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宮島優心、運命に導かれるべき幾つもの要素【演出家・吉谷晃太朗 連載コラム】

連載コラム「吉谷晃太朗のマチソワタイム」vol.43

演出家・吉谷晃太朗さんが若手俳優をランダムに紹介していく連載コラム。第43弾は宮島優心さんの魅力に迫ります。

ORβITのメンバーとして注目を集め、2022年6月3日に開幕したミュージカル「マギ」-迷宮組曲-では、舞台初出演にして主要キャラクターのアラジン役を務めている宮島さん。稽古前の演技レッスンから見届けている吉谷さんは、彼の未来に期待を寄せます。

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宮島優心について


先程、ミュージカル「マギ」の本番初日を終えた。2000年生まれの初舞台の男の子は、主役として観客を魅了した。

主役に選ばれる人間は限られている。その特化したキャラクター性やいくつかの秀でた能力、運命的なタイミングにより選ばれる。それは努力だけでは成し遂げられないものである。

彼の大きな武器は透明感のある歌声、キレのある動き。それらに定評のある彼ではあるが、そこに今まで未経験だった演技の力を加えようとしている。

本稽古に入る2カ月前から定期的に演技レッスンをさせてもらった私は、「あれもこれもまだまだ」と毎日稽古場でも劇場でも優心と向き合っている(本番に入ってからもきっと)。

初日を迎え、花が開いたと言っても、この先の大輪の花を目指す存在となってもらいたいと思っている私は、シビアな目で見ていることもある。だが、彼の舞台に立つ姿は、小柄の男の子という設定とは裏腹に大きく感じた(物語上のアラジンもそうである)。

この先の成長や光り輝く未来への余白を残していることも、そう思わせる要因だ。宮島優心はアラジンのように運命に導かれるような男の子なのかもしれない。

同じく主役ポジションにいる猪野広樹と岡田奈々に挟まれていることも、彼にとって大きな幸運だったと言える。演じることに一切の手を抜かず、爆発的なエネルギーを持って役を作り上げる二人だからだ。他の共演者の方々も個性的で大きなエネルギーを持つ人たちばかりで、役としてだけでなく、共演者にも恵まれているのである。

この環境でいい影響を受けないはずがない。もっともっとたくさん影響を受けてもらいたいと思う。それが一番ダイレクトに受けるのは、物語の中の存在となっている本番だ。

物語の中の人生は実生活よりもドラマティックだ。感情のうねりの中で存在できる本番は、短時間で心を大きく成長させる。

前に彼に伝えたことがある。表現とは「表に現れる」と書く。表に現れるものは心だ。心の躍動や動揺が大きな揺れとなって体の外に飛び出してくるのである。

初舞台という緊張を乗り越えつつ、大きな感情の揺れを経験している彼の表現力は今、大きな成長を遂げようとしている。

毎日ずっと台本とにらめっこ。出来ない自分に不甲斐なさを感じながら、それでも食いついてきた。そんな彼だから先輩もアドバイスしてくれる。努力は人に伝わり、自分の中だけじゃなく得られることも多いのだ。

今はまだ出来ないけど、もっと自分でこう演じたいと考えを伝えられるようになってきたら、もっと演じることが楽しくなってくるだろう。舞台に立つ楽しさだけじゃない、「演じる」ことへの人間の本質的な喜びを見つけられるようになって欲しい。

また彼にとって大きな幸運の一つが、ファンにとても愛されていることだ。温かな空気が彼の周りを包んでいる。彼の向かおうとしている夢を、きっと成長も失敗も含めて、温かく見守ってくれている。

だからこそ、その人たちを味方につけて、小さな枠にはまろうとせず、失敗を恐れず突き進んでいって欲しい。

そして君は今、たくさんの読者を魅了した「マギ」の世界のアラジンという役と運命的な出会いをし、共に冒険をしているのだ。

「演劇という深いダンジョンを乗り越え、未知な世界へ飛び出そう」

コラムというより、彼へのメッセージになってしまった…。私は彼にとって演技の先生でもあるし、ま、いいか。

今日も君の成長を見届けよう。


マチソワとは――昼公演という意味の「マチネ」と夜公演を意味する「ソワレ」を組み合わせた言葉。マチソワ間(かん)はマチネとソワレの間の休憩のこと。

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WRITER

吉谷 晃太朗
								吉谷 晃太朗
							

演出家・脚本家
大阪府出身。同志社大学文学部卒業。高校在学中より劇団ひまわり大阪俳優養成所に入所。その後大阪シナリオスクール、伊丹想流私塾を卒業し、男性演劇ユニット「Axle(アクサル)」に脚本家、演出家、俳優として参加。人気漫画の舞台化で人気を博す。ミュージカルやショー、アクション物、新喜劇など、幅広いジャンルで活動中。

Twitter:https://twitter.com/koutaroyositani

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