい部分でのこだわりってすごく大事だと思うんです。
“いい話”なこだわりでは、日向のいた雪ヶ丘中学と影山のいた北川第一中学の試合をしっかり描きたくて。6対6の人数でしっかりと試合を見せることによって、日向がそれまでチームでバレーの練習をちゃんとできていなかったことを伝えられると思ったんです。
日向は、ママさんバレーや女子バレー部に混じったりしながらバレーは続けていましたが、チームプレーやチームとしての対人練習はできていませんでした。その切なさは、あの試合をしっかりと描くことで伝えられると思いましたし、重みが増すんじゃないかな、と。そのリアルさは、僕がこだわったポイントです。
それから、最後の円陣。僕たちから彼らに託すという意味もありましたし、以前から観てくださっているお客さまは「帰ってきた!」と思ってくださるかもしれないし、演劇「ハイキュー!!」に出演していたメンバーたちが観たら、開演前に組んでいた円陣を思い出して懐かしんでくれるだろう、と。多くの投げかけができるさまざまな思いを込めて作ったシーンで、とても大事にしました。
――最後に、演出する側に回ってみて「ハイキュー!!」への視点や考え方は変わりましたか?
須賀:いい意味で変わっていません。日向を演じていたときは、日向の目をとおしてこの物語を見ていました。演出に回ってみて、日向以外のさまざまな人物の視点で「ハイキュー!!」に触れられるようになりましたが、物語全体を改めて見られるようになったように思います。
やっぱり「ハイキュー!!」はおもしろい。それだけは以前から何も変わらずに、ずっとそう感じています。
取材・文・撮影:広瀬有希