7月8日に東京・品川プリンスホテル ステラボールでミュージカル「DREAM!ing~Rainy Days~」(通称・Dミュ)が開幕した。本作は、2020年に上演されたミュージカル「DREAM!ing」の続編。名門校・東雲(しののめ)学園を舞台に、首席を目指す候補生たちの青春が描かれる群像劇だ。
2.5ジゲン!!では、初日に先立ちおこなわれた公開ゲネプロと囲み取材の様子をレポートする。ストーリーや隠しキャラなどの大きなネタバレには触れないが、劇中写真を含む記事のため、初見の感動を大事にしたいファンは注意してほしい。
9月。東雲学園に2学期がやってきた。まだ夏休みの興奮が冷めない生徒たちの間では、ハート不明のとある危険な“ゆめ”、『27club(ニナクラブ)』が広がりつつあった。ジャックポットやルーレットなど、高校生の健全な遊び場とは到底言えない娯楽が用意されている『27club』を調査するため、生徒会が動き出す。しかしある日、『27club』内で大きな事件が起こってしまった。果たして、『27club』を作りだしているのはいったい誰なのか。そしてその目的は―。
Dミュ第2弾である本作は、柴咲真也(演・宮本弘佑)、白華時雨(演・上仁樹)の「心腹の友」ペアと、虎澤一生 (演・白石康介)、浅霧巳影 役(演・塚本凌生)、の「おひさまと月」ペアの関係性を中心にストーリーが進んでいく。
『27club』、体育祭、文化祭…と息つく間もなく次々にイベントが巻き起こっていくので、5時間は観たのではないかというほどにストーリーが詰まっている。しかし体感は短く、ファンが観たいと思っているであろうポイントやストーリー展開上必要なものを、的確に抽出・凝縮して送り出していると感じた。
描いている内容は膨大なはずなのだが、芝居には全員たっぷりと情感が乗っており、切羽詰まったせわしさは感じない。ここは芝居を見せる、ここはひたすら楽しく! とメリハリのある脚本が作られているからだろう。また、役者個々のパフォーマンス能力の高さも理由の1つだと考えられる。
「こうして、~は~だった。」のように、場面転換や心情の説明を小説の地の文を朗読するかのごとく登場人物に喋らせる演劇手法は、原作付きの舞台であまり見ることは無い。しかしこの語りによって、舞台をぐっと“演劇”的に見せるとともに、大がかりな映像演出を使わずに多くの効果を生み出している。
「心腹の友」ペアと「おひさまと月」ペア、両方のペアの話を、交互に入れるだけではなく同時に舞台上で表現している手法は見事。また、ペアだけではなくその他のキャラクターも全員立っているので、彼らが今どういう思いで生きているのか、苦しんでいるのかが分かる。
個々の人物のバックボーンを知っている原作履修済みのファンは、“行間を読みながら楽しめる”のはもちろん、原作を全く知らずに本作を観ても「出ている誰もが何か重いものを抱えている」というのは伝わるだろう。
今作の中心「心腹の友ペア」真也と時雨。真也はニコニコとして明るく、いつも笑顔を見せているからこそ、抱えているものの大きさを思うと見ていてつらくなる。時雨は、完璧な優等生とマフィアの跡取りという2つの立場にあるが、時おり、自分に課せられた運命の大きさと重さに苦しむ表情を見せる。
「おひさまと月」ペア、巳影と一生。塚本凌生は佇まいからシルエットまでまさに巳影、という完璧なビジュアルで驚かせる。それと同時に、余裕ぶっている姿やイラつく仕草が「三次元に具現化した人間としての巳影はこうなるのだ」と思わせてくれる。一生は恐らく、今作のベストオブ地獄パート担当だ。雄々しくパワフルな歌と、周りを明るくする笑顔の一生だからこそ…。あとは劇場で、感情のジェットコースターを楽しんでほしい。
今回も楽しみな衣装は「それ持ってくるの! 」と絶叫間違いなしのものがある。体育祭、文化祭も、お楽しみな小ネタが盛りだくさんだ。また、ドロンチョは驚きの演出方法により大活躍するので楽しみにしていてほしい。
セットは、前作同様上下の2段構えと、人力稼働の階段のみ。これに風景や心情の映像を映すのが基本だ。シンプルだからこそ、階段の移動や組み合わせ方だけでもさまざまな物に見えてくる。さらに今回は、まるで空撮カメラの映像を見ているような気持ちで芝居を観ることになるシーンもある。
布、紙、傘…アナログな演出に映像の味付けがされた、情感を揺さぶるシーンがいくつも用意されている。思い切り笑ったかと思えば、次の瞬間には、登場人物たちの深い心の底を覗き込むような気持ちになる。今作は、天国から地獄への落差が激しい。心してかかりたい。上演時間は2時間30分ほど。空調が効いているので、羽織るものかひざ掛けを用意することをおすすめする。また、上演時間10分前には桐谷先生による前説、『Dミュ』初心者へのレクチャーもあるので、上演開始の15分前には会場に到着しておきたい。
舞台と観客席が一体になって大いに盛り上がれるシーンもいくつか用意されているので、手拍子で思う存分キャストたちのパフォーマンスに応えよう。
誰にも言えず、隠し続けた自分の秘密。ありのままの自分を受け入れてくれる存在。君がどんなに変わっていってもいい、僕はずっと傍にいる。傷つければ傷つけるほど、自分も傷ついていく。でも、傷つけずにはいられない。
傘に隠した本音、本心、素直な気持ち。雨が上がれば、傘を閉じてお互いまっすぐ向かい合えるようになるだろうか。
