アーティスト・俳優として活躍するKIMERU。10月26日(水)には、20周年記念アルバム「DYEING」が発売された。
2.5ジゲン!!では、KIMERUに単独ロングインタビューを実施。後編では、コロナ禍での活動や意識の変化、今後の展望について聞いた。
――シングル「calling」の発売から半年ほど経って、コロナ禍が本格化し始めました。2020年12月から20周年の活動をされる中で、さまざまな影響や意識の変化があったのではないでしょうか。
アーティスト活動では、ライブができずファンの皆さんに直接お会いできないのがやはり1番辛かったです。アルバム制作にあたっては、ゲストをお呼びする上でのスケジューリングに時間がかかったり、感染対策を徹底するなどさまざまなことがありました。
舞台では、スタッフの皆さんがこれまで以上に労力をかけて奔走する姿を間近で見ていたので、1公演ずつに対する重みをずっしりと感じるようになりましたね。今までは「最後まで頑張るぞ!」だったのが、「全員そろって、1日でも長く公演ができるように」と意識が変わりました。
公演期間中は、今日は開演できるのか、明日は? と綱渡りをしている気持ちでもありました。“無事に開幕して千秋楽を迎えられること”は、奇跡なんですよね…。だからこそ、本番ではより楽しみたいですし、迷いや不安を抱えながらもライブ会場や劇場に来てくださっているお客さまにも、思い切り楽しんでもらいたいんです。
ライブも舞台も、「このカンパニーのメンバーでやれるのは今日が最後かもしれない」と毎回感じています。2021年夏の『家庭教師ヒットマンREBORN!』the STAGEが、大阪公演初日の前日に中止になったのは忘れられません。劇場に入り「さぁ頑張るぞ!」と意気込んでいたときに中止が伝えられて…。最後までやれなかった悔しさはありますが、毎公演覚悟を持って演じていたので消化はできています。でもそれ以来、毎公演“今日が千秋楽”の気持ちで臨もうとより強く考えるようになりました。
外的な要因だけではなく、ある日突然、思ってもみない形で僕自身に何かが起きる可能性だってもちろんあります。新曲「life」の詞にも書きましたが、体がすべて満足に動く状態でいつまでもいられることはなく、その時は突然襲ってくるかもしれませんから。
この20年、周りでさまざまなことが起こりました。大事な仲間たちが大変な事故に遭ったり、突然いなくなってしまうこともありました。でも不思議なことに、そこでご縁が切れてしまうのではなく、その人たち自身や、彼・彼女らの周りの人たちとのご縁がより強くなっているのを感じます。たっきーや窪寺昭さんのご家族とも、ずっと仲良くさせていただいていますしね。そのご縁と関わりをこれからも大事にしていきたいと思っています。
――振り返ってみて、どのような20年でしたか?
楽しかったです。でも、楽しかったのひとことでは片づけられず、辛かったことももちろんありました。公演中に肺炎になったり、喉を酷使してボロボロの状態でも歌わなければいけないこともあって、メンタルと体調を両方維持していくのは苦労しましたね。特にアーティスト活動では替えがきかない唯一無二でやらせていただいていますから、こういうご時世でなかった頃は、熱があっても舞台に上がったことだってあります。
考えてみると、大変なできごとに見舞われた際も、無理やり前を向いて輝こうとしていた部分もあったと感じます。「Be Shiny」(2004年)の歌詞に「無理やりにでも輝かせて」と書いたのですが、そうやって無理をしてきたからこれまでやってこれたとも思います。
人に頼られたり相談されることも多く、しっかりしなければと自分に言い聞かせてきましたし、ステージに立って多くの方に向けてメッセージを発するのであれば高いポテンシャルを持っていなければならない、と考えていて…。「こうあるべき」と思い詰めてはいないですが、命の火を常に燃やしている感覚があります。
――そんな中で、KIMERUさんが心がけてきたことは何でしょうか。
「流れに逆らわないこと」と「人とのご縁を大事にする」、ですね。僕は“来るもの拒まず”の精神でいるので、どんな方であっても絶対に拒みません。ファンの皆さんはもちろん、スタッフさんをはじめ周りにいてくださる方々は大事にしようと思っています。相手に思っていることは正直に伝えたくて何でも話してきましたが、少し強めに言っても許されるのは、僕自身のキャラクターのおかげですかね(笑)。
またコロナ禍になってからは、気持ちを口に出して伝えよう、という考えが深まりました。男ってつい「態度で示す!」ってなりがちなんですけれども、やっぱり声に出さないと伝わりませんから。
言葉には言霊が宿ると信じているので、特に感謝の気持ちは言葉に出していかないとと思っているんです。最近は直接自分の声で言葉を届けにくい環境下だからこそ、声に出して気持ちをぶつけられるのは何てありがたいことなんだろう、と痛感しています。
――言葉と言霊を大事にするKIMERUさんだからこそ、“声”の大事さにあらためて気づいたという印象を受けます。
確かに、“声”との向き合い方が変わりました。舞台であればセリフを声に出し、ライブでは言葉を音楽に乗せて歌にすることで、自分の気持ちもそこに乗って皆さんの元に届けられている感覚があります。
――アルバムの発売に合わせ、インストアイベントなども各所で開催されますね。
ファンの皆さんと直接お会いしてお話しをできるのは、やはり感動があります。11月にはライブもあるので、このアルバムを聴きこんでご来場いただけたら嬉しいです。ライブなどでの声出しに関して気になっている方も多いと思いますが、明確なルールを作ってお知らせをした上で、皆さんと一緒に大いに盛り上がりたいです。ライブは、非日常を楽しめるストレス発散の場でもありますからね。皆さんのお顔を見て、お話しして声を届けられるのが本当に楽しみです。
――これから、30年、40年と続けて行くために心がけていきたいことは何ですか?
自分磨きと、楽しさを忘れないこと…それから何といっても“初心”ですね。好きなことを仕事としていると辛くなってしまうこともあります。そんな時は、「ステージに立ちたい、歌いたい! 」と思ったはじめの気持ちを思い出すようにしています。
それから、マイナスなできごとがあってもそれをプラスに捉えられるように。プラスの思考とご縁を大事にしていったら、30周年、40周年も迎えられるんじゃないかなと思っています。
――最後に、アルバム「DYEING」を楽しみにしているファンの皆さんにメッセージをお願いします。
僕の20年が詰まったアルバムです。僕のファンの方以外でも、2.5次元舞台をお好きな方はきっと楽しんでいただけると信じていますし、ぜひ多くの方に聴いていただきたい作品に仕上がっています。愛がたくさん詰まったアルバムです。ぜひお手にとっていただけると嬉しいです。
取材・文:広瀬有希/撮影:ケイヒカル
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