2019年秋に上演、特撮ファンにも熱い支持を受けた舞台『DARKNESS HEELS〜THE LIVE〜』が3年ぶりに帰ってきた。舞台『DARKNESS HEELS〜THE LIVE〜2022』として上演される本作は、3年前にジャグラス ジャグラーを演じた谷佳樹以外のキャストを一新。作品の持つ熱はそのままに、ダークヒーローたちの葛藤や信念を再び、ステージ上に鮮やかに描き出した。
新たなキャストが描く、新たな闇の物語
悪とはなにか、光とはなにか。幕開けとともに提示されるこのテーマを、ダークヒーローと呼ばれる者たちの視点から掘り下げていくこの舞台『DARKNESS HEELS〜THE LIVE〜2022』。
作中にはキャラクターごとの正義と悪に加えて、惑星ごとの価値観や、人々の関わりの中で悪の捉え方を変えていく者、他者によって価値観を植えつけられている者など、まさに十人十色な光と闇が登場する。物語において、“これが悪である”とわかりやすいものが提示されていれば、それを受け入れてストーリーを噛み砕くことは簡単だろう。だが、本作ではそれぞれの中にそれぞれの光と闇があり、どれが正解かは教えてはくれない。
だからこそ、ダークヒーローや惑星の者たちが自身の信じるもののために拳を振るうとき、観客はそこに込められた正義や悪、光と闇について自分で考え、自らの心に問わねばならない。ダークヒーローと呼ばれる者たちの戦いを描く作品であると同時に、観る者もまた心のあり方を問われる作品が、この舞台『DARKNESS HEELS〜THE LIVE〜2022』なのではないだろうか。
物語は惑星テリオにて、かつてどこかの惑星で悪とされた者たちが、人間態として目覚めるところから始まる。その傍らには思惑ありげに微笑むジャグラス ジャグラー(演:谷佳樹)の姿が。
初演で同役を演じた谷の食わせ者感は3年前よりさらにパワーアップ。冷静でいてどこか好戦的な瞳の色が、この先に起こる大きな衝突を予感させた。
▲今回も手数の多い殺陣は見応えがある。ジャグラス ジャグラー(演:谷佳樹)
次々と目覚めていくウルトラマンベリアル(演:八木将康)、イーヴィルティガ(演:正木郁)、ダークザギ(演:樋口裕太)、カミーラ(演:小田えりな・AKB48)たち。
闇の者である彼らが大人しく現状を受け入れるはずもなく、研究施設でひと暴れした彼らは惑星を飛び出す。偶然やさまざまな思惑が交差する中、ウルトラマンベリアル、カミーラ、イーヴィルティガは惑星アバンへ。ダークザギとジャグラーはO-50へ。
2つの惑星の政府や、ダークヒーローを目覚めさせた惑星テリオ、そしてダークヒーローたち。彼らはなにを信じて、なんのために、その力を振るうのか。容赦のないダークヒーローだからこその豪快なアクションとともに、それぞれが選び取った信念を見届けてみてはどうだろうか。
本作は目が足りないほどの各所で繰り広げられるアクションが魅力だが、キャストが一新されたことで生まれた新鮮さや新たな解釈も見どころだろう。ストーリーや登場キャラクターは初演と同じだが、役が新たな演じ手に出会ったことで生まれる化学反応が、本作を単なる再演の枠を超えた作品へと押し上げている。
八木の演じる“支配”のウルトラマンベリアルは、なんといってもパワフル。内側から発する熱量に、観ているこちらが圧倒されるような存在感を示していた。どんな相手であろうとねじ伏せる、ただそれのみ。そんな気迫を感じる背中に、ウルトラの星に生まれながら悪に魅入られた者の残り香を感じさせた。
▲劇場の空気をも支配するウルトラマンベリアル(演:八木将康)
自らが神となり人を導こうとした“野心”イーヴィルティガは、内面での葛藤が多いキャラクターだ。二重人格のような不安定さを正木は豪快かつ細やかに演じた。かつての記憶に触れるたびに揺らぎ混乱する心情を演じる際の表情は、ぜひ双眼鏡で捕捉してほしい。
▲葛藤の表現が見事な正木郁演じるイーヴィルティガ
兵器として造られた過去を持つ“破壊”ダークザギは、新たに樋口裕太が演じた。器用な彼が演じたダークザギは、初演とはまた違った印象があり、野性味よりも内面の歪みが感じられる役に仕上がっていた。
▲破壊の限りを尽くそうとするダークザギ(演:樋口裕太)
紅一点の“執着”カミーラを演じる小田えりなは、安定感ある殺陣を披露。厳しくクールな言葉の中に、絶妙なバランスで優しさを織り込み、愛に生きたカミーラの人となりを好演した。
▲抜群のスタイルから繰り出される殺陣に注目したい小田えりなのカミーラ
