新体操に懸ける男子高校生たちの青春を描く『タンブリング』シリーズ。スタントなしで役者が実際に新体操に挑む“リアルな青春”が話題となり、連続ドラマのほか、これまでに5作の舞台版が上演されてきた。
シリーズ10周年のメモリアルイヤーにあたる2020年に予定されていた舞台『タンブリング』は残念ながら上演中止となったが、2021年6月に再び上演が決定。
2.5ジゲン!!では、本作からの参加となった岩崎和寛を演じる7ORDER・長妻怜央にインタビューを実施。演じる役の魅力やタンブリングの難しさ、チームキャストの他己紹介に加え、今後目指す役者像にも迫った。
“不器用すぎて愛せる”キャラクター
――出演が決まった際の心境はいかがでしたか。
男子新体操は見たことがありましたし、ドラマはもともと見ていて。お仕事でお世話になっていた方が「タンブリング」に携わっていたって聞いてびっくりしました。「そうだったんだ!」と思って。当時すごく見ていたドラマだったので、舞台シリーズも長く続いている作品だったので、「僕も頑張っちゃおう」って思いましたね(笑)。
でも倒立ができなかったので、そこをどうしようかなって考えていました。柔軟も(話を受けた)その日から始めて。骨がなくなるくらいまで柔らかくしておこうと思ったんですけど、そんな甘くはなかったですね(笑)。身体には限界あるなって…。でも、本番中も含めて、毎日柔軟は続けていきたいって思っています。
――今回演じる岩崎和寛はどんな役どころでしょうか。キャラクターの魅力も教えてください。
僕、普段は明るい感じなんですけど、役を頂くといつもちょっと暗い役とかひねくれ者の役が多くて。「もしかして、そう見えているのかな?」って気になりますね(笑)。
今回の役は双子の弟なんですけど、お兄ちゃん(納谷健演じる岩崎達寛)がすごくて。
それに、和寛は素直じゃないんですよ。僕自身は気持ちを言っちゃった方が楽なのでハッキリ言うタイプなんです。「ちょっとしんどいな」とか、「お腹空いたな」とか、「冷房寒いな」とか(笑)。
和寛は、それも言わずに“キレる”タイプなんですよね。だから「すごいヤツだな」って思いますね。もし周りにこういう子がいたらどうやって仲良くしようって(笑)。自分ならそう思っちゃうので、チームメイトはみんなすごいなと思います。その態度で周りから許されるってどういうことだろうって思うくらい、和寛は曲者のキャラクターなので。
だから演じるのはすごく難しくて。なんでみんな一緒にいるんだろうとか(笑)。許されるような理由を、他の部分でいろいろと作っていって、みんなが演技しやすいような状況を作りたいなって思っています。今、そこを探し中です。
――愛されポイントは探し中とのことですが、どんなところで出していこうと思っていますか。
愛されポイントは“ひねくれに真っ直ぐ”ですかね。「こうしておけば、みんな仲良くするんだろ」っていうよりは、本当に不器用というか。不器用すぎて愛せる、みたいな。
何かに一生懸命になっている人を悪く言う人ってあんまりいないじゃないですか。性格に難があっても、何かに一生懸命だからそうなっちゃっているみたいな。そういう人が否定されることはないのかなと思うので、和寛もそういう方向性でいきたいなって思っています。
――周りのキャストや演出の中屋敷法仁さんに相談されましたか。
聞きました! 「このセリフ、なんで言っているんですかね?」とか。すごく謝らなきゃいけないところで、和寛が怒るシーンとかあって。なんでこんなこと言うんだろうって分からなかったところは聞きました。ちゃんと聞こうと思って。(自分は)素直なんで(笑)。
――それを聞いて納得できましたか?
