インタビュー

植田圭輔&菊池修司の“呪いと救い”とは?舞台「ヴァニタスの手記」-Encore-に向けて

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3月10日(金)、舞台「ヴァニタスの手記」-Encore-が東京・サンシャイン劇場にて開幕する。本作は、望月淳による漫画「ヴァニタスの手記」(スクウェア・エニックス刊)の舞台化作品。2022年1月に予定されていた同公演は惜しくも1ステージのみで幕を下ろしたが、このたび再演が決定。

2.5ジゲン!!では、初演から続投のヴァニタス役・植田圭輔とノエ役の菊池修司にインタビューを実施。昨年の公演時に抱いていた思いから、お互いへの気持ち、本作のキャッチコピーにかけて「自分にとっての呪いと救い」についても答えてもらった。

ライブ配信概要
■対象公演・チケットリンク

■ライブ+再ライブ+見逃し配信販売期間
2023年3月13日(月)21:30まで

■販売価格
3,800円(税込)

■ライブ配信時間
各公演開始30分前~ライブ配信終了まで(予定)

■再ライブ配信期間
2023年3月13日(月)19:00~再ライブ配信終了まで(予定)

■見逃し配信販売期間
2023年3月13日(月)21:25~3月19日(日)23:59まで

■見逃し配信期間
2023年3月17日(金)12:00~

■見逃し配信視聴期間
購入から3日間

※公演開始30分前からライブ配信視聴ページに入場可能となります。
※詳しい視聴デバイスに関してはサービスサイトをご覧ください。

(C)望月淳/SQUARE ENIX・「ヴァニタスの手記」製作委員会 (C)舞台「ヴァニタスの手記」製作委員会

――1公演のみ上演がかなった初演からほぼ1年ですね。1年で再演が決まったのは、各所の熱意と早い動きがあったのではないかと感じます。今のお気持ちをお聞かせください。

植田圭輔(ヴァニタス役):ファンの皆さまにも関係各所にも感謝の気持ちでいっぱいです。「絶対に再演する」という制作チームの熱意と本気を感じましたし、作品と我々がどれだけ愛された環境にいるのかを改めて感じました。

菊池修司(ノエ役):僕も同じく、支えてくださった皆さんに感謝しています。前回は本番の舞台に立てなかった(新型コロナウイルス感染により降板)ので、みんなで作り上げてきたこの世界を、今度こそお客さまに届けたいです。

――昨年、1公演でも上演できる、と決まった時はどのようなお気持ちだったのでしょうか。

植田:この物語を届けるためにはどうしたらいいのか最善を尽くそうと思いました。自分のことはもちろんですが、それ以上にノエの代役を引き受けてくれた学(高本学/初演・ノエ代役)を全力で支える気持ちを強く持ちました。

僕たちが1カ月以上かけて得た「この作品の世界観について」や「どういうことを伝えたいのか」全部を渡してあげなければ、たった数日で舞台に立つのは無理な話ですから。学がノエを演じるにあたってどれだけ稽古をスムーズに進めてあげられるか考えながら、どのタイミングでどんな言葉をかけたらいいのかを探していました。

そのため実は、自分のことどころではないほどにいっぱいいっぱいで、細かいことをあまり覚えていないんです。公演が終わったときは、すべての人に「この1公演を受け入れてくれてありがとう」と感じていました。

菊池:僕は正直なことを言えば複雑でした。でもそれ以上に、彼(高本)以上の適役はいないと感じました。いつもは入念に準備をした上で役に臨む学が、あんなにも急な代役を引き受けてくれたことに心から感謝したと同時に、自分が舞台に立っていない違和感はずっと持っていて…。公演の様子も、知りたいけれど知りたくなくて、体調のこともありSNSは見ずに過ごしていました。

公演が終わってしばらくして、ようやくいろいろなものを受け入れられるようになってSNSを見たところ、「公演を届けてくれてありがとう」「再演を希望します」といった声を目にして泣けてきたのを覚えています。僕は忘れられていなかった、とも感じました。

学が立ってくれたあの舞台で生まれたものもたくさんあったでしょうし、公演をおこなってくれたからこそ再演を臨む声をたくさん受け取れたので、僕も今こうしてあの時のことをお話しできています。

