インタビュー

村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室

画像一覧はこちら

広告

広告

人生を理想通りに歩むのは難しく、予想もしていなかったことに出会うこともある。しかし、そんな出会いも大きな財産にできる方法があるのだ。

経験豊富なベテラン俳優から人生のヒントを学ぶ連載企画「2.5次元のベテラン教室」。第3回目となる今回は、映像・舞台ともに経験豊富で、さまざまな分野に深い知識を持つ村上幸平に話を聞いた。

「仮面ライダー555(ファイズ)」「動物戦隊ジュウオウジャー」など人気作品に出演してきた彼は、2020年10月10日(日)から公演のLIVEミュージカル演劇「チャージマン研!R-2」では初演に続き魔王役を演じる。

44歳を迎えた彼の現在地とは……。「チャージマン研!R-2」への意気込みやファンへのメッセージと共に、俳優としてのキャリアやその哲学について聞いた。

役者人生を救ってくれた、カイザとの出会い

ーーまず、大きなターニングポイントについて伺います。村上さんといえば、2003年の「仮面ライダー555」でしょうか。

そうですね。僕にとって最も大きなターニングポイントは「仮面ライダー555」の、仮面ライダーカイザ・草加雅人役です。

「仮面ライダー555」の前と後では、僕の芸能界でのステージがまったく違ったものになったと言えます。それほど大きなターニングポイントとなった作品でした。カイザは、僕の役者人生を救ってくれたヒーローなんです。

草加雅人を演じたことによって大きく変わったものが、2つあります。

まず、やはり知名度のある番組ですからファンの方が増えてくださったこと。

それまでは、役者としての活動よりもアルバイトばかりしている生活で……。果たして自分は役者と名乗っていいのだろうか? 自分は一体何者なんだろう? と自問自答するような日々を送っていたんです。

それが、ありがたいことに名前と顔が知られ、お仕事もいただけるようになり、この世界に役者として存在してもいいんだと思えるようになりました。

それからもうひとつは「役を心から愛する」という気持ちを知ったことです。

草加雅人は、万人からそのまま素直に愛される人物設定ではありません。率直に言えば、嫌われ役でした。実際当時は、お子さんはもちろん大人たちからも、とても嫌われていましたね。

すると、嫌われれば嫌われるほど僕の中に「世界中が彼を嫌っても、僕だけは彼を心から愛さなければ」という母性のような気持ちが湧いてきたんです。

この「役を愛する」気持ちは今現在、映像や舞台で仕事をさせていただいている中でも、とても大切にしているものです。

意外な出会いをプラスに変える。そのヒントとは

ーー人気作品での大きな出会い。特に戦隊ものやライダーといえば子供たちからの憧れの対象だと感じるのですが、理想的な役との出会いだったのでしょうか。

実は、望んだ道をとんとん拍子に歩んできたり、望んだ役にそのまま出会えたというわけではないんです。

少しさかのぼりますが、芸能界に入ったのも、「真夜中のカーボーイ」「イージー・ライダー」「俺たちに明日はない」「カッコーの巣の上で」といったアメリカン・ニューシネマ、特にジャック・ニコルソンに憧れたからでした。

そういった憧れを抱いて芸能界に入ったものの、そんなにうまく理想通りにはいきません。実は仮面ライダーにしても、何も知らなかった僕は、事務所からのオーディションのお話をお断りしたんですよ。当時はまだ平成ライダーもクウガ、アギトの2作だけで、まだ世間に平成のライダーが浸透していなかったからですね。

でも、きっかけがあって3作目の「龍騎」を見てみたら、ものすごく面白かったんです。子供番組とは思えないほどのクオリティで、映像や演出が格好良くて、ストーリーが複雑で、人間描写がものすごく深くて。これが今の仮面ライダーなのか、と驚きました。

それで、次のオーディションがあるならぜひ受けたいと事務所にお願いして、受けたのが「555」のオーディションでした。

残念ながら、その時のオーディションには落ちたんです(笑)。でも、後日事務所から連絡があって「2番目のライダーに決まった」と。それが仮面ライダーカイザ・草加雅人役でした。

僕は小さい頃、「太陽戦隊サンバルカン」や「大戦隊ゴーグルファイブ」といったヒーローものを見て育ったので、与えられた役が僕が持っていたヒーローのイメージとはだいぶ違っていることに戸惑いを覚えました。

だから役作りには本当に悩みました。自分の持っていた理想とは違う、けれども魅力的で強烈なイメージを与えるこの人物を演じるにはどうしたらいいのか……。

悩んで悩んで、監督さんとも相談して「いけるところまでいこう」と、草加雅人の人物像を作り上げて演じ切ったんです。彼を愛して深く理解し、とことん演じる。そうして僕は、あの作品で大きな財産となるものを得ました。

自分が理想としていなかったものと出会っても、深く愛して正面から誠実に向かい合う。そうすることで、自分にとって大きな出会いとなり、自分を変えてくれるきっかけを得られるのだと思っています。

ーー出会いが理想と違っていても、心から愛して正面から誠実に接することで、自分にとっても大きなプラスとなるんですね。

44歳の今。「まだまだ進化できる」

ーー現在44歳。今現在大事にしていることと、これからについて聞かせてください。

今も、そしてこれからも大事にしたいものは「出会い」と「ご縁」です。

僕は一度芸能界を辞めたのですが、芝居というものに未練が残っていました。そんな時に「その気持ちがまだあるなら、もう一回やってみないか」と声をかけてくれたのが、今の事務所の社長です。

