ついに続編が開幕した「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stage。2019年におこなわれた初演は、まるでヒーローショーを観ているかのようなワクワクの詰まった、非常に満足度の高いものであった。
出久、爆豪をはじめとした登場人物の再現度、王道のストーリー、音楽など、その魅力はあまりにも多く、語りつくせないほどではあるが、ここではその中から2点に絞って、ヒロステ初演で個人的に感じた魅力について語っていく。
▼キャラクターを丁寧に解説した初演のゲネプロレポートはこちら
「そこに“彼らのヒーローアカデミア”が存在した。舞台「ヒロアカ」ゲネプロ&1年A組見どころ徹底解説」
もくじ
感動ポイント1:個性豊かな「女の子」キャラクターたち
ヒロステの登場人物は、年齢・男女問わずみな魅力的だ。学生から先生、ヴィランまで、しっかりとしたバックボーンを持ち、どのキャラクターにも感情移入ができる。
原作漫画「僕のヒーローアカデミア」には、クラスメイトや学校の仲間たちのほか、プロヒーローたちにも、魅力的な女性キャラクターが数多く登場し、ときにストーリーの軸として、しっかりとした強い「個性」で話を動かしている。
それは、舞台にもきちんとうけつがれている。2020年現在の2.5次元舞台は、女性キャラクターが活躍するものもあるが、まだまだその数は決して多くない。その点、ヒロステは特異だといってもよいだろう。
強くてかわいい女の子キャラクターが、かっこいい男の子キャラクターと肩を並べて学び、戦う。そこに大きな感動を覚えた。
限りなく2次元に近い完成度、衣装を含めたビジュアルが可愛い!
初演に登場した女の子キャラクターは4名。麗日お茶子(演・竹内 夢)、蛙吹梅雨(演・野口真緒)、八百万 百(山﨑紗彩)、発目 明(馬場莉乃)。
それぞれ、学校の制服や体育着はもちろん、ヒーローコスチュームも抜群に似合っている。コスチュームは、原作のデザインをきっちりと再現しながらも、素材や色合いなども、ヒーローとして現実に「ある」と思わせるように作られている。
顔つき、喋り方なども原作やアニメを細かく研究しながらも、舞台化するにあたって、役者そのものの特性を発揮している。声質、歌声、スタイル。たまに「2次元ではないだろうか」と思ってしまうほどの高い再現力で、原作ファンは大満足の舞台だったのではないだろうか。
男子と同じく「個性」的な面々は、どのキャラも、欠けてはならない活躍をする。第2弾「本物の英雄/ヒーロー」では、耳郎響香(演・川上明莉)、芦戸三奈(演・永利優妃)が加わる。さらにパワーアップするであろう女子たちに注目だ。
女声が入ることで厚みを増す歌の力。声量とパワーがすごい!
ヒロステは「ステ」というものの、歌の力が強い舞台だ。オープニングからエンディングまで、印象的な合唱も含めて個人パートありの歌も多い。
男声のみの場合は、軽やかな声、低く渋い低音などさまざまであるが、力強さとパワーがある。女声だけのときは糸や鈴と形容されるように、ピンと張りつめた遠くまでとおる声で構成された透明感がある。
このふたつが混ざると、互いが互いを引き立てる、何とも厚みのある歌声になるのだ。
特筆すべきは、麗日お茶子役の竹内 夢だろう。5人分はあるのではないだろうか思うほどのゆたかな声量で、まっすぐ芯のある歌声を会場じゅうに響かせていた。
第2弾、音楽は和田俊輔・歌唱指導に新良エツ子。間違いのない確実な布陣だ。キャストたちがどんな歌声を聞かせてくれるのか、楽しみでしかない。
感動ポイント2:子供から大人まで安心して楽しめる王道の「ヒーローもの」
『僕のヒーローアカデミア』はその名のとおり、ヒーローものだ。登場人物たちはヒーローに憧れ、日夜努力を続けている。
漫画ごとに差や個性はあれど、週刊少年ジャンプといえば「友情・努力・勝利」。
ヒロアカも、出久とかっちゃん、クラスメイトたちとの友情やライバル関係が描かれている。圧倒的な力の前に敗北することもあるが、協力したり知恵を絞ったり、ときに大人の力を借りたりしながら努力し、勝利をおさめている。
ヒーローコスチュームを身にまとい、現れるヴィランと戦う彼らは、漫画の中の登場人物ということを抜きにしてもかっこいい。戦隊ものを観てわくわくしていた気持ちを思い出す人も多いことだろう。
ピンチにはヒーロー。舞台の初演では、出久たちが「もうダメだ」というピンチに追い込まれたときにやってきたオールマイトの姿に、原作を読んでいて展開が分かっていたにもかかわらず、鳥肌がたつくらいにゾクゾクした。
ヒーロー・オブ・ヒーローのNo.1ヒーロー、オールマイト。彼に憧れる少年少女たち。そして、漫画の中や舞台に立つ生徒ヒーローに憧れる読者や観客たち。
ここから少し、どうしても書きたかった初演時のエピソードを入れる。
印象的な千秋楽カーテンコールエピソード。ヒーローという存在について
初演の千秋楽の最後、カーテンコールでキャストたちが客降りをしたときのことだ。飯田天哉役の猪野広樹が通路席で立ちどまり、メガネを外した。何をするのかと見ていたところ、目の前にいた小学校低学年くらいの子どもにメガネを渡してかけさせたのだ。
まさにヒーローではなかっただろうか。ほんの少し前まで舞台の上で悪者たちと戦っていたまっすぐ真面目な委員長ヒーローが、大事なメガネをかけさせてくれる。
憶測でしかないが、きっとこの日のできごとは、あの子にとって一生の思い出になったのではないかと思う。ヒーローとはそんな存在であってほしい。
「後楽園ゆうえんちで僕と握手!」今はシアターGロッソとなっているが、以前は戦隊もののCMでは、この言葉が決まり文句だった。テレビの中の存在だったヒーロが実際にそこにいる。ふと考えれば、実写ではあるものの2.5次元の一種かもしれない。
老若男女問わず楽しめる王道、ヒロアカ、ヒロステ
筆者が週刊少年ジャンプを読み始めたのは、小学校低学年のころだった。親戚が営んでいた床屋の待合室で、休業日の火曜日、いとこと一緒にジャンプを読んだ。
あのころもしもヒロアカが連載されていれば、火曜日が待ちきれずに自分でジャンプを買いたいと、親に小遣いアップの交渉をしたかもしれない。
2020年3月現在、原作付きの2.5次元舞台の客層の多くは、大人の女性だ。しかしヒロステ以降、男性が増えてきたようにも感じると同時に、男性にこそ強くすすめたいと思う舞台も増えてきた。
老若男女、ピンチの時にヒーローの登場を期待するのはみな同じだろう。この舞台もまた、公演にあたり多くのことに苦しめられている。しかし、舞台に立っているのは数多くのヒーローたちだ。
ヒーローは負けない。その言葉を信じて、第2弾の公演を心から楽しみにしたい。
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