植田:修司がSNSを見ていなかったと今聞いて安心しました。どうしても色々な意見や余計なものまで見えてしまいますからね。僕も「公演が終わるまでは見ない!」と決めていて、毎日「今日は〇公演目のはずだった」「修司は元気だろうか」と思ったりしていました。

公演が終わってからSNSでの反応を見たのですが、ありがたさや感謝とともに、本来であればお客さまに抱かせることはなかった感情や感動を与えている、とも感じました。僕は普段から「こう感じてほしい」というスタンスではなく、“観に来てくださった方がどう受け止めるかは自由”だと思っています。でもあの時は特殊な状況でしたからね。

すべての公演が本来の形でおこなえなかった悔しさももちろん感じていましたし、修司にしてみれば本来自分がいるべきだった場所が、自分がいない状態で動いているのに何もできないというのは、どれだけ苦しかっただろうと思います。でも、表立って「つらい」「これだけ頑張った」とは言えないんですよね。どんなに稽古で頑張ったとしても、作品がすべてなんです。

菊池:たくさん悔しい思いをしましたが、結果としてこうして再演できることになりました。今ではそれでいいんじゃないかと思えています。今は、またノエとして舞台に立ってカンパニーの皆さんと一緒に作品を作れることに喜びを感じながら、悔いなくやりきりたいです。そして、本作をできるだけ多くの方に届けたいと強く願っています。

――1年の期間をあけて上演するにあたって、気持ちやお芝居の面での変化はありますか? あるとしたら、どのように変わるでしょうか。

菊池:僕は去年おこなった稽古にベースを置いて、そこに、去年は見えなかったものを足していきます。もっともっと、と欲張りすぎると空回りを起こしてしまうタイプなんです(笑)。やりすぎてしまうと去年の稽古やそこで作り上げたものが無駄になってしまうようにも思うので、大きくは変えていかないつもりです。

植田:1年経ったことで、お芝居を客観的に見られるようになっているのは大きなメリットです。原作が先へ進み、アニメも2クール目が放送されたので、僕自身も原作のより深い部分まで浸れています。前回の通し稽古の動画を見ると、すでにだいぶ仕上がっていたんですよね。だから今回は、前回仕上げていったものから大きく変えずに、けれども解釈がさらに深まって、新たに気づいたことを加えていきたいです。

――では、お互いの印象についてお聞きします。昨年の稽古を経て、お互いに対して感じることは変わりましたか?

植田:以前と変わりません。初めて会ったときは、発言が面白くてボケのスキルがえぐかったので「おもちゃ箱みたいなやつだなぁ」と(笑)。役者としては、「改竄・熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン」(2020年)を観て「こんなにできるんだ!」と驚いたのを覚えています。他の作品でも共演しましたが、芝居に対しての姿勢がしっかりしていて、誠意を持ってやっていると感じました。

菊池:「熱海~」では公演後すぐに、すごく熱のこもった感想を伝えてくれたんです。嬉しかったけれども驚いて、嘘だと思いました(笑)。

植田:僕は嘘をつけないから(笑)。

菊池:僕の圭輔さんへの印象は、初めから変わりません。すでに最初から最高だったので。でも変わったとすれば、本作の現場を経て、より深い関係になれたことです。偉大な大先輩ですから、初めは話すのにも勇気が必要だったんですよ。それが、今こうして隣で話ができたりプライベートでも連絡を取り合うようになって…そこが変わった点ですね。

***

――本作には「呪いと救いの吸血鬼譚」とキャッチコピーがついています。ご自分にとって、呪いと救い、または呪いであり救いでもあるものは何ですか?

植田:“人前に出ること”が、呪いと救いの両方かもしれません。救いでしかないときもあるし、呪いでもあると感じます。厳しい稽古を乗り越えて見るカーテンコールでの景色や、素晴らしい仲間たちと出会って一緒に作品を作り上げられるのは救いです。役をまっとうできたときも。でも、人前に立てばいろいろなものが見えてしまうし、いろいろなことを気にしなければいけません。それらをどのように見てとらえるかが大事ではないかな、と。

不屈の精神力を持っていなければ自分自身が歪んでしまうかもしれず、簡単なことではありません。「ヴァニタスの書」の使い方に通じますね。一歩踏み外せば、自分自身だけでなく身内や近しい人にも影響を与えてしまう危ういものだと自負しながら人前に立つようにしています。

