実に12年目を迎える年末年始のお祭り「祭シリーズ」。もうこの作品なしでは年を越せない、そんな熱狂的なファンを生み出してきた同シリーズの最新作『笑う門には福来・る祭 明治座でどうな・る家康』がいよいよ始動した。
2.5ジゲン!!では、同シリーズ3度目の出演となる蒼木陣、今回が初参加となる菊池修司にインタビューを実施。本作への意気込みをはじめ、役への印象や作品テーマ「それでも生きる」にちなんだエピソードなどを聞いた。
第2部に登場する国民的アイドル武の衣装に身を包んだ2人の撮り下ろし写真とともに、年末への期待を膨らませながら読んでもらえたらと思う。
蒼木陣「もがいた分だけ見えてくるものがあったら」
――素敵な衣装ですね。2部の衣装とのことですが、実際に袖を通してみていかがですか。
蒼木陣(石川数正役):素敵ですよね。今日は4人での撮影もしていただいたのですが、初参加の菊池くん的に、これどう?
菊池修司(鳥居元忠役):すごく素敵だし、パンチがありますよね。なるほど、こういう感じかと…。
蒼木:ふふふ。
菊池:すごく素敵なのですが、いまはこの「祭シリーズ」の波に乗るのに必死というか。
蒼木:さっき外でも撮影しましたけど、通行人の方がなんとも言えない顔で見てらっしゃいました。
菊池:そうですね。見ちゃいけないものを見るような視線を感じました(笑)。
――それだけ目を引く素敵な衣装ということですよ! 今回、蒼木さんは2年ぶり3回目の出演となります。今作に期待することを教えてください。
蒼木:毎度そうなんですが、そのとき自分が持っているものを稽古場でぶつけてみて、いろいろな角度からの演出の指摘をいただいて、共演者の方にもアドバイスをいただいて。内容はコミカルですし、ぶっ飛んだ先輩方も多い現場ですが、僕は毎回、真面目に向き合って成長できるなと感じています。
なので今回も、終わったときに「ちょっと成長できたかな」と思えていたらいいですね。
――菊池さんは初参加となります。このシリーズはご存知でしたか?
菊池:はい。名前は聞いていたのですが、劇場で観たことがなかったので、周りの役者仲間や、個人的に仲良くさせてもらっているひらりょうさん(平野良)から「こんな感じだよ」と教えてもらって、なんとなく大まかなイメージは持っていました。
だけど、いざこうやって撮影や取材が始まって、本格的にこのシリーズに触れていくと、これまでとは違ったエンタメ色を感じます。これが「祭シリーズ」ならではなのかなって。まだ稽古も始まっていないのですが、いままでやってこなかったタイプのエンタメをお届けできるのではないかなと、すごく楽しみですね。
――蒼木さんは初参加のとき、どんな気持ちで挑まれましたか?
蒼木:初めてもいまも、ビクビクしています(笑)。僕は割とどの現場もそうなんですが、震えちゃうし、夜眠れなくなっちゃう。今回も怖いなあと思いつつ、もがいた分だけ見えてくるものがあったらいいなって思っていますね。
菊池修司「歴史が苦手なお客様でも楽しめる作品に」
――第1部では有名武将たちの物語が描かれます。ご自身の役柄についてはいかがでしょうか。
蒼木:まだ台本をいただく前なので詳しい役どころはわからないのですが、まずは石川数正について調べています。調べてみると彼が寝返ったという有名なエピソードが出てくるのですが、その理由は諸説あるみたいで。だからこそ、今回の脚本ではどういう解釈になっているのかが、まず楽しみですね。
きっとそれを読むことで、主への思いとか、役作りの方向性が見えてくると思うので、脚本の村上大樹さんがどう書いてらっしゃるのか。いますごくワクワクしています。
――一方の菊池さん演じる鳥居元忠は、平野さん演じる徳川家康の親友という役どころです。
菊池:実はひらりょうさんと初共演のときに、敵対する関係性を演じたんですよね。
蒼木:へ~!
