現在ビジュアルボイスドラマが配信中、2021年4月に舞台第1弾、2021年10月には舞台化第2弾を控えるメディアミックス演劇コンテンツ「青山オペレッタ」。
歌劇団「青山オペレッタ」に誕生した新チーム「ノーヴァ」の活躍を描く本作には、彼らを導く劇団関係者たちが登場する。キャスト陣インタビュー第4弾として、「ノーヴァ」のダンス講師・相良明之介を演じる杉江大志、「ピエナ」の次期トップスタア・美園爽人を演じる丘山晴己、「メッザ」のトップスタア・南雲朝斗を演じる北川尚弥の3人にインタビューを実施。
声優の難しさややりがい、舞台での見どころ、お互いの第一印象など、本作への想いを聞いた。
声優の“息遣い”に苦戦、収録時の思い出
――「青山オペレッタ」プロジェクトへの出演が決まった際の感想はいかがでしたか。
丘山晴己(美園爽人役):ボイスドラマからメディアミックスで広がっていく作品ってあまりこれまで関わったことがなかったので、そういった作品に携われるのは嬉しかったですね。それに声優ってほとんどやったことがなかったので、新しい感覚で挑めるんじゃないかなと楽しみでした。
北川尚弥(南雲朝斗役):僕も声のお仕事をさせていただくのは初めてだったので、どう収録を進めていくのかすら分からなくて、分からないだらけのスタートではじめは不安でしたね。
杉江大志(相良明之介役):お話を頂いたときは、面白い企画だなって思って。アイドルもののコンテンツってたくさんありますが、「青山オペレッタ」はアイドルっていうよりも宝塚歌劇団に近いイメージで、しかも劇団100周年から始まるお話って面白いなって思いましたね。
親しみやすいテーマでありつつも、新しいところを切り拓いていく感じが、これからどんな展開が待っているのかなって楽しみでした。
あと二人も言っていたように、声のお仕事をしっかりやったことがなかったので、声優としてガッツリ関われるのも嬉しいなって思いましたね。
丘山:本当にガッツリだよね。
杉江:それにすごく丁寧に教えてくれるから、ありがたかったよね。
――実際に声優として収録に挑んだ感想を教えてください。
杉江:はじめは手探りでしたし、改めて舞台と全然違うなって思いましたね。準備していくことは一緒と言えば一緒なんだけど、一人で喋ったり、横にいたとしても面と向かっては喋らないので、そのあたりが難しいなって思いましたね。
北川:このご時世ということもあって、収録が一人ずつだったので、どうやってみんなが会話しているのかっていうのを想像しながらやらなきゃいけなくて難しかったなっていう印象がありますね。あと、息遣い一つ取っても、その一つでいろんな感情を表現しなくちゃいけないので、それが難しかったですね。
杉江:あった!? 息遣い(のボイス収録)?
北川:ありました。息遣いって基本的にバリエーションが一個しかないじゃないですか。
杉江:そうだよね、アレ難しいよね。「ンッ」てやつ! 僕は一個もないんだけど、みんなそれに苦戦しているよね。
丘山:しかも何度も録っているうちに、恥ずかしくなってきちゃうんだよね(笑)。
北川:分かります!
丘山:でも恥ずかしくなっちゃっている時点でダメじゃん。
北川:ですよね。
丘山:ダメだって思うんだけど、やっぱり恥ずかしいのよ(笑)。
杉江:でもアニメとか見ていると、結構息遣い出てくるよね。
丘山:そうそう。アニメで聞こえてきても何も思わないのに、いざ自分がその声を出すと「今の合っていた? 合っていなかったら恥ずかしい~」って思っちゃうよね。
一同:(口々に)アレは難しい…。
杉江:「ちょっと違うのお願いしまーす」って言われても、もうないんだよね(笑)。引き出しにはこれだけですって。
丘山:技術的に全然違うんですよね。僕たちは普段、稽古の中で作っていくものがあるので、それが無くてその場でポンッと声だけで、周りにいる人たちとの雰囲気も出さなきゃいけないから。これはもう一つの技術。でもこれができたら、僕たちにとってすごく大きな一歩になるんだなと思って、収録の度にチャレンジする気持ちで頑張っていますね。
杉江:すごくありがたいですよね。何もできないのにやらせていただけて。(槙 晋作役の)利根(健太朗)さんは僕たちと同じ量のセリフを録るのに、多分半分以下の時間で終わっているから、そう考えると僕たちはコスパとしてはあんまり良くないですからね(笑)。
――最初の頃は収録にかなり時間が掛かったんですか?
