2022年1月に上演される舞台「六番目の小夜子」。原作は2000年にはドラマ化もされた恩田陸の処女作で、今作では、小説の持つ空気感はそのままに、鶴田法男の監督の下、演劇部という限られた空間の中で起こる群像劇がひやりとした演出を交えながら描かれる。
2.5ジゲン!!では、津村沙世子を演じる舞台初単独主演の乃木坂46・鈴木絢音にインタビューを実施。公演への意気込みとともに、女優としての活躍の振り返りやグループへの思い、憧れの先輩という生駒里奈とのエピソードなどを聞いた。
座長として「頑張らなくちゃいけない」
――舞台単独初主演、有名タイトルの舞台化でもあります。最初にお話があった時のお気持ちを聞かせてください。
マネージャーさんからは人見知りしないように頑張ろうねって言われました。舞台やお芝居のお仕事はいつも新しい出会いと発見があるのですが、(稽古に入って)最初の2週間くらいは壁とご飯を食べるみたいなことも多いので…(笑)。今回は皆さんと仲良くお話できるように頑張ります。
原作を読んだことはなかったのですが作品は知っていました。ドラマは伝説になっているような作品なので、プレッシャーを感じましたね。主演だからというよりも、作品が大きいからプレッシャーを感じているのかもしれません。
――座長として頑張りたいことはありますか。
考えれば考えるほど、いろんなことを頑張らなくちゃいけないですね。オフの時もシリアスで重たい空気はつらいので、ホラーだからこそ、明るい空気作りをしていきたいです。
――原作を読まれたそうですが、感想を教えてください。
あらすじと舞台のプロットを拝見して、このお話を受けようと思いました。それから小説を読んだのですが、一晩で読み終わるくらい集中して読んでしまいました。あまりにも素敵な作品過ぎたので「受けなきゃ良かった…」って思いました(笑)。ホラー作品はあまり見たことがなかったのですが、今回をきっかけに見るようになりましたし、好きになりましたね。
今まで、ホラーってびっくりさせるだけのものだと思っていたんです。でも、人間関係の中から生まれる嘘だったり、思ってもいない言葉や感情から生まれる怖いものだったり…。お化け的な怖さだけではなく、人間的な怖さもホラーなんだなと思いました。
――その怖さを舞台ではどのように表現されるのでしょうか。
まだうまくイメージが湧いていないのですが、舞台ならではの魅せ方だと思いました。原作は学校全体が舞台になっていますが、舞台版では演劇部にフォーカスを当てています。部室という狭い空間で“サヨコ伝説”についてのお話が展開していくので、奥行きがあると感じました。今までのお芝居よりも一つ上のレベルをいかなきゃなと思っています。
舞台でホラーをやるというのも、新しい挑戦だと思いました。体感型とは言わないまでも、空気まで味わっていただくことができる作品になると思います。
――今回演じる津村沙世子の印象は? ご自身との共通点はありますか。
沙世子は、原作の中で今時の言葉で言うと「ビジュアルがいい」と表現されています。とても光栄なことではあるのですが、緊張してしまいますね。沙世子はミステリアスでありながら、学校の人気者です。明るい部分と暗い部分の両方を持っているところが魅力だと感じました。悪魔的なヒロインという印象を受けましたね。
なので、私とは違うところしか浮かばないです(笑)。私は転校したことがありませんし、容姿も端麗ではないですし…。人の中心にいるようなタイプでもなかったので、違うところばかりだと思います。
――沙世子のキャラクターをお芝居で表現することになりますが、現在の心境は?
知れば知る程、「自分でいいのかな?」「こんなに魅力的な子を演じていいのだろうか?」っていう気持ちになりますね。でも、もう後戻りができない状況まできてしまったので頑張ります(笑)。
初めて舞台に出た時に、演出家さんから「役になりきるのもお芝居だけど、自分と演じる役のちょうどいいところを見つけるのもお芝居」という言葉をいただきました。もちろん全ての役に通用するわけではないとは思うのですが、今回はちょうどいいところをしっかり探っていきたいと思っています。
――ビジュアル撮影ではセーラー服姿でしたね。
もう23歳なので、ギリギリだなって思いました(笑)。最後のセーラー服かもって思いながら着ましたね。乃木坂46もお姉さんが増えてきているので、「ザ・制服!」という感じの衣装を着る機会が少しずつ減ってきているんですよね。監督が直々にアドバイスをしてくださったので、ちょっと怖さのある写真が撮れているはずです!