菊池:なので、今回は親友役を演じられるのが1番の楽しみです。それと、原作なしのストレート作品で歴史ものを演じるのも今回が初めてなので、そこも楽しみ。歴史の解釈って、いろいろな見方があるじゃないですか。そのなかで、台本やひらりょうさんを軸に、試行錯誤していけるんじゃないかなと思っています。
蒼木:(小声で)日本史、得意ですか?
菊池:いや、僕あんまり得意じゃなくて…。
蒼木:よかった、仲間仲間(笑)。
菊池:学生時代、暗記系が苦手で。数学などが得意な理系でした。
蒼木:仲間がいてよかった(笑)。まずは辞書を引くところから始めています。
――歴史ものを演じる際は、まずは歴史の勉強から?
蒼木:そうですね。学生時代は勉強は好きじゃなかったんですが、役者というお仕事をやらせてもらってからは、演じるうえでいろいろ調べていくうちに、歴史って面白いんだなって思うようになって。
役者を始める前には持っていなかった感覚になれるのも、この仕事を選んでよかったなと思う瞬間ですね。菊池くんは、歴史もののストレートは初めて?
菊池:そうですね。昔って歴史を学ぼうと思ったら、堅苦しい本を開いて調べて…というイメージだったんですが、最近はYouTubeの教育系チャンネルもそうですし、この作品もまさにそうなんですが、歴史を知らなくても人物像や歴史上の出来事を噛み砕いて教えてくれるコンテンツに触れやすくなった時代だなって。
だからこの作品も、歴史が苦手なお客様でも楽しめる作品にしていきたいなと思いますね。
――有能外交官な石川数正、心優しい鳥居元忠とあります。ご自身と通じる部分はありますか?
蒼木:不安しかないですよね。有能だなんて(笑)。抜けているねと言われることのほうが僕は多いので。でも有能というのにも種類があると思うんです。有能=知的だとも限らないですし…とはいえ、現時点で「僕で大丈夫なのかな?」と思っています(笑)。
菊池:でもさっきの撮影では有能感、出ていましたよ!
蒼木:出てました!? 良かったです。一応30歳なので(笑)。
菊池:僕は優しい…か。
蒼木:優しそうな雰囲気はありますよね。
菊池:優しいかどうかはわからないですけど、僕あんまり怒ったことがなくて。怒るってすごく無駄な労力だなと感じちゃうんですよ。
蒼木:へ~。
菊池:怒るよりも、どうしてそうなったのかを考えるほうにベクトルが向いてしまう。怒りの感情を表に出すメリットがないなと感じるので、もう何年も怒ってないですね。
蒼木:イラッとすることはあるの?
菊池:それはありますね。でもイラッとしても、その感情をそのまま出すんじゃなくて、違う形で出すためのはけ口を探します。その分、舐められることも多いんですけど(笑)。そういう意味では心優しい鳥居元忠と似ている部分はあるかもしれないですね。
最初はとくにそう思っていなかったのですが、取材のなかで似ているかもって思ってきました(笑)。なので、ますますひらりょうさんとの絡みが楽しみになりましたね。原作ものではないので、役を自分に重ねられるというか、自分が噛み砕いた鳥居元忠を演じられるので、似ている部分も生かしてお芝居できたらいいなと思います。
第2部は、コントも歌もダンスもあり!
――コントも歌もダンスもある第2部もとても楽しみです。出演者から見た第2部はいかがですか?
蒼木:すごく鍛えられます(笑)。
菊池:噂はかねがね聞いております(笑)。
蒼木:うまくやれたなと思えたことは僕もないですが、頼りになる先輩方がたくさんいらっしゃるし、誰かがなんとかしてくれるので、甘えさせてもらっています。結果「楽しかったな」と思ってもらえればいいな。菊池くんは歌やダンスは?
菊池:いやぁ~。そこまでちゃんとやってきた身ではないので、自信は全然ないんですけど…。これって役がやっているという体(てい)なんですかね? それとも僕?
というのも、それによってだいぶ変わる気がしていて。菊池修司として歌ったり踊ったりするのが、すごく苦手なんですよ。でも例えば鳥居元忠という人物がやっているっていうマインドになると、そんなに恥ずかしくないんですけど、菊池状態だと丸裸じゃないですけど…。
蒼木:すっぴんを見られているみたいな?
