忍術学園とドクタケ忍者がまさかの共闘! さらにみんなが大好きな土井先生のあまりに重い過去にスポットが当たるストーリーで、多くの「忍ミュ」ファンに衝撃を与えた12弾の再演にあたる、ミュージカル「忍たま乱太郎」第12弾再演 まさかの共闘!? 大作戦!!が10月8日(土)に開幕した。
2.5ジゲン!!では初日に先駆け実施されたゲネプロの様子をレポート。記事の後半では、ゲネプロ公演を終えたばかりの六年生、四年生キャストによる囲み会見の模様もお届けする。
再演と呼んでいいのだろうか。思わずそう思ってしまうほど、新たな試みと飽くなき挑戦に満ちた、意欲的な作品に仕上がっていたのが印象的だ。初演から再演でのパワーアップは、ある意味「忍ミュ」のお楽しみ要素のひとつだが、今作はこれまで以上に初演から進化を遂げていたように感じた。
一年は組の“天使な”3人に導かれ、客席は「忍ミュ」の世界へ誘われる。ドクダミ城を奪った謎の最狂忍者隊こと「カエンタケ忍者隊」と忍術学園&ドクタケ忍者の闘い、そしてこれまで明かされてこなかった土井先生の生い立ちとが、縦糸と横糸のように絡み合いながら結末へと向かっていく。
▲第12弾は一年生の見せ場も多くこれぞ「忍たま乱太郎」の世界!と感じさせてくれる
これまで対峙してきたドクタケ忍者との共闘。そんな前代未聞の忍務に対して、六年い組の立花仙蔵(演:湯本健一)と潮江文次郎(演:渡辺和貴)は意見が分かれてしまう。今作でスポットが当たっている六年い組だが、2人の親友という言葉でもライバルという言葉でも表現しきれない関係性は、本作でよりいっそう色濃く表現されている。
友情ですべて分かり合うのとも、真正面から衝突して理解し合うのとも違う、2人ならではの言葉のやりとりの中でお互いに何を感じているのか。本編中のマスク着用が今作からなくなったおかげで、2人の表情から受けとれるものが多く、ファンはおおいに想像力を掻き立てられることになるだろう。
▲六年い組の立花仙蔵(演:湯本健一)と潮江文次郎(演:渡辺和貴)。再演で追加されたシーンもお楽しみに
また、2人の意見の対立からは「本当に強い忍者とは?」という大きなテーマも浮かび上がる。いずれはプロ忍者として、どんな忍務も1度引き受けたなら、やり通さなければならなくなる忍たまたち。
今は「忍術学園の生徒」という立場だが、それぞれの胸には思い描く理想の忍者像があるだろう。プロの忍者はどうあるべきかを語り合う姿から、一人前の忍者として活躍する彼らの姿を思い描くのもいいかもしれない。
▲手数の増えたアクションは完全に目が足りない
そして本作の“影の主人公”ともいえる活躍を見せるのが、忍術学園の教師・土井半助(演:一洸)だ。初演で語られなかった部分も新たに盛り込まれ、土井半助というあまり壮絶な半生を生きてきた男の人生の一片が、今作でまたひとつ垣間見えたように思う。
▲あまりに重い過去を背負う土井先生を熱演する一洸
今作では浜 守一郎役として田口 司が新たにカンパニーに加わった。柔軟性を生かしたキレのあるダンスに加え、田口はアクロバットも得意としている。キャストも見どころに挙げている四年生のアクロバティックな動きを取り入れたシーンでは、彼のその特技も遺憾なく発揮されていた。同じ四年ろ組の田村三木ヱ門(演:三井淳平)や、用具委員会の先輩・食満留三郎(演:鈴木祐大)とのワチャワチャシーンでは、田口が先代キャストや原作にリスペクトを払いつつ作り上げた守一郎の姿を楽しんでみてほしい。
▲新生四年生。パワーアップしたパフォーマンスに注目を
公式からアナウンスがあったように、本作では約3年ぶりに客降りも復活。Gロッソの階段を駆けていく忍たまたちの姿を観られるのは、なんとも感慨深いものがある。
▲この光景がついに復活!カメラに応えてくれたタカ丸(演:坂下陽春)と留三郎(演:鈴木祐大)
「忍ミュ」らしいアットホームな温かさはそのままに、懐かしさと新しさがこれまで以上に入り乱れる作品となったミュージカル「忍たま乱太郎」第12弾再演。土井先生の過去や一年は組の健気さに涙を流す準備をしつつ、「もっと楽しんでもらいたい」という制作陣のあふれんばかりの意気込みを、ぜひ劇場で感じてみてはどうだろうか。
ミュージカル「忍たま乱太郎」第12弾再演 まさかの共闘!? 大作戦!!は10月8日(土)~10月23日(日)に東京・東京ドームシティ シアターGロッソで上演。
「すべてがパワーアップ」 囲み取材レポート
ここからはゲネプロ後に実施された囲み取材の様子をレポート。六年生・四年生キャストが登壇し、ときどき楽屋のやりとりを観ているのかとの錯覚に陥るほど、ツッコミあり笑いありの会見となった。
――約1年ぶりの再演上演となります。意気込みや見どころを教えてください。
湯本健一(立花仙蔵役):1年間待っていた気持ちは、僕たちもお客さまも同じだと思うのですが、溜めに溜めて、練りに練ったものを、みなさまにはおいしく食べていただきたいなという気持ちで頑張ります。
一同:(沈黙のあとに爆笑)
渡辺和貴(潮江文次郎役):これだけ期間が空くというのもこれまであまりなかったのですが、健ちゃん(湯本)が言ったように台本が変わったり新曲ができたり、新キャストとして(田口)司が加わったりと、再演ではありますが新しい部分が多々あります。初演より面白かったとお客さまに思ってもらえるように稽古してきましたので、楽しみにしていてください。
湯本:(渡辺の視線を受けて)僕が言いたかったのはそのまんまこれです(笑)。
新井雄也(中在家長次役):色々進化した部分と、そして戻ってきた部分と。客席降りも第10弾まではやってきたことだったので、それがこうして戻ってきて、みなさまにお届けできるのは嬉しい限りです。パワーアップした「忍ミュ」をみなさまと一緒に楽しめればと思います!
