アクション朗読劇「怪盗探偵山猫~黒羊の挽歌~」が、東京・ニッショーホールにて本日1月14日(土)に開幕した。
本作は、神永学による小説「怪盗探偵山猫」(KADOKAWA/角川文庫刊)の舞台化シリーズ。鮮やかに金を盗み、ついでに悪事を暴いて颯爽と消え去る天才怪盗“山猫”の活躍を描く、痛快ピカレスク・アクション・ミステリーだ。
2021年1月に舞台「怪盗探偵山猫 the Stage」が、2022年1月には、神永学による書き下ろしの完全新作ストーリーを元にした脚本の舞台第2弾「怪盗探偵山猫 the Stage~船上の狂想曲~」が上演された。
今回は、舞台で2作続けて主演を務める北村諒と豪華声優陣による“アクション朗読劇”として上演される。
地の文を担当するナレーションも含めて、山猫以外の登場人物のほとんどを、逢坂良太、中島ヨシキ、西山宏太朗、伊藤かな恵の4人の声優が演じる。いわゆる朗読劇でありながら、北村諒演じる山猫はそこに具現化して存在している、不思議な構成だ。
舞台上に大がかりなセットはほとんどない。それだけに、演者には想像力をかきたてる演技力が必要となる。
まずはオープニング。中島による“小説の出だし”を思わせるナレーションから山猫が登場。3人のアクションキャスト(宮川連・久田悠貴・坂本和基)とアクションを繰り広げ、冒頭から早速、“アクション朗読劇”の世界観を叩きこまれる。
声優4人は、朗読者でありながら役者として芝居もこなしている。片手に台本を持ったままではあるが、その役としてある程度動きを加えた芝居もする。完全に“人物”として存在している山猫との、つかず離れずの距離感が絶妙だ。
山猫(演:北村)は、雑誌記者の勝村英男を主に演じる逢坂へ、積極的かつリアルに絡んでいき、逢坂もまた、朗読をしている声優としてではなく「勝村」としてその芝居に応える。
北村は、アプリゲームなどで声優として声をあてている経験からか、声優陣の中で1人「キャラクター」として存在しても声が浮いていない。
お互いに、それぞれのフィールドでのスキルを発揮しながら、ひとつの舞台上で世界観が融合している。見ているうちに段々と、逢坂をはじめとした声優陣が「朗読者」ではなく「登場人物」に見えてくる不思議な感覚にとらわれる。
1つのシーンで数役を器用に演じ分ける西山も、見事な演技を見せてくれる。これぞ声の職人と言ってもいいだろう。また、リアル芝居と朗読が融合したシーンだけではなく、それぞれの魅力を堪能できる芝居パート、朗読パートも用意されている。
ナレーションの段を降りた中島は繊細な人物の演技を見せ、伊藤も役とナレーションの両方で、ひたむきさと落ち着いた声色でたっぷりとストーリーを聴かせてくれる。
過去に2作山猫を演じてきたことで、役と完全に融合している北村だからこそ、舞台上で1人だけキャラクターとして存在しても違和感を覚えさせない。
山猫がそこに生きて動き回っている。朗読劇としては限りなく舞台に近く、作品の魅力をより深く味わえる作りになっている。冒頭で述べたように、大掛かりなセットが少ないことも、想像力をよりかきたてる。
小説ファンにとっても、舞台ファンにとっても、互いの魅力を存分に感じられる、新しい試みの作品だ。
公演は1月15日(日)にもおこなわれるが、北村諒以外の声優キャストは全員入れ替わる。また新たな魅力が引き出されるに違いない。
1月の風物詩になりつつある「怪盗探偵山猫」の3次元化作品シリーズ。また新たな作品が次回生み出されるかは、「待て、しかして期待せよ」だ。
取材・文:広瀬有希
(C)Manabu Kaminaga/KADOKAWA/エイベックス・ピクチャーズ
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