事務所が変わってからは、原作付きの2.5次元も含めて舞台のお仕事を多くいただくようになりました。

これまでのご縁や、僕が出演したものを見て「この役は村上くんにお願いしたい」と指名で声をかけてくださることもあります。

数え切れないほどの役者がいる中で「もう一度仕事がしたい」と思ってもらえたり、脚本や構成を見て「この役は村上くんが合っている」と僕の顔を思い出してオファーしてくださる……。それは本当に、役者をやっていて涙が出るほど嬉しい瞬間です。

いただくお仕事をひとつひとつ大事に、丁寧に真剣に、真摯に。これからも、そうやって向き合っていきたいと思っています。

それから、40代に入ると、やはりどうしてもフィジカル面で衰えが出てきます。でも役者はアスリートではないので、身体の動かし方や見せ方を考えてみたり、ちょっとした気付きでカバーできると思っています。

「まだまだ進化できるんだ」と自分の可能性を信じる。それから、新鮮さを持ち続けるために努力することが大事です。

「誰かに飽きられる」のは、その前に「自分が飽きているから」だと思っています。だから、いつも新鮮な気持ちを持って役を愛して演じることを心掛けています。

ーー「自分がこれまでにやってきたことを信じる」。壁にぶつかった時に思い出したい言葉ですね。

チャー研・魔王役は村上幸平の集大成

ーー2019年の初演に引き続いての魔王役となります。魔王役の面白さや難しさについて教えてください。

真面目な話、チャー研における魔王は僕の集大成だと思っているんですよ。

オシャレ映画に憧れて芸能界に入った村上幸平の行き着いた先が、チャー研の舞台だったという……(笑)。あの頃に夢描いた所とは全然違う場所にいますが、「でも、チャー研の舞台って、ある意味、2.5次元舞台の最先端だよね(笑)」と誇りを持って取り組んでいます。

魔王役はご指名でオファーいただきました。原作を知らなかったので、お話を聞いたときは「何だ?このヘンテコなのは……」と本当に驚きましたが、今となってみれば、うっかり断らずに本当によかったと思います(笑)。

魔王といえば「悪」の象徴ですが、チャー研の魔王には、実は人間味があって、お茶目なところもあり、可愛かったりもします。演じる上で多くの引き出しが必要になる、とても演じがいがあるキャラクターです。

周りを見ながら、敵役として舞台全体のバランスを取らなければとも思いますし、歌あり踊りありアクションもあり……前回は瞳ちゃんも演じましたしね。演じ方によってとことん面白くもできるし、シリアスに演じることもできる振り幅の大きい役です。

舞台における「村上幸平の代表作」と言えるものにしたいと思っています。

ーー台本を読んでみて感想はいかがでしたか。

読んだ瞬間に胃がキュッとしました。「これは果たして大丈夫なんだろうか?」と、不安で……(笑)。でも前回も同じように胃がキュッとしたのを思い出したので(笑)、今回もきっと面白くなると思います。ご安心ください。大丈夫です!

今回から参加のキャストさんは今、不安でいっぱいでしょうね。前回の僕たちがそうであったように!(笑)

ーー最後に、舞台を楽しみにしているファンの皆さんへメッセージをお願いします。

コロナ過で不安やストレスを感じることも多いですよね。そんな沈んだ気持ちを吹っ飛ばすような、元気の出る楽しい舞台にしたいと思っています。

360度、周りを皆様に囲まれて、僕たちもものすごいエネルギーをいただいています。お客様とのエネルギーの相乗効果で、きっと素晴らしく楽しい舞台になるはずです。ぜひ楽しみにしていてください。

撮影:ケイヒカル

抽選で3名様にサイン入りチェキをプレゼント

【応募期間】
2020年10月2日〜2020年10月8日正午
※必ずTwitterキャンペーン応募規約をよくお読みいただき、同意の上ご応募ください。

【応募方法】
STEP 1. 2.5ジゲン!!のTwitterアカウント(@25jigen_news)をフォロー
STEP 2. 以下のツイートをリツイート

広告

広告

画像一覧

  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像
  • 村上幸平、理想とは違う現実でも「深く愛して誠実に向かい合う」――2.5次元のベテラン教室 イメージ画像

公演情報

タイトル

LIVEミュージカル演劇『チャージマン研!』R-2

日程

2020年10月10日(土)〜18 日(日)予定

劇場

新宿FACE

出演

古谷大和、安達勇人、東拓海、若井おさむ、星元裕月、篠原麟太郎、藤原祐規/浜ロン、村上幸平 ほか

演出

キムラ真(ナイスコンプレックス)

脚本

伊勢直弘

音楽

手島いさむ

公式サイト

https://www.lol-w.com/cha-ken_r2/

公式Twitter

@Lol_inc_www

主催

株式会社 Lol

WRITER

広瀬有希
							広瀬有希
						

金融・印刷業界を経てフリーライターへ。エンタメメディアにて現場取材・執筆の他、日本語・日本文化教育ソフト監修、ゲームシナリオ、ノベライズなどで活動中。感動が伝わる文章を目指して精進の日々を送っています。

このライターが書いた他の記事も読む