納得しました。あと他のキャストにも聞いています。「ここ、こうしたいんですけど、どうしたらいいですかね?」とか、「ちょっと分からないんで、こうしてみてもいいですか」とか。ディスカッションはするようにしています。
――実際に新体操に挑戦してみて感じる魅力や難しさはどんなところですか。
先日初めて楽曲に合わせて踊ってみたんですけど、テンポがいわゆる「ワンツースリー」じゃないから、合わせるのが難しかったです。倒立とかバランスとかももちろん難しいんですけど、ダンスに対してカウントじゃなくて、呼吸とか、みんなの雰囲気で合わせるっていう概念がなかったので、そこはしっかりやりたいなって思っていますね。
――普段は7ORDERとしてグループでパフォーマンスをされていますが、違いは感じていますか。
それはめちゃくちゃあります。位置が難しいですね。普段は番号が振ってあるから、横のラインと縦のラインで合わせるんですけど、それともまた違うので。
テンポも意外とゆっくりだったりするので、その間をどうやって保たせようかなとか。「(ゆっくり)ワーン・ツー、(速く)スリーフォーファイブ」みたいな独特な流れがまだ身体に入っていないので、そこが難しいなって思います。
――得意な技や苦手な技を教えてください。
得意なのはバク転とかバク宙とかロンダートとかで、よくやっていたのでアドバイスをもらったらすぐに反映させられるんですけど、倒立がめっちゃくちゃむずかしくて。
鹿倒立っていって、鹿の角の形みたいなポーズで止まる技があるんですけど、ただでさえ倒立だけでも難しいのに、「鹿かい!」みたいな(笑)。技のレベルが高くて、本当に難しいんですよ。
それを6人でやるっていうのが、なお難しくて。できるだけ早くマスターして、本番までにいろいろ調整できるようにはしておきたいなって思います。
僕けっこう追い込まれてギリギリになっちゃうんですよ、毎度(笑)。どれだけ頑張ってもギリギリになっちゃうんですよね。だから、ギリギリになるだろうなって思いながら、毎日頑張っています。
悠徳高校キャストを他己紹介
――悠徳高校のパフォーマンスの見どころはどこでしょうか。
僕はアクロバットはやったことがあるんですけど、チームにはアクロバットを初めてやるっていう方もいて。だから「すごいな」って思って。仕事で挑戦して、それを皆さんに披露するってすごい努力と勇気が必要だなって思いますし、そこが簡単にできちゃう人との違いかなって思いますね。
(もともとできる人が)さらっとやっちゃうのと、気持ちを一つ一つ込めながらやるのとでは、観ている人からしたら感じるものにも違いがあるんじゃないかなと思うので、そこが一つの魅力になっていると思います。
あとはダンスを揃えるところが多かったり、きれいなラインを見せなきゃいけない振りが多いので、そこも見どころですね。
――そんな悠徳高校キャストについて他己紹介をお願いします。まずは北島役の西銘駿さんはいかがですか。
西銘(駿)くんは、駿くんって呼んでいるんですけど、個人的にめちゃくちゃ僕と似ているなって思いました。稽古場での雰囲気や立ち振る舞いが。
以前共演した塩野(瑛久)くんが、もともと駿くんとも一緒にやっていて、塩野くんに「似てる」ってずっと言われていたんですよ。駿くんもずっと塩野くんから「(僕と)似てる」って言われていたらしくて。そのときはまだ知らない人だったから「へ~」っていう感じだったんですけど、こうやって実際共演してみたら、たしかにすごい似てるなって思います。
――双子のお兄さん・岩崎達寛を演じる納谷健さんはいかがでしょうか。
納谷健くんは、自分で「不器用なんだよね」って言っていたんですよ。僕はそんなことは思わなかったんですけど、一緒にいるとたしかに言っていたことも分かるなって。
「人との付き合い方が難しい」って言っていたんですよ。それを長い付き合いでもない共演者に言えるのって、素直で素敵だなって思うんですよね。僕も分からないことがあれば聞きますし、逆に僕に聞いてくれたりもするんですよ。人との付き合い方についてとか。
なかなか稽古場でそういうことを打ち明けてくれる人っていないと思うので、そういうところがすごくいいなって思いました。
