文豪転生シミュレーションゲーム「文豪とアルケミスト」を原作とした舞台「文劇」シリーズは、新作が上演されるたびにその考察しがいのある内容や、観客を引き込む魅力的な演出が話題となる人気シリーズだ。その最新作となる第6弾、舞台「文豪とアルケミスト 戯作者ノ奏鳴曲(ソナタ)」が2023年2月・3月に上演される。
今回、2.5ジゲン!!ではビジュアル撮影を終えたばかりのスタジオでインタビューを実施。今作で主人公となる織田作之助を演じる陳内将、今作から初登場となる檀一雄を演じる赤澤燈に話を聞いた。
10年来の付き合いで共演も多い2人が、今度は「文劇」の世界でどんな関係性を築くことになるのか。お互いをよく知る2人だからこその息の合った掛け合いと、素敵なキャラクタービジュアルでの撮り下ろしショットを楽しんでもらいたい。
ライブ配信概要
■対象公演・チケットリンク■販売期間
2023年3月13日(月)20:00まで■販売価格
3,800円(税込)■ライブ配信時間
各公演開始30分前~ライブ配信終了まで(予定)■ディレイ配信期間
・2023年3月5日(日)12:30公演
・2023年3月5日(日)17:30公演
2023年3月6日(月)18:00~2023年3月13日(月)23:59まで■DMM.com特設ページ
DMM.com 舞台「文豪とアルケミスト 戯作者ノ奏鳴曲(ソナタ)」※公演開始30分前からライブ配信視聴ページに入場可能となります。
※ディレイ配信とは、公演の映像を後日期間限定で視聴出来るサービスです。
※詳しい視聴デバイスに関してはサービスサイトをご覧ください。
(C)2016 EXNOA LLC / 舞台「文豪とアルケミスト」6 製作委員会
――ビジュアル撮影を終えたばかりですね。この衣装に袖を通してみていかがですか。
陳内将(織田作之助役):初めてだけど、どうですか?
赤澤燈(檀一雄役):人見知りしました。
陳内:現場に?
赤澤:現場にもそうだし、この役柄にも。メイクをしてもらって衣装を着てっていうのは、作品に入り込む第一歩なので、ちょっと人見知りしちゃいました。
陳内:俺がいるのに?
赤澤:…あんまり頼りにならないからな。
一同:(笑)
――陳内さんは久しぶりの織田作之助の姿ですね。
陳内:初演から4作あいているので、もうそんなに時が経ったのかという思いもありますし、だけど意外と経っていないような感覚もあって。今日撮影をしながら、当時のことを1日かけていろいろと思い出してきたので、3年空いてはいるんですが、わりと最近のできごとのようにも感じています。
――初演を振り返って印象的だったことはありますか。
陳内:1番大変だったのは、やっぱり関西弁ですね。僕は九州出身なので、「いけたでしょ!」と思っても、どこか九州弁寄りのイントネーションになっちゃうこともあって。最初の頃は演出の吉谷(晃太朗)さんが、嬉しそうにニコニコしながらダメ出ししてきましたね(笑)。
初演の演出でいうと、セットが回って白樺派が出てくるとか、視覚的に楽しめる要素がいっぱいあったし、無頼派の3人は日替わりで自由時間のようなめちゃくちゃなやり取りもあって、すごく楽しかったですね。日によっては3人で笑っちゃって「これちゃんとできているのかな?」みたいなこともあって、それくらい仲良かったんですけど、今回は(太宰治役の平野)良くんがいなくて、代わりに赤澤さんが入ってきてくれて。当時を追うわけじゃないですが、この顔ぶれならではの和気あいあいとした瞬間も大事にしたいなと思っています。
――和気あいあいという意味では、長い付き合いの2人は息ぴったりなのではないでしょうか。
陳内:(とぼけて)これが3回目くらいだよね。
赤澤:そうね~。まあ、これが最後の共演になるんですけど。
一同:(笑)
赤澤:いや、でも逆にお互いに知りすぎているからこその難しさがあるというか。
陳内:そうだね。
赤澤:今回お話をいただいたときも、実は「どうしよう」って相談しましたね。第6弾が織田作之助の主演回だとは聞いていたので、「そこに俺が入ったらやりづらくない?」って。新しい人と共演できたほうがいいんじゃないかっていう話までしたくらいで。でも、役の関係性でいえば、これまでにない新しい絡み方ができそうなので、そこはお互いよく知っているからこそ新しいものが作れたらいいなって思っています。
陳内:意外といままでにない配役だよね。檀くんは腕っぷしに自信があって料理も得意で。オダサクは体力に自信がないし、どちらかというと一歩引いたところで太宰のケアをするような感じで。どっちかっていうと、普段と逆だよね。
赤澤:そうですね、逆ですね。僕は料理もできないし、ケンカもできないし。
陳内:「ケンカ」なんて3文字、聞いたこともないもんな?
