「ちびまる子ちゃん」 原作35周年記念公演 ちびまる子ちゃん THE STAGE 『はいすくーるでいず』が、12月15日(木)に東京・天王洲銀河劇場で開幕した。
本作は、国民的作品「ちびまる子ちゃん」の原作35周年記念による舞台化作品。2部構成になっており、1部は芝居、2部は原作「ちびまる子ちゃん」に登場する楽曲を中心としたライブショー『まるステ ザ・歌謡ショー』だ。本記事では、2部の歌謡ショーでの歌唱シーンや衣裳などの写真も掲載しているため、初見を大切にしたいファンは観劇後に記事を読むようにしてほしい。
あれから8年、静岡県清水市。元3年4組の男子たちは地元の男子高校に進学し、にぎやかな毎日を送っていた。そんなある日、父親の転勤で東京へ転校した大野君 (大野けんいち/演:橋本祥平)が彼らの通う高校に転校生として戻ってくる。しかし大野君は、かつて杉山君(杉山さとし/演:GAKU)と船乗りになる夢を語り合ったあの頃とは変わってしまっていた。大野君が変わった原因とは、そして杉山君と交わした約束の行方は…?
「ちびまる子ちゃん」は、原作漫画は35周年。アニメ1期は1990年から始まり、現在も2期が毎週夕方6:00から放送中の国民的作品だ。「ちびまる子ちゃん」と言えばほとんどの日本人が頭にあの絵を想像できるほどに浸透しているといっても過言ではない。本作は、まる子のクラスメイトの男子たちが高校に進学した「もしも」の世界を描いている。
「もしも」の話ではあるが、キャラクターそれぞれの強い個性や設定は原作のものを生かしており、「こうなっていそう」と思える絶妙な設定になっている。丸尾君(丸尾末男/演:佐川大樹)はいまだに「ズバリ」が口癖で、はまじ(浜崎のりたか/演:松島勇之介)は相変わらずお調子者。藤木君(藤木 茂/演: 矢田悠祐)は唇が青いし、永沢君(永沢君男/演:佐藤永典)は昔と変わらず毒舌で頭がとんがっている。
ブー太郎(富田太郎/演:原嶋元久)はにこやかで、小杉君(小杉 太/演: 川﨑優作)は外見が変わりシュッとしたものの食べるのは大好き。花輪クン (花輪和彦/演:佐奈宏紀)は達観したように飄々(ひょうひょう)として優雅で、山根君(山根つよし/演:石川凌雅)は相変わらず胃腸が弱くてすぐに腹痛を起こしている。
彼らのそれぞれの特徴がしっかりと捉えられているので、8年後の未来であってもスムーズに世界観を受け入れられる。人物の性格だけではなく、花輪クンの家に(永沢君の家の新築パーティーで贈られたはずの)西洋の甲冑があるなど、原作ファンにとっては嬉しい小ネタが挟み込まれているのもポイント。
8年後ということで、舞台は1983年(昭和58年)前後。因縁をつけてくる学校には“番長”がいるし、不良のたまり場はゲームセンター。スマホはもちろんインターネットすら普及しておらず、遠くに引っ越した友達と連絡を取るには家庭の電話か手紙くらいしか手段は無かったころだ。東京に行ってしまった大野君が、何に悩んで何を考えていたのか…今ではSNSやメッセージを送ればすぐに知れるようなことも、この時代に生きている彼らは知るすべもない。
しかし、今も昔も変わらないのは、少年期の絆と友情と、少年から青年に移り変わる時期の多感さだ。高校2年生。進路や将来という現実が見え始め、数々の選択をして大人にならざるを得ない。けれども親や大人の庇護(ひご)がなければ、自分1人で生きていくのはまだ難しい。本作では、そんな、大人と子どものはざまにいる少年期の悩みも描かれている。
若いキャストたちをしっかりと支えるのは、大高洋夫(ヒデじい/西城秀治役)、大堀こういち(金井先生役)、酒井敏也(大野君のお爺ちゃん役)。それぞれが、高校生である彼らに伝える一言や、彼らから教えられるシーン、彼らをあたたかく見守る視線に胸が熱くなるだろう。ベテランの存在が本作に厚みを与え、若い彼らの眩しいほどの成長や、その時々に置かれた状況を浮き彫りにしている。