菊池:そうなんですよ。
蒼木:本人でやるかどうかも、割とこちらに委ねてもらえる気がします。
菊池:そうなんですね! いや…でも怖いですね(笑)。
――もしかしたらファンの方は第2部でレアな菊池さんが観られるかもしれない、と。
菊池:そうですね。僕は不本意ですけど(笑)。
――今年も個性豊かなキャスト陣が揃っていますね。とくに共演が楽しみな方はいらっしゃいますか。
菊池:原田龍二さんはテレビで観ていて、男として憧れるかっこよさを持つ方なので、舞台上でお芝居できるのが楽しみですね。
あとは宮下雄也さんを他の作品で拝見したときに、宮下さんの独壇場で。思わず視線がいっちゃう中毒性のある方だったので、今回ご一緒できるのが嬉しいです。あの宮下雄也さんに自分がどう対応していけるのか、未知な部分も含め楽しみです。
蒼木:僕は辻本祐樹さんですね。僕が初めてる・ひまさんの作品に出演して以来、今回が4度目の共演。これまで親友や主従の関係性を演じてきたのですが、今回はどんな関係性で作中で絡めるのか楽しみですし、「芝居を通して頑張っています!」というのが伝えられればいいなと思っています。
「一年の締めくくりになるような作品に」
――今年のテーマ「それでも生きる」にちなみ、お2人はしんどい状態からどうやって気持ちを復活させるタイプですか?
菊池:ご時世的に難しいんですが、僕は海外に行くとすっきりしますね。思い悩んでいるときに日本から飛び出すと、自分の悩みがちっぽけに思えて。飛行機で何時間もかけて行った先にも、人種も文化も考え方も違う人がたくさんいて、みんながそれぞれ生きていると思うと、日本にいる僕という人物がそんなに悩む必要もないなって。高校時代からときどき海外に行っていましたね。
蒼木:1人で行くんですか?
菊池:そうですね。最初は高校のときに1ヶ月くらい行って、それからたまに行くようになって。今は海外に行けていないんですが、当時のことを思い出すだけで気持ちがフッと軽くなって復活しますかね。
蒼木:すごい。憧れます。
菊池:全然そんな格好よくないです。いまちょっと格好つけて話してるんで(笑)。
蒼木:僕は20代後半くらいからですかね。カーテンコールで拍手いただいたときに、すべてが報われるというか。こんなに楽しんでもらえるんだという気持ちを知ってから、苦しいことがあっても、これもいずれ自分の人生にとってプラスになる時間だからって思えるようになりましたね。
それで大抵のことが頑張れますし、もしどうしようもなくなったら誰かに相談します(笑)。現場にはたくさん頼りになる方がいらっしゃるので。
――素敵なエピソードをいただいたところで、最後に改めて本作への意気込みをお願いします!
菊池:初参加ですが、名だたる先輩方が積み上げてきた本シリーズに自分が出る意味を考えながら、大切に演じたいと思っています。年末年始を飾る作品なので、僕らにとってもそうですし、お客様にとっても一年の締めくくりになるような作品となるよう、一部も二部も最高のエンタメを届けられるよう頑張ります! ぜひ劇場に来ていただけたらと思います。
蒼木:2年ぶりにこのシリーズに帰ってくることができました。今回もきっと稽古中は悩んでもがくと思うのですが、その先にたどり着いた本番で皆様に楽しんでいただけるよう精一杯頑張りますので、応援よろしくお願いします。
***
年末が駆け足で近づいてくることを感じさせる冷たい空気とは対照的に、ゆったりとした語り口の蒼木と朗らかな雰囲気の菊池の対談は、ほのぼのと心温まる時間となった。
12月23日に明治座で始まり、1月8日に梅田芸術劇場で幕を閉じる『笑う門には福来・る祭明治座でどうな・る家康』。本作を観終わった後は、泣いて笑ってスカッとして、きっとこれ以上に温かい気持ちで帰路につけるのだろう。2022年の観劇納め、そして2023年の観劇初めに、12年続くここだけのエンタメを浴びてみてはどうだろうか。
取材・文:双海しお/撮影:梁瀬玉実 / 編集:五月女菜穂
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