強大な力を持つ彼ら5人を手のひらの上で転がすのは、惑星テリオのヒュース・アーディ(演:平賀勇成)。作り物のように端正な平賀の顔立ちが、ヒュースの無機質な不気味さに拍車をかけ、物語の闇を濃くしていた。彼が差し向けた刺客のシャルム・フィーラー(演:鈴木翔音)やギア・メイ(演:中野郁海)の暗躍にも注目だ。
▲美しいがゆえに恐ろしいヒュース・アーディ(演:平賀勇成)
重いストーリー展開の中、惑星アバンでのアットホームなやり取りや、O-50でのパルビナ・ルイ(演:北澤早紀・AKB48)を中心としたコミカルな掛け合いは、つかの間のクスッとできるシーン。彼らを前にしたダークヒーローたちの意外なリアクションも、お楽しみポイントのひとつだろう。
▲左からタメ語多めなクレスト・ハーロイ(演:東井隆希)と彼に手厳しいノーム・ジェイ(演:大見洋太)
▲賑やかなノリツッコミ好きのダッシュ・ロレッテ(演:富本惣昭)
▲バレエで鍛えた柔軟性で軽やかなアクションを披露した北澤早紀演じるパルビナ・ルイ
舞台『DARKNESS HEELS〜THE LIVE〜2022』は、正義や悪といった固定観念をいま一度捨てて、まっさらな気持ちで観てほしい作品だ。作品の世界と同じように、悪と正義が表裏一体な現実世界を生きる我々にとって、思考のヒントを与えてくれる作品となるだろう。舞台『DARKNESS HEELS〜THE LIVE〜2022』は2022年9月15日から20日まで、東京・シアター1010にて上演予定。
キャストコメント
ウルトラマンベリアル役:八木将康 コメント
本日舞台『DARKNESS HEELS~THE LIVE~2022』の初日を迎えることができ、本当に嬉しく沢山の方にご覧いただけるのが楽しみでなりません。この舞台はキャスト総勢31名で繰り広げられる芝居・アクションに加え、大スクリーンの映像を駆使したエンターテイメント満載の作品となっております。ウルトラマンシリーズファンの皆様にお馴染みの個性豊かなキャラクター、加えて舞台版「DARKNESS HEELS」から登場したキャラクターが活躍します。一人ひとりの過去や欲望が渦巻き、あっという間に終演を迎えてしまうようなストーリー展開をぜひ楽しみにしていてください。光とは何か。闇とは何か。何が正義で何が悪なのかをその目で確かめていただきたいです。劇場でお待ちしております。
ジャグラス ジャグラー役:谷佳樹 コメント
ジャグラス ジャグラーを演じさせて頂きます谷佳樹です。皆様に「DARKNESS HEELS」の世界を全身に浴びていただきたく全員で稽古に励んでまいりました。闇の者たちがそれぞれ2つの惑星に降り立つ事で展開していく光と闇の物語。光とは、闇とは。全ての物事は見る側面によって色や形を変える表裏一体のもの。噛めば噛むほど面白い作品だと思います。僕自身3年ぶりにジャグラーを演じるということで物語を一度俯瞰で見たとき、更に物語に深味が増しました。“これは面白い”何度でも楽しんで頂ける“ダクヒ”皆様の考察や視点も変えながら色んな解釈をしても楽しいかもです。最後まで応援よろしくお願いします!!!
イーヴィルティガ役:正木郁 コメント
楽しみにしてくださっている皆さま、お待たせいたしました! このような時代に本番を迎えられること、そしてお客さまをお迎えできること、心より嬉しく思います。今作は再演ではありますが、より進化したエンターテイメントをお届けいたします。稽古中も滝のような汗をかきながら、熱量の高い日々を過ごしていました。この作品の美しさ、そしてイーヴィルティガの存在をぜひお楽しみください。
ダークザギ役:樋口裕太 コメント
ダークザギ役の樋口裕太です。今回ザギとしてこの世界に生きられること、とても光栄です。アクション満載でとても見応えがある作品となっております。キャスト一同全員でこの世界観を大切にし、お客さまに届けられるよう頑張らせていただきます。最後まで応援よろしくお願いします。
カミーラ役:小田えりな コメント
カミーラとして舞台の上で生きる準備はたくさんしてきたので、こうしてゲネプロと初日を無事に迎えられることが嬉しいです! 迫力満点のアクションや世界観を感じるセリフにも注目していただきたいですし、ウルトラマンシリーズを好きな方にも初めてこの世界に触れる方にも楽しんでいただきたいです!
取材・文・撮影:双海しお
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