――共演経験のある荻原五郎役・北乃颯希さんについてお願いします。
北乃くんは以前、SCHOOL STAGE『ここはグリーン・ウッド』で共演させていただいて、それからお家に遊びに行ったりしていて。普通に仲良くさせてもらっています。彼もダンスが得意なので一緒にやることも多くて、相変わらず仲良しです。
――谷慎太郎役の西野太盛さんはどうでしょうか。
西野太盛くんは、すごく話しやすいですね。もしかしたら一番話しやすいかもしれないです。雰囲気がすごく温厚で、歳上なんですけど、大丈夫かなって思うくらいタメ口使っちゃっています(笑)。すごく優しくて、本当に話しやすくて、ついちょっかいを出しちゃいますね(笑)。
――最後にディーン飛鳥役のバーンズ勇気さんについてお願いします。
バーンズくんもめちゃくちゃおもしろいんですよね。(7ORDERメンバーの阿部)顕嵐が出ている『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stageにバーンズくんも出ていて。毎回観に行っていたので勝手に親近感が湧いているんですけど、今回が初共演っていうことで逆にびっくりしています(笑)。
稽古場で僕すぐちょけちゃう(ふざけちゃう)んですけど、それに優しく笑ってくれるのはバーンズくんくらいですよ(笑)。それくらい優しいですね。なにをやってもすごい笑ってくれるので、逆に僕が元気をもらっています。
役者としてのこれからと理想は?
――舞台で新体操に挑むというのは大きな挑戦かと思います。今後、役者として挑戦したいことはありますか。
新体操はやっぱりすごく大変だなって思うんですけど、他にもスポーツものをやりたいなって。かっこいいじゃないですか。バスケット選手の役も本当は決まっていたんですけど、コロナで上演できなかったので、改めてそういう役もいいですな。「いいですな」って(笑)。「いいですね」。
バスケットはずっとやっていたので、舞台の上でやるっていう挑戦をしてみたいですね。あとは、スポーツだと弓道とか日本ぽいものもやってみたいなって思います。
――では、どんな役者を目指したていきたいですか?
面白い役者さんになりたいなって思いますね。阿部サダヲさんがすごく好きで。雰囲気と間とテンションがすごく面白い方だと思うので、そういう役者さんを目指せたらいいなって思いますね。
でも今は、かっこいい役もやってみたいです。僕、普段はこういう感じでふざけちゃうんで(笑)、役としてじゃないとなかなかカッコつけられないので。なので、誰が観てもカッコいい役ってあるじゃないですか。そういう役もやってみたいです。
――本番に向けての意気込みをお聞かせください。
練習で怪我しないっていうのが一番ですかね。
あとはこういうご時世なので、キャストさんともコミュニケーションが取りにくかったりするんですが…。その中で、どれだけ皆さんにいいものを届けられるのかっていうのが大事なので、めちゃくちゃ稽古を楽しんでいますね。
高校生ってやっぱりわちゃわちゃしているじゃないですか。訳分かんないことで笑ったりして。女子生徒(の役)がいないので、現場は男子校感がすごく強いんですよね。
だから男子校感を観ていただいて、(新体操の)演技ではしっかりパキッとしたものが観せられるようにしたいです。わちゃわちゃ感はもうすごいできているので、演技をしっかりして、その差を楽しんでいただけたらなと思います。
――最後にファンへのメッセージをお願いします。
新体操を初めて披露することになるんですが、一歩成長したなというところを観てもらいたいです。ダンスも普段とはまた違うので、そういうところも観ていただけたら嬉しいなと思います!
* * *
中止を経て、新たに舞台『タンブリング』への出演が決まった長妻怜央。稽古を楽しんでいるという言葉通り、インタビュー中の笑顔からは彼の作品やキャストへの温かな気持ちが伝わってきた。
約7年ぶりに上演される舞台『タンブリング』。そのステージ上で、ファンは観たことがない新たな長妻怜央の姿に出会うことになるのだろう。
文:双海しお/撮影:梁瀬玉実
広告
広告