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ゲネプロ後には囲み会見が行われ、キャストたちが意気込みやゲネプロを終えての感想などを語った。
柴咲真也 役:宮本弘佑
ここまで怪我なく皆で来られたことを嬉しく思います。上質な“ゆめ”を送れると思いますので、しっかり調整してせいいっぱい頑張ります。キャスト一同本当に個性的で実力もあってパフォーマンス能力も高いので、1作目に引き続き、とてつもなくいい作品になると確信しています。絶対にこの作品を最後までお届けして、原作ファンの方にも受け入れてもらえるように、柴咲真也としてしっかり頑張りたいと思います。
白華時雨 役:上仁樹
第2弾をやらせていただくのはとてもありがたいことだと思っております。このキャストとスタッフさんと、カンパニー全体で皆さんに素敵な“ゆめ”をお届けできるように頑張ります。僕は1作目から出演させていただいているのですが、この作品が本当にたくさんの人の愛によって作られているのを感じています。今回も、皆さんに愛される作品にできるように一生懸命頑張りますので、応援よろしくお願いします。
浅霧巳影 役:塚本凌生
僕は今回が初参加になります。キャラクター1人1人にしっかりと物語があって、誰を観ていても楽しめる作品です。パフォーマンス部分も見どころがたくさんあります。僕らは新キャストとして、新しい風を注げたらなと思います。プレッシャーはありません。本当に楽しい舞台ですので、僕は僕の浅霧巳影として、このミュージカル「DREAM!ing」に思い切り乗っかっていこうと思いますので、応援よろしくお願いします。
虎澤一生 役:白石康介
この作品で僕が特に素敵だなと思うのは、歌の歌詞です。それぞれに自分の持ち歌がありますが、その中で、自分が見せたいキャラクターらしさや大事なポイントがしっかりと歌詞の中で描かれています。そういう部分を千秋楽までしっかりと皆さまにお伝えできたらと思っております。僕のゆめライブの曲はとても明るい歌です。しっかりと皆さんのことを引っ張り上げるので、ぜひついて来てほしいです。他のみんなの全部の曲でも、ぜひ盛り上がってください! 僕と凌生は今回新キャストということで、正直プレッシャーもありましたが、稽古場に入ってから先輩方が本当に優しくしてくださって、やりやすい状態でパフォーマンスを続けることができました。最高の舞台にしますので、皆さまぜひ最後までついてきてください。
望月馬 役:佐藤信長
前作に続いてまた今回も出させていただくのですが、「前回を超える」と言うと自分の中でちょっと嫉妬心が生まれてしまいます(笑)。前回たくさんの人に愛される作品を届けられたので、今回もそれに負けないくらい愛される作品を届けて行けたらいいなと思っています。
花房柳 役:山田ジェームス武
前回の公演中、原作アプリの配信が終わってもなお作品が愛されているのを感じていました。第2弾も、より愛してもらえる作品を届けられると思いますので、皆さん楽しみにしてもらえたら嬉しいです。
新兎千里 役:樋口裕太
今回はストーリー的に重い部分もあるのですが、僕たちの仲の良さから生み出すアドリブがあったりするかもしれませんのでそれを楽しんでください。この先もミュージカル「DREAM!ing」が続いていきますように頑張っていきますので、よろしくお願いします!
獅子丸孝臣 役:長江崚行
前作が1年半ほど前なのですが、久しぶりに戻ってきても仲の良さは健在でした。より深い所まで楽しめる作品になっているので、はじめましての方も、2度目ましての方も、隅から隅まで楽しんでもらえたらと思います。
針宮藤次 役:反橋宗一郎
今回の針宮藤次の見どころは、前半の運動量です!
三毛門紫音 役:杉本陣
今回は前回に引き続き第2弾ということで、新たなメンバーも加わって、すばらしい作品を作り上げることができました。千秋楽まで皆で、最高に終わりたいと思います! イエイ!
志部谷幽 役:坪倉康晴
第1弾とはまた違った第2弾。ちょっとお洒落もありつつ切ないストーリーをカンパニー一同で作ってきました。この一同で楽しんでお届けできたらと思っています。
牛若湊 役:遊馬晃祐
今回は生徒会長になっています。少しずつですが、湊の成長を見ていただけたら嬉しいです。それから、ペアを頑張ります!
ビアンキ由仁 役:川本光貴
この舞台は、第1弾の時に初舞台として出演させていただいたものなので、とても思い入れがあります。今回は「Rainy Days」ということなので、梅雨が来るたびにこの舞台を観たことを思い出していただければと思います。
桐谷洋介 役:磯貝龍乎
今回はプロジェクターが2台使われています。映像も、ものすごく綺麗に映る仕様です。パフォーマンスも素晴らしいものになっていますので、一度と言わず何でもお越しください、よろしくお願いします。
公演は7月18日(月)まで東京・品川プリンスホテル ステラボールで行われる。Blu-ray発売も決定し、限定特典が付属した「公演期間限定予約盤」の予約受付も開始している。
取材・文:広瀬有希/撮影:ケイヒカル
(C)COLOPL・ミュージカル「DREAM!ing RD」製作委員会
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