演劇版『稲川怪談』 が9月27日(火)に東京・Mixalive TOKYO Theater Mixaで開幕し、ゲネプロレポート、伊崎龍次郎、健人、山内優花からのコメント、舞台写真が到着した。
囲み会見の冒頭で山崎洋平は「この作品は“大人の文化祭”といった感じで、お化け屋敷に来た感覚で楽しんでいただければと思います」と挨拶。続けて伊崎龍次郎は「ただ怖がらせるだけなら簡単かもしれません。しかし本作は『怖(こわ)楽しい』ということがキーワードになっています」と従来の怪談ライブとは少し違った角度からアプローチをしていることを明かした。まさしく、本作は『怖いだけではなく、演者とともに楽しめる』というのがウリとなる。
また「稽古中に『怖い体験』はあったか?」という質問に対し山内優花は「稽古場の女子トイレで謎の声が聞こえるという事件がありました」と衝撃的な告白をし、「結局は(生きている)人の声だということがわかって、解決はしたんですけれど、もしわからないままだったら(本作の)怪談の1つになっていたかもしれませんね」と稽古当時を振り返った。どうやら怪談を題材として取り扱っていると身の回りのできごとに敏感になるようだ。健人も「この作品の稽古が始まってから、なぜか寝ている最中によくわからない夢を見るようになりました」と不穏な体験をほのめかし、「よくわからない集団に誘われて、『この虫に刺されると病気にならない』って言われて、僕、そのまま虫に刺されて『なんなんだろう…』と思ったところで目が覚めました(笑)」と予想外の夢の結末が飛び出す。怪談劇ではあるものの、終始笑顔があふれる会見となった。
本番開始とともに披露されたのは稲川怪談屈指の名作「ゆきちゃん」。このオープニングシーンの作り込み具合から、江古田のガールズの『怖さ』への探求心の強さが伺える。稲川淳二の「稲川怪談 昭和・平成傑作選」を原作とした映像作品は多数あるものの、意外なことに演劇・舞台化は今回が初。舞台上で、さらには生でホラー演出を確立させるというのはなかなかに難しい。しかしそこは実力派揃いの俳優たち。持ち味である、表現・演技力によって不気味さを際立たせ、背筋がゾクゾクとするような臨場感を全員で作り出していた。
伊崎龍次郎は物語の進行役的な立ち位置を担い、お調子者のように場を盛り上げたかと思えば、ときに状況をとりまとめて観客の頭を整理させてくれる、そんな役どころだ。注目したいのは伊崎龍次郎の「目」。お調子者のときと進行役のときと、それぞれ目つきに変化をつけており、舞台上の温度感を自在に操っていた。彼が鋭い眼差しで語る際、凍りつくような緊張感が漂うのだ。そんな伊崎龍次郎、健人、山内優花は関西圏出身。物語はあるサークルの合宿にやってきた5人の男女が、遅れているメンバー2人の到着を待ちながら怪談話をしている…というところから開始するのだが、劇中ではわきあいあいとしたノリで関西弁を操っていた。彼らの関西弁が聞けるというのもなかなかに珍しい。
少し怖がりなサークルのメンバー役の健人は、とにかく感情表現がダイレクト。演技力の安定感は流石の一言だが、これまでにない全力のリアクションで「観客がもし実際に恐怖体験の現場にいたら」という環境をリアルに代弁し、見ている側が追体験をできるように立ち振る舞う。
伊崎龍次郎とは対象的に、山内優花は観客と同じ目線でストーリーを追っていく存在だ。観客の心にしっかりと寄り添いながら、観客の代わりにしっかりとツッコミを入れてくれるので緊迫した空気を一蹴し笑いを誘う。一方で朗読口調の際には彼女の透き通るような声と演技が恐怖を5倍増しにするため、良い意味で裏切られたと感じること間違いなし。
そしてゲスト俳優陣や江古田のガールズの劇団員たちが徹底して「稲川怪談」の世界観を構築し、圧倒的な『怖さ』で勝負を仕掛けてくる。1人1人が個性派なのにも関わらず、不和が生じない完璧な布陣だ。そして俳優陣の実力充分な演技はもちろんだが、山崎洋平による細かな計算がなされた脚本と、予想外な演出からは怪談へのリスペクトを強く感じることができる。
本作では最初から最後まで、様々な演出が施されているのだ。恐怖体験の現場に迷い込んだような感覚に陥らせる緻密な演出たち。しかし果たしてその全てが本当に“用意された”ものなのか、それとも何かによって引き起こされたものなのか…最後の最後まで気を抜かずにこの“怪場”を楽しんでいただきたい。
伊崎龍次郎 コメント
江古田のガールズの皆さんの持ち味を存分に生かした『怖楽しい』舞台になっておりますので、ぜひそれを味わいにいらしてください。怖い話だからといってお客さまを突き放すような作品では決してなく、あたたかく「こっちおいで」と抱きしめるような、身近な怖さを体感できる作品です。一緒に驚いたり共有できるお話ばかりなので、怖い話が苦手な方でも、隙間から覗くような感覚できていただければなぁと思います。最近チケットのペア割というものを発表させていただいたのですが、ぜひカップルやお友達と一緒に何度も楽しんでいただけたら幸いです。よろしくお願いいたします。
健人 コメント
先ほど龍次郎も言っていたように『怖楽しい』作品となっています。怪談の中でも、怖いものだけではなくクスッと笑えるものまで色々な演目がぎゅっと詰まっておりますので、それらを楽しんでいただけたら嬉しいです。原作の「稲川怪談」ではバラバラに掲載されているお話を、この作品で1つのストーリーとして繋がるように組まれているところが見どころです。はじめて本作に登場する怪談を知る方ももとから知っていた方も、皆さん楽しんでいただけると思います。劇場にお越しいただける方にはぜひ生で体感いただきたい! とは思うのですが、配信もございますので、お好きな方法で本作をご覧ください。よろしくお願いいたします。
山内優花 コメント
今回は「稲川怪談」の初の演劇化ということで、キャストたち全員で色々な演劇表現を駆使した作品となっています。どんな表現が出てくるのか楽しみながら見てみてください。怖い話のオチをわかったうえで演者たちがどのように反応をしながら演じているのか、というのを見ていただく楽しさもある作品かと思います。1度とは言わず、2度、3度、配信も…と繰り返し見ていただければ嬉しいです。ご来場をお待ちしております。
公演は10月2日(日)まで行われる。
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