赤澤:うん、この現場で初めて聞いた。
一同:(笑)
――では、今回はそこがひとつのチャレンジになりそうですね。
陳内:僕も赤澤さんも、新鮮な気持ちで取り組めるように、これまでの作品のなかでの頼り方とか甘え方はしないようにしたいなって思っています。お互いにまっさらな気持ちで、台本とか稽古に向き合っていけたらいいよね。
赤澤:でも結局、毎日一緒にランチして稽古場に行くことになるとは思います。
陳内:そうね。
赤澤:稽古中は新鮮な気持ちでやれたらいいなあ。そういう意味では、吉谷さんとはお互い別作品で一緒にやっているけど、3人一緒になったことはないので、そのあたりも楽しみです。
――作中ではオダサクと檀の関係性の移り変わりが見所の1つでもあるとのこと。2人の関係性は出会った当時からどう変わってきましたか。
赤澤:簡単にいうと、先輩後輩から入ったんですが、途中から同期になって、(隣からのツッコミを無視しながら)最近だと先輩後輩が入れ替わって僕が先輩になっています。
陳内:おかしいな。そうはならないのよ。一緒に時間重ねているんだから。
赤澤:追い抜いてない? おかしいな、僕は追い抜いたなって思っているんだけど。
陳内:そんな概念ないのよ。
一同:(笑)
赤澤:実際のところは、すごくお世話になっています。ご飯作って持ってきてくれたり、面倒を見てきたりするところは、昔から変わらないですね。
陳内:“面倒見おばけ”なところあるからね。なんとなく疲れているかなって思った日の翌日は、生姜焼き作って持っていったりね。
赤澤:あれ? お母さんかな、みたいな(笑)。今回、僕が料理できる役なので、そういうところを学ばないといけないなと思っています。Uber Eats大好きで全然料理しないので。
――今後、例えば10年後など、どんな関係になっていたいですか。
陳内:10年後とか想像つく?
赤澤:いや、全然。この1年後も想像ついてないもんね(笑)。でも、人間って年齢重ねると柔らかくなっていくじゃないですか。
陳内:高齢化してね。
赤澤:そうそう。だからその絵はすごく想像できます。2人ともすっとぼけていて、年下からいじられている…みたいな。
陳内:10年後って俺が45歳だから…2人足して米寿!?
赤澤:ちょっと足す意味が分かんないけど…。
一同:(笑)
赤澤:そのときも共演してたらおもしろいよね。
陳内:もうそこまでくると「嘘だろ」みたいな感じだよね。
赤澤:「もうやめろよお前~!」って
陳内:「ちょっと1回お休みしてきてよ~!」ってなりそう(笑)。
――お互いに尊敬できる部分、すごいなと思う部分はどこでしょうか。
赤澤:とくに映像の現場では、踏んでる場数も彼は多いから「あ、やっぱり一応先輩なんだな」って改めて思いますね。
陳内:一応(笑)。
赤澤:言っても年上だし、体育会系の人だから、ちゃんと後輩たちに「こうしてあげたい」っていう思いがあるんですよ。僕はあんまり人に興味がないから。僕ならそこまで熱血になれないことにも、ちゃんと愛情を持って接していけるところはすごいなと思いますね。人のことを考えるって体力使うじゃないですか。だから、どこからその体力出てくるのかなって。そこが彼のすごいところです。
陳内:俺は逆だなぁ。赤澤さんは優しいから、後輩たちがちゃんと「お兄ちゃん、お兄ちゃん」って甘えられるような空気づくりをするのが上手ですね。本人は人に興味がないと言っているんですが、きっとその一歩引いた感じとか脱力加減が、甘えやすい空気につながっているんだと思います。
俺が「ちゃんとやるよー」って空気を締めた後の、みんながふっと息をつきやすい環境を作るっていう役割を担ってくれていて。まあ、俺もジジイの小言みたいになりたくないから、基本は見守って、困っているときには声を掛けてアドバイスするっていう、ライトな陳内にそろそろ仕上げたいなとは思っています(笑)。
赤澤:ライト陳内?
陳内:そう。35歳はライト陳内にしていきたい。
一同:(笑)
陳内:あと素敵だなと思うのは、別作品の話になるんですが、ルーキーとして出演する子のアドリブを引き出せるところというか。打ち合わせなしで、その場の瞬発力でバッとやって。それでおもしろいアドリブを引き出せている日もあれば、失敗している日もあるんですけど(笑)。
赤澤:何回か失敗している(笑)。「ルーキーに恥かかせてゴメンな」って思いながら生きているよ…。
――コミカルなアドリブという点では、1作目では無頼派3人がやっていた印象です。今回もそれはありそうですか?