北川:すごく掛かっていましたね。
杉江:それに比べると、最近はかなり短くなってきたと思います。最初は何が正解かも分からなかったから、準備のしようもなかったんですよね。
北川:言われていることや求められていることは分かるんですけど、表現できなかったんですよ。そのもどかしさも、最初の頃はすごく感じましたね。
丘山:どうしても手順が違うからね。言ってみれば舞台と逆なわけですよ。積み重ねずにその役が出さないといけないから。これが完璧にできるようになったら、舞台の現場では顔合わせの時点でもうバッチリですよ。
キャラの魅力は、母性・いい人・スルメイカ
――演じる役のどんなところに魅力を感じていますか。
杉江:僕の演じるメイちゃんは、もう分かりやすいキャラクターをしていますからね。ひと言で言うなら「母性」ですかね。ノーヴァのみんなをかわいい息子たちだと思って接しているその姿を、皆さんにも愛してほしいなって思います。
北川:南雲はすごく人のことをよく見ているなっていう印象がありますね。自分だったらそこまで世話を焼かないだろうなっていうところまでしっかりと見て、伝えてあげている。こんないい人っているんだって思えるくらい、「いい人」ですね。でも心の中には熱いものを持っていて、すごくいい役者なんだなって思います。
丘山:美園さんは「スルメイカ」みたいな感じの人。話が進んでいくにつれて、彼の性格がはっきり分かってくるのが味なのかなって思っていて。最初は見た目通りツンケンしている人に見えていてほしいんですけど、次第に彼の魅力が伝わっていけばいいなって思いますね。
杉江:だんだんかわいく見えてきますよね。
丘山:もう今はかなりかわいいよ。周りの人のことも実は大好きだし、もちろん舞台のことも大好きだし。すごく素直で純な子だと思います。
杉江:もう(ボイスドラマで)酔っ払い美園って出てるんだよね?
丘山:(酔っ払い美園を略して)“よぱび”出ているね。“よぱび”でかなりかわいいところが出ちゃっているので、ぜひその味を楽しんでいただきたいですね。
――ノーヴァをそれぞれの立場で導く役どころとなりますが、もしご自身がノーヴァの講師を担当するとしたら、何の分野を担当したいですか。
杉江:お芝居ですね。僕にはそれ以外に教えられるものがない(笑)。
丘山:僕は身体表現かな。身体で語ることを教えるのは面白そう。実際に身体表現って教えてもらったことってなくない?
杉江:自分で試行錯誤してやっているから、ちゃんと教えてもらったことはないよね。
丘山:だよね。だから、そういうのができたら面白いかなって思いますね。
北川:僕は何だろうな…処世術かな。
一同:(笑)
北川:そういうのは得意ですね。「先輩にご飯に誘われたときに、上手く断る方法」とか。波風立てずにうまく世の中を渡るのは得意なので(笑)。
杉江:大事だよね、そういうの。案外この業界で需要ありそうだね(笑)。
舞台「青山オペレッタ」の見どころは?