2022年も間もなく終わる。思い切り笑って、夢と友情を熱く語る若さに心洗われる本作は、今の時期にぴったりだ。「彼らの8年後を描いた」原作ものの舞台というだけではない。さまざまな夢にぶつかり悩む、みずみずしく青い春を感じられる本作に、ぜひ触れてほしい。
1時間半ほどの芝居の後は、休憩をはさんでの歌謡ショーだ。セットリストは、公式から発表されているように以下のとおり。
1.山本リンダメドレー
2.なみだの操(殿さまキングス)
3.傷だらけのローラ(西城秀樹)
4.イルカにのった少年(城みちる)
5.プレイバックPart2(山口百恵)
6.さよなら(オフコース)
7.クリスマスメドレー
8.また明日(オリジナル曲)
誰がどの歌を担当しているのかは、劇場や配信で実際に観ながら楽しんでほしい。公式指定のペンライト、うちわも用意していくとさらに気分が盛り上がること間違いなしだ。
いずれも昭和40年代~50年代のいわゆる「昭和懐メロ」。「ちびまる子ちゃん」の世界で、まる子たちがお風呂やテレビを見ながら好んで歌っていた曲をメインに構成されている。クリスマスが近いということで、わくわくする演出にもなっている。
芝居パートでのキャラクターを生かしたちょっとした芝居を挟み込みながらも、キャストそれぞれの持ち味や特技を生かした2部は、見どころと聞きどころたっぷりだ。
キャストコメント
花輪和彦(花輪クン)役:佐奈宏紀
いよいよ開幕です! 宴の始まりです! 稽古場から爆笑の嵐。「ちびまる子ちゃん」にぴったりの雰囲気が仕上がったと思います。まるでおもちゃ箱をひっくり返したようなワックワクの詰まった作品です。ぜひ童心にかえった気持ちでご観劇ください! 肌寒い季節ですが、今年のクリスマスシーズンは銀河劇場で! まるステで! 一緒にほっこり温まりましょう。
浜崎のりたか(はまじ)役:松島勇之介
皆さんこんにちは! はまじ役の松島勇之介です!! さあ、ついにまるステの幕が上がります。僕自身この作品と出会って夢とは何か、友達とは何かというのを改めて考えさせられました。歳を重ねる毎にどこか恥ずかしく思える熱すぎる青春を、今一度身体全体で感じてください!!
大野けんいち(大野君)役:橋本祥平
物心がついた時から目に触れていた「ちびまる子ちゃん」。この作品を見たら不思議と次の日を明るく迎えられる、また明日が楽しみになる。きっとそう感じたのは自分だけではないと思います。今回この舞台を通して「ちびまる子ちゃん」の世界に飛び込んでみて、改めて原作35周年の歴史の深さを実感しました。作品が持つ力と言うのはものすごく、稽古場はにぎやかで楽しみながら演劇と向き合っていました。見ている人を自然と笑顔にするそれがちびまる子ちゃんの魅力。この舞台もそうでありたいと思いながら向き合ってきました。青春というのは真っすぐで、大人になれば恥ずかしかったなと思うことでもその瞬間はそれが正義。どうか僕らの真っすぐな想いを受け止めてください。僕らの『はいすくーるでいず』がいよいよ開幕!
大野君のお爺ちゃん役:酒井敏也
若者たちのキレキレで軸のブレない素晴らしいダンス! ハイトーンで美しい声! 心地よく進むシーンの数々! 笑いを取る間! 共演者のわたしはウキウキ楽しくお芝居しています! この楽しいお芝居を早く皆さまにお届けしたい…! 毎日元気に楽しんで、この作品を皆さまへお届けしまーす!!
取材・文・撮影:広瀬有希
(C)さくらプロダクション (C)舞台『ちびまる子ちゃん』プロジェクト
広告
広告