陳内:まだ具体的にどうなるかは分からないんですが。無頼派だと太宰・オダサク・安吾の3人がフィーチャーされがちで、そこに最後の無頼派と呼ばれる檀が新キャラとして入ってきてくれるので、(坂口安吾役の小坂)涼太郎とのコンビ感を大切にしながらも、せっかくなら檀ともおもしろい絡みができたらいいなと思っています。
赤澤:涼太郎もいるし楽しそう。そういうシーンがあることで、役への理解度も早まるから、たしかにあってほしいね。やっぱりアドリブをしたりコミカルにしたりするには、その役のいいところをたくさん知っていないといけないので、やらせてもらえるとありがたいですが、まだ全然想像はついていません(笑)。
――共演キャストの印象はいかがでしょうか。
陳内:俺はサトちゃん(北原白秋役の佐藤永典)は、はじめまして。
赤澤:え、そうなんだ!? 意外。
陳内:あと(草野心平役の)佐野真白くん、(中野重治役の)MAHIROくんもはじめまして。
赤澤:僕もはじめましてですね。
陳内:あとはソリくん(徳永直役の反橋宗一郎)も一緒だね。
赤澤:ソリくん! いいじゃん。
陳内:ソリくんも涼太郎もいるけど、コメディ劇やっていいわけじゃないからね(4人はサラリーマン・コメディ「ビジネスライクプレイ2」で共演)。
赤澤:そうね、気をつけないと(笑)。でもすごく良さそうなメンバーだね。ニコニコ平和な人が多そう。
――赤澤さんから見た、陳内さんが座長のカンパニーの雰囲気は?
赤澤:すごく柔らかいですよ。座長じゃなくても、カンパニーでお兄さん的な立場になることも多いので、差し入れとかすごくしてくれるし。なにかあげたいっていう気持ちが強いのかな?
陳内:妹がほしかったからね。
赤澤:それは知らないんだけど(笑)、その末っ子気質なせいか、座長以外でも面倒見はいいですよね。あと、大変なことを率先してやってくれる。稽古中にうまくいかなくて流れが詰まっちゃったときも、機転を利かせて自分から動いて流れをスムーズにしてくれますね。なので、今回も円滑に進むんじゃないかなと安心しています。
――では、初参加への不安はなさそうですか?
赤澤:役作りの部分だけは、まだこれからなので不安はありますが、それ以外の部分は心配していないです。役作りに関しては、正直あまり文学に触れてこない人生だったので…。若いときに文学作品に触れるからこそ得られるものもあると思うし、きっと大人になっていろんな世界を知ったうえで触れるからこそ理解できることもあるだろうし。僕もこれをきっかけに触れていきたいなと思っています。
あと、作品に入るときに、1回目をすごく大事にしているんですよ。台本を読む1回目、役柄のプロットを読む1回目とか。ファーストインプレッションをすごく大事にしているから、この作品でも文豪たちの書いた作品との最初の出会いを大切にしながら現場に入りたいなと思っています。
陳内:1番難しい熟語は「有碍書(ゆうがいしょ:侵蝕者によってけがれてしまった書物の意)」だから。それが理解できたらもう大丈夫だよ。
赤澤:敵みたいなのに侵されちゃった本のこと?
陳内:そうそう! もうバッチリじゃん!
――最難関を見事にクリアしたところで…。最後に、公演を楽しみにしているファンへのメッセージをお願いします。
赤澤:シリーズ6作目に新キャストとして参加させていただくのですが、すごく見知った陳内さんが座長で。シリーズ途中からなので、彼を支えることは難しいかもしれないんですが、逆に初参加だからこそ新しい風を吹かせられるんじゃないかと思っています。初参加という点がプラスとなる形で作品作りに参加していきたいと思いますので、2月、ぜひたくさんの方に観にきていただけたら嬉しいです。
陳内:僕の今回の個人的な目標は、体育会系として引っ張るんじゃなくて、オダサクらしく柔らかくみんなに接していくことです。「(やさしい声色で)大丈夫? 元気?」くらいのトーンで、みんなの胃袋をつかみつつ、お母さんらしくいきたいと思います。はじめましての方も多いので新しい出会いに感謝し、付き合いの長い彼らに頼るばかりじゃなく、みんなで真摯に演劇に向き合うことで先に素敵な本番にたどり着けたらいいなと思っています。1日1日頑張りますので、よろしくお願いします!
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2人ならではのとぼけた笑いがそこかしこに散りばめられた、ほのぼのとしたインタビューとなった。おもしろおかしく表現しながらも、スッと話が核心へと迫っていく話題の緩急の付け方にも、2人の阿吽の呼吸が感じられた。
ゲームの世界観を踏襲しながらも、オリジナリティあるストーリーが毎回“司書”の感性を刺激してくれる「文劇」。2023年2月に幕を開ける舞台「文豪とアルケミスト 戯作者ノ奏鳴曲(ソナタ)」では、織田作之助を中心にどんな物語が綴られることになるのか、ぜひ注目したい。
取材・文:双海しお/撮影:梁瀬玉実
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