――今作は演劇部を舞台としています。鈴木さんは部活動の経験はありますか。
いろいろやっていました。中学時代は吹奏楽部だったんですけど、4人しか部員がいなかったんです。だから高校生に混ざって、コンクールは高校生の部に出ていました。先輩がたくさんいたので、上下関係も学びました。
――鈴木さんは部活動以外にも、剣道や空手、茶道に浴衣の着付けなどいろいろなことに挑戦されてきたそうですね。もし今、部活に入るとしたら?
華道部に入ってみたいです。母が花嫁修業で茶道と華道をしていたという話を聞いて茶道に挑戦したので、華道にも挑戦してみたいですね。最近では、中国語の勉強もしています。たくさんの方に乃木坂46を知ってほしいという気持ちで始めて、その気持ちは今も昔も変わりません。
新しいことが好き、というのも小さい頃から変わらないです。大体のことは2年で終わるんです。新しいことをしたいという理由もありますし、2年経つと自分に才能があるのかも分かってくるんですよね。好きかどうかの見極めにもなります。
――乃木坂46としての活動が一番長いんですね。
そうですね。もうすぐ9年目になります。なので、乃木坂46の才能があるっていうことにしておきたいですね(笑)。
――この作品を通して、更に成長したいところはありますか。
「お芝居のレベルを上げたい!」と思っています。アドバイスを頂く時に、言葉を聞いて自分の中に落とし込むのが遅いんですよね。なので、そのインプットまでの時間を早くしたいです。そうすることでもっとたくさんのことを自分の糧にできると思うので、頑張ります。あとはやっぱり、人見知りの克服が最優先ですね(笑)。
憧れの先輩・生駒里奈の背中を追って…
――改めて、お芝居の楽しさはどんなところでしょうか。
自分の知らなかった感情に出会えるところです。お芝居って、よく「いろんな人の人生を生きられる」って言うじゃないですか。私はまだそこまでの境地にいけてないのですが、飛び抜けて嬉しかったり悲しかったり、悲しいけど嬉しかったり、日常をただ生きているだけでは知ることのできない感情を知ることができるところが楽しいです。
――この数年は着実に女優としてのキャリアを積まれていますが、今後の目標はありますか。
今までは、乃木坂46を知ってもらうためにお芝居のお仕事を頑張ってきたんですが、今後は、知ってもらって、乃木坂46を更に好きになってもえるようなお芝居ができたらと思っています。
自分のためにというより、グループのためになるなら頑張りたいです。ただ(俳優の)皆さんのレベルの高さを知ってしまったので、気軽に演技を続けたいとは言えないです。
――鈴木さんの活動の根底には、グループへの愛がありますよね。その想いはどこから生まれてくるのでしょうか。
私は2期生なんですけど、1期生の先輩方がそうやってきてくれたおかげで乃木坂46というグループが大きくなっていったのを見てきました。なので、自分が後輩のために何か頑張れることはお芝居かなと思っています。
――憧れの先輩はいますか。
同じ秋田県出身の生駒里奈さんです。いろんな道を切り開いてくださって、大きな背中をずっと見てきました。卒業された今でも憧れの先輩です。この舞台が解禁になった時も、「観に行くね」って連絡をくださいました。私も、生駒さんのお芝居を観にいかせていただくのですが、すごく勉強になります。とても素敵なお人柄なので、それがお芝居にも出るんだなと、初めて舞台を観た時から変わらず思っています。
――鈴木さんは乃木坂46の2期生として、メンバーに先輩として接することも多いと思います。グループ加入当初と今で、気持ちの変化はありますか。
加入当初は、やっぱり先輩の足を引っ張らないようにしようという思いが強かったです。必死でついていっているという感覚が大きかったんですけど、ここ1~2年でやっと先輩の自覚が芽生えてきた気がします。というのも、乃木坂46をより良くしていくためにはどうしたらいいかなって考える機会が増えたんですよ。
後輩たちには、活動を楽しんでほしいですね。個性豊かなメンバーが多いグループなので、遠慮して自分を出せない人もいると思うんです。でも、もっともっと自分の個性を出して楽しんでほしいなって思いますね。
――最後に、意気込みとファンの方に向けてメッセージをお願いします。
今回、原作やドラマが好きで、舞台は観たことがない方もいらっしゃるかもしれません。そういった方々に、お芝居の魅力を伝えられたらと思っています。来てくださった方が他の舞台にも行ってみたいと思えるような、2022年の観劇始まりになればいいと思います。
2022年には一つ階段を上った私をお届けできるのではないかと思います。頑張りますので、ぜひ観に来ていただけたら嬉しいです。
* * *
舞台「六番目の小夜子」は2022年1月7日(金)〜16日(日)に東京・新国立劇場 小劇場で上演。
取材・文:水川ひかる/撮影:友野雄/構成:2.5ジゲン!!編集部
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