菊池:この作品、舞台「ヴァニタスの手記」が、僕にとっての呪いと救いです。それまであまり激しく緊張をしないタイプだったのですが、初めての降板という体験をしてから緊張するようになってしまいました。舞台に立ちたいのに怖い…。「この世界はこんなにも紙一重のものだったんだ」と感じて、恐怖を感じるようになってしまったんです。

でも、皆さんの声と多くの方々のお力で再演が叶って、またノエとして舞台に立てることになりました。皆さんが想像している以上に、僕は今作があることで救われています。そうでなければ、今後の役者人生でずっとこの重荷を背負っていくことになっていたかもしれません。

作中のノエのセリフ「これはオレがヴァニタスと出会い、ともに歩み、多くを得(え)、失い、そして…」。これが、失ったものもあれば得たものもあるという自分の状況と重なりすぎて、今はまだどうしても口にできなくて…。それをちゃんと言えるようにするのが、今の大きな課題です。あのシーンは、ヴァニタスとノエであると同時に、自分たちにも通じるものがあります。圭輔さんと一緒に、出せるものを出し切って悔いなくこの作品を締めくくりたいです。

――最後に、あらためて本作へのお気持ちとファンの皆さんへメッセージをお願いします。

菊池:僕は、この「ヴァニタスの手記」が大好きです。非現実的なストーリーではあるけれども、込められているメッセージやセリフには、心に刺さるものがたくさんあります。生きていく上で大事なことを教えてくれていると思うんです。そんな素敵なものが詰まった作品をお届けできるのを嬉しく思っています。この世界を楽しんでいただけるように頑張りますので、ぜひ劇場に足を運んでください!

植田:ヴァニタスの言う「人間もヴァンピールも同じようなものだ」は、皮肉であるけれども本当のことだとも感じています。どちらも悩んで葛藤したり、治したい・治されたい、救ってほしいと願ったりしていて…。1年経って咀嚼できるものが増えましたが、まだ勉強不足であり解釈が足りない部分もあります。

でも、あの頃よりも間違いなくこの作品を深く知れているはずです。散りばめられたセリフの1つひとつが心に刺さるように感じます。この作品の血肉である部分をしっかり暴(あば)いて、作品の世界をお届けできるように準備していきます。

また重ねてになりますが、感謝の気持ちでいっぱいです。アニメの2クール目を見て作品にハマられた方が今回初めて舞台に触れてくださるかもしれません。アンコール上演であり再演ですが、初演であるつもりで大切に届けられたらと思っています。楽しみにしていてください。

***

昨年の公演は新型コロナウイルス陽性により降板となった菊池。思い出すのはつらい話になってしまうかもしれないが大丈夫かと聞くと「もう大丈夫です」と笑顔で答え、植田も「まだ引きずっていたら殴ります」と笑っていた。本公演が、舞台に立つ2人にとっての救いになることを願ってやまない。

取材・文:広瀬有希/撮影:MANAMI

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公演情報

タイトル

舞台「ヴァニタスの手記」-Encore-

公演期間・劇場

2023年3月10日(金)~3月12日(日)
東京・会場:サンシャイン劇場

原作

望月淳「ヴァニタスの手記」/「ヴァニタスの手記」製作委員会

脚本・演出

山崎彬

出演

ヴァニタス:植田圭輔
ノエ:菊池修司

ジャンヌ:七木奏音
ドミニク:澤田美紀
ルカ:前田武蔵
ルイ:矢代卓也
オルロック:中村哲人
Dr.モロー:鈴木理学

ルスヴン:鷲尾昇

ローラン:丘山晴己

制作

ナッポスユナイテッド

主催

アニプレックス/ソニー・ミュージックエンタテインメント/ナッポスユナイテッド

公式HP

https://vanitas-stage.com/

公式Twitter

@vanitas_stage

(C)望月淳/SQUARE ENIX・「ヴァニタスの手記」製作委員会 (C)舞台「ヴァニタスの手記」製作委員会

WRITER

広瀬有希
							広瀬有希
						

金融・印刷業界を経てフリーライターへ。エンタメメディアにて現場取材・執筆の他、日本語・日本文化教育ソフト監修、ゲームシナリオ、ノベライズなどで活動中。感動が伝わる文章を目指して精進の日々を送っています。

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