舞台「炎炎ノ消防隊」‐地下からの奪還- が9月17日に東京・サンシャイン劇場で開幕した。本作は、アニメ化もされている大久保篤による漫画「炎炎ノ消防隊」の舞台化作品で、2020年7月・8月と2022年1月に上演された舞台「炎炎ノ消防隊」のシリーズ第3弾。人体発火現象の脅威に立ち向かう特殊消防隊たちの活躍を描いたバトルファンタジーだ。
2.5ジゲン!!では、初日に先立ちおこなわれたゲネプロと囲み会見の様子をレポートする。ストーリーや演出上の大きなネタバレには触れないが、舞台写真を含む記事のため初見の驚きを大事にしたいファンは観劇後に読むよう注意してほしい。
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物語は、太陽暦百九拾八年、東京皇国。人々は、何の変哲もない人が突如燃えだし、炎の怪物“焰ビト”となって破壊の限りをつくす“人体発火現象”に怯えて暮らしていた。“焰ビト”に対抗する特殊消防隊の新人隊員で、悪魔の足跡と噂される発火能力を持つ少年・シンラ(演・石川凌雅)は、秋樽 桜備大隊長(演・伊万里有)の率いる第8特殊消防隊に配属され、“ヒーロー”を目指して仲間たちとともに“焰ビト”との戦いの日々に身を投じる。
浅草で驚異的な力を持つ鬼の“焰ビト”との壮絶な戦いの末、無事に事件を解決し「第7」と 信頼関係を築いた「第8」。その後ヴィクトル・リヒト(演・菊池修司)の調査によって白装束らのアジトが判明する。そこは、聖陽教が禁忌の地とする「地下(ネザー)」と呼ばれる場所だった。
来たる死闘を戦い抜くべく、シンラとアーサー・ボイル(演・横田龍儀)は「第7」の大隊長にして最強の消防官・ 紅丸(演・佐藤流司/第2弾に出演)に修行をつけてもらうため、再び浅草へと赴く(おもむく)。その途中、白い装束をまとった少年がシンラ達の前に現れる。シンラは、その少年が弟のショウ(演・岩崎悠雅)ではないかと気づくも、少年はシンラへ刃を向ける。その不思議な力を前にまったく歯が立たないシンラは、ショウを取り戻すために改めてさらなるレベルアップを心に誓うのだった。
一方、ヴァルカン・ジョゼフ(演・TAKA)の持つ“天照のキー”を狙い、Dr.ジョヴァンニ(演・鵜飼主水)にスパイとして送り込まれていたリサ(演・飯窪春菜)。「第8」に機関員として加わったヴァルカンもまた、家族として大事に思っていたものの地下へと姿を消してしまったリサへ想いをはせるのだった。
シンラはショウを、ヴァルカンはリサを。大切な者を取り戻す…。さまざまな思いを胸に「第8」は、地下鉄道の遺構から 暗闇に閉ざされた「地下(ネザー)」への侵攻を試みる。
第3弾は、いよいよ物語の深いところまでストーリーが踏み込んでいく。浅草での修行、地下への侵攻、数々の戦い…とスピーディに展開されていくが、シンラとショウとの再会、桜備と武久 火縄(演・馬場良馬)の絆、ヴァルカンのリサへの思いなど心理的な部分も丁寧に描かれている。
今作からシンラを演じる石川は、激しいアクションシーンを、高い身体能力を駆使した生身の動きで魅せてくれている。空手で体得した美しくキレのいい動きによる、シンラ得意の蹴り技は見惚れるばかりだ。弟への思い、過去を振り返るつらい気持ちなど、感情もひしひしと伝わってくる。
ショウを演じる岩崎は、灰焰騎士団の団長らしい貫録と威厳に加え、どこか内側に少年らしさを感じる瞬間を見事に演じている。シンラや他の人物たちに繰り出される『切リ離シタ宇宙』がどのように表現されるのかは、ぜひ舞台を観て確認を。
アーサー・ボイルは横田龍儀が演じることによって、緊迫したストーリーに笑いを差し込むと同時に舞台上に安定感をもたらしている。大隊長としての存在感と頼りがいを感じさせる伊万里有(秋樽 桜備役)、1作目からの出演ですっかり役が板につき、安心感を覚えさせる馬場良馬(武久 火縄役)。この2人の絆にも大注目だ。なお、火縄の個性的な帽子は今回も健在。
茉希 尾瀬(演・長谷川里桃)の出すプスプスとメラメラは、今回は何と実体化。アイリス(演・礒部花凜)、環 古達(演・早乙女ゆう)のかわいさも必ずチェックしてほしい。