坂垣怜次(七松小平太役):今回はついに客席降りがあるので!パワーアップした公演に加えて、そこもすごく楽しいと思ってもらえるんじゃないかと思います!
鈴木祐大(食満留三郎役):久々にカンパニーに再会して、素直に「僕の仲間ってこんなにかっこいいんだ!」って思うことが稽古中に何度もありました。同じ12弾の作品ですが、すべての面においてパワーアップしているので、お客さまにはご期待していただければと思います。
反橋宗一郎(善法寺伊作役):顔合わせのときに竹さん(脚本・作詞・演出の竹本敏彰)が「1年ぶりに再演をやるということは、パワーアップしないとやる意味がない」とはっきり仰っていて。開いた台本からもその気概を感じて、こんなに再演で変わるのって僕も初めて経験したくらい、変更点が多くありました。僕たちも必死に稽古してきて、これまで経験したことないくらい通し稽古をしましたしね。
一同:(笑)
反橋:個人的なところで言うと、伊作はずっと乱定剣(身近にあるものを投げる攻撃)で包帯を投げてきたのですが、今回はある武器を使うというアイデアが稽古場で生まれて、包帯を一切使わずにやらせてもらいます。そこが僕的な伊作の見どころですね。
龍人(平滝夜叉丸役):四年生の見どころとしては、同じ曲でも振り付けや構成が変わっていて、その変更の部分が僕たちにとってはかなり挑戦的な内容で。大変ではあったんですが、その分見ごたえのあるシーンになっていると思います!
大谷 誠(綾部喜八郎役):今回は一部キャストが本編はマスクなしでお芝居をやらせてもらえるので、表情が見えるからこそのお芝居の機微や細かいところも観ていただけたら嬉しいです。去年は情勢的に劇場に足を運べなかった方、DVDで観てくださった方で、今回初めて劇場に足を運んでくださる方もいらっしゃると思うので、そういう方にも楽しんでいただける内容になっていると思います。
三井淳平(田村三木ヱ門):12弾初演、学園祭を経ての今回なので、カンパニーとしての関係性や絆が深まっていると感じているので、それをお芝居や曲中で見せていけたらなと思っています。さらに司が新キャストとして入ってくれて、すごくいい四年生、いい学園生、いい「忍ミュ」となっております! そんな田口 司につながせていただきます!
一同:(各方面からやりづらい~とツッコミが)
田口 司(浜 守一郎役):えーっと、田口 司です(笑)。12弾初演を演じていた高畑 岬さんが作り上げた守一郎を大切にしつつ、原作の守一郎も大切にしつつ、僕なりの浜 守一郎を稽古場から作り上げてきたので、それをみなさんに楽しんでもらえたらと思います。先輩方がパワーアップしていると仰っているこの作品に参加できていることがとても嬉しいです!
坂下陽春(斉藤タカ丸):えっと、質問がなんだったかなって…。(周りからフォローされて)「あらら~!?」ということで、まずは21公演あるので、最後まで誰1人欠けることなくステージ上に立てるように各々頑張っていただいて…。
一同:(笑)
坂下:あ、あと! 初演より殺陣の数が増えた人も多いので、そんな「ザ忍者!」的な部分や、ミュージカルとしての歌やお芝居やダンスも楽しみにしていてください!
反橋:四年生はアクロバットのこと言わなくて大丈夫ですか?
三井:さっき龍人が挑戦っていうことで言ってくれたんですが、四年生は今回アクロバティックなことに挑戦しています。そこはぜひみなさま、楽しみにしていただいて、劇場に足を運んでください!
ほかに、「稽古中に印象的だったこと」というテーマでは、稗田八方斎役の幹山恭市とキャプテン達魔鬼役の高橋 光が「桶」と「OK」で話が食い違っていた、というおもしろエピソードを反橋が披露。渡辺からは、稽古初日に声が大きそうに見えなかった田口の声が想像よりも大きくて驚いた話などが飛びだした。また、個別で練習することの多かった四年生が、今作のアクロバティックをきっかけに、いっそう団結したというエピソードも。
マスクにまつわるエピソードでは、新井がマスクで傷メイクが薄くなっていくのが気が気でなかった話や、鈴木が留三郎の持ち味のひとつである“顔芸”を封じられるので大変だった話など、マスクなしの本編が復活した今だからこそ言える本音も語ってくれた。
最後に湯本が「本当にこのGロッソでの公演が決まってから、みんなでこの瞬間を心待ちにしていました。さっきもあったように、本当に何回も通し稽古をして、劇場に入ってからも何度も話し合いをして、作品をさらによくしようと最後まで必死にやってきました。久々のGロッソに来ると、舞台のセットもそうですし、この足に“くる”感じも、Gロッソに帰ってきたぞという感じで楽屋でもワーキャー盛り上がっています。そのエネルギーを舞台上で出して、お客さまにも楽しんでいただけたらと思います。21公演、1回のお客さまも何度も観劇するお客さまもいると思いますが、全公演を全力で挑みますので、応援よろしくお願いします」と締めくくった。
取材・文・撮影:双海しお
広告
広告