9月27日(火)~10月2日(日)東京・Theater Mixaにて、江古田のガールズ13周年記念特別公演 演劇版『稲川怪談』が上演される。
夏の風物詩として定着した『稲川淳二の怪談ナイト』は、今年30年連続公演を迎えた。稲川独特の語り口で、恐怖だけでなく人間の想いや愛、優しさを感じることができる怪談エンターテインメントに魅了される人も多いだろう。多くのファンに支持されている『稲川怪談』が、このたび初の演劇版として登場する。
2.5ジゲン!!では、9月5日(月)に行われた公開稽古を取材。稽古のあとに実施された取材会では、劇団主宰で脚本・演出を手掛ける山崎洋平をはじめ、伊崎龍次郎、健人、山内優花らが公演への意気込みを語った。
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公開されたのは、伊崎龍次郎、健人、山内優花らが演じる小さな劇団のメンバー・5人の男女が合宿をし、次回公演について話し合うシーン。『稲川怪談』の本を手に、次回公演にふさわしい作品を模索する。
舞台上では合宿所のシーンと、そこで話される『稲川怪談』の物語、2つが同時進行する。
最初に紹介された怪談は、4人の若い男性が海へ遊びに行った時の話。男性4人は、海の近くの食堂へ行くのだが、なぜかそのうちの1人の水が出てこなかったり、注文したカレーが出てこなかったり、不可解なことが起きる。
その夜、3人の男性は宿泊している旅館へ戻るのだが、待てど暮らせど残りの1人が帰ってこない。その男性はまさに注文したカレーが出てこなかった人物なのだが、他の3人は「どうせどこかでナンパしてるんだろう」とあまり気に留めない。
しかし夜遅くに警察官が訪ねてきて、怪しい水死体が発見されたので、身元を確認してほしいと言ってくる。どうやら戻ってきていない1人の可能性があるというのだ。尻込みする3人だが、押し付けられる形で、伊崎が演じる男性が確認に向かう。
白いシートに覆われた水死体を見るやいなや、腰を抜かす。まさに自分の仲間だったからなのだが、その水死体の奇妙な状況にさらに身震いする。伊崎の驚きぶりは、なかなかリアルだ。
このような感じで、いくつかの『稲川怪談』の物語が披露され、舞台上で2つの場面が並行して展開していく舞台となる。出演者12名は、伊崎と同様に複数の役をこなすことになるのでハードな舞台となるのではないだろうか。
そして稽古場を見ているだけでも、なんとなくゾゾっとするのは、さすが『稲川怪談』といったところだが、怖さだけではなく、どこか心が温かくなるような物語も含まれており、筆者のように怪談話が苦手な人でも楽しめる公演になるような予感がした。
50分ほどの公開稽古が終わり、続いて取材会が行われた。脚本・演出を手掛ける山崎洋平をはじめとし、出演者12名が登壇。
今回の公演についてコメントを求められた伊崎は「最初、稲川怪談を演劇にするというのは、どういうことなのか思いながら稽古場に入ったのですが、演出の山崎さんがしっかりとビジョンを持っていてくださいました。この作品のテーマは「怖楽しい」で、ただ大きい音を出してお客さんを怪談の世界に誘うのではなく、怖いのが苦手な人、大きい音が苦手な人でも楽しめる演劇づくりを目指しています。稽古が始まって10日ほどですが、現在は、面白い・楽しいという気持ちが80%、怖い気持ちが20%なので、本番では50%ずつになるように山崎さんが調整していると思います。山崎さんを信じてみんなで一丸となって初の演劇化『稲川怪談』の良い一歩を踏み出せるように頑張ります」と力強く語った。
続いて健人は伊崎を見ながら「僕が言いたいことを全部言ってくれましたが(笑)、毎日稽古が本当に楽しいです。僕は怪談話が苦手なんですが、すごく楽しみながら稽古に取り組んでいます。この作品では、いきなりバーっと脅かすような姑息なことはしないので、怖いのが苦手な方も安心してください。どうしても怖かったらご家族や友達と一緒に来ていただけたらうれしいです。そして実際に稲川怪談にある話をいくつか演じるのですが、本を読んだ原作ファンの方であれば『この話をこうやって演劇化するんや…』と楽しめますし、知らない方は、芝居を観た後に改めて本を読んで『実際はこういう感じやったんや…』と楽しめると思うので、たくさんの方に観ていただきたいです」とコメント。