ヴァルカン・ジョゼフ(演・TAKA)のメカニックとしての能力は今作でも発揮される。ヴァルカンのリサ(演・飯窪春菜)への思いは、今作における柱のひとつでもあると言えるだろう。また、リサの葛藤は観ていて苦しくなる面も。消防隊員たちとともに地下へ赴くヴィクトル・リヒト(演・菊池修司)の科学者ならではの視点も、舞台にもう1つの層と新しい気づきを与えている。
今作でシンラに重要な事柄を伝えるレオナルド・バーンズ(演・萩野 崇)。静かに語るその口調は、やわらかくも重々しく、演じる萩野の声質もあって自然と耳を傾けたくなる。映像演出の効果も重なり、圧倒的強者の貫録を見せてくれる。なお、ジョーカーは1作目・2作目と演じていた和泉宗兵が声の出演をしているので、登場シーンにもぜひ注目を。
シンラたち第8の面々と白装束たちの全面対決の本格的な始まりということもあり、白装束たち1人1人もまた個性的かつ、強い印象を残す。エキセントリックなヨナ(演:河原田巧也)、いでたちから強敵然としているにも関わらず少々残念なアサルト(演・山田ジェームス武)、存在しているだけで底知れないものを感じさせるハウメア(演・田上真里奈)、ハウメアと常にともにいるカロン(演・稲垣成弥)。アロー(演・佐倉花怜)は今作でも活躍の場が多く、Dr.ジョヴァンニは前作と同じくぞっとさせる雰囲気を醸し出している。
ストーリーの展開の速さを助けているのは、映像演出のほか、セットの力も大きい。これまで本作には登場していなかったセットの使い方も見られる。また、サンシャイン劇場という劇場がより演者たちを近くに感じられる。マイクを通した声も、生の声なのではないかと思うように聞こえ、炎などの映像演出も多いのだが、よりアナログな息遣いを感じる舞台となった。
ゲネプロのカーテンコールでは、シンラ役の石川から「東京、京都と全18公演駆け抜けて参りますので、どうか応援のほどよろしくお願いします!」と挨拶があった。
舞台の最後の最後、シンラの見つめる先に何があるのか…その視線の行く先にまで注目して観てほしい。
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ゲネプロ前には囲み会見がおこなわれ、石川凌雅、横田龍儀、伊万里有、馬場良馬、菊池修司、TAKA、岩崎悠雅が出席。キャラクターそのままに裸足で登場した石川へ他のキャストから、「お前失礼だろ、靴履けよ!(笑)」と次々にツッコミが入り、上演前からカンパニーの仲の良さを感じさせた。それぞれが意気込みを語る最中も「100点!」「120点!」と声をかけ合うなど、笑顔と笑いの絶えなかった会見の様子をお届けする。
――はじめに、本作への意気込みをお願いします。
石川凌雅(森羅 日下部/シンラ クサカベ役):今回から初めて参加させていただきます。1作目、2作目、ともにものすごく熱量の高い作品でした。そのいい所は継承しつつ、ネザー(地下)でしか味わえない臨場感や、弟の象(ショウ/演・岩崎悠雅)との戦いを通して今作を繰り広げていきたいです。観てくださる方にも、ドキドキハラハラ、ワクワク感を味わってもらえたらと思っております。
横田龍儀(アーサー・ボイル役):(石川のコメントを聞いて)100点言われちゃった!(笑)。今回からネザーに入ります。“未開の地”と言われている場所なので、どういう場所か分からない所に入っていく緊張感や重い雰囲気が漂っていますが、その中で僕が演じるアーサー・ボイルが(雰囲気を)緩和できたらと思っています。
伊万里有(秋樽 桜備/アキタル オウビ役):以下同文です! 早く皆さんに届けたくて前のめりになっております。(立ち位置から外れて前のめりに記者席に向かって歩き出し、横田などから「近寄らなくていいから!」と突っ込まれる)盛り上がっていきましょう、と気合が入っております(笑)。3作目からの登場ではございますが、大隊長ですからテンションを上げていきます! (「内容全然入って来なかった」「意気込みは感じる」とキャストたちからコメント)
馬場良馬(武久 火縄/タケヒサ ヒナワ役):この(会見出席)メンバーの中で唯一、1作目から出演させていただいています。今回のネザー編は、みんなが散り散りになっていきますが、各々が第8や弟のことなどを想いながら積み重ねていきます。今回から新しく入ったメンバーも、前から一緒だったんじゃないかというくらいリラックスして座組に参加してくれています。(「先輩!」「140点!」と声がかかる)必ずいい方向へ作品が動いていくと思えるので、注目していただきたいです。