――4月の舞台の見どころを教えてください。
杉江:歌もあるので精一杯頑張ります! ボイスドラマ収録時のメイちゃんは手探りではっちゃけていたから、舞台は一番やってきたフィールドなので、水を得た魚のようにみんなを弄り倒そうと思います(笑)。
北川:キャラクター的にも一番自由にできそうですもんね。
杉江:本当そうなの。どれくらい暴れられるのかは分からないですが、(悪い笑顔で)一人一回は恥ずかしい思いをさせようと思っているので、楽しみにしていてほしいですね。(加賀見祥太役の)友常勇気をツッコミ疲れさせられるくらい、暴れたいと思います(笑)。
北川:ボイスドラマよりも、舞台のほうがより深く南雲の良さを表現できるのかなと思います。声だけの表現と、本人が出てきて演じるのではまた違ってくると思うので、より役の魅力を引き出してお届けできるんじゃないかなっていうことを楽しみにしています。
丘山:舞台ではダンスや歌も入って、ボイスドラマでは見えないパフォーマンスが楽しめるのは舞台ならではの魅力だと思うので、想像で終わっている部分がどう表現されるのか楽しみにしていてほしいですね。
杉江:ノーヴァのパフォーマンスがね、楽しみだよね。
一同:楽しみだよね。
杉江:(ノーヴァの)ハードル上げておこう(笑)。
丘山:我々はトップスタア側ですから(笑)。
杉江:でもノーヴァがすごければすごいほど、僕らのハードルも上がっちゃうからな。
丘山:我々は大丈夫よ。
杉江:晴ちゃん(丘山)がそう言うなら、あとはもう精一杯努力させていただきます(笑)。
――すでに舞台化第2弾が発表されています。次回作が決まっている中で初演を迎えるというのはどういった心境なのでしょうか。
杉江:やっぱり先の展開まで決まっている中で、一つの役を演じ続けられるっていうのは、嬉しいですしありがたいですね。次が決まっているからこそ、先を考えて演じることもできるなって。「ここでこういうことをやっておいたら、次のここに繋げられるかもな」とか。先までのプランを織り込んで、考えて作っていけるのは楽しいですね。
北川:シリーズが続いていくと、やっぱり最初にやりきれなかった部分とかちょっと浅かった部分も、次第に深めていけるので、きっと観客の方もその過程を楽しめるんじゃないかと思うんですよね。あとはシンプルに作品が続いていくのは嬉しいです。それだけ愛されている作品だなって感じられるので。
丘山:そうですね。
杉江:「そうですね」で終わらせるつもりでしょ。
一同:(笑)。
丘山:舞台って一作品ごとに懸けて作っていくものなので、先があることが始まる前に分かっていると、その次を見越した演技プランを組まなきゃいけない。
もちろん脚本通りにやれば、そのプランには乗るとは思うんですけど、自分自身のプランも必要になってくると思うので、そういった意味では、次が決まっているっていうのは新しい準備の仕方をしなきゃなと。
お客さん側も事前に次があることを知っていたら、その続きとして流れで観ようという気持ちになると思うので、そういった部分に応えていきたいですね。
杉江:あとプレッシャーもちょっとありますね。次が決まっているのに最初が面白くなかったら、絶対次を見てもらえないじゃないですか(笑)。
とにかく最初は、絶対面白いものを作って、皆さんに楽しんでもらわないといけないっていうプレッシャーはあります。でもどっちにしても良いものを作るっていう気持ちは一緒なので、一生懸命やるだけですね。
それぞれの第一印象と当時の記憶
――皆さんは以前共演されていますが、それぞれの第一印象は覚えていますか。
杉江:晴ちゃんの印象は「漢字読めない人」(笑)。
丘山:当時のキャストはみんな同じこと言う。あと「時間が守れない」って。
杉江:あ~それも思った(笑)。
丘山:これは僕の性格が悪いとかじゃなくて、カルチャーの違いね。本番前の忙しい時間にみんなが「円陣組みましょうよ」って言うの。ほんと忙しいのに。
