男子高校生たちが新体操に青春を懸ける日々を、キャストが実際に披露する新体操の演技を交えて躍動感たっぷりに描く『タンブリング』。ドラマを皮切りに、舞台版もこれまでに5作が上演され、その都度、多くの観客の心を震わせてきた。
シリーズ10周年のメモリアルイヤーにあたる2020年に上演予定だった舞台『タンブリング』は、残念ながらその年の上演は叶わなかったが、2021年6月に延期公演が決定した。
2.5ジゲン!!では本作でダブル主演を務める高野洸と西銘駿にインタビューを実施。演じる役の魅力やタンブリングの面白さ、数年ぶりの共演への心境などを語ってもらった。
役に共通する“刺激し合える関係性”
――今回の上演決定の知らせを聞いた際の心境を教えてください。
高野洸(野村朔太郎役):やっぱり嬉しかったですね。中止になったとき、悔しい気持ちもありましたけど、どうしようもないことだったので、ひとまず受け入れることしかできなくて。
再上演決定の知らせを聞いたときは、上演できること自体の嬉しさはもちろん、この顔ぶれでもう一度やりたいって思って皆さんが動いてくださったのが嬉しかったですね。
去年もかなり稽古をやっていたので、それを活かしてまた頑張りたいなと思いました。
西銘駿(北島晴彦役):僕も本当に同じ気持ちで、仕方ないなという気持ちはありましたけど、洸と4年ぶりに共演できるっていうのもすごく楽しみにしていて。それがなくなってしまったのは寂しかったですね。
「またやるよ」っていう知らせのおかげで、なんとかメンタルは保てたというか。
前回の稽古では、みんなに比べて「タンブリングができた」って言えるところまで僕はまだ到達していなかったので、「次があったとしても呼ばれるのかな?」みたいな不安もあったんですよ(笑)。
もしかしたら「ちょっと西銘は交代で」みたいなことになったらどうしようかなって思っていたんですけど、今回も呼んでいただけて、こうして洸とまたお芝居できる喜びを舞台上で全力でぶつけていきたいなと思います。
――昨年に続き、また役と向き合うことになります。それぞれが演じる役の魅力や演じる上でこだわっている部分はどんなところでしょうか。
高野:根っからの明るさですかね。登場人物がたくさんいて、それぞれ個性が強いんですが、僕が演じる朔太郎は“ザ・まっすぐ”なセンター感のあるキャラクターなので、そこを大切にしていきたいですね。
去年、稽古で彼を演じていて、役にすごく元気をもらったので、今年も役から受け取ったものを大切にしながら、共に進化していけたらいいですね。
西銘:僕が演じる晴彦は、洸に嫉妬する役なんですけど…洸にって言ったらアレだね(笑)。洸の演じる朔太郎に嫉妬する役どころで。
晴彦はすごく彼のことが好きなんだけど、彼は自分より勝っているものがあるから嫉妬して、自分から距離を置いちゃう。嫌いではないけど、嫉妬しているっていう絶妙なラインを出せたらいいなと思いながら前回やっていて。
心のどこかでずっと嫉妬しているというのを細かく出していかなきゃいけないので、そのお芝居がけっこう難しいんですね。だけど普段、洸と一緒にいて、僕より洸のほうがいろんなことができるなって思うことが多いので。
高野:いやいやいや。
西銘:だからちょっとキャラとの関係性に似ているなって。そこをもっと肥大化させてお芝居にうまく持っていけたらいいなというのはありますね。
――18歳からの付き合いとのことですが、お互いに嫉妬するようなことはありますか?
西銘:嫉妬というよりも、一緒にいて「すごいな」って思うことが多いですね。
家に行って遊ぶような仲なんですけど、いろんなところでお芝居への熱意が見えてくるんです。台本にすごく書き足してあったりして。僕はそういうことをあんまりしないんですけど、ちゃんとやっているし。
それでちゃんと大きな舞台が決まったりしていて。18歳の頃から目標の話とかもしていたんですが、それを有言実行しているので、そういうところがすごく尊敬していますね。
高野:18歳で共演したとき、駿はその時点で「仮面ライダーゴースト」の主演をやっていて。嫉妬というか、羨ましいなっていう気持ちはありましたね。すごく羨ましい立ち位置に抜擢されていて、そのときからずっと刺激的な存在です。
やっぱり同い歳で刺激をもらえる存在がいるかいないかって結構大きいと思うんですけど、そういう存在がいるからこそ僕の原動力になっているので、すごく「ありがとう」って思いますね。
――お互いに付き合っていく中で印象が変わったところや、新たに知った一面はありますか。
一同:(顔を見合わせて)…ないよね。
西銘:すごくいい距離感だよね。僕は明るい感じなんですけど、洸は…楽しんでるんだよね? あんまりワイワイはしないけど。
高野:楽しんでる、楽しんでる(笑)! 僕もワイワイするタイプなんですけど、駿がワイワイの上を行き過ぎているから、自分がそこについていくとテンションがおかしなことになっちゃうから。
西銘:バランス取ってくれているのね(笑)!