菊池修司(ヴィクトル・リヒト役):僕も今作からの参加になります。1作目、2作目とどんどんディープになってきています。今回はシンラとショウの直接対決なのですが、僕(の演じるヴィクトル・リヒト)は違う観点から皆さんにお届けする形になると思います。2人の熱量に負けず、そして相乗効果を目指していきたいと思います。
TAKA(ヴァルカン・ジョゼフ役):前回に引き続き、ヴァルカンを演じさせていただきます。ようやく第8の仲間入りができたので、憧れの防火服をまとって熱い舞台をお届けできるように頑張っていきたいです。
岩崎悠雅(象 日下部/ショウ クサカベ役):(「トリだぞ!」と周りからプレッシャーをかけられるも「まかせてください」と余裕たっぷりに)今回僕は、ネザーの1番奥でシンラたちを待ち構えています。団長として、皆さんをびびらせる気でどっしり堂々とやっていきます。(舞台上での)シンラとの出会いや最後の戦いで、色々と思い出したり(シンラを)お兄ちゃんだと思ったり、どんどん熱量を上げて最後の戦いを締められたらと思っています。(「ラートム!」「素晴らしい!」「かわいい!」と声がかかる)
――本作の見どころを教えてください。
石川:アクションもさることながら、弟との対決や、潜入したことのないネザーの世界など、初めてのことがたくさん起こっています。その中で、なぜシンラが消防隊に入隊したのかを掘り下げるところから稽古がスタートしました。ショウとの戦いをとおして、シンラの生き様や志を表現していきたいと思っています。
横田:兄弟愛が見どころだと思っています。家族と離ればなれになるというのは、とても重いことです。生き別れになった兄弟と会えるという、この作品を観ることによって家族の大事さにも気づけると思います。(石川と岩崎)この2人のお芝居の熱量は本当に素晴らしいのでぜひ注目してください。
伊万里:俺もそれ、家族愛について言おうとしてた!(笑)早着替えが大変でした。「いつ着替えたの?」というくらいの。見えてない部分もしっかり頑張っています!
馬場:絆ですね。特に今回はシンラとショウの兄弟の絆、僕たちの第8としての絆、ヴァルカンとリサ(リサ 漁辺/演・飯窪春菜)の家族としての絆が描かれています。絆というものは、多分誰でも持っていると思いますので、そこに照らし合わせて観ていただけたら嬉しいです。
菊池:今回は、セットが特殊です。色々な場所で第8のメンバーが戦っていくのですが、それを繰り広げていくセットがとても魅力的です。それから、それぞれの戦い方のスタイルやたくさんの武器が出てきます。いろいろな表現ができるんじゃないかなと思いますので、そういうところを見ていただければ。
TAKA:皆さんが言ってくれたことはもちろん、シリアスなシーンばかりではなく笑い所も多々あります。展開も速くて色々楽しんでもらえると思います。
岩崎:(再度「トリだぞ」とプレッシャーをかけられ「まかせてください」と返す)絆はもちろん、アクションがとても多いです。僕たちだけではなく映像、音響、照明、小道具、セットなどの皆さんの力で成り立たせています。壮大になっているので、観てヒリヒリ、ハラハラしていただけたらと思います。
――最後に、お客さまへメッセージをお願いします。
岩崎:カンパニー全員の力を合わせて「炎炎ノ消防隊」の素敵な世界を表現してまいりますのでぜひお楽しみください!
TAKA:観ていただく皆さんにご満足いただけるような熱い舞台をお届けしていきたいと思っておりますので、最後の最後まで応援よろしくお願いいたします!
菊池:熱量が高く、見ごたえもたくさんの作品だと思っております。最後までよろしくお願いいたします。
馬場:熱い熱いネザー編に仕上がったのではないかと思っております。ぜひ皆さまの目で観ていただけたら嬉しい限りです。
伊万里:頑張るぞ!
横田:少しでも皆さんに笑顔になってもらえるように、全力で頑張ります!
石川:みんなで板の上で頑張って、悪の炎や悪いものをかき消すくらいの汗で頑張っていきたいと思います。最後までよろしくお願いします!
取材・文:広瀬有希
(C)大久保篤・講談社/舞台「炎炎ノ消防隊」製作委員会
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