僕はやることあるからって言って最後まで着替えていたの。大志も「晴ちゃん、別に円陣やらなくてもいいんじゃないですか」って言うから、「だよね」って自分のペースで準備していたら、日本のカルチャーではダメだったの(笑)。みんなで円陣組まなきゃって。
杉江:僕も別にそういうのいいんじゃないかなって思っていたんだけどね。最初の頃は「気持ちだけ飛ばしといて」とか言っていたよね。それよりも、漢字読めないのが大変そうだなって思った。
丘山:最初は読めないから、音で覚えてた。もう分かんないから、オール暗記だよ。
杉江:すごく大変そうなんだけど、それでも晴ちゃんはいつもハッピー。
一同:(笑)。
杉江:日本人は割と大変だとネガティブになりがちだけど、晴ちゃんは「(ハッピーな感じで)大変だよ」って感じだから、それがすごく素敵だなって思って印象深いかな。
尚弥はね、第一印象がない! ないことが逆にすごいと思う。隠密のごとく気配を消していた。
北川:あ~、消していましたね。
杉江:でもたまに、斜め上のジャブみたいなボケを言って、それでまた消えるんだよ。そんなイメージ。
丘山:大志はもう元気ですよ。ずっとこのままで変わらない。最初の頃から、一番大きな声で挨拶するし。すごく頼りがいもある。当時はすごく若いのかと思ったらそうでもなくて(笑)、でも今でも雰囲気が変わらないから、それもすごいなって思っています。
尚弥は(櫻井)圭登と一緒にいるイメージかな。ずっと一緒にいるからニコイチみたいな。彼とは意外とバイブス合うんです。周りがギャーギャー騒がしくても、静かにしているところとか。ね?
北川:はい!
杉江:尚弥はその感じがいいの。その距離感でいたいっていうのが分かってから、親近感が湧いた。最初は掴めないままだったから。
北川:でも、僕のそういうところを知らない初共演の方もいるじゃないですか。そういう方にめちゃくちゃ質問とかされると、「どうしよう」ってなりますね(笑)。
丘山:でも当時より明るくなったよね?
北川:あの頃に比べたらかなり明るくなったと思います。
丘山:この3人でいると安心感がすごくあるから、こうしてまた一緒の舞台に立てるっていうのはめちゃくちゃ嬉しいね。
――最後にファンへのメッセージをお願いします。
杉江:メイちゃんの役どころってお客さんと同じ目線だなって思っているので、ノーヴァの6人はすごく魅力的だし、キャラクターの幅がすごく楽しいし、この6人が噛み合った姿は生で見るとすごく大きなパワーを持っていると思うんです。それを見るのが僕自身すごく楽しみだし、お客さんにも楽しみにしていただきたいと思います。
皆さんが思う「こうなってほしい」とか「こうしてほしい」っていう気持ちを、メイちゃんとしてできる限り代弁していけたらと思っていますので、楽しみにしていただけたら嬉しいです。
北川:素敵な世界観を持つ作品なので、南雲としていいスパイスになれればいいなと思います。南雲が出てくることで、空気感をガラッと変えられたらさらに作品が面白くなると思うので、そういったところも含めて楽しみにしていただけたらと思います。
丘山:100周年というすごく歴史のある劇団が、ついに舞台の幕を開けます。ここからどんどん繋がって広がっていくので、お客さんにも「青山オペレッタ」の世界に入っていただけるように、そして僕自身も関わる度に劇団の重厚感を出せたらなと思います。そしてより多くの人に作品を知っていただけたらなと思います。
* * *
共演経験のある3人の気心の知れたテンポの良い会話が印象的だった今回のインタビュー。これまでボイスドラマを中心に展開してきた「青山オペレッタ」が、舞台化でより魅力的なコンテンツになることを予感させてくれる、そんな鼎談となった。
ノーヴァをそれぞれの立場で見守り、導いていくことになる相良、美園、南雲の3人は舞台ではどんな活躍を見せてくれるのか。幕開けが待ち遠しい。
取材・文:双海しお/撮影:ケイヒカル
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