稲川怪談の大ファンだと公言している山崎は「いつか自分なりの形にした稲川怪談を上演したいと思っていました。今回叶ったわけですが、今現在稽古をみていて『俺は本当にいい台本を書いたんだ!』と思いますよ! ただ原作好きの人にはあまり評判はよくないかな…と思ったりもします(笑)。あとは皆さんと一緒にお芝居をつけていくということになりますが、これから豊かな稽古ができれば…と考えています。僕は気を遣うタイプの人間なので、今回12人の出演者がいますが、全員に見どころをさしあげたつもりです。先日行ったアンケートで『やりがいはありますか?』と質問したら、皆さん『あります!』と答えてくださったので、どなたのファンがいらっしゃっても『どこに出てたの?』ということにならない公演ですから、そういう意味でも楽しめると思います」と太鼓判を押した。
山内が「稲川怪談を一緒に観るとカップルになるという話を聞いたことがあるので、演劇版・稲川怪談でも、観に来た方がカップルになったらいいなと思うので、良かったら好きな人を誘って観に来てください」と意外なジンクスを公開すると、伊崎が「演劇版・稲川怪談はパワースポットです! 縁結びですよ!」と沸かせる一幕もあった。
改めて『稲川怪談』の魅力について問われると、山崎同様に『稲川怪談』のファンだという江古田のガールズの佐野剛は「稲川怪談が一番輝くのは、稲川淳二さんが語っている時だと思います。稽古していても怪談を舞台化するのはなかなか難しいと苦戦しており、不自由です。ただその不自由さも演劇のマジックで自由さに変われば、また新しい稲川怪談が見せられるのではないかと思っています」と語り、ファンだからこそ難しいと感じる部分、そしてそれを乗り越えようとしている座組の気合を感じた。
同じく江古田のガールズのカトウクリスからは「怪談は怖い話だけでなくて、中には温かい話もあって、人間味あふれるものもあります。今、座組全員で楽しみながらこの作品を作っているので、この楽しさを劇場でお客さまと共有できたら…と思います。これから劇場に向かうまで、どれだけ作品のクオリティーが上がっていくのか楽しみです。ぜひ劇場でお待ちしております」と、観る側の期待感が高まるコメントが返ってきた。
さらに伊崎が「山崎さんの脚本を読んで、稲川さんへのリスペクトがひしひしと感じられました。稲川さんのファンということでこだわっているところが随所にあり、例えばドアを開ける時に大抵は「ギーッ」と表現すると思うのですが、稲川さんは「い」に濁点をつけたような、ちょっと変わった擬音を使われるので、そういうところがちゃんと脚本に反映されているんです。演劇化にあたり、山崎さんはそういうこだわりを大切になさっていると思うので、稲川怪談のファンの方も安心して観に来てください」とアピールした。
最後に、山内、健人、伊崎が来場するお客さまに向けてメッセージを送った。
山内:怖がりたい人も楽しみたい人もどちらも絶対に満足して帰っていただくことをここに誓います! ぜひ遊びに来てください。
健人:老若男女、誰もが楽しめる作品になると思いますし、原作と違う表現になっているところや「こう解釈して表現しているんだ」と楽しめるところもたくさんあると思うので、ぜひ劇場にお越しください。
伊崎:恐怖のドキドキと恋のドキドキは似ていると思います。先ほど山内さんがおっしゃったように、演劇版・稲川怪談は、パワースポットとして後世に語り継がれることになると思います。演劇は非日常を味わえる場所ですし、この公演ではさらに非日常である怪談を味わえるとあって、何か刺激が欲しいと求める方にはぴったりな作品になっていると思います。演劇、怪談と1粒で何度も美味しい作品ですし、公演中は日替わりゲストもいらっしゃる予定ですので、ぜひ日替わりシーンも楽しみにしていてください。劇場でお待ちしております!
取材・文・撮影:咲田真菜
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