高野:そうそう、自然といい感じに保とうとしているんだと思う。
西銘:今のご時世だとちょっと難しいですけど、お酒とかも一緒に飲んで、お芝居について話したりもできるし、ちょうどいいラインの関係性だよね。
高野:そうだね。18歳から知り合ったっていうのもよかったのかもね。今から「初めまして~」って感じだったら、もしかしたらちょっと壁ができちゃったかもしれないけど、全然そういうのもなくここまで付き合ってこられたもんね。
2人が大切にしたい“雰囲気作り”
――すごくいい関係性というのが伝わってきますね。今作でダブル主演という形ですが、カンパニーの雰囲気作りはどんなことを意識していますか。
高野:今は事前稽古でタンブリングの練習をしているんですが、やっぱりかっこいい背中は見せなきゃなっていう思いはありますし、やる気は誰よりも高くないといけないなと思うので、そこは大切にしていますかね。
でも、それをわざわざする必要もないくらい、みんなストイックでそれぞれが自主的に追求しようとしているので、逆に刺激をもらっています。座長という立場だから「こうしよう」と強く意識しているわけではないですね。
西銘:僕がやりたいのは楽しい現場作りですかね。雰囲気的には明るくしたいなと思っていますし、普段から僕はこのテンションなのでみんながいい関係性でお芝居できればいいなって思っているんです。
でもやっぱり緊張感ある主演でもありたいなって思うけど…多分僕には無理だから、そこは洸にお任せします!
一同:(笑)
西銘:シリアスなシーンももちろんあるので、そこはしっかりと仲間と向き合って作っていきたいなって思います。でも大前提として、「西銘がいたら結構盛り上がるな」っていうカンパニーの作り方はしていきたいなと思っています。
――タイプの違う座長が引っ張っていく形のカンパニーができつつあるんですね。
西銘:僕が今考えているのは、カーテンコールの挨拶があったら、主演が最後にコメントするでしょ。僕が先に喋って、洸が最後ね。それは絶対だよ!
一同:(笑)
西銘:僕がラストから2番目で、君がラストよ。ラストはめっちゃくちゃちゃんとしたこと言わなきゃいけないから。
高野:まじか~。ラストの前に絶対爆弾投下しないでよ…。
西銘:僕は絶対そこのポジションだから。もう予めここで決めておこう。スタッフさんもお願いします! 僕が言ってから、ラストが洸ですからね!
高野:ハードル上がっているじゃん。
西銘:大丈夫、洸はできるんだから! 僕はできない。ほらマネージャーさんも「うん」って頷いちゃっているもん。
一同:(笑)
高野:僕もできないんだけど、たしかにボケが2人いてもしょうがないもんね。…はい、頑張ります(笑)。
――カーテンコールが実際どうなるのか楽しみにしています!
今作は「発表会みたいな緊張感」
――ビジュアルも一新されていますが、久々にユニフォームを着用した感想はいかがですか。
西銘:去年「めちゃくちゃ本気でタンブリングやるぞ」って意気込んだ矢先、コロナでぶつっと気持ちが途切れちゃって。コロナ禍で自粛中は仕事もあんまり入らない状態になって、めちゃくちゃ自分を甘やかしたんですよ。
そうしたら、なんというか…すごく身体が大きくなっちゃって(笑)。だから今本気でダイエットしているんですけど、この前ユニフォームを着たら「ピッチピチじゃん」みたいな。
一同:(笑)
西銘:実際にユニフォームを着たら、より一層思いましたね。「これはヤバイ、間に合わせないと」って。だから本当に間に合わせるから。見ていて、洸。
高野:うん、楽しみにしとく。偶然なんですけど、ユニフォームの色は悠徳高校が白で、うちの航南高校が黒で。こっちは黒でよかったな~って思うことが多いですね。
西銘:白は膨張色だからね、すごいんだよ、膨張が!
高野:そうそう。黒はシュッと締まった印象になるから、黒ありがたいな~って改めて思った(笑)。
西銘:あと航南のは手首のところまで袖があるじゃん。うちのは袖ないのよ。より腕が丸見えでさ、いろいろと頑張らなきゃなって思うよね。
――新体操のどんなところに魅力を感じていますか。
高野:見ているとやっぱり感動するよね。全員が全員を信じてやっているんだって、それが伝わってくるから圧倒されます。
西銘:それに見せ物だけど見せ物じゃないなって。
僕も野球が題材の舞台とか出させていただいたんですけど、その場合だとお客さんに今こういうシーンだよって技術面で見せるという形だったんです。でも『タンブリング』の場合はそれと少し違っていて、部活として本当に大会に出ている気分でやらないといけないので、より一層緊張感のある舞台になると思うし、その緊張感が増していくことで「タンブリングって面白いな、普通の舞台じゃないな」って伝わるんじゃないかなと思います。
悠徳と航南でタンブリングでの芝居の雰囲気も変わってくるし、学校ごとに色分けされているので、すごく面白いなと思いますね。なので本番で2校のパフォーマンスがビシッと決まれば、かなり感動的な作品になるんじゃないかなって。
高野:コロナ禍でソーシャルディスタンスが求められて周りの人との距離も開きがちだと思うんです。この作品は逆にそういう空気をぶち壊して挑戦していく作品だなって。仲間と距離を縮めて信頼し合う作品を観てもらうことで、世界を勇気づけられるんじゃないかなと思います。
西銘:他の作品にはない独特な緊張感があるので、あんまり関係者とか呼びたくないですもん(笑)。両親が観劇したいって言っているけど、失敗したら嫌だからどうしようかな~って。もちろん完璧は求めていくんですけど、怖いんですよね。
高野:発表会みたいな緊張感あるよね。
西銘:そうそう。普通の舞台って、失敗しないように準備をして、失敗が起きないようにした段階でステージに上がるじゃないですか。
でも本当に競技をやっている方でもたまにミスしてしまうような技を僕たちがやるので、失敗がゼロとは言い切れない。かなり難しいことを舞台でやろうとしているので、そこが楽しみだし、怖いなと思いますね。
――舞台で新体操に挑むというのは大きな挑戦だと思います。それにちなみ、今後役者として挑戦したいことを教えてください。
高野:僕は朝ドラとか大河ドラマです。数年前は本当に仮面ライダーの主演が目標だったんですよ。変身したい気持ちが大きかったんです。
でも舞台だと数年後のスケジュールまで決まっちゃうので、今は1年間ずっと収録に挑むっていう環境作るのは難しくて。そこは気持ちを切り替えて、朝ドラと大河ドラマへの出演を目指していますね。
西銘:僕はなんだろうな。土台を俳優だけっていう形にするのはしたくないなって思いますね。色んなものをやりたいし、試したい。その上で最後に帰ってくる場所は役者かもしれないですが、色々なことにチャレンジしてみたいですね。
高野:誰も予想できないような事態が去年起こっちゃったからね。これまでやってなかったことも始めたほうがいいのかなとか。いろいろ考えるよね。
西銘:そうね、配信やろうかな、とかね。
去年は仕事がキャンセルになったりもしたし、考える時間がすごくあって。映像のお仕事とかはやっていたけど、舞台は去年『タンブリング』が中止になって以来やっていなくて、今回めちゃくちゃ緊張すると思います。
――上演を心待ちにしています。それでは、最後にファンへのメッセージをお願いします。
西銘:じゃあ…(顔を見合わせて)僕から。
一同:(笑)
西銘:そうそうそう、さっきルール作ったじゃん。こういうのは僕からね。
高野:なるほど。今から慣れておくわ(笑)。
西銘:ファンの方も1年前、楽しみに待っていただいていたと思います。こうして1年後に上演できるということで、去年の2倍、3倍、4倍楽しんでいただきたいなと思っています。僕らも前回やっているものも含め、もっと今回は成長した姿を見せていきたいなと思っていますので、ぜひ楽しみに待っていてください!
高野:観に来ていただく皆さんはすでに楽しみにしていただいていると思うんですが、キャストのパワーがすごく大きくて、一人一人の影が薄れることもなく、それぞれの力が発揮されて客席の奥の方まで届くと思います。一滴の汗から努力が滲み出たり、いろんな方の心に刺さる作品だと思いますので、僕らも熱量マックスにして頑張りますので、応援よろしくお願いいたします!
西銘:素晴らしいコメント! この順番でやっぱり決定だね(笑)。
* * *
10代の頃から互いに切磋琢磨しあってきたという高野洸と西銘駿。インタビュー中も気心の知れた2人ならではのやり取りが多く、終始笑いの絶えない対談となった。
キャスト陣が舞台上で本気のタンブリングに挑む舞台『タンブリング』は、上演される度に多くの熱狂と感動を生んできた。実に7年ぶりに帰ってくる今作は、どんな感動をもたらしてくれるのだろうか。
舞台上で躍動感あふれる芝居と競技を観られる日が待ち遠しい。
取材・文・双海しお/